転生人 語《野球偏》   作:ぬえさん

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第2話 第2回転生活動報告

1993年11月 大和トムキャッツ二軍グラウンド

 

 最初は二三矢のプロへの売り込みの付き添いだけのつもりだった。

二三矢と雄根の勝負を見て、燻っていたなにかに火が付いたのを感じた。

 

 あの打球がファール?……ポールに掠ってたと思うが……

しかし、もうだめだな、さっきので握力が尽きたろう、あれじゃもう振れないな……

高校卒業後も暇があれば、体力作りと称して練習に付き合わせてたんだがな……

 

 さて、行くか……

 

 

「すみません、俺も1打席、テスト受けさせてもらってもいいですか?」

 

「ほんと無茶言ってすみませんね、これを逃すと2年前に忘れてきたモノ、取り返せなさそうなんで……」

 

「ねぇ、雄根さん、あんたは忘れてるかもしれないけど、俺ら2年前に対戦してるんすよ」

 

「あんときみたいな腑抜けた球、投げないでくださいね?」

 

「さぁ始めましょうか」

 

 

 

……

 

 

 

SYSTEM=========

 

記録媒体起動

投影開始

 

 

……

 

 

 テスターNo.08986 第2回転生活動報告を始める。

 

 初見のものはいないと思うが、一応言っておく。

俺は原作知識無し、技能有り、テスターの同時介入無しの組だ。

今回もまだ原作知識を取得していない。

 

 

 今回は前回に比べて最初に説明するものがあまりない。

だが、第2回に行く前に技能選択を見に行くと、グレーアウトして選択できないものと、点灯して選択できるものに分かれていた。

第1回の成果に応じてってことなんだろう。

選択できるものだけ抽出してみたが、強力な技能は取れそうになかったな。

ただちょっと気になったので、下位技能だったが【蟲の報せ】を取得した。

原作知識がないんでな、これで多少ターニングポイントを感じられたらいいな。

 

 

 で、ステータスについてだが、【韋駄天】の効果で走力は安定のSだったが、他は軒並み下がっていた。

それでも、第1回の3歳の時より多少ステータスは高かったような気がする。

リセットというよりは、前回の成長分だけ底上げされたステータスなんだろう。

また同じ訓練を繰り返して第1回と同じ成長をしてもよかったんだが……

いや、もしかしたら【蟲の報せ】の効果なのかもしれないな。

今回はパワーをつけるために筋力を上げるようなトレーニングをすることが多かったな。

 

 

 あぁそれと特殊能力の取得方法だが、パワプロのゲームと同じでポイントと引き換えに取得できた。

第1回で取得方法まで報告できていなかったことを思い出したんでな。

「内野安打○」「キャッチャー○」「アベレージヒッター」が2回目の転生世界でも残っているかわからなかったんだが、無事、取得済みの特殊能力は残っていた。

こう考えると【パワプロ風育成システム+α】はだいぶ強力なのかもしれない、ただ周回前提なところがあるわけだが……

今回はトムキャッツと言ってもわからんよな、プロに入団するタイミングで「選球眼」「広角打法」「フレーミング○」を取得した。

高校までは1回目に取った特殊能力で十分だったんだが、プロともなると足りなく感じたので入団を機に一気に取ってしまった。

もっと特殊能力をとっても良かったかもしれないが、ポイントはステータスの底上げにも使えるからな……

 

 

 そういえば、今回も3歳スタートだった、でもってやっぱり幼馴染がいた。

幼馴染の名前は四方元(しっぽうはじめ)二三矢(ふみや)、うちの菩提寺の息子の兄弟だった。

翌年の盆に墓参りに行ったときに知り合い、二三矢のほうは同い年だったので特に仲良くなった。

手加減してるとはいえ、かけっこで俺についてくるんだぜ。

正直スゲーなーと思ったわ。

運動会なんかでも俺と一緒じゃなけりゃ1等取ってくるし……ただ大抵その後は体調を崩すんだよなぁ。

 

 

 小学校の低学年の頃はそこまで意識しなかったが、よくよく考えれば異常だよな。

技能(チート)で底上げされている同年代最速格の俺についてくる。

普通に考えて無茶だし、そりゃ体調崩すわって、しかも本人無自覚だしな。

集中すればするほど目標に向かって一直線。

あれがゾーンてやつなのかねぇ……

 

 

 高学年になって、クラブ活動は野球をやりたかったが、二三矢がなぁ。

二三矢はまぁ案の定、年に数回体調を崩してた、こりゃ本格的に基礎体力上げんとひどいことになると思ってな。

まぁクラブ活動の野球は中学や高校みたいな練習はなく、試合ばっかりだったから、二三矢と陸上クラブに入って、ずーっとマラソンしてたわ。

なんでそこまでと思われるかもしれないが、まーあれだ、虫の知らせってやつだ、多分二三矢はこの世界の主人公だろうし。

 

 

 中学に上がったとき、お祝いに少しお金がもらえたので、京都市内にある大きな書店に本を買いに行った。

この時代、インターネットなんてないからな。

ちゃんとした情報を仕入れるなら大きな書店に行くしかない。

素人考えでマラソンをやってたが、中学からはさすがに野球をやりたい。

トレーニング関連の書籍やスポーツ医学?の書籍を数冊買って、自身と二三矢のトレーニング案を詰めていった。

 

 

 中学に入って部活を選ぶとき、二三矢はどこに入ろうか悩んでいた。

「なんで主人公なのに野球をしようとしないんだ?」と思いつつ、野球部に引き込んだ。

タッチの世界ではそんなことはなかったんだが、この世界での中学生野球はかなり上下関係が厳しかった。

みんなスカウトに引っかかろうと必死になっていたからな……

「必死すぎない?」と思って調べたら、この頃の京都は私立高校が幅を利かせてたんだよなぁ……

 

 

 それと二三矢の打ち方、あれは脇の筋を痛める。

そう思ってゴムチューブを使ったトレーニングで腹斜筋を鍛えさせた。

この時に二三矢に高校はどこに行くつもりかと聞いたら、近所にある公立の朱雀院高校と返された。

それを聞いて「あれー? あそこ野球部はあったと思うが人数ギリギリじゃなかったか?」と原作に入るのか不安だったな。

そして朱雀院高校(あそこ)に行くならスカウトに目を付けられないようにと、公式戦はバレないように力抜くことにした。

 

 

 2年の秋季大会からレギュラーになったが、先生には手を抜いてるのはバレていた。

まぁ朱雀院志望と言えば納得してくれたが……

二三矢の方にも「活躍しすぎると私立に行くはめになるぞ」と言い含め、試合に参加していた。

二三矢はいい感じに力が抜けてたからか体調を崩すことなく、そこそこ単打を打っていた。

 

 

 結局中学時代はベスト8止まりだった。

先生と相談して、ケガをしにくいトレーニングを増やしてもらったので、後輩たちには頑張ってもらいたい。

俺と二三矢はスカウトに目を付けられることもなく、無事朱雀院高校への入学が決まった。

 

 

 高校に入ったその足で、二三矢を連れて野球部に入った。

案の定人数ギリギリだった。

入部時点で投手がいなかったので、今回は投手をやらなあかんかなと思ったら、投手があとから入ってきてくれた。

カーブが投げられるということだったのでブレーキの利いたカーブに2年かけて改造した。

 

 

 高校1年、2年は地区予選でいいところまでは行ったが、甲子園には行けなかった。

やっぱ二三矢は主人公だったわ、3番の俺が出塁して4番の二三矢が返す、うちの高校の鉄板得点方法だった。

2年の秋くらいからスカウトなのか偵察なのか、たかだか公立の高校の練習を遠くから見ている人が増えた。

二三矢にプロはどこへ行くか聞いたら、俺が引き込んだからやってるだけで高校卒業後は親父さんについて易者をすると返された……

この頃の俺は今思うと迷走していたと思う。

主人公であるはずの二三矢が全然野球に興味がなかったんだ。

 

 

 3年になって甲子園出場を決めた。

甲子園大会では毎回相手のほうが評価が高かったが、何とか勝ち抜いて決勝まで来た。

決勝では3年間一緒にやってきたうちの投手と、準決勝を投げている雄根との投手戦になると思っていた。

雄根が今戦ってる相手、清本も優勝候補だったが、どうみても気迫は雄根のほうが上だったし、現に全打席を抑え込んでいた。

この時は雄根が二三矢よりも主人公していたので、かなり混乱していたな。

 

 

 投手戦になると思ったんだがな。

雄根の球はとても決勝に来る投手が投げるような球じゃない、平凡な球だったな。

応援席はざわついていたな。

ほぼほぼ毎回出塁してるやつが、この決勝で5打席全部見逃し三振してたら当然か……

でもなー物語的にこんな球打って勝ってもなぁ……と、ここで原作は高校野球じゃなくプロ野球か?と思い至った。

でも、こんなやつが主人公のマンガ? 二三矢はプロに行かんって言ってるし……といった感じで俺はやる気を完全に失っていた。

 

 

 

 

 

 TVで雄根がなんか言っていた。

四六時中野球のことを考えてるやつが、甲子園決勝であんな球投げんのか……と、到底納得できない気持ちでTVを見ていた。

リーグ優勝できなきゃ野球やめる?……ふっざけんな!……そうだなこの時はもう苛立ちでいっぱいだったな。

 

 

 なんか二三矢が雄根の活躍を見て、野球に、いや、あれは雄根にだな、のめりこんでいった。

その姿を見て「二三矢(おまえ)雄根(こいつ)、決勝の甲子園でバカスカ打ってたからな?覚えてないのか?」と内心突っ込んでいた。

そして「まぁ決勝の姿とは全然違うからな……この球を打ちたかったなぁ」とも思っていた。

 

 

 トムキャッツがリーグ優勝してから二三矢がトムキャッツに売り込みに行くと言い出した。

なんでと聞いたら、「雄根(あいつ)と一緒に野球したい」と返された。

確かに2年間野球チームに所属してないから、自分で売り込みに行くのも、ドラフトに指名されるのも問題はない。

この時になんで雄根にも二三矢にも主人公味を感じたのか、やっと理解した。

そうして俺は二三矢に引っ張られてトムキャッツの二軍が秋季キャンプをしているグラウンドについた。

 

 

 二三矢のテストが終わった後に乱入した。

テストでは雄根(ヤツ)の投げる球、全部打ち返してやった。

この年のドラフトで俺と二三矢はトムキャッツに指名されて入団した。

 

 

 入団後すぐ1軍に呼ばれ、正捕手にされた。

チーム全体が昨年のリーグ戦でガタが来ているとのことだった。

交渉して雄根が腑抜けた球投げたらしばく権利を獲得した。

 

 

 1年目はリーグ優勝は果たした。

だが……自分の参加できないところで物語が紡がれている感じだったな。

二三矢と加縫(さる)が守備放棄したり、その試合で9回5点差をひっくり返したり、「誘えよ」とは思ったが捕手に守備放棄は無理だしな、まぁ打つほうで協力はしたが……

別の日には二三矢が相手チームの剛速球投手の伊部さんと熱い勝負をしていたな、「混ぜろよ」と思ったが、この頃からかな?二三矢は相手チームから目の敵にされているのに、俺は相手にされていない、打たれても問題ないと思われている、そう感じるようになったのは。

リーグも進み最終戦、勝ったほうが優勝の試合でもそうだ、相手チームのエース九條は守備へと参加し、二三矢の時だけワンポイントリリーフとして、マウンドに立った。

九條との対戦成績も俺のほうが二三矢より良かったのに、納得がいかない。

試合に関しては結局二三矢がサヨナラ弾を放って、リーグ優勝、そこで力尽きて日本一を逃した。

 

 

 2年目は……あーすまないあまり印象に残っていない。

普通にペナントレースを戦い抜いたが、別のチームにリーグ優勝を持っていかれた。

前の転生では途中で事故って終わってしまったが、原作で飛ばされた期間や原作が終わってからの記憶がおぼろげになるみたいだな。

同じように原作に書かれていないのに幼少期の頃の記憶があるのは下積み時代だからだろうか?

いまいちルールがわからない。

 

 

 3年目捕手(トラ)が入ってきたので、適度に交代しながらマスクをかぶることになった。

しっかりとチームに貢献してるつもりだったんだがなぁ……

二三矢も、この頃には目一杯フルスイングしても体を壊さなくなっていた。

毎年本塁打王と打点王にはなっていたが、首位打者は譲ってやらなかった。

それでも寅島(トラ)を入団させ、1軍に上げる……球団が求める力を寅島(トラ)が持っていたということなんだろう。

いや今ではわかっているんだ、チームをまわし、チームを日本一に導く、その過程で非情な選択もする、そんなことは俺ではできないからな……

それはそれとして三ヶ月(ミケ)寅島(トラ)の物理法則に則った魔球という発想は正直スゲーと思った。

これを阿畑が見てたらなんて言っただろうと思いながら、学べるところは学ばせてもらった。

 

 

 とりあえず、こんなところか。

今回の原作は察するにトムキャッツの新人(ルーキー)に主軸を置いたものだったのだろう。

だから雄根からも二三矢からも寅島・三ヶ月のコンビからも主人公っぽい何かを感じ取れたのではないだろうか?

つまり二三矢が憧れた雄根が活躍した第1部、二三矢の活躍する第2部、寅島・三ヶ月コンビが第3部って所か……

そう考えると今回の転生は大きな乖離もなく原作沿いになってしまった予感がする。

 

 

 今回も時間はあるな。

なら前回同様、今から原作知識を取得してくる。

 

 

SYSTEM======

原作知識取得中。

記録を一旦停止。

 

 

……

 

 

……

 

 

  

 

 (バシン!)

 

 

 

 あーすまない、取り乱した。

ちょっと推測通り過ぎて、腹が立って原作を床にたたきつけてしまった。

 

 

 原作を読むと俺が入る隙間がほぼなかった。

ただ体を壊してた二三矢がいなくなったのはまぁ満足だ。

 

 

 しかし、これ言ったところで知ってる奴いるのか?

正直、俺はこのマンガを知らんかった。

俺が行ってきた世界は「キャットルーキー」だった。

時間も来たみたいだし、これで報告終了とする。

 

 

 じゃぁな。

 

SYSTEM=========

 

投影終了。

 

SYSTEM END=======

 

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