転生人 語《野球偏》   作:ぬえさん

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第4話 第4回転生活動報告

 甲子園大会地区予選前 西浦高校グラウンド

 

 狭いグラウンドでの投球練習中、ちょっと気になったことを口にしてみた。

西浦はいいチームだ。

だけど、部分部分ですれ違っている。

よそ者の余計な口出しかもしれないけど、それで多少マシになるならね。

 

 

「阿部君さ、無意識だと思うけどもう少し声のボリュームを落とそうか、大きな声はその気がなくても威圧になっちゃうからさ、特に三橋君と話す時には気を付けてあげて」

 

「三橋君にも、まずは相手に聞こえるようにしゃべろうか、人間ってさ、言ってることが聞こえないと自然と声が大きくなって聞き返しちゃうんだ、阿部君が怒ってるように見えるのは、それのせいもあると思うよ」

「それと昔は昔、今は今だ、君が君に自信が持てないのも、中学の時のこと悠から聞いてるし、わからないでもないけど、君を勝たせてあげたいと思ってる仲間たちのために、少しずつでもいいから胸を張るよう頑張ろうか」

 

「あとは……悠、阿部君、強豪高校の情報の収集能力と分析力を舐めないほうがいい、2,3試合分の情報が集まれば捕手のリードの癖なんかも見抜いてくる、1試合ごとに自分のリードを見直し、配球が固定化してないか確認しなよ、打者の得意不得意だけで配球を決めずにさ、あと何を思ってこのリードをしたのか、ちゃんと投手陣と認識のすり合わせをしておきなよ」

 

「三橋君、花井君、沖君、リードは捕手だけが考える物じゃないと覚えておいて、花井君や沖君にはまだ難しいかもしれないけど、リードを捕手だけに任せちゃだめだよ、打者の背中には、特に強豪校の打者の背中にはベンチに入れなかった多くのチームメイトの想いが乗ってるからさ」

 

 

……

 

 

 

SYSTEM=========

 

記録媒体起動

投影開始

 

 

……

 

 

 テスターNo.08986 第4回転生活動報告を始める。

 

 初見のものはいないと思うが、一応言っておく。

俺は原作知識無し、技能有り、テスターの同時介入無しの組だ。

今回もまだ原作知識を取得していない。

 

 

 ステータスについてはいつも通りの底上げされたステータスだったし、前回までに取得した特殊能力もそのまま保持していた。

今回に関しては先に言っておく、高校2年の時に肩をやって選手生命が終わった。

なので特殊能力の追加はしていない。

取ってもよかったんだが今持ってる特殊能力の上位の能力が取れそうだったので温存した。

知識のほうも経験値は溜まっているようだったが中級になるほどではなかったようで初級のままだった。

それ以外の新たな知識は取得していなかった。

 

 

 

 

 さて、転生したわけだが、今回は大家族ってやつだった、曾祖父母、祖父母、父母、兄2人に姉2人、俺、弟の12人家族だ。

長兄は中高とサッカーをしていたが野球のアマチュア審判の資格を取っていたし、次兄も弟も野球をしている野球大好きな家族だった。

多分【蟲の報せ】の効果だと思うが弟が生まれた時、なんとなく主要人物であると感じた。

主人公でなく主要人物か……前までは感じなかったんだが技能が成長でもしているのか?

 

 

 今回は小学校になって、すぐ野球チームに所属した。

俺の姿を見て、すぐ上の兄も始めてしまった。

いや……このときは兄に申し訳ないことをしたと今も後悔している。

俺が軽々こなしてるから自分もできると思ってしまったんだろう。

兄をフォローしつつ、トレーニングをこなしてるうちに2年経ち、弟ーー悠も入ってきた。

それからさらに2年、兄と一緒に出られる最後の大会で全国大会に出場できた。

 

 

 中学に上がって、兄に軟式野球部に誘われたが、断ってボーイズのチームに所属した。

さすがに4回目ともなると若干飽きが来ているなと自分でも思うが、底上げされたステータスが猛威を振るい、安打製造機と呼ばれて1年目から注目されていたな。

この頃から背の低さが気になってチームのコーチに相談したり、栄養学の本を読んだりして、親に無理言って食事や生活習慣にも気を使ってもらった。

それが効いたのか兄弟揃って中学時代に約25センチほど伸びていた。

身長が伸びるとともに筋力が付いたのかステータス上は変化がないのに長打が打てるようになった。

そのおかげで3年連続で全国優勝を経験させてもらった。

 

 

 高校に関しては中学1年の頃からスカウトが来ていたので、その中でピンと来た美丞大狭山に進学することにした。

いやぁなんか美丞大狭山に進学するって言ったら周り大騒ぎでしたねぇ、裏金だ、賄賂だなどと、そんなもんもらってないっての。

前の監督さんに「辞めて苦労するであろう教え子を助けてやってくれんか」とか言われたらねぇ。

あと「下剋上とか好きじゃろ」とも言われました。

そんなことおくびにも出したことないはずなんだがなぁ……

 

 

 美丞大狭山に特待生として入学して、即正捕手にされた。

どうも正捕手の先輩が俺の入学前から監督と交渉してくれていたらしい。

先輩にいいのか聞いたらそれが甲子園への近道だろうと言われてしまった……

そう言われたなら頑張らねば……

 

 

 監督はいい人なんだがなぁ……コーチがなぁ……

言ってることはわかるんだけどもね、綺麗ごとばかりじゃダメなことも、でも、ちょっとダーティすぎやしませんか?

いや、まぁ、俺に直接言ってくるわけじゃなかったけども……

多分このあたりからなんだろうな。

最初に言ったように俺は高校2年の時に肩を壊して、選手生命を絶たれてる。

技能に【黄金の心体】があるから怪我自体するはずないんだがな……

だから、今思えばというか、結果からして、怪我の判定でファンブルを起こして、それが積み重なってたんだろうなって……

 

 

 1年目の甲子園大会地区予選は決勝まで勝ち進んだが、絶対王者のARC学園の壁は厚かった。

久しぶりに野球は一人じゃ勝てないってやつを味わわされた。

回ってくればなぁサヨナラ打を打つ自信はあったんだがなぁ……。

俺を正捕手に推薦してくれた先輩には何と言って詫びればよかったのやら。

 

 

 秋季は関東大会で準優勝して、春の選抜出場を決めた。

優勝して神宮球場に行きたかったんだがなぁ……

もう一歩何かが足りないらしい。

そういえば、なにげに甲子園の土を第1回以外で踏んでいるんだが、選抜で来たのは初めてだ。

夏にも来なきゃいけないな……とこの時は思っていたんだがな……

 

 

 あれは2年目の6月、甲子園大会地区予選の抽選日だ。

実戦形式の練習で1塁走者の盗塁を阻止しようと2塁へ全力で投げた時だ。

ブチッと大きな音がして、右肩に激痛が走った。

その後は激痛に耐えながら、コーチに連れられ、整形外科専門の病院に向かった。

今思い出してもえぐいくらい痛くてな、なんでやとか、ファンブルしすぎやろとか、ダイジョーブ出てこいとか、そう色々考えて意識を痛みから逸らしていたな。

病院について麻酔が打たれ、痛みが引いて余裕が出てくると、青い顔した監督とコーチが実家にかけても誰も出ないと慌てていたのを覚えている。

実家の方でも何かあったのかなと気にしつつも、診断の結果を聞くともうボールを投げることはできませんと先生に断言された。

 

 

 

 

 

 久しぶりに頭が真っ白になった。

あれだな、第1回の時の帰還したとき、あの時と同じで、受け答えはしているが、何を言ってるのか何を言われてるのか、まったく認識できていなかった。

そんな状態で気づいたら寮で布団に寝っ転がっていた。

実家の方で起こった事も気になるが、何もする気になれなかった。

ただぼーっとしてると、兄や悠、前の監督さんや先輩たちの顔が流れていった。

 

 

 その後夜遅くに監督から実家と連絡がついたと、あっちはあっちで曾祖父が倒れ大騒ぎだったらしい。

そんな時に俺は、これかよと自分に悪態をついていた。

その夏は最悪だったな。

コーチはチームの応援に来るよう命令するし、他校のやつらはあーだこーだ言ってくるし、一緒に練習して散々教えた捕手陣はボロボロだし……

7月の終わりの頃だったと思う、監督に転校したい旨を切りだしたのは、まだ代打とかで関われたかもしれない。

だが美丞大狭山の野球から距離を取りたいと思ってしまった……

 

 

 

 

 

 4月になって、手続きのあれやこれやが終わり、悠と同じ西浦に通うことになった。

ただ悠には悪いが野球に関わってる暇はない。

大学でスポーツ医学や栄養学など、そっちの専門の大学に入る準備をしないといけない。

教室から見える彼らを見て、原作が始まったんだとそう思った。

今回の転生は敵にも味方になれない、中途半端な転生だったなと……

さすがに3連続で原作沿いだと堪えたが、まぁ仕方ないと諦めて、『スポーツ医学:初級』のレベルを上げるべく、その手の書籍を図書館で読み漁った。

何か知らんが、この高校この手の書籍の充実っぷりが半端ない。

誰か専攻してる先生が寄付でもしたのだろうか?

 

 

 5月になって、悠に捕手について教えてほしいと飯時に言われた。

ここでか、と思ったのが正直なところだ。

このまま関わらずに終わると思っていたが、志望校の判定でA出ちゃったからなぁ……関われと誰かがささやいてるのかもしれないな。

とりあえず悠を通して監督さんと話を通し、投球練習の受け手とノック時のノッカーまたはランナーとして協力することになった。

そういえば西浦での練習は今まで感じたことないような意識がシンクロするような感覚に陥ったな。

最初は悠とだけだったのだが、次第に阿部君、三橋君、花井君、沖君とどんどん数が増えていった。

 

 

 甲子園大会地区予選の緒戦が昨年甲子園出場の桐青だった。

確かに三橋君をうまくリードすれば失点を抑えることは可能だとは思っていたが、点が取れずに普通に負けイベントだと思ってたんだがなぁ。

ただ、このままじゃ強豪に当たったときに失点を重ねそうだったので、バッテリー陣集めて少々お話させてもらった。

まぁ、やっぱ、なついてくる弟はかわいいしね、頑張ってるところ見ると助けてやりたいし……

それに次の大きな壁は美丞大狭山、わが母校だ。

 

 

 桐青に勝った勢いで快進撃を続けた西浦だったが、それを阻んだのはやはり美丞大狭山だった。

一進一退の白熱した試合展開だったが、不運にも捕手の阿部君が事故で負傷退場となってしまった。

俺の【ばくち打ち】の所為ではないと思いたいが……

試合は、悠に交代した際に取られた1点が返せず負けてしまった。

その後西浦は秋季県大会で千朶に、4市大会では2回戦で絶対王者のARCに、と強豪相手に惜敗を続けた。

 

 

 このあたりからいつものように記憶がおぼろげになっている。

まぁ、受験もあったしな、大学に入ったら入ったで慣れるのに四苦八苦してたしな。

原作とのかかわりが薄くなったからだろう。

俺的には顧問をされていた志賀先生と練習の合間にした栄養学やスポーツ科学の話がとてもためになった。

 

 

 今回も時間はあるな。

なら前回同様、今から原作知識を取得してくる。

 

 

SYSTEM======

原作知識取得中。

記録を一旦停止。

 

 

……

 

 

……

 

 

 

 

 

 

 原作を読むと今回、俺が関わったのは原作の最初に1年だけだった。

そういう意味では原作沿いだな。

だが、実際に見たあいつらの実力、それに試合結果、微妙に俺の記憶とは違っているな……

 

 

 

 

 いや、まさか俺の持ってる特殊能力が継承されてるとか……ないよな?

これで俺の持つ特殊能力が本当に継承されているなら【パワプロ風育成システム+α】は壊れとかいうレベルじゃなくなるんだが……

でも、俺の意思とか関係なく動いてるんだよなぁ……

とりあえず次の転生の前に鑑定系の技能取るか……

 

 

 まぁこんなところかな、俺が行ってきた世界は「おおきく振りかぶって」だった。

時間も来たみたいだし、これで報告終了とする。

 

 

 じゃぁな。

 

SYSTEM=========

 

投影終了。

 

SYSTEM END=======

 

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