そしてついに迎えた学年別トーナメント当日。この日まで美春はラウラと一度も会話をしていない。
1年生から対戦が始まるため、参加する1年生がアリーナのエントランスに集まる。
そしてエントランス内のディスプレイに対戦カードが次々と発表されていく。
美春とラウラのタッグの初戦の相手は…一夏とシャルルだ。
思わぬ対戦相手に一夏は驚きの声を上げる。
「なっ…!ボーデヴィッヒと、美春!?」
美春はエントランスの陰から対戦カードを確認し不敵な笑みを浮かべる。
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美春とラウラがアリーナのピットで出撃準備を整えていると鈴が怒りの形相で乗り込んできた。
「ちょっと、美春!アンタあのドイツ女と組むなんて聞いてないんだけど!?」
ラウラは美春に詰め寄る鈴を意に介さず、黙々と準備を進める。
美春は申し訳なさそうに鈴にこう告げた。
「悪いな鈴、ラウラと組むのが決まったのは例の件より前なんだ。あまりいい気分はしないだろうがここは一つ頼む」
「アンタそうは言ってもねえ…!」
「一夏に勝つことができるかもしれない数少ないチャンスなんだ。前に言ってくれただろう?手が届きそうならどんな手を使ってでも手に入れて見せろって」
「…そう言われちゃうと流石のアタシでも反論できないわ。わかった、その代わり絶対に勝つこと。いい?」
「ああ、約束する。ありがとう」
そういって二人は握手を交わすと鈴はピットを後にした。
「さてと、ラウラ。準備はいいか」
「無論だ。貴様こそ私の邪魔をしてくれるなよ」
美春とラウラ、一夏とシャルルのタッグがそれぞれ出撃すると試合開始のアナウンスが鳴る。
試合開始と同時にラウラは迷わず一夏の方へ向かっていきプラズマ手刀で切りかかる。
一夏は待ってましたと言わんばかりに雪片弐型でラウラの攻撃を受け止める。
互いに鍔迫り合いながら一夏はニヤリと笑った。
「お前知ってるか?この試合は、タッグバトルなんだぜ!」
そう一夏が言った瞬間後方からシャルルが射撃を行おうとしたが突如横から投げ込まれたグレネードに阻まれる。
3人が横に視線を向けると美春が不敵な笑みを浮かべて空中に浮かんでいた。
「お前知ってるか?この試合は、タッグバトルなんだぜ!」
「美春…!」
「随分とお怒りじゃねえか一夏。俺がラウラと組んだのがそんなに気に入らないか?」
「当たり前だろ!お前だって知ってるだろ?こいつは鈴とセシリアを…」
「知ってはいるが、それとこれとは話は別だ。一夏、今日は勝たせてもらうぜ」
一夏に続いてラウラも美春に怒りの視線を送る。
「貴様!私の邪魔をするなといったはずだ!」
「先に言っただろラウラ。お前と一夏の邪魔をする奴は全力で邪魔するって」
「チッ…。この役立たずめ」
そう呟くとラウラは美春の右足首にワイヤーブレードを巻き付けて引っ張り上げた。
「なっ…!」
「弾除けに使っても構わないと言ったのも貴様だろう?なら精々その役目を果たして見せろ」
ラウラは一夏とシャルルの間に美春を叩き付けようとする。
美春は無理に逆らおうとせずに、遠心力を利用して空中で一回転し、足が地面に向かうように体の向きを変えた。
――ドスンッ!
見事両足で着地することに成功した美春は目の前のシャルルに向かって、
「ボンジュール」
「え?」
打撃と同時にショットガンを放つ壊山拳を思いっきり打ち込んだ。
――ドバアン!
不意の一撃にシャルルは防御が間に合わず、アリーナの壁まで飛ばされる。
一連の動きを観客席から見ていた山田先生は美春とラウラに感心する。
「遠藤君とボーデヴィッヒさん、いい連携が取れていますね。あんな形で不意打ちを繰り出すなんて」
織斑先生は二人の性格を考慮した上で冷静に分析する。
「いや、あれはボーデヴィッヒの一人芝居に遠藤の機転が奇跡的に嚙み合ってるだけだ」
「え?」
「今のボーデヴィッヒは自分の力を示すことに躍起になっている。恐らく遠藤を邪魔者扱いして弾除けにでもするつもりだったのだろう。遠藤もそれを承知の上で戦術を練っているはずだ」
シャルルがよろめきながら立ち上がると一夏が心配の声をかける。
「シャル!大丈夫か!?」
「こっちは平気!一夏はボーデヴィッヒさんとの戦いに集中して!」
改めてシャルルが美春の方へ向き直る。
「今のが新しく開発した武装?すごい威力だね」
「だろ?優秀なメカニックが完璧に仕上げてくれたんだ」
「だろうね。でも、ボクに簡単に勝てるとは思わないことだよ」
そう言ってシャルルはアサルトカノン「ガルム」を構えると美春に向かって数発程弾丸を放つ。
美春が弾の合間を縫って接近し再度壊山拳の構えを取るとシャルルは瞬時に武器を連装ショットガン「レイン・オブ・サタデイ」に持ち替え、銃弾を放つ。
美春はシャルルのあまりの武装の切り替えの早さに対応が追い付かず、銃弾をもろに食らってしまう。
「ボクに同じ手は通用しないよ」
「…みたいだな。」
そういって美春はアサルトライフルを構えシャルルに向かって連射する。
シャルルは造作もない様子で銃弾を躱していく。
美春が射撃の合間にグレネードを投げ込むも、シャルルは武器をアサルトライフル「ヴェント」に持ち替え、冷静にグレネードに対応する。
「中遠距離戦はボクの土俵だよ。」
彼の言うとおりだ。射撃戦においては完全にシャルルに分があり、かと言って射撃を避けるために大ぶりな動きをしてしまうとラウラに流れ弾が当たってしまったり、最悪援護に向かわれてしまう可能性がある。
接近戦を仕掛けようにも瞬時に切り替えられるショットガンの抑止があるため、迂闊に近づくこともできない。
(シャルルをラウラの方に向かわせないためには接近戦でやりあうしかない、でも今のスピードじゃあいつの反応速度を越えられない。何かもっと速く動くための手はないか…?)
美春は思考を巡らせてる間にもシャルルの射撃は容赦なく襲い掛かってくる。美春は下手に動かず壊山護甲の手甲で射撃を凌いでいた。そうこうしている間に美春はあることを思い付く。
美春は手甲を盾のように構えながらシャルルに急接近する。シャルルがショットガンへと武装を切り替える態勢をとった瞬間。
美春は機体の向きを後方に変えて手甲のショットガンを発射すると、その反動で機体が後ろ向きのまま猛スピードでシャルルに向かっていく。
ショットガンでも対応できない超至近距離に近づくことに成功した美春はそのままシャルルに体当たりをする。
シャルルは予想外のスピードに対応が間に合わず、体当たりをもろに食らい後方に吹き飛ばされる。
間一髪で壁への衝突を免れたシャルルは冷や汗をかきながら美春を称賛する。
「まだそんな隠し玉があったなんてね。ボクが対応する前に近づくなんて流石だよ」
美春は大きく肩を動かしながら息をしており、シャルルの言葉に返答することができない。
「でも、手は出し尽くしたみたいだね。それじゃあ、失礼」
そういってシャルルは美春の横を猛スピードで通り過ぎていき、一夏の援護へと向かった。
美春が気づいたときにはすでに遅く、シャルルはラウラの横っ腹にパイルバンカーを打ち込んでいた。
壁に向かって吹き飛ばされたラウラにシャルルはさらに追撃を行おうとする。
美春が慌てて援護に向かおうとすると一夏が目の前に立ちはだかる。
「悪いけど、これ以上の邪魔はさせないぜ」
「くっそ…。ラウラぁ!」
美春の叫びは攻撃を食らっているラウラには届かなかった。
シャルルがラウラにパイルバンカーを数発撃ち込んだ直後、ラウラのISが不気味な光を放つ。
「うわああああああ!」