投稿ペース落ちるかもしれないです。
ラウラとの買い物を終えた数日後。美春はISの格納庫へと足を運んでいた。
先日依頼した打鉄・甲式の調整が終わったとの連絡をクララ先輩から受けたためだ。
結局あのあと、鈴とセシリアには説教が終わるまで放置したことをめちゃくちゃ怒られたが…まあ自業自得だろう。
格納庫へと向かう道中、鈴とラウラから声を掛けられる。
「美春、きいたわよ。機体の調整が終わったらしいじゃない。一緒に見てあげるわ!」
「私も同行させてもらうおう。指摘したことがどう解決されているか気になるのでな」
「耳が早いな…。外部からの意見も聞きたいし、一緒に行こう」
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格納庫に到着すると美春の機体整備チームがすでに集まっていた。
「皆さん、お待たせしました。それと今日は鈴とラウラにも同行してもらいました」
「全然オッケーだよ!色々と意見聞きたいしね」
ルチア先輩がそう答えると早速調整内容に移る。
まずは、追加されたスモークグレネードの確認だ。
コンソール上に表示されている見た目を見ると大きなスプレー缶のような形をしており、通常のグレネードと混同することはなさそうだ。
そして、壊山護甲には弾丸ありの場合となしの場合とで撃ち分けができる設定になっており、ISの操縦桿についているホイールで瞬時に切り替えることができる。
「要望通りの設定になっていることを確認できました。次はアリーナで実際に試してみましょう」
一同はアリーナへ移動すると美春は自身のISを展開して武装の実物の確認をしてみる。
まずはスモークグレネード。こちらは通常のグレネードと同様にレバーを引くことで安全ピンが抜けるため、片手で運用することができる。
試しに投げてみるとあっという間に煙が広がり、IS二機分が隠れるくらいの煙幕が形成された。
想定していたよりも煙幕の範囲が広かったため様々な場面で使うことができそうだ。
続けて壊山拳の空撃ちの確認へと移る。まずは垂直方向への跳躍だ。
美春は地面に銃口を向け、発射のタイミングに合わせて跳躍する。スラスターを使って跳躍するのと比較すると上昇する高さは半分程度だが初速が段違いに速かった。上空からの奇襲の足掛かりに使えそうだ。
最後に平行移動での空撃ちの確認へ移る。美春は後方に手を向け発射と同時にスラスターを吹かす。
すると機体は猛スピードで右斜め前へと前進し、美春はバランスを崩して地面に墜落する。
「遠藤君!大丈夫ですか!?」
クララ先輩の通信での呼びかけに美春は問題ないと返答し、改めて姿勢を立て直す。
(左腕にしかショットガンが付いてないの忘れてたな…。そりゃ右に吹っ飛ぶわけだ)
今度は左右のスラスターのバランスを右寄りにし、再度発射と同時にスラスターを吹かせると、美春のISは瞬時加速にも劣らない速さでまっすぐ前進した。
「は、速くない…?」
鈴が呆気にとられていると横から沙苗が補足説明を入れる。
「遠藤君のISは左腕のショットガンの反動を受けやすいように調整したんだ。だからスラスターのタイミングとかみ合うとあれだけのスピードが出るんだよ!にしても遠藤君流石だなあ。もうスラスターのタイミングと機体のバランス調整のコツ掴んじゃった」
「なるほど、これで美春の弱点だった地面に足をつけていないと高速移動ができない点は解消されたな」
美春は地面に着地するとISを解除して、改めて整備チームにお礼の言葉を述べる。
「…完璧です。俺が出した要望通りの調整内容になっています。皆さん短い期間にありがとうございました!」
「こちらこそ。1年生の三人にとってはいい実践経験を詰めたかと思います」
透子と沙苗、本音の三人はクララ先輩の言葉に続くようにうなづいた。
「よし!調整の確認もできたことだし、次は実戦よ!美春、かかってきなさい!」
鈴が闘志を滾らせていると、ラウラが割って入ってくる。
「鈴、すまないが実戦は私と美春でやらせてもらえないだろうか。実は美春とは一回も戦っていないんだ」
「え!?アンタら学年別トーナメントであんだけのコンビネーションしといてお互いの手の内知らなかったの!?」
「あの時は偶然が重なってそう見えただけだ」
「なるほど、そういうことなら今回はアンタに譲るわ。元ペアだからって手加減するのはナシだからね」
「無論、心得ている。さあ美春、私と戦って貰うぞ」
「ああ、受けて立つ!」
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美春とラウラがそれぞれ自身のISをまとってアリーナに立つ。
「それでは、試合開始!」
クララ先輩の合図とともに模擬戦が開始される。
美春は開幕と同時に、体のばねと空撃ちによる跳躍でラウラへと接近する。
「速さは一級品だが、私には通用しない!」
ラウラが左手をかざすとAIC(アクティブ・イナーシャル・キャンセラー)が展開される。この武装は対象を任意に停止させることができ、接近戦が要となる美春にとっては天敵となる武装だ。
案の定、美春はラウラに停止させられるが、彼女の足元から煙幕が広がる。
煙幕に気を取られたラウラは集中力を保つことができずAICを解除してしまう。
(こいつ…!接近と同時にスモークグレネードを撒いていたのか…!)
その瞬間を見逃さなかった美春はラウラに壊山拳を打ち込む体勢に入る。
間一髪で気を取り直したラウラは壊山拳の直撃を免れたもののあまりの衝撃に思わず後退りする。
(さすがシャルロットを壁まで吹き飛ばした武装だ。直撃を免れてもかなりの衝撃を食らうな…)
一方の美春は壊山拳の反動を利用して後退し、煙幕の中へと姿を眩ませた。
さらに、美春は両手にスモークグレネードを展開して投げ込み、より広範囲の煙幕を形成する。
(くっ…ISで用いられるスモークグレネードはハイパーセンサーでの探知も阻害する…。これでは奴の居場所がわからん…!)
――バアン!
ラウラが美春の探知に手をこまねいていると、前方から銃声が鳴り響く。恐らく美春の空撃ちだろう。
ラウラは身構えるも、美春が接近してくる様子はない。
(前方ではない…となれば上か!)
ラウラが上空に目をやると正に美春が上空から接近してくる最中だった。
ラウラはひと呼吸置くと再度AICを展開し、今度は美春を捕らえることに成功する。
ラウラが勝利を確信し、レールカノンを美春に構えた瞬間。
「それまで!試合終了です!勝者、ラウラ・ボーデヴィッヒ!」
クララ先輩の一言で模擬戦は終了となった。決着は付かなかったものの、状況的にはラウラの勝利となる。
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模擬戦後、美春はラウラからフィードバックを受ける。
「合格だ。開幕の私に止められることを想定した上でのスモークグレネードの活用と、壊山拳を放った後の離脱と自身が優位となる状況作り、そして上空からの奇襲と戦術としてきれいにまとまっていた。並みのIS乗りにはかなり優位に立ち回れるのではないだろうか。しかし今回は相手が悪かったな」
「そうね。アタシだったら危ない場面は結構あったかも」
「二人ともありがとう。結果的に負けはしたけどそこまで褒めてもらえるなら悪い気はしないな。あ、そういえばグレネード投げるときにちょっと腕に違和感があったんだけど…」
「そこの調整については今度の臨海学校で1年生の皆さんにやってもらいましょう。軽いパラメータの調整レベルかと思いますし、遠藤君と皆さんで十分対応できるかと」
「わかりました。じゃあ黒沢さん、石川さん、布仏さん。当日はお願いします。」
こうしてこの場は解散となった。
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美春とラウラが模擬戦をしていた頃、アリーナの観客席の陰から一人の少女がその様子を眺めていた。
篠ノ之箒。ISの生みの親である篠ノ之束の妹であり、一夏と幼少期からの幼なじみである。
このIS学園には篠ノ之束の妹であるという理由だけで政府から一方的に入学させられており、また代表候補生の地位も与えられていないため、彼女には専用機が支給されていない。
対してあの男、遠藤美春はどうだ。一夏と同じ男のIS乗りではあるものの当初は専用機を持っていなかった。しかしながら、クラス代表決定戦から始まり、クラス対抗戦では箒を身を挺して守ってくれたりとめきめきと存在感を示していき、ついには自分で専用機をもぎ取ったとまで聞いた。交友関係にも恵まれており、彼は箒の目の前で仲間に囲まれながら自己研鑽に励んでいる。
(このままでは、一夏の隣に立つなど到底無理だ…)
何か手立てはないかと箒は思索するものの、彼女にないものばかりが頭に浮かぶ。
…ただ一点を除いては。
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その日の夜、箒はある人物に通話をかける。
「もすもーす。箒ちゃんから掛けてくるなんて珍しいね。何かあったの?」
「お久しぶりです、姉さん。実はお願いがあるのですが…」