監督生はうちはの長   作:zatumozi

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冥府の番人
第19話 S.T.Y.X


総合文化祭は、ロイヤルソードアカデミーの優勝で幕を閉じた。そして、闇へ落ちる万華鏡写輪眼はまた深くなっていく。

 

視力を失いゆく恐怖すら戦意の糧とし、瞳の闇を濃くしていくマダラ。だが、その状況は誰にも周知されず時は進んでいく。

 

相棒であるグリムも行方をくらましていると、思った矢先。凶暴な姿で学園内で、オルトたちに発見された。グリムは普段、食い意地がはった猫にしか見えない。

 

だが、その実態は魔獣に変わりない。黒い石を貪り、理性を失って暴れる姿は、どれほど愛嬌を振りまこうとも本質は人を害する怪異であると、学園長から知らされた。

 

今日はオンボロ寮でVDCメンバーが集まった。オーバーブロットの失態。VDCの優勝を逃したこと。それぞれの思いを伝えていく。

 

「アタシのせいで逃した優勝賞金500万マドルを、アタシが払わせてもらう」

 

VDCメンバー募集のうたい文句で、メンバーを集めた。今回のお詫びをヴィルが支払う形にメンバーは、もらいたくないというが、受け取らないとヴィルの気持ちが受け止められず、受け取ることになった。

 

「俺は受け取る……。で!俺は受け取ったギャラを、全部オンボロ寮に寄付するぜ!」

 

その気持に少し前のマダラなら、カリムの善意を素直に受け止めていたが、しかし、今のマダラにはただ、無感情に学園生活を何も考えていない。ただ戦火の匂いと、迫り来る死線だけが彼の枯れかけた魂を昂らせる。

 

(なんだあの気配は……)

 

各々がオンボロ寮の修繕に期待を膨らます中、マダラは窓を見つめる。ただならぬ気配を迫っている。

 

「どうしたんだ?マダラ?」

 

エースが窓を見つめるマダラに対して、行動に聞いた瞬間。大きな地響きが鳴った。

 

「じ、地震!?」

「……いいや違う!みんな、窓の外を見て!」

「なんだあれ!?スケボーみたいな板に乗った奴らが、いっぱい空を飛んでる!」

 

カリムが混乱する。不気味な装甲を纏った謎の集団が、オンボロ寮へ急降下してくる。

 

「こちらへ向かってくる。数は1、2、……みんな伏せて!」

 

ルークが注意を促したと同時にオンボロ寮の天井が落ちる。埃や瓦礫が落ち視界が妨げられる。

 

「カリム、下がれ。見たこともない装備、……一体何者だ!?」

「こちらヘプタ班。被検体DとEとIを目視で捕捉した。捕縛行動を開始する」

 

謎の集団に従者であるジャミルは、カリムの前に出て主人を守る。緊急事態のできごとに寮長のヴィルは冷静に現場を対処する。

 

「緊急対処事態と認定!ポムフィオーレ寮長の権限において、侵入者への攻撃魔法の使用を許可する!」

 

緊張が一気に跳ね上がる室内。だが、マダラひとりだけは口元を歪め、静かに懐から未知のあるものを取り出した。それは、イデアに修繕を依頼した『軍配』の改良版だ。

 

(さて、やっと動ける。まずはこの武器の力をためそう)

 

『操縦者認証。アームズの安全装置のロックを解除。起動します』

 

イデアが作った魔導武器の電子アナウンスに沿って、マダラを認証しロックが解除される。コンパクトだった武器が、団扇の形状へ変形する。かつて戦場を支配したあの一族の象徴。巨大な団扇の姿を取り戻した魔導兵器が、心地よい重みで手になじむ。

 

「さて、そのからくりはオレを楽しませるのか」

 

窓枠を打ち破り、電撃や高出力のレーザー魔法を凄まじいスピードで放ってくる謎集団。あまりの速さに他の生徒たちが回避に追われる中、マダラにとってはその攻撃速度も、閃光のような電撃すらも、大したことない感じだった。

 

万華鏡写輪眼の減退した視界であっても、相手の動線と魔力の収束速度は手に取るように読める。

 

「やはり大した速度ではないか」

 

マダラは一歩も引かず、放たれた高圧電撃を丸ごと掠め取り、衝撃波とともに跳ね返してみせた。

 

そして、マダラは一瞬で距離を詰める。空中に回避しようとした一体に対し、手にした団扇を豪快に振り下ろした。装甲をすり潰す凄まじい物理的質量と魔導の力衝撃が同時に弾け飛び、一撃で木っ端微塵に粉砕されたのだった。

 

残りの二体を片付けようとした瞬間。ヴィルとジャミル倒れた二人を背に、マダラは一瞬で間合いを詰めて、叩きつけようと振りかざす。

 

「ま、まってマダラ氏!僕の作った武器で、自分の組織壊すって!」

 

叩き落とされる直前、機械からイデアの声が響く。意外な人物にマダラは攻撃を止める。

 

「なんだ」

「あの、本当にお願いします。大人しく同行してください」

 

イデアに懇願されるが、この崩れた場所の戦闘と学園内では、自由が利かずこれ以上戦闘を続けても、自分の戦いへの欲が満たされないことを察する。

 

イデアが絡んでいるとなれば、連れて行かれた先にはより強力な仕掛けや、存分に戦える場があるはずだという思惑も働いた。

 

マダラは武器を収めると、不機嫌そうに鼻を鳴らし、おとなしく襲撃者たちの誘う拘束艇へと足を踏み入れたのだった。その時背後で声が聞こえるが、マダラは迷わず足を進んだ。

 

 

〇〇〇〇

 

 

連行された飛行艇の中には、気絶している。リドル。そして、レオナとアズールがいた。無機質な拘束具の音とともに機内へ押し込められた面々を見渡し、最初に口を開いたのはレオナだった。

 

「なんだよ、マダラテメェもいたのか」

「どういう状況だ」

「俺が知るか、なんで魔法士じゃないテメェがいるんだ」

「後ほど、首謀者に聞けばよかろう」

 

景色の見えない空間にマダラは眼を閉じた。移動して約数時間後、機体は停止位場所から、光が入り込む。マダラは思わず目を細めた。 開かれたハッチの向こうには、海に浮かぶ巨大で無機質な黒鉄の要塞がそびえ立っていた。

 

「あー、皆さん。暗くて陰気臭い、嘆きの島……『S.T.Y.X.』本部へようこそ」

 

マダラ意外は目の前に同じ学園の生徒の姿に驚く。

 

「ど、ども……『S.T.Y.X.』所長代理、イデア・シュラウドです。フヒッ……」

 

自己紹介をするイデアに驚く出来事が、ここ数時間起きた影響か、もう驚くことはなかった。そして、生徒達が今回の襲撃に不安の声が漏れる。自分たちが犯罪者のように連行されたことへの不満と困惑が重い空気となって漂う。

 

「あー待って。ちょいタイムタイム。えー、ナイトレイブンカレッジからお越しのみなさん……なにか忘れてるんじゃないかなぁ? 」

 

普段の装いが全く異なるが、この「S.T.Y.X」のボス代理としての威勢を醸し出している。イデアは、嘲るような笑みを浮かべた。

 

「君らが今いる場所はどこ?そんで僕は誰だっけ?……僕がボスだ」

 

そのやりとりにいよいよマダラは、待たせすぎて思わずチャクラを練る。無駄な茶番と時間稼ぎに苛立ちを覚え、青いチャクラが不気味に立ち昇りかけたその瞬間、イデアはちらりとマダラを見た。

 

「マダラ氏、その万華鏡写輪眼収めて、ブロットに反応しているから」

 

異世界出身者であるマダラに魔法を使った際に発生する『ブロット』と言う単語に一同がマダラに視線を向ける。

 

「ブロットですって!?」

「正確に言うと、似たような性質かな」

「オーバーブロットを起こした問題児以外にマダラ氏を捕縛した理由は、その眼が原因」

 

本来であればこの場に連行されるのは、オーバーブロットを体験した者達だ。だが、オルトを経由してマダラを観察すると、ブロットに似た物質が検出されたと報告があった。

 

「正直僕も驚いている。けど、野放しにはできないって上の判断ね」

 

オルトからはVDCが終わってから、その物質の検出が確認している。オーバーブロット経験者の捕縛ついでだ。そして、イデアはマダラの瞳を指摘する。

 

「それに、もうほとんど眼見えてないでしょ」

 

イデアの指摘に、その場にいた寮長たちの息が止まる。マダラが抱える眼の異変。深刻な光の喪失が、他者の口から明確に突きつけられたからだ。

 

「原因を探るのはいいじゃないかな?」

 

マダラにとっては、捕縛について、どうでもよかった。平和で退屈な学園生活という名の箱庭から抜け出し、再び死線と牙を剥き出しにできる場所へ来られたことこそが重要だったのだ。

 

「どうでも良い。お前に同行したした理由は今まで、ぬるま湯につかった空間を出るにすぎん」

「こわ、これがバトルジャンキーってやつ?まぁ検査で色々するからそこで、ご了承くだされ」

 

特段暴れる気は無い。だが、この学園にさえ出ればなんでもよかったので、大人しくイデアに従った。

 

だが、施設に入る前に外部の菌を入れさせないため。全自動入浴マシンに身体を洗われた。機械から吹き出す強風と洗浄液に全身を揉み洗いにされながらも、眉一つ動かさずに無の境地で耐え抜いた。着替えを終えて合流した全員が各々感想を述べる。

 

「洗車機に入れられた車の気分がわかった」

「乾燥機にかけられるシーツの気持ちもね…」

「口どころか耳の中まで洗われたぞ……。まだ体中の毛が逆立ってるぜ」

「僕は何事も効率重視なタイプですが……。将来どれだけ忙しくなっても、全自動入浴マシンだけは一生導入しないと今決めました」

「えー?研究員のみんなには「入浴がすぐ済んで効率的」って好評なんだけどなあ」

 

その後は、マダラは無言のまま、今回連行された組織『S.T.Y.X』の紹介ムービーを鑑賞し、自分がこの場に入られた理由はなんとなく察した。

 

要するに情報。自信の万華鏡写輪眼のチャクラの性質が、S.T.Y.Xのブロット研究の材料にする。ということか。

 

多くのケースはオーバーブロットした魔法士背後に現れた“顔のない怪物”『ファントム』 によって魔力が尽き、死に至っているのだ。その有効活用のために連行された理由だ。

 

提示された電子端末の誓約書。そこに記された機密保持や人体・魔力データの収集に関する無数の規約に対し、他の寮長たちは後々の不利益を恐れて1項目ごとに細かく眼を走らせ、疑念の声をあげて確認していた。しかし、マダラは提示された文面をただの記号のように読み流したら、直ぐにサインした。

 

権利や法、この世界の組織のルールなど、うちはマダラという存在の前には何の意味もなさない。ここに拘束されるつもりも、おとなしく被験体で終わり続けるつもりも端からないからだ。

 

「はぁ……じゃ、全員からサインももらえたところで、さっさと検査を始めよう」

「バトルシミュレーター、観測用制御卓の準備はすでに完了しているよ」

 

全員の手続きが完了したことを確認し、長い1日が始まった。

 

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