ここまで書くとは思ってませんでした。
「箒ぃ!」
煙の中の放送席に向かって一夏が力一杯の声で叫ぶ。
…間に合わなかった。
鈴の龍砲を背中で受けてその勢いのまま瞬間加速で無人機に迫り、ビーム砲を構えている手を切り落とすことには成功した。
だが、切り落としたのは既にビームが発射されてからだった。
一夏は力のこもっていない声で箒の名前を叫びながら愕然としている…が。
「一夏!私なら無事だ!」
…箒の声だ。
煙が晴れると無傷の放送席とその前に傷だらけで立っている一機のISが一夏の目に映る。
「…!美春!?」
美春は間一髪のところで放送席の目の前に到着し放たれたビームの直撃を逸らして見せた。
よく見ると放送席のすぐ横に逸らしたビームが当たったと思われる大きな穴が開いていた。
(ギリギリセーフだけど…そう上手くいかないよな…)
美春が纏っている打鉄の右肩の装甲は半分ほど溶けかけており、受け流したというよりかは一度受け止めて軌道をずらしたという表現が正しい。
美春の目の前には損傷甚大を知らせるアラートが表示されており、実際右腕はほとんど動かない。
美春へと向かっていく無人機を止めるため一夏は接近を試みるが、もう移動に使えるエネルギーは残っておらず、零落白夜を一振りするのがやっとの状態だった。
「謎の誰かさんよ、さっきの一発でエネルギー切れか?」
美春が無人機を挑発するが、当然反応はない。
無人機が巨大な拳を振りかぶったその時、美春は素早く相手の懐に潜り込んで体当たりを繰り出した。
当たり所がよかったのか無人機は体勢を崩し大きく後ろに仰け反った。
鈴は美春の体当たりに驚きの顔を隠せないでいた。
(今の技は…!)
無人機が体勢を立て直す暇もなく、一夏の雪片弐型が無人機のもう片方の腕を切り飛ばした。仰け反った際に一夏の攻撃が届く距離まで来てしまったようだ。
無防備となった無人機はダメ押しと言わんばかりに上空からコアをビームで撃ち抜かれる。
「はあ、はあ…。遅れて申し訳ありませんわ!」
上空には息を切らしたセシリアがライフルを構えて佇んでいた。
「ありがとう、セシリア。助かったよ」
一夏がセシリアにお礼を言うと、機能停止した無人機が落下していった。
犠牲者を出すことなく事を済ませることができた事実に各人安堵の顔を浮かべていた。
…ただ一人を除いて。
想定外の事態によりクラス対抗戦は中止となり、残った対戦カードは1回戦のみ執り行われることとなった。
そして学園のISを勝手に起動した挙句、機体に甚大な損傷を与えた美春には織斑先生からの大説教が待っていたのだった。
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織斑先生からの説教が終わり、へとへとになって職員室を後にした美春の前に見知った顔が駆け寄ってくる。
「お、鈴じゃん。急に走ってきてどうしたn…」
「どうしたもこうしたもないわよ!あの技は何!?」
「あの技って…何のことだ?」
「無人機に体当たりした時のやつよ!あれ完全に八極拳の頂肘じゃないの!どこで習ったのよ!?」
「ああ、あれのことか。前に動画で見たのをぶっつけ本番でやってみただけだけど…」
「はあ!?じゃあ見よう見まねでやったっていうの?」
「そういうことになるけど…それが?」
美春の素っ頓狂な返事に鈴は呆れた様子だが、すぐに気を取り直してこう告げる。
「アンタ、アタシの弟子になりなさい」
「へ?」
「へ?じゃないわよ。アンタ才能あるからアタシが実戦で使い物になるように指導してあげるって言ってるの」
「あれはたまたま上手くいっただけで、才能があるとかそんな…」
「あー、そう言えばこの間道案内してもらった時の借り、まだ返せてないなあ。アタシ借りを作ったままなの嫌いなのよねー。このままだとまともに学園生活送れないなあー」
「わかったよ、弟子になればいいんだろ」
「話が早くて助かるわ。それじゃよろしく、弟子の美春君♪」
鈴はいたずらっぽく笑い、満足気な様子で踵を返した。
「じゃ、早速明日の放課後から鍛錬開始ということで。遅れずに来なさいよ!」
嵐のように去っていった鈴の背中を見送りながら、美春は深々とため息を吐くのだった。
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謎の無人機が襲来したその日の夜。学園内のとある一室で織斑先生は一人考えに耽っていた。
そこに山田先生が入室してくる。
「失礼します。織斑先生、何かわかりましたか?」
「ああ、山田先生か。一通り調べてはみたがこれと言って何も。コアに関しては完全に破壊されているため製造元の特定は不可能とのことだ。」
「そうですか…。いったい誰がこんなことを…」
「襲撃の意図はわからないが、一つ確かなことは今後も同様の事態が起こり得るということだ。上には学園の防衛設備の強化を要請しておく」
「わかりました。教師陣にもより一層気を引き締めて警備にあたるように伝えておきますね。」
「そうしてもらえると助かる。…いつもすまないな」
「いえ、これくらいのことでしたらいくらでも。それでは失礼いたします。」
山田先生が部屋を後にすると織斑先生は再度思索する。
「まさかアイツが関係しているのか…?だとしたら何のために…」
織斑先生はこれ以上考えても答えは出ないと諦めたように、ふうっと深いため息を吐いて部屋を後にした。