転生人 語《野球偏》   作:ぬえさん

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第3話 第3回転生活動報告

 地区予選開催中 星高校グラウンド

 

 狭いグラウンドでの投球練習中、俺は橘に話しかけることにした。

しかし……ホームベース状に穴開けて、フォークで全部入れるって……

フォークへの絶大な信頼がうかがえるが、それだけじゃだめだ。

あとピンチを装うために満塁にするのをやめてもらいたい。

野球はチームスポーツなんだ、一人の選手が勝負を左右するのはわからんでもないが、一人の選手が好き勝手やっていいものじゃない。

 

 

「なぁ橘、お前、ほんとにフォーク一本で行くのか?」

 

「い、いやお前のフォークが一級品なのは知ってるけど、お前の性格的にほかのピッチャーがフォーク投げてたら、目立てないからって試合中にも新しい握り試すだろ?」

 

「で、四球連発して満塁にするだろう?だから、そうなる前に切り札を作ろうって話だよ」

 

「なにも信頼してるフォークを使うなって言ってるわけじゃないさ、普通の変化球だと目立たないから嫌なんだろう?まぁ任せろよ、これでも変化球改造するの得意なんだ」

 

「それに入学前に監督にフォークを打たれてるんだろ?監督を空振りさせる変化球、作ろうぜ」

 

 

 

……

 

 

 

SYSTEM=========

 

記録媒体起動

投影開始

 

 

……

 

 

 テスターNo.08986 第3回転生活動報告を始める。

 

 初見のものはいないと思うが、一応言っておく。

俺は原作知識無し、技能有り、テスターの同時介入無しの組だ。

今回もまだ原作知識を取得していない。

 

 

 ステータスについてもさらっと流しておく。

【韋駄天】の効果で走力は安定のSだったが、今回も前回の成長分だけ底上げされたステータスになっていた。

そういえばステータスについて明言していなかったな、いい機会だから言っておこう。

3回目の転生初期値は弾道1、ミートC、パワーD、走力S、肩力E、守備力E、捕球Cだ。

もちろん「内野安打○」「キャッチャー○」「アベレージヒッター」は残っていたし、「選球眼」「広角打法」「フレーミング○」も残っていた。

やっぱり【パワプロ風育成システム+α】は壊れ技能(チート)なのかもしれない……

 

 

 今回の転生ではポジションはいつもの捕手ではなく、2番手投手と外野だった。

それに連動してか、ステータスの守備位置の欄が「捕」だけだったのが「投捕外」になっていた。

前から投手のステータス画面はあったのだが、今までまじまじと見たことはなかった。

記憶にあるパワプロのステータスと異なっていて、球速もアルファベット表記だったのが印象的だったな。

まぁパワプロみたいに球速表記だった場合、3歳でその球速出せるのかって話になるしな。

 

 

 特殊能力に関しては、1年目の地区予選中に「バント○」「かくらん」、甲子園で登板が決まったときに「勝ち運」と「重い球」、2年目の地区予選中に「流し打ち」「バント職人」、甲子園決勝で「守備職人」「ムード○」を取得した。

第2回の経験から高校野球ではステータスにそこまで振らなくていいと思ったので、特殊能力をいつもの倍取得した。

前回から繰り越したポイントも大量に余ってたのでな。

 

 

 そういえば、ステータスに知識のタブができていた。

中を確認したら知識『スポーツ医学:初級』を取得していた。

前回トレーニングやスポーツ医学の本を読んで、素人ながら実践したからだろうか?

こういう時テスター間で直接情報のやり取りができないのは不便だな。

まだ俺の知らない仕様が色々隠れてそうではある。

まぁできないことを嘆いても仕方ない

 

 

 今回も3歳からスタートだったが、幼馴染はいなかった。

その代わりなのか知らないが、結構裕福な家だった。

裕福な家ではあったが、「自分の人生は自分で決めろ」みたいな感じで、自由にさせてもらえたのはありがたかった。

理解のある親はありがたいと今世では痛感した。

それ以前に家にトレーニングやスポーツ医学の本が有ったこと自体驚いたが、俺がそれを理解してるとわかると、色々と買い揃えてくれた。

また、そういう本を読んでるが医者になる気がないのも伝わったのか、特に勉強しろと言ってこなかった。

 

 

 小学校時代はかなり書籍を読むことに集中していた。

転生前に見た知識、初級とあったなら中級や上級にもなるはずと思ったからだ。

子供がそんな本読むなとか、もっと自重しろと言われそうだが、暇なんだ。

ずーっと走ってるわけにもいかないしな……

小学生時代に直接出会った人に、主要人物っぽいなと感じる人はいなかったのも一因だと思う。

 

 

 中学になって野球部に入ったが、なぜか陸上部に貸し出され、陸上部の公式大会に参加させられた。

その場で主人公と思われる人物に出会えたから、それに関してはとやかくは言わない。

どうやら狭いグラウンドで練習しているらしく、いつも野球部に練習の邪魔をされていると言っていた。

俺が陸上部に貸し出されてるだけで本当は野球部だというとめちゃくちゃ嫌な顔をされた。

あの野球嫌いが野球始めるとはこの時点では思えなかったな……

ただ足に関しては一級品だった。

俺に勝ったからな……改めて走力Sだからと慢心してはいけないと思わされたよ。

 

 

 中学3年になっても陸上部に貸し出されてた。

ちょうどいい機会だと思って坂本に高校をどこにするのか聞いてみた。

――あー、坂本ってのはさっき言った俺に勝った人物のことだ。

「今度新しくできる星高校」と返された。

少人数しかいない高校野球の世界だろう、と思ったが前回のような例もある。

決めつけずにただ進路は星高にすることにした。

高校からスカウトも来てたんだけどな、どれも陸上部からだったんだ……

 

 

 高校に入ってまず思ったのが、「このグラウンドで野球やるのか?」だった。

新設高校だからってグラウンドが野球の内野分しかないとは思わんだろう。

体育とかどうするんだ、体育は。

今になって思えば、今まで認識していなかったが、これがご都合主義ってやつなのかもしれない。

そのあと野球部に入部届を出し、放課後、部活動に顔を出した。

坂本に驚かれ、さらに、入部するのを知っていたら、人の確保が楽だったのにと文句まで言われてしまった。

そこで出会ったメンバーはなかなかに個性的で、あーやっぱり星高での3年間が今回の舞台だと確信した。

 

 

 メンバーは一芸は持つものの無理やり集められてるからやる気もない。

グラウンドも内野だけで、打球をそらせば周囲のビルのガラスを割る。

当時の俺は「どうすんだこのチーム」と本気で頭を抱えた。

まずはネットを用意しないと練習にならない、「申し訳ないが親のすねをかじって寄付してもらおう」と監督に相談しに行ったら、信じられないものを見るような目で見られた。

解せぬ。

 

 

 当時の印象では、坂本、橘、音無の三人が主軸だった。

チーム全体としては、共通して「目立ちたい」を原動力に動いていた。

当時から不思議だったんだが……「甲子園出れば十分目立てるんだから、まじめにやればいいのに」は禁句だっただろうか?

思ってはいても口に出すことはなかったな。

 

 

 1年生しかいない高校に、選抜優勝高校から練習試合の申し込みが来て、しかもテレビ中継まで入る。

……今思い返しても、ご都合主義がひどい。

もっとも、作品としての星高を紹介するための導入だと考えれば納得できる。

 

 

 狭いグラウンドでやれる練習をやっていると、いつも坂本か橘が絡んできた。

いい子ちゃんだなんだと言われたが、これくらいの練習は普通だと思う。

過去2回の転生では捕手をやっていたが、今回は主に投手の練習をしていた。

これは投手が橘一人しかいないからというだけではない。

先日練習試合の際、橘は意図的に四球連発して、ピンチを作り出してからのフォークによるピンチ脱出ということを行っていた。

投球数が増える上に、フォーク連投による制球力の低下やスタミナの消費など、懸念事項があった。

インターバル走でスタミナをつけさせたり、ケガ対策に肩肘のインナーマッスルを鍛えさせたりしたいのだが、言ってもやらない。

なので俺が対抗馬になることで、競争心をあおることにした。

 

 

 地区予選が始まり初戦に勝利を収めてから、坂本がバントでの出塁と脚を使った盗塁からの得点では目立てないと言い出した。

派手さはないが十分にすごいことだと思うんだがなぁ……。

次の試合は先日練習試合をした池良学園だった。

この3試合ほど見て、音無は直球には強いが、変化球にはてんで弱かったし、坂本はホームラン狙いのひどいアッパースイングと大振りだった。

二人についてはバッティングセンターに連れて行った。

音無は変化球に慣れさせ、坂本にはアッパースイングと大振りをしなくてもホームランを打てることを実際に見せて、バッティングフォームを修正していった。

最終的に音無は変化球でも打率は低いものの打てるようになったし、坂本もホームランは難しいが外野にまで飛ばせるようになっていた。

 

 

 二人の改造……まぁ改造で合ってるか、してる間、案の定橘は、いやほかのチームメンバー全員がサボっていた。

目立ちたいという割には努力はしないんだな……

この頃になると監督も若干あきらめだしていたように感じる。

確かこのあたりの時期だと思うんだが、いい機会かと思って橘にフォーク以外の変化球も切り札として持たないかと話しかけた。

話していて思ったのは、なんだかんだでフォークにこだわり、信頼しているようだった。

それはそれとして、対戦校にフォークを投げる投手が出てきた時の橘の行動が幻視できたので、別の変化球の練習はさせた。

 

 

 前回のように3年かけて出場することになると思ったのだが、意外とすんなり甲子園で優勝できた。

これまでを思うに、原作はかなりギャグ寄りのようだが、それを現実に経験する側としては勘弁してほしいとしか言えないのだが……

特色を出そうと選手が濃かったり、審判が濃かったり、今でも思うがあの審判は訴訟ものじゃなかろうか?

訴えると言えば、地区予選の時に応援に来てくれた人に付き合って、橘、坂本、音無が徹夜して、試合で使い物にならなくなった試合もあったな。

まさかこんな理由で甲子園で初登板することになるとは思わなかったが……

いやそれよりも準決勝……審判脅すってなんだ……試合中に喧嘩しだすってなんだ……退場させろよ……つうか試合中に乱入してくるってなんだよ、こんなん没収試合だろ?

こら、橘、坂本、参加しようとすんな、対外試合禁止になんぞ……

あ、いやすまない、当時を思い出してもあの試合は突っ込みどころが多すぎたのでな。

 

 

 選抜より女子高とのソフトボール対決ってなんだよ……

しかもテレビ中継付きって……

橘、アンダースローできんのか?

指で挟めんからフォーク投げれんぞ?

その辺り解って挑戦受けたんだよな?

試合は7回までって知ってるか?

マウンドも野球より近い分、タイミング取りにくいぞ?

今更ではあるが、今回の転生はつらすぎる。

当時思ったツッコミが、ぽろぽろとあふれてくる……

見苦しくて大変申し訳ない。

 

 

 2年目は特に大きな問題もなく……甲子園に出場を決めた。

大きな問題と言えば、決勝の前夜に坂本が襲われて骨折した。

いや骨折して入院したはずなんだ……だが、次の日には普通に試合に来ていた。

わけがわからない。

いや、幻聴だと信じたかったんだが、あのとき「科学の進歩に犠牲はつきものデース!」と聞こえた。

そうだよな阿畑が出てきたんだ、あんたもいるよなダイジョーブ博士……まぁ直接は出会わなかったからよしとしておこう。

決勝では、坂本が全打席ランニングホームラン、橘が完全試合を達成した。

 

 

 そのあとは特に印象的なことは起こっていないから、ここで原作が終わったんだろう。

一応、高校卒業後はプロに進んだが、高校の時ほど記憶に残っていない。

プロでは何度か橘と対戦した記憶はあるのだが結果が出てこない。

 

 

 

 

 今回も時間はあるな。

なら前回同様、今から原作知識を取得してくる。

 

 

SYSTEM======

原作知識取得中。

記録を一旦停止。

 

 

……

 

 

……

 

 

  

 

 

 

 原作を読むと今回も俺が入る隙間がほぼなかった。

それと今回もほとんど原作沿いだった。

変わったと言えば2年目の甲子園の決勝戦くらいか?

ダイジョーブ博士が出てきてくれたから坂本の骨折は治ったが、原作では骨折したままだった。

橘は9回全打席センターフライで打ち取ることで借りを返して、さらに18回まで今度はフォークで完全試合を目指していた。

当時は、というか原作を読むまで知らなかったが、橘は完全試合を達成したら付き合ってほしいと女子高のキャプテンに言っていたらしい。

あの決勝戦での鬼気迫る雰囲気はそのせいだったのか……切り札のはずのフォークの改造変化球も投げていたしなぁ……

原作では最後の1球で力尽きていたが、俺の世界ではしっかり9回完全試合を達成していた。

 

 

 まぁこんなところかな。

俺が行ってきた世界は「ジャストミート」だった。

第1回の「タッチ」と連載時期がかぶっていたようだ。

そのせいでギャグ寄りだったのかもしれないが、俺にはギャグ成分多めの作品はちょっとつらいな。

時間も来たみたいだし、これで報告終了とする。

 

 

 じゃぁな。

 

SYSTEM=========

 

投影終了。

 

SYSTEM END=======

 

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