ちょっと武術ネタ入るので間違い等あったらコメントで教えていただければと思います。
鈴から突然の弟子になれ宣言から1日経ったある日の放課後。
美春と鈴は学園内の道場の一角を借りて八極拳の修行に取り組むことになった。
体操服代わりにISスーツに着替えた二人は向かい合って立つ。
「昨日は勢いで教えてやる!なんて言っちゃったけど、本当はちゃんとした道場に入って何年も地道にやらないといけないものなのよね。だから私が教えられるのは八極拳というよりかはそれの物まね。ISは基本浮いてるし足の使い方が未熟でもスラスターの勢いで誤魔化せちゃうから、見た目だけでも知っておいて損はないと思うわ。というわけで礼!」
そう言って鈴は右手の拳を、広げた左手の手の平で包み込むように胸の前で合わせた。
それに倣って美春も同じ構えをとる。
「これが中国武術の礼、抱拳礼(ほうけんれい)よ。基本的には師匠が手を下ろすまではアンタは手を放さないのが礼儀よ。」
そう言って鈴は自身の手を放した。美春も後に続く。
「じゃあはじめに身体操作の基本になる震脚をやって見せるわ。やることは単純よ。足を上げて、下ろす!」
――ズガアン!
鈴が足を下ろすと小柄な体からは想像もつかないような轟音が道場に鳴り響く。
その迫力は同じ道場で練習している他の部活の生徒も思わず振り向くほどだった。
「まあ、ざっとこんな感じね。試しにやってみなさい」
美春は頷くと足を肩幅に開き、片足を上げて思いっきり振り下ろす。
――ドスン!
鈴は若干嬉しそうにうんうんと頷くと美春の指導に入る。
「ね?なんか思ったのと違ったでしょ。今のアンタは足をドスーンと下ろしただけ。でも本当は体重を乗せてズガーンとやるのよ。もう一度やってみて」
(擬音の多い教え方だな…。今の指摘を整理すると、足を振り下ろすんじゃなくて足に体重を乗せて落とす感じか。)
美春は鈴の独特な指導を咀嚼し、今度は足に力を入れず腰に体を預けるようにして足を下ろす。
――ズガン!
鈴程の迫力はないものの、先ほどとは明らかに違う音が鳴り響いた。
「そうそう、ちょっと近くなったわ。やっぱりアタシの見込んだ通りだったわ。今の感じでもう一回やってみて」
――ズシン!
「…音を意識しすぎないこと。大事なのは体重を乗せることよ」
(擬音で説明しといてそれはないだろ…)
――ズガン!
「そうそういい感じ。さあ、もう一回」
――ズガァン!
「今の良かったわ!体と足がスッとなっててズガーンって感じで!」
(要は体と足の軸がそろってて体重移動がスムーズだったってことか)
「よし、じゃあ今日はここまで!初めてにしてはなかなかやるじゃない」
「あれ、もう終わりか?」
「ええ、震脚って変にやりすぎると体壊しちゃうしね。体と足の感覚さえ掴めていれば及第点よ。それじゃあ、礼!」
「ありがとうございました。」
美春と鈴は互いに抱拳礼を交わし、今日の鍛錬は終了となった。
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道場から寮へ戻る途中、鈴は美春に気になっていたことを尋ねた。
「そう言えばアンタ、なんで八極拳の動画なんか見てたのよ」
「ああ、その事か。中学の頃やってたゲームで八極拳使ってるキャラが好きでさ。ちょっと真似したくなって動画漁ってた時期があるんだよ」
「如何にも男子って感じの発想ね。ホント、男ってバカなんだから」
「バカ言うなよ、こういうのはロマンって言うんだ」
「そのセリフも一夏と弾から耳にタコができるほど聞いたわ」
「弾?」
「アタシのもう一人の幼馴染。アイツも一夏と同じバカでね…」
「へえ、男の友達結構居たんだな」
「と言ってもその二人くらいとしかつるんでなかったけどね。一緒にバカやって笑いあって。あの頃は楽しかったなあ」
そう呟く鈴を見て美春は一夏のことを少し羨ましく思った。
「で、好きになった一夏に意を決してプロポーズまがいの言葉を言ったと」
「す、好き!?一体何を根拠にそんなこと…」
「お前の行動見てたら誰だってわかるって…ついでに篠ノ之さんやセシリアも一夏にお熱と来たもんだ。ライバルたくさんだねえ」
そうからかうと鈴は顔を真っ赤にして反論する。
「アイツのことなんかぜんっぜん好きなんかじゃないんだからね!大体あのバカのどこがいいんだか…」
「はいはい、そういうことにしときますよ。ま、抜け駆けされないように目を光らせておくんだな」
「だからそういうんじゃないって言ってるでしょうが!」
全く、モテる男はつらいねえ…。
一夏繋がりで美春はふと気になったことを鈴に尋ねた。
「そういえば一夏の同室問題は結局どうなったんだ?」
「ああ、アレね。何でも今度男の転校生が来るっていうからそいつのために空けとくらしいわ」
「へえ、男の転校生…。男の転校生!?」
唐突に出た衝撃的発言に美春は思わず二度見ならぬ二度聞きをした。
「いきなり大声出すんじゃないわよ!…何でもフランスで見つかったそうよ。ホント、探せば出てくるものねえ…。」
「鈴は特に驚いたりしないんだな」
「だって一夏のあとセカンドがすぐ見つかったのよ?サードだろうがフォースだろうが対して変わらないわよ」
「あ、そう。こっちは仲間が増えるかどうかの死活問題なんだけどな」
「そう?アタシから見たら結構普通に馴染んでると思うけど」
「傍から見たらな。これでもガールズトークに付き合うの結構苦労してるんだぞ?」
「アンタは大丈夫でしょうよ。一夏と違って気が利いてて物分かりがいいんだし」
「そりゃどうも。ま、男には男の事情ってのがあるんだよ」
「なるほど、じゃあ今度の転校生への期待大ね」
「ああ、本当に男だったらな。」
「ちょっと、それってどういうことよ」
「いや、何でもない。じゃあ俺の部屋こっちだから。また明日な」
「じゃあね。あ、今日やったこと変に自主練するのとかはやめときなさいよー!」
「へいへい。了解です、師匠」
鈴と別れ、自室に入った美春はベッドに寝転がって考えに耽る。
(男の転校生か…でもここ最近のニュースでIS乗れる男が見つかったなんてのは見てないぞ…)
拭い切れない違和感を覚えたまま、美春は携帯端末を手に取る。
(あの人だったら何か知ってるかな…)