戦場の女神-圧政を敷く王政を、自衛隊の砲兵部隊が打ち砕くようです- 作:やきそばVer2
【5時間前:破壊された教会】
騎士団の撃退に成功した、第一大隊。
負傷者の治療と、生存者の捜索を実施している。
迫りくるタイムリミット。
第一大隊は、交渉材料となる情報を必死になって探していた。
彼らはまだ、平和的解決を諦めていなかったのだ。
~~~~
「これは......武士か?だが、なぜこんなところに?」
「大隊長。私が見ても、伝統的な鎧兜にしか見えません。」
私の疑問に、歴史オタクの藤本一等陸尉が答える。
破壊された教会。
全ての物が破壊し尽くされていた。
だが、祭壇の武士に似た人物の銅像だけは、破壊を免れていた。
護衛を引き連れ、教会の中を調べる私。
危険を承知で、直接状況を把握すべく調査に同行したのだ。
祭壇の近くまで歩いて行った時、小さな声が聞こえてきた。
「生存者かもしれない。」
「敵かもしれません!私が調べます!」
近づこうとする私を制止し、護衛の隊員が向かう。
「祭壇の裏に、不自然な石が置かれています!」
「警戒しつつ調べろ......だが、身の安全を最優先にしろ。」
数人の隊員が加わり、石をどける。
その裏には、一人の少女が隠れていた。
怯えているのか、その体は震えていた。
「ひっ......やだ!見逃して!」
「やめてよ......殺さないで......」
「大丈夫だよ、お嬢ちゃん。我々は敵じゃないよ。」
「今助けるからね。」
二人の隊員が駆け寄り、やさしく話しかける。
「助かった......の?」
安堵の言葉を発しながらも、警戒を解かない彼女。
おそるおそる外に出てきた彼女。
その頭には、猫のような耳が生えていた。
現実離れしたその姿に、驚く私たち。
その様子と、隊員たちの服装を見た彼女。
何かに気づいた様子で、話しかける彼女。
「もしかして......貴方がたは『ヒノモト』から来られたのですか?」
「私たちと同じ言葉、変わった服装......おとぎ話で聞いた通りの方々です!」
「それに、この国では珍しくない耳に驚かれているご様子。」
意を決した少女は、話し始める。
「......間違いありません。『ヒノモト』の方々です!」
「貴方方なら......私たちを、いえこの国を救えます!」
「どうかお力を!」
矢継ぎ早に話を続ける少女。
「ちょっと待って、一旦落ち着いて。そんなに早く言われると、話が入ってこないよ。」
制止する私、少女も冷静さを欠いていたことに、気づいたようだ。
「すみません、つい興奮してしまって。」
「気にしなくていいよ。ところで『ヒノモト』とはなんだい?」
怖がらせないように、口調を変えて話しかける私。
少女は、話し始める。
「『ヨシツネ様』が来られた国のことです。」
(『ヨシツネ』......まさか『源義経』のことか?)
「その『ヨシツネ様』はどういった人なんだい?」
疑問を投げかける。
「この国を建国なさった、伝説のお方です。」
「祭壇に祀られているお方が、『ヨシツネ様』です。」
(この娘が言っていることは、無茶苦茶だ......)
(しかし......もし本当であれば、説明はつく。)
(もしかしたら、彼が日本語を伝えたのかもしれない......)
(......だが、盲信するのはやめるべきだな。)
「同じ人物かはわからないが、『ヨシツネ様』と似た名前の偉人はいる。」
「やはり......『ヒノモト』から来られたのですね!」
「どうか......どうか私たちをお救いください!」
「もう......他に希望はないのです!」
目に涙を浮かべながら、すがりつく彼女。
彼女は、我々に何が起きているのかを語った。
「この国は、12年前までは、平和でした。」
「ですが、今の王になってから、全てが壊されました。」
「この地でも、父が中心となって反乱が起きましたが......うっ......」
「お父さん......お母さん......ううっ......みんな......」
「それ以上言わなくていい。辛かったね。」
「まだ近くの洞窟に、反乱軍の生き残りが......います。せめて、彼らだけでも......助けて......」
話を聞き終え、沈黙する一同。
『可愛そう』だし、『力になりたい』とも思う。
攻撃を受けた以上、『自分たちが生き残る』ために戦うことはできる。
だが、反乱軍に加わることは、許されることではない。
そして、自衛隊である以上、可能な限り『話し合い』で戦闘を回避する必要がある。
まだ交渉の余地があるかもしれない......ならば、戦うのは最終手段である。
自然とそう考える一同。
その時、偵察部隊から緊急通信が入る。
「騎士団による包囲が完成しつつあります!」
「彼らの話す内容から、攻撃対象は『我々』と思われます!」
「先ほどの戦闘の報復として、我々を殲滅するつもりのようです!」
「大隊長!どうかご決断を!」
(既に敵として認識された以上、交渉は難しい......ならば)
「どうにか、やりすごせないか?もしくは、逃げることはできないか?」
無線機に向かって話しかける。
「隊員全員が隠れられる場所は、付近にはありません!」
「敵軍の機動力は非情に高いです!逃げても、すぐに追いつかれます!」
(やるしかないのか......)
状況が、刻一刻と悪くなっていっている。
『戦わない』その選択肢自体が、無くなりつつあった。
その時、獣人の少女『ミーナ』が泣きながらすがりつく。
「力を......どうか、力をお貸しください!」
「お父さんも......お母さんも......友達すら全員......奴らに殺されました!」
「このままだと、この国はまもなく滅んでしまいます!」
「だから......どうか......」
(こんな小さな娘ですら......ここまで追い込まれている......なのに、何もしなくていいのか?)
(確かに私は自衛官だ......だが、困っている人々を......いや、困っているこの娘を助けないのが本当に正しい選択なのか?)
(それに、敵軍に既に捕捉されている以上、戦闘を避けることはできない。)
(いや、だが......)
悩む私に、部下達が決意を表明する。
「大隊長......私は、いえ......われわれ第二特科中隊は......全隊員が、『彼女たちのために戦うべき』だと言う意見でまとまりました。」
「第一特科中隊も同じです!」
「本部中隊も同様です!」
(お前達......もう迷う必要はないな!)
(だが、極力彼らの手で解決させよう......あくまでも我々は『自衛官』であって、正義の味方ではないのだから。)
「わかった......いいだろう......総員戦闘準備!」
「岡田二等陸曹!坂本および坂廼辺と反乱軍の残党と接触を取れ!」
「ミーナだったか?彼女達を、反乱軍の元への送り届けてくれ。」
続けて命令を告げる。
「斥候部隊は、敵軍の監視を継続!」
「残りの全戦力は、一度後退して反乱軍と合流する!敵軍の包囲から逃れた後、反撃開始だ!」
「大隊長、反乱軍に加わるおつもりですか?」
部下からの疑問に答える。
「現状では、砲兵隊の護衛が不足している。」
「反乱軍と協力関係を築き、護衛戦力を確保する。」
「彼らと共闘するのが、生き残るための最善手だ......総員理解したな!」
深く息を吸う。
少し開けて、最後の指示を出す。
「それに......少女一人すら守れない軍隊が......日本を守れるものか!!」
「規則違反の責任は全て俺が取る!お前たちは全力で戦え!以上だ!!」
決意を固めた第一大隊。
敵を撃滅すべく、戦闘準備を開始する。
第三話に続く。
ここまでで、導入は終わりです。
次回から、本格的な戦闘シーンが始まります。
第三話の投稿は、8月3日を予定です。