IS開発回の続きです。
美春求めるの新規武装の概要はこうだ。
1.近距離主体の外付け武装であること
2.攻守を兼ね備えた武装であること
3.学年別トーナメントに間に合う期間で作成できる構造であること
以上の点を踏まえて各々が武装の案を提示していく。
ルチア先輩が予め書いてきてくれた武装デザインをいくつか見せてもらうが、攻撃に寄りすぎていたり、クララ先輩の見立てで製造が間に合わないと思われる複雑な機構が搭載されていたりと中々いい案が決まらない。
そんな中、今まで静かにしていた透子が口を開く。
「…あの、こういうのはどうかな」
そういって見せてきたのはゲームのキャラクターの画像だ。
よく見ると両手に大きな装甲を身に着けており両端には近距離戦用と思われる爪と遠距離が主体と思われる砲身がそれぞれついていた。
「ゲームの中だとね、この盾みたいなのが回転してモードを切り替えるんだけど、片っぽに両方つけちゃえば回転させる必要はなくなるんじゃないかなって…」
「それに砲身をこの画像みたいに太いのじゃなくてショットガンとかにしちゃえば構造は簡単になりそうな気がする!それに近距離の必殺の一撃!みたいになるし」
沙苗が続けて発言する。確かにこれなら美春の求める要件をすべて満たすことができそうだ。
「ルチア先輩、この画像を基に今言った話を踏まえてこの打鉄に合うようなデザインを起こすことってできますか?」
「了解!ちょっと待ってね!」
しばらくするとルチア先輩が大まかなデザインを描き上げて皆に見せる。
「おお~」
一同が感嘆の声を上げる。大きな手甲の先端に刺突用の爪と2連装のショットガンが付いており、全体的な印象も和風テイストになっておりこのまま打鉄に搭載しても違和感はなさそうだ。
「この案で行きましょう。ただし今回はスケジュール的に片手のみの搭載が現実的かもしれませんね。クララ先輩、ルチア先輩、設計お願いします」
「了解しました。ルチア、急ピッチで仕上げましょう」
「オッケー!楽しくなってきたー!」
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翌日の放課後、クララ先輩とルチア先輩は設計図と各部品の図面を描き上げて皆に提示する。
あまりの手早さに鈴は啞然とする。
「いくらなんでも早すぎない…?」
「構造的にはショットガンを貼り付けたただの手甲ですからね。普段授業でやっている設計課題よりよっぽど楽です。」
そういってクララ先輩は誇らしげに眼鏡をくいッと上げた。
「部品も学園にありそうなものを選んで設計したし、案外サクッとできちゃった!」
ルチア先輩もやってやったという様子で笑みを浮かべる
「…では図面はそろったことですし、作業に取り掛かりましょうか」
そういって各自作業に取り掛かる。
クララ先輩と沙苗は製造、ルチア先輩は手甲の表面の仕上げ、透子はショットガンの制御プログラムの作成、本音は完成した部品の組み立て、と指示もなく各々が得意分野で作業分担していた。
美春と鈴は現時点で手伝えることがほとんど無いため、手甲を用いた戦闘のイメージトレーニングを行っていた。
幸い翌日は休日だったため、チーム一同が一日中作業に取り掛かる。
こうして作業は滞りなく進み、僅か2日ほどで武装の作成と搭載が完了した。
早速、美春と鈴はISを纏いアリーナで試運転を行う。
「さあ、イメージトレーニングの通りに打ち込んできなさい!」
そういって鈴は両手を交差させて防御態勢をとる。
美春はふうっと一息つくと、腰を落とし沖錐の構えを取る。
そして鈴に打撃を打ち込むと同時に内蔵されているショットガンを発射する。
――ドバアアン!
「きゃああ!」
鈴は衝撃に耐えきれず後ろに吹き飛び、アリーナの壁に激突する。
「鈴!大丈夫か!?」
慌てて美春が駆け寄ると鈴はよろけながら立ち上がった。
「大丈夫よ…。にしてもすごい威力だったわ…。」
「自分でもびっくりだよ、山を壊すんじゃないかってくらい」
「山を壊す…いいわねそれ。」
鈴が何かを閃いたかのような顔で美春に言い寄る。
「壊山拳!今の技をそう命名するわ!」
「壊山拳…悪くないな。」
「ついでにその手についてる奴は壊山拳を打つ手甲だから壊山護甲!どう?悪くないでしょ?」
「そうだな、いい名前だ。そしたらこの機体の名前は今日から打鉄・甲式だ。師匠の機体から一字貰ってみたよ」
そう美春が告げると鈴の顔がわずかに赤くなる。
「へ、へえ。中々気が利くじゃない。仕方ないから師匠の字を使うことを許可してあげるわ!」
美春と鈴は互いに抱拳礼を交わしてアリーナのピットに戻り、開発にかかわってくれた人々にお礼を言う。
「皆さんのおかげで素晴らしい機体が出来上がりました。本当にありがとうございました!」
そう言って美春が頭を下げると一同から拍手を贈られた。
「こちらこそ、専用機の武装開発なんていう大役を私達に任せてくれてありがとうございました」
代表してクララ先輩が美春にお礼を告げる。
「…まだプログラムは調整の余地ありそうだから気になることがあったらいつでも言ってね」
「透子ちゃんの言う通り!せっかく同じクラスなんだし、遠慮せずにドンドン言って!」
「調整なら任せて~」
「みんな…これからもよろしくお願いします!」
その様子を織斑先生と山田先生が物陰から見ていた。
「かなり難易度の高い条件を出したつもりだったんだが…上手いこと乗り切ったな」
「青春ですねえ。私も学生時代のこと思い出しちゃいました」
「今年の学年別トーナメントは面白いことになりそうだ」
「ふふっ。そうですね、楽しみです」
そう言うと二人はその場を後にした。