戦場の女神-圧政を敷く王政を、自衛隊の砲兵部隊が打ち砕くようです- 作:やきそばVer2
だが、突如として部隊の一部とともに異世界へ飛ばされてしまう。
【現在:フソウ王国辺境地域】
「弾種散弾!目標、敵騎士団!撃ち方始め!!」
ドオン!ドオン!ドオン!
荒れ果てた大地に、砲撃音が響く。
放たれる、無数の金属球。
巨大なショットガンと化した大砲。
その砲撃を真正面に受け、突撃してきた騎士達が次々となぎ倒される。
砲撃の効果を双眼鏡越しに確認し、命令を下す。
「効いているぞ!このまま撃ち続けろ!」
「「圧政に苦しむ民衆を救うのだ!!」」
「「そして、生き残るのだ!!」」
中世の騎士に対して、現代の火砲で攻撃を行う異様な光景。
なぜ、このような事態になったのか?
時間は12時間前に遡る。
【12時間前:東富士演習場】
第一特科大隊。
国際情勢の悪化を受け、2030年に創設された特科部隊(砲兵部隊)である。
主力となるのは、『155mmりゅう弾砲 FH70』通称『FH』。
最新の『19式装輪自走155mmりゅう弾砲 』などには機動性で大きく劣る。
だが、その高い火力は最新型にも劣らない。
~~~~
「以上が、本演習の概要だ。質問がある者はいるか?」
部下たちに尋ねる田中二佐。
第一特科大隊の隊長にして、とても有能な指揮官だ。
「それと、今回の演習後に『散弾』を用いた射撃訓練も予定されている。」
「二年前から、新たに配備された弾種だ。めったに撃てる弾じゃないから、楽しみにしておけよ。」
「ブリーフィングはこれで終了だ。各員解散!」
いつも通りの演習前の光景。
準備を全て終え、最終確認のための説明も先程完了した。
何も問題はない。
そのはずだった。
「大隊長!本部から通信が入っています。」
無線機の受話器を手に取る。
いつも通り、無線に返事を行う。
「田中だ。」
その瞬間。
私の視界全体が、突然白い霧に覆われる。
異常事態に思考が止まる。
「これは一体......な......一体何が......」
言い終わる前に、私の意識は薄れていった。
「田中二佐?どうしました?」
受話器が床に落ちる。
そこに居たはずの田中二佐の姿は、忽然と消えていた。
いや、消えたのは彼だけではない。
少なくとも、近くにいたはずの全員が、武器弾薬とともに消えていた。
「......聞こえていますか?返事をお願いします!」
床に落ちた受話器から、誰にも届かない音声だけが流れた。
【10時間前:???】
「......ここは?」
「気が付かれましたか!大隊長!」
北見一等陸尉が安堵の表情で私を見つめている。
「大隊長、あなたは20分ほど気絶されていました。」
「目を覚まされなかったので、独断で情報収集を命じました。」
「現在、偵察部隊を周辺に向かわせていますが......ここが、どこなのかは不明です。」
「現在地がどこかわからないだと?演習場にいたはずじゃないのか?」
「それが......演習場どころか......日本とは明らかに違う光景でして......」
「見ていただくのが、一番早いと思います。」
促されるまま、立ち上がる私。
周囲の光景を見て絶句する。
「な......」
そこに広がっていたのは、中世ヨーロッパを彷彿とさせる町並みだった。
石造りの家、教会と思しき建物、明らかに日本の植生と異なる木々。
その全てが、『日本ではない』ことを如実に示していた。
だが、私が絶句したのは『日本ではない』光景を見たからではない。
家々は破壊され、教会は燃え、木々はなぎ倒されていた。
全てが破壊され、まるで戦場のようであった。
そして、血の海に沈む、原型をとどめない無数の死体。
全ての死体には、拷問の痕跡が残っていた。
「理解されましたか?大隊長。」
「あ......ああ。少なくとも演習場ではないな......地獄なのか......ここは。」
衝撃を受けつつも、辛うじて頭を落ち着ける私。
村近くの空き地に、第一大隊の隊員たちがいるのを見つけた。
「他に、ここに飛ばされた者はいるか?見た感じ、いくつかの部隊もいるようだが。」
北見は答える。
「第一・第二特科中隊および本部中隊は、向こうの空き地に集合しています。」
「他の部隊に関しては、偵察部隊が捜索中です。」
「また、武器弾薬を搭載したトラックも、一緒に飛ばされてきたようです。」
報告を終える北見。
「普通科中隊はいないのか?」
「現時点では、確認されていません。」
状況確認を終え、指示を出す。
「ご苦労だった。念のため、本部中隊で周辺に防御体制を敷け。」
「だが、発砲は厳禁だ。いいな。」
「了解です。直ちに全部隊に通達します。」
命令を下した後、部隊のいる空き地に向かう。
無事に空き地に到着し、部隊の様子を確認する。
どうやら、命令が正しく実行されているようだ。
(偵察部隊からの報告が来るまで、待機だな。)
そう考えたときであった。
破壊された街の中に、鎧を着た集団の姿を見つける。
(騎士?コスプレか?なぜこんなところに?)
隊員たちの多くも気づいたようで、ざわつき始めている。
疑問に思いつつも、命令を出す。
「佐々木、君は語学に優れていたよな?あの集団と接触し、何があったかを聞き出せ。」
「英語かドイツ語なら、基本的な会話であれば対応できます。」
「十分だ。金本、念のため護衛としてついて行ってくれ。」
「重ねて言うが、発砲は厳禁だ。戦争をしにきたわけじゃないからな。」
「了解しました。」
命令を受けた二人が、街の中心部に向けて歩いていく。
その様子を、双眼鏡越しに見守る私。
どうやら、相手もこちらに気づいたようだ。
「佐々木、金本。ひとまず英語で話しかけろ。」
無線機越しに命令を下す。
(言葉が、通じればいいのだが......)
二人が話しかけようとした時、騎士達は剣を抜いて襲いかかった。
「生き残りだ!殺せ!」
「いや、反乱軍の残党じゃないか?逃がすな!全員殺せ!」
「本隊を呼んでこい、向こうの奴らも皆殺しにするぞ!」
騎士達の叫び声が、こちらまで届く。
(日本語だと?なぜ、言葉が通じる?いや、それどころじゃない!)
反射的に銃を構える二人。
引き金には指を掛けず、銃口を突きつけるだけに留める。
「STOP!!STOP!!」
「止まれ!!我々は敵ではない!!」
英語と日本語で叫び、必死に騎士達を制止しようとする。
「まずい!二人とも、直ちにもど」
そこまで言った時、二人は無惨にも斬り殺された。
そして、大勢の騎士が、路地や破壊された建物から出てくる。
ある者は剣を抜き、またある者は弓を構える。
その全てが、明確な殺意を持って第一大隊に襲いかかる。
「.....やむを得ない。総員反撃を行え!発砲を許可する!」
「隊長!良いのですか?」
隊員の一人が疑問を投げかける。
「緊急事態だ!我が方は攻撃を受けたのだ!反撃しても問題ない!」
「全責任は私が取る!ひとまず生き残るぞ!」
~~~~
命令を受けて、射撃を開始する隊員たち。
射撃の爆音に驚き、足が止まる騎士達。
その騎士達に、小銃弾が降り注ぐ。
その弾丸を受けて、数十人の騎士が倒れる。
だが、まだ二百人近い人数がいるように見える。
「怯むな!進め!」
「弓兵!撃て!」
号令と共に、敵が放った矢が隊員たちに襲いかかる。
数名の隊員に矢が命中する。
矢を受けた隊員が倒れ込む。
「グッ...」
すぐに起き上がった彼は、怒りのまま射撃を浴びせる。
「くらえ!二人の敵討ちだ!」
ダダダダダダ
ダダダダダダ
身を隠しつつも、射撃を続ける隊員たち。
騎士達の常識を超えた火力により、次々と仲間が倒れていく。
騎士達は十人ほどを残して壊滅する。
「くそ!撤退!撤退だ!」
「ひとまず本隊と合流するぞ!」
逃げていく敵兵を見ながら、私は命令を下す。
「撃ち方やめ!負傷者の手当を行え!」
~~~~
騎士達を撃退することに成功した、第一大隊。
敵の待ち伏せに警戒しつつ、生存者の捜索を行っている。
その時、偵察部隊からの緊急無線が入る。
「大隊長!大変です!」
「どうした!」
「警戒対象と思しき騎士の大部隊を発見しました!」
「それもかなりの大部隊です!」
「数は不明ですが、一万......いや、それ以上の数がいます!」
無線機の声は続ける。
「彼らは......三方向から、我が方に向けて進軍しています!」
「我々を......包囲しようとしているようです!」
(大変なことになった......)
報告を聞いた私は、事態の深刻さにようやく気づいた。
(今のところ、火器の存在は確認されていない。)
(FHの火力を持ってすれば、撃滅は容易だ。)
(市街地ではなく、荒れ地であれば、市民の被害は出さずに済む)
(だが、敵兵とはいえ、人間であることには変わらない......)
(できれば殺したくはない......もはや、交戦を避けられない......)
(やるしか......ない......)
第二話に続く。
第二話は8月1日投稿予定です。