転生人 語《野球偏》   作:ぬえさん

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第5話 第5回転生活動報告(自転車)

 第4回の転生活動報告の記録を終えると、ピッという音とともにAdministratorと書かれたウインドウが開く。

 

「よぉNo.08986、ひさしぶりー

 ちょっと野球に飽きてきてんだろ?

 あーあー、いいいい、わかってるわかってる。

 とりあえず今度の転生、野球マンガの制限解除してやっからリフレッシュしてきなー

 ん?このステータスでファンタジーな世界に飛ばされても困る?

 あーそうね、ならスポーツマンガくらいの拡張でいいか?

 よっしゃ、じゃあ頑張ってきな」

 

 アドミニストレータが言うだけ言うと、ピッという音をたてウインドウは消滅した。

 

ーーーーーー

 

SYSTEM==========

転生プログラムの実行を確認。

転生プログラム実行。

ーーーーーー

転生世界の選別を開始。

【パワプロ風育成システム+α】により転生世界の範囲限定。

ERROR

上位権限者により転生世界の範囲拡大

 

転生世界確定。

原作知識封印。

 

 

転生開始。

SYSTEM END==========

 

ーーーーーー

 

「おっちゃん、あの坊主と話したいねん、橋渡ししてーや

 さすがにあんな小2の(ちっさい)子に来年高校のでかいのがいきなり話しかけるんって、めっちゃ不審者やん」

 

「あの子の坂登りに魅せられてん、脳を焼かれたちゅうーの?

 で、俺も自転車始めようと思うねんけど、道で会ったらよろしゅうなーってあいさつしたいねん」

 

ーーーーーー

 

「よぉ、(テル)、ひさしぶりやの、今日は別れのあいさつに来てん

 ちゅーてもたまに帰ってくるけどな、横浜に自転車のすごい人が監督してる学校があって、そこに行くねん。

 早く坂登る方法聞いてきたるさかい、楽しみにしときや」

 

ーーーーーー

 

「あー、輝のお姉(さゆり)さんやん、ひさしぶりー、どしたんこんなとこ(横浜)で?

 あー輝の進学のための部屋探しか? でも大丈夫か? 亀校って、かしこないと受からんで、輝勉強してるん」

 

「うん? 知らんかったん? 横浜にある亀校って高校、俺の母校でもあるんやけど、そこ有名な自転車選手やった人が監督してくれてるねん

 一番坂の次の坂探してるんやったら、最強の環境やと思うけど……」

 

ーーーーーー

 

「よぉ、輝、ひさしぶりやの、日の本大学の合宿にようこそってな

 いま俺、この大学の監督ん下で勉強させてもらっててな、この人がまたすごいねん、練習で溜まった疲れをマッサージで魔法のようにスパーッとふっ飛ばしてくれはんねん

 監督に教えてもろたら、もっと専門的に学ぶならヨーロッパ行け言われてな、去年までヨーロッパ行っててんで、さすがに本場には、信じられへん坂がいっぱいあったわ、輝、日本の山登り切ったら、次はヨーロッパ! 一緒に行こな」

 

ーーーーーー

 

 日の本大合宿最終日 150km個人ロードレースゴール前300m

 

 強烈な風雨の中繰り広げられた、ゴールスプリントのためのポジション争い。

それは操作ミスなどではなく、雨に濡れた路面がタイヤの制御を奪ったのが原因だった。

由多がスリップし、それに巻き込まれた輝は盛大に宙に舞った……

時間がゆっくりと流れる、自転車とともに何回転もする輝を見ているのに、頭の中では俺の所為じゃないよなと考える。

そんな自分に嫌になる。

 

 血を流す輝の右脚を見る。

傷だらけの輝の体でそこの傷が最もひどい。

「ダイジョーブ、さっさと出てこい!」と思う自分と、今出てきたら不自然だろと冷静に否定する自分がいる。

決してハンドルを離さず、自転車ごと救急車に乗せられる輝を見て、今後のことを考える。

 

ーーーーーー

 

「さゆりさん、すまん、輝が事故った。

 それもかなりひどいケガや、多分普通のお医者さんなら、二度と自転車乗られへんとか言うと思う。

 でも、絶対、輝は自転車乗りだすやろうし、俺が絶対、乗れるようにしたる。

 それと輝のことやし、坂の町に戻って、一から鍛えなおすこと考えよると思う。

 せやから、ご両親への連絡と説得を頼むわ」

 

ーーーーーー

 

「よぉ、輝、元気か、って、そんなわけないな。

 とりあえず、お前んことやさかい無茶するやろから、今後のこと話すで。

 まず落車した自転車、素人どころかおっちゃんでも直せん。

 おっちゃんに連絡して、新しい自転車用意してもらってるから、それまでがまんしーや。

 で次、ギプス取ったら、足細うなってるから、ビビったらあかんで、足の筋肉落ちまくってるからな。

 で、お医者さんの許可出たら、坂の町戻るんやろ? 一から鍛えなおしやな、疲労回復は任しとき、原監督(ボス)直伝のマッサージ見せたるわ」

 

ーーーーーー

 

「輝のおとーさん、おかーさん、お久しぶりです。

 この度はうちの大学が主催のレースで、息子さんに大けが負わせてしもて、誠に申し訳ありません。

 自分、今は大学出て、自転車選手のボディケアや落車した選手のリハビリとかを専門にやらせてもらってます。

 輝君のリハビリも是非手伝わせてもらおうと思って、こうして時間をいただきました」

 

「……おとーさん、おかーさんは今、輝がこんな目に遭って、自転車なんてやめてほしいと思ってはると思います。

 けど、輝君は自転車がないと生きていかれへん、そういう人種なんですわ。

 傍から見て突飛な行動で、理解できひんと思いますが、輝君はただ、昨日できたことは今日もっとよくできる、今日できたことは明日もっとよくできる、そう思て自転車乗ってるだけなんです。

 輝君は自転車に関しては昔から、向上心の塊なんです。

 なので、もう明日からでも、自転車乗りだすと思います。

 せめて追加で怪我せんように専門知識のある自分が横でサポートさせてもらいます。

 トレーニングの疲労回復のマッサージを自分が責任もってやらせてもらおうと思います。

 だから輝君を信じてやってください」

 

ーーーーーー

 

「よぉ、輝、どしたん、そんな驚いて、この格好(これ)か、今日は輝と勝負しようと思ってな、復帰してん。

一回引退した俺に負けるようじゃ、あかんで、ヨーロッパ行きたいなら俺くらいには勝ってもらわんと、ほな、先にゴール入ったほうの勝ちな」

 

 

……

 

 

 

SYSTEM=========

 

記録媒体起動

投影開始

 

 

……

 

 

 テスターNo.08986 第5回転生活動報告を始める。

 

 初見のものはいないと思うが、一応言っておく。

俺は原作知識無し、技能有り、テスターの同時介入無しの組だ。

今回もまだ原作知識を取得していない。

 

 

 今回はアドミニストレータの計らいで野球マンガ以外の世界に行ってきた。

一応ファンタジーな世界に行っても困るのでスポーツマンガの世界にしてもらった。

結果、自転車競技の世界に行ってきた。

 

 

 ステータスについてはいつも通り、特殊能力もそのまま保持していた。

自転車の世界だったので転生中は特殊能力を取得していないが、転生前にポイントが貯まっていたので、「アベレージヒッター」を「安打製造機」に昇格させた。

残ったポイントでもう一度「アベレージヒッター」が取れそうだったので、「アベレージヒッター」も再取得してみた。

知識のほうも経験値が溜まったようで『スポーツ医学:中級』になっていた。

ほかに『栄養学:初級』『料理:初級』『スポーツ科学:初級』『メンタルケア:初級』など取得していた。

今までの下積みがあったから花開いたとみるべきか、おおきく振りかぶっての活動がそれだけ濃厚だったのか、悩ましいところだ。

あと【パワプロ風育成システム+α】点滅していたので確認すると、内包技能に【スカウト影山の査定術】と【ダイジョーブ博士の肉体改造術】が表示されていた。

まだグレーアウトしてたのでまだ条件を満たしていないようではあったが……

 

 

 今回の家族はまぁ普通の家族だったし、幼馴染もいなかったな。

生まれた町は坂の町と呼ばれていて、いたるところに坂があった。

マラソンするにはいいんだが……野球マンガじゃないのはわかっているのでトレーニングするのも、という気持ちが強かった。

目的意識を持って行動していなかったからか、記憶もおぼろげだし、正直中学校に上がっても灰色の毎日だった。

 

 

 そんな毎日で転生前に見た【スカウト影山の査定術】と【ダイジョーブ博士の肉体改造術】について考えていた。

4回目ともなるとそう頻繁にステータスを見ることもなくなっていたが、転生中には表示されてなかったと思う。

【スカウト影山の査定術】は、他人のステータスが見たいと思うこと、または鑑定技能を欲しいと思うことが表示条件だったのだろう。

【ダイジョーブ博士の肉体改造術】は、解放に必要な知識を一定以上取得したことが表示条件だったのだろうか?

まぁ阿畑の時は直接阿畑から学んだことが解放の条件だった。

なら、影山にスカウトの査定方法を、ダイジョーブに医術を学ぶことが解放の条件になるのだろう。

今回の転生を野球マンガ以外にしたのはそのための措置だったのか?

こんな感じで中学3年までは、明言はしていなかったが医学関係に進むためにまじめに勉強をしていたな。

 

 

 だが、そんな日々も中学3年生のあの日までだった。

今までも人に魅せられるとこはあったが、自分より小さな子に魅せられたのは初めてだった。

俺の生まれた町は本当に坂だらけで、だれもこの町で自転車に乗ろうとはしなかった。

それなのにその子(テル)は坂の町で一番長い坂を登っていた。

この子(テル)がどこまで行くのか見てみたい、そう思った瞬間に灰色の世界が色づいた。

そう思ったあとは早かった、次の日には学校の許可を取り、自転車で登校するようになった、日頃の行いのたまものである。

坂で輝と出会えば、大人げないが競争となった。

進学も、地元の自転車をやっている高校ではなく、神奈川の元有名選手が監督をしているという高校に決めた。

 

 

 高校生活はまぁ充実していた、高校1年2年の時は俺が突出しすぎていて、チームを組んでも生かすことはできなかったが、高3の時に1個下の柘植たちとIH(インターハイ)に出場することができた。

高校の時は部の活動よりも参加させてもらった日の本大の夏合宿のほうが得るものが多かったと思う、進むべき道も見えたしな。

その合宿で日の本大の監督のスポーツマッサージを受けたんだが、その疲労回復力は半端なかった。

この技術を習得して、輝に使う、今世の目標をそれに定め、日の本大進学に照準を合わせた。

 

 

 大学に入って1年目は、ほぼ選手として活動し、何レースかに出場したが、さすがに企業勢には勝てず、総合優勝になることはなかった。

2年目からは柘植たちが入ってきたのでレース関係は柘植たちに任せ、監督についてスポーツマッサージのやり方などを学ばせてもらった。

その後原監督(ボス)の薦めで3年4年時はフランスに留学して、本場のスポーツ生理学を学んだ。

フランスでは大学の学業だけでなく、バイトで地元のチームのサポーターとして仕事をもらい、スポーツマッサージの実践経験を重ねた。

 

 

 4年の秋に帰国して、大学を卒業、そのまま原監督(ボス)の下で助手をさせてもらうことになった。

この時から夏の合宿が待ち遠しかった。

輝が高校に入学し、たぶん原作が始まった……と思う。

つまり夏合宿はパワーアップイベントってことだろう。

実際に合宿で再開した輝は、送った練習方法を試したのだろう、下半身だけでなく上半身も磨き上げられていた。

久しぶりに輝と競争したくて最終日のレースに出ようと思っていたのだが、裏方の仕事を頼まれてしまったので、渋々ゴールで待つことになった。

 

 

 

 

 

 あーすまない。

合宿最後のレース、ゴール前300mくらいのところで輝が盛大に事故ってな……

その事故で輝は右膝の内側の靭帯を損傷した。

断裂まで行ってなくてよかったというべきなんだろうか、膝と肩の違いはあれど靭帯が断裂してしまうとな……

俺は監督と話し、助手を辞め、輝のサポートに回ることを決意した。

さゆりさんに連絡し状況を伝え、医者から退院の権利をもぎ取り、坂の町に戻って、輝の両親の説得。

坂の町で一から鍛えなおし、何か月かかっても、元の身体に戻して見せる、と悲壮な決意をしていたのだが……

2週間くらいか、ほんのちょっとのブラインドが輝を俺の視界から隠した時、「科学の進歩に犠牲はつきものデース!」そう聞こえた……

うれしいことだ、喜ぶべきことだ、だが当時の俺の頭にあるのは「これなんて説明するねん……」だけだった……

 

 

 この時点で輝は怪我前より強くなっていた。

「もう坂の町で無駄に時間を過ごす必要はない、レースに出ることでしか得られない経験がある」

そう輝を諭し、亀校に戻らせた。

一緒に戻る前におっちゃんに俺用の自転車の用意をお願いして、俺も報告に日の本大学に戻った。

原監督(ボス)の追究を逃れるのに大変苦労した……

 

 

 ツール・ド・おきなわ、4年前に一度参加したこのレース、今年のこのレースこそが原作における輝の日本で参加する最後のレースだとそう感じとり、俺は個人参加でレースに登録した。

俺が悪いんだが、ヨーロッパから送った絵葉書が輝の心を離さなかったみたいでな、リハビリ中にしつこいくらい聞かれて、思わず「日本で一番になれば連れて行ってやる」と言ってしまったんだ……

このレース、輝は本気で総合優勝を取りに来た。

この時すでに、ヨーロッパに行けば俺は輝の完全なサポーターになると決意していた。

だからこそ、予感に従っておっちゃんに自転車を用意してもらってよかったと思う、正式なレースで輝と戦えるのはこれが最初で最後だ……

 

 

 レースに関しては、まぁ負けた。

あの小さかった輝がなぁという気持ちと、ダイジョーブ博士の人体改造は反則だろという気持ちがあった。

基本的に俺の走り方は、TOPについて行って最後に抜く、それだけだ。

塩屋大橋でハリスが逃げた時も皆が躊躇する中、輝と一緒について行った。

ハリスの逃げが坂巻(皇帝)の逆鱗に触れ、追いついてきた皇帝がそのままのペースを維持して先頭に躍り出た時も、輝と一緒について行った。

国頭峠()に入って、輝が暴れだした時もついて行った。

輝が怪我する前後から聞こえてきた噂のハリスも、皇帝も強化が極まった輝の敵ではなかった。

1回目の山岳賞の時、出し抜けたと思ったんだがなぁ……

2回目の国頭峠はひどかった……いや知ってるよ、坂登るたびに最適化されるのは、でも頂上前に息切れしてたじゃん、なんで息吹き返してるのさ……

ゴール前のスプリント勝負、はっきり言ってその時にはペダルを踏みこむ力なんか残っちゃいなかった。

3位以下に大差をつけたワンツーフィニッシュ、いや、たしかに復活のサポートしたけどさぁ……ないわー。

 

 

 その後が大変だった……輝に急かされて、ヨーロッパの知り合いに連絡を入れ、俺がサポートに入ることを条件に輝を2部の若干弱小寄りのチームに入れてもらった。

輝は相変わらずで、毎日坂を登りに行っていた、その姿にチームメイトたちが徐々に感化されていき、俺の地獄が始まった……

一人当たり40分のスポーツマッサージによる疲労回復、一日何回やらされたのだろうか……

その甲斐あってか、弱小寄りだったチームが優秀な成績を残し、渡欧1年目で輝のチームはツール・ド・フランスに自動招待されたのだった。

ツール・ド・フランスでの輝の走りは圧巻だった。

日本人初の山岳王、いやマシントラブルさえなければ総合優勝も狙えてたのではないだろうか……

 

 

 ツール・ド・フランスの後、ラート・アム・リングと呼ばれるドイツのレースに招待された。

緑の地獄(ニュルブルクリンク)の名前の通り、輝を地獄に突き落とした。

原因は、馬鹿な観客がコースに出てきて選手に接触したことだった。

それに巻き込まれ、輝は今度は左膝の内側の靭帯を損傷した。

病院に運び込まれる輝、なぜか一緒に手術室に案内される俺、メスを握るダイジョーブ博士、なぜか懇切丁寧に説明されながら手術を覚えさせられる俺。

再び起こる奇跡の復活劇。

ないわー

 

 

 2年目のツール・ド・フランスは前年度山岳王の復活を聞きつけた主催者による主催者推薦(ワイルドカード)による参加だった。

(化け物)の練習に付き合わされたチームメイトたち、それの疲労回復をさせられる俺、今までと比較しても疲労回復力が段違いに上がっていた。

そんな環境だったせいでチーム全体の力が強化されていた。

圧倒的パフォーマンスにより輝は日本人初のツール・ド・フランス総合優勝を果たした。

その後数年間、輝はロードレース界の絶対王者として君臨し続けた。

 

 

 まぁ今回の転生はこんな感じだった。

今回は時間が押してるようだが、原作知識を取得してくる。

 

 

SYSTEM======

原作知識取得中。

記録を一旦停止。

 

 

……

 

 

……

 

 

 

 

 

 原作を読むと今回も、俺が関わってはいたが、原作通りだな。

ツールドおきなわでの輝の活躍を比較するにダイジョーブ博士の肉体改造術でだいぶ強化が入ってるぽいが、その辺りは坂本と同じだな。

そうだ、原作はツールド沖縄で終わったんだ。

ダイジョーブ博士2回目なんて夢だったに違いない

あんなひどいヨーロッパ編なんて存在しなかったんだ。

……誰だよ、あんな化け物生み出したのは……

 

 

 あ、すまん、ちょっと待ってくれ……

あー、【ダイジョーブ博士の肉体改造術】が解放されてるわ……

 

 

 まぁこんなところかな、俺が行ってきた世界は「シャカリキ!」だった。

時間も来たみたいだし、これで報告終了とする。

 

 

 じゃぁな。

 

SYSTEM=========

 

投影終了。

 

SYSTEM END=======

 

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