「織斑一夏、私と戦え」
突如として現れた黒いISをまとったラウラは一夏に戦いを申し込む。
対する一夏は毅然とした態度でこう切り返す。
「イヤだ。理由がねえよ」
「貴様にはなくても私にはある」
「だったら今度の学年別トーナメントで戦えるんだからそこでいいだろ」
「ほう、意地でも戦わないというのか。ならばこちらから…!」
ラウラが戦闘態勢をとった瞬間、アリーナ場内のアナウンスが響く。
「そこの生徒!何をやっているの!学年とクラス、出席番号を言いなさい!」
「チッ…。まあいい。お前の望み通り学年別トーナメントで決着をつけてやる。精々首を洗って待っていることだな」
突然の横やりに興が冷めたのかラウラは捨て台詞を吐いてそのまま立ち去る。
一夏にみんなが駆け寄る。
「一夏!大丈夫だった?」
「ああ、俺のほうは大丈夫。心配してくれてありがとうシャルル」
「ったく何なのよアイツ!いきなり喧嘩吹っ掛けてきて!」
鈴はラウラの態度に怒り心頭のようだ。
各々が一夏を心配するが、一夏は申し訳なさそうにこう言った。
「皆、悪い。ちょっと一人にさせて貰えないか」
そういって一夏はISを解除し一人更衣室に向かった。
「…ああもう!むしゃくしゃする~!」
怒りがまだ収まらない鈴は頭をコツコツと軽く叩く。
すると何かを閃いた顔つきで美春のほうに向き直る。
「美春、特訓の続きやるわよ。今度はISに乗った状態での実戦よ!」
「特訓?美春さん、どういうことですの?」
「ああ、実は鈴に八極拳っていう中国の武術について教えてもらってる最中なんだ」
「ハッキョクケン?ボク聞いたことないや。でもちょっと興味あるな」
「わたくしも。美春さんの動き、勉強させてもらいますわ」
「ちょっと?教えるのはアタシなんだけど?アタシへの興味はないわけ?」
「ISを動かすことに関しては美春さんの方が勉強になる点が多いと申し上げたまでですわ」
「いったわね!?美春、さっそくやるわよ!セシリアにアタシの凄さ思い知らせてやるんだから!」
「あはは…なんか目的変わっちゃってないかな…」
「鈴ってそういう奴だから…」
こうして急遽、鈴との特訓第二弾が始まった。
まずは鈴に大まかな八極拳の型を教えてもらい、実戦を通して体になじませるやり方で進めてもらった。いきなり実戦に入って大丈夫かと不安になる美春だったが鈴曰くISはシールドエネルギーさえ削れればこっちのもんということらしい。
(これ完全に鈴の鬱憤晴らしに付き合わされてるだけだよな…)
ただ素手のISで戦う機会というものはそうそうないため、これも勉強だと思って美春は最後まで鈴との特訓に付き合うのだった。
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特訓が終わり、セシリアとシャルルと別れた二人は自販機横のベンチで一息ついていた。
「はあ~スッキリした。にしてもアンタやっぱりやるわね。いきなり習った金剛拳の型でアタシのシールドエネルギーをゴッソリ削るなんて。さすがにアタシも肝が冷えたわ」
「師匠の教えのお陰ですよ。シールドエネルギーを削ればこっちのもんだって」
「そっちをメインで教えたつもりはないのよねえ…。まあいいか。」
そういうと二人は自販機で買った炭酸飲料をグイっと流し込む。
「プハ~!そう言えばシャルルの専用機って量産機のカスタム機らしいな」
「らしいわね。それが?」
「単純に羨ましいなあって、2世代ISでも専用機にできるって知ったら俺も欲しいなあって」
「なるほどね、じゃあ作っちゃえばいいじゃない」
「え?」
「欲しいものがあって、手が届くところにあるのならどんな手を使ってでも手に入れちゃいなさいよ。実際アタシもそれで代表候補生になれたんだし」
「でも作るって言ったって…」
「何もゼロから作る必要なんてないのよ。アンタが言った通り既にある量産機をちょっといじるだけで専用機になっちゃうんだから。先生に聞いてみるだけ聞くのもアリだと思うわ」
「それもそうだよな…。わかった、聞いてみる。ありがとう、先生(シェンション)」
「…!アンタいつの間に…。ふふん、悪い気はしないわね」
そう言って微笑む小さな師匠に美春も思わず微笑み返すのだった。
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「何?専用機を作りたい?」
鈴から提案を受けた翌日の朝、美春はSHRが始まる前に職員室に乗り込み、織斑先生に直談判した。
「てっきり早く専用機を寄越せと言ってくるとばかり思っていたが、まさか作らせろと来るとはな…いったい誰の入れ知恵だ?」
「決めたのは自分です。その人にはただ背中を押してもらっただけです」
「あくまでも白を切るつもりか…。まあいい。わかっているとは思うが、いくら男のお前の頼みだとしても学園の所有する機体を個人のカスタム用に貸し出すといったことはできん」
「はい、承知の上です」
「ただし、使い物にならなくなって廃棄する予定の機体なら話は別だ。放課後、この部屋に来い。一つお前を試してやる」
そう言って織斑先生は手書きのメモを渡す。
「さあ、もうすぐSHRの時間だ。さっさと教室に戻れ」
「はい。ありがとうございます。先生」
美春は一礼すると足早に職員室を後にした。
織斑先生は一人職員室で不敵な笑みを浮かべる。
(運命の悪戯というやつをひとつ信じてみるか…)
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放課後、美春がメモに書いてある部屋を訪れると既に織斑先生と山田先生含めIS科目を担当している先生が何人か並んで立っていた。
「織斑先生、これはどういう…」
「深いことは気にするな。学園のものを個人に貸し与えるということはこれだけの先生方の承認がいるということだ」
部屋の真ん中には少し埃を被った打鉄が鎮座している。
「さて、本題に入ろう。お前にやってもらうことはただ一つ、このISを起動させることだ。ある日を境に急に動かなくなってしまってな。近々機体を廃棄してコアの初期化をする予定だったものだ。もし起動することができたら、お前の望み通り専用機として改造してもらって構わない。条件付きだがな」
美春は例のISをじっと見つめると少しだけ懐かしい感覚を抱いた。
(こいつと会うのは、初めてじゃない気がする)
美春は吸い寄せられるようにそのISに近づきそっと手を触れる。
すると初めてISを触ったときと同じ感覚と微かだがそれでも確かな声が頭に流れ込んでくる。
――また会えたね。待ってたよ。
美春が気づいたときにはそのISを身にまとった状態で部屋の真ん中に佇んでいた。
周りの先生方がおおっと感嘆の声を上げる中、織斑先生が頭に手を当てながらこう告げる。
「…合格だ。そのISは今日からお前のものだ」