「すみません。IS学園から来ました遠藤です。担当の石川さんお願いできますでしょうか」
「かしこまりました。ただいま呼んでまいりますのでお掛けになってお待ちください」
美春は倉持技研のとある事業所の受付で今回美春のISの改修を担当してくれる人を呼び出す。
近くにあった椅子に座ってしばらく待っていると、若年の女性が美春に話しかけてくる。
「君が遠藤君?初めまして、担当の石川です」
「初めまして。IS学園1年の遠藤です。今日はよろしくお願いします」
美春は深々とお辞儀をすると担当の石川さんは軽い笑みをこぼして美春を会議室へと案内する。
会議室に通されると腰を掛けるように石川さんから促される。こうして美春の初めての大人との打ち合わせが始まった。
「改めまして、遠藤君のISの改修を担当する石川沙世(いしかわ さよ)です。これ、私の名刺ね」
そういって沙世は自身の名刺を美春に差し出す。美春は初めての名刺に手が震えながらも丁寧に受け取る。
名刺を渡した沙世は席について軽く自己紹介をする。
「私はここで主にISの武装開発を担当しているの。遠藤君のことは沙苗からよく聞いてるわ。本当に高校生とは思えないほど落ち着いてるわね」
「沙苗って…俺、じゃなくて自分と同じクラスの石川沙苗さんですか?」
「そう。あの子私の妹なの」
思わぬ繋がりが発覚し、美春は開いた口が塞がらない。
「驚くのも無理ないよね。一応私が今回責任者に選ばれたのも沙苗があなたのISの整備に関わってるっていう事情があったりもするの」
「そうだったんですか…。沙苗さんにはいつも色々と助けられてます」
「沙苗も同じこと言ってたわ。フィードバックが細かくて助かるー!って」
そういって沙世は沙苗の真似をしながら明るく返す。
「さて、世間話はこれくらいにして、本題に入りましょうか」
そう言って沙世はプロジェクターに美春のIS、打鉄・甲式の戦闘データを映し出す。
「まず、あなたの戦闘スタイルだけど、武装構成とこの間貰ったレポートを見る限りだと、一撃離脱を軸にした高機動戦闘ってことでいいのかな」
「そうですね、概ねその認識で合ってます」
「加速するときに瞬時加速とかは使ってるのかな?」
「いえ、そういった類のテクニックは使ってなくて、体の動きとスラスター、後は手甲のショットガンの反動を利用して動いています」
「なるほど。道理で普通の競技者とは違った数値が出るわけね。初速とスラスターの消費量の計算がどうしても合わなくて苦労したの」
沙世は納得のいった表情で自身のメモに美春の言葉を書き留めていく。
「ってことは遠距離から奇襲を仕掛けるよりかは中近距離でキビキビ動く感じだ?」
「奇襲は仕掛けるには仕掛けるんですが、スモークグレネードで土台作ってからって感じです。本当はキビキビ動きたいんですけど、現状はショットガンを撃った時の反動でちょっと離れるくらいが精一杯ってところです」
「ふむふむ。ここはレポートにあった今後の展望と一致するね。同じ項目に書いてあったことだけど、手甲付きのショットガンってやっぱり両手にあった方がいい?」
「そうですね。やっぱり片手だと移動できる方角に制限ができちゃうし、左右のスラスター調整しながら突進することになるので結構大変なんですよね」
「そんなことまでやってたの…。沙苗が言ってた通りかなりのやり手ね、あなた」
「ありがとうございます…」
美春は恐縮そうに沙世の誉め言葉を受け取る。沙世はさらに話を続ける。
「じゃあ両手に手甲は付けるとして…撃つ時に肘を固定させるプログラム組んでると思うんだけど、それ手甲の中に衝撃吸収用のダンパー入れてそれで制御できるようにしてもいい?ちょっと新しい機構を試させて欲しいの」
「前と同じ挙動ができるのであればそこは問題ないです」
「了解。後は射撃についてだけど、基本的にグレネードの頻度が多いね。これはどうして?」
「それは、グレネード投げて相手の気をそらしてその隙に手甲の一撃を叩きこむって戦い方ばっかりしてきたせいだと思います」
「なるほどねえ。じゃあ手甲でバコーン!ってやってその反動で離脱した後は何してるの?」
「基本的に相手が吹っ飛ぶので、そこにもう一撃入れられたら入れるって感じですね」
「そっかあ、でも今の運用だと載せてるアサルトライフルちょっと勿体ない感じしない?」
「そこが悩みどころでして…今後の展望にも書いてあるんですけど、遠距離の戦いが自分の中で定まってなくて」
「それなら折角だし、この後射撃場でウチが用意できる射撃武装一通り試射してみるのはどうかな。気に入ったやつを載せれば使いたくなるでしょうし」
「それは…!やってみたいです!」
「おっ威勢がいいね。わかった、ちょっと時間はかかるけど手配しておくね」
沙世はそういうとポケットから携帯端末を取り出してどこかに通話をかけ始めた。
しばらくすると通話が終わったのか端末をポケットにしまって美春に再度話しかける。
「担当者に確認したら、お昼明けになっちゃうけど問題ないって。今日、お昼は?」
「午前中に終わると聞いていたので特に準備していないですね…」
「それは申し訳ないことをしちゃったね。せっかく来てもらったし後で社食ご馳走するね」
「すいません、ありがとうございます」
こうして武装改修案の方向性を沙世と美春の二人ですり合わせていった。
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昼休み。美春と沙世は倉持技研の社員食堂へと向かい、美春は社員みんながよく食べてるという和風パスタをご馳走になった。美春がパスタに舌鼓を打っていると沙世から学園生活について尋ねられる。
「いくら二人いるって言っても周りが女の子ばっかりだと大変でしょう?」
「そうですね。色々と気使うこと多くて大変ですね」
「でしょうねえ。高校男子なんてみんなで集まって馬鹿みたいにワイワイ騒ぎたいでしょうに」
美春はパスタを飲み込むとこう返す。
「でも自分ももう一人の男子もそういうタイプじゃないのであんまりそこはストレス感じないですね」
「あらそう。二人そろって大人なのね。…で?どうなの?IS学園は可愛い娘たくさんいるから彼女とかは」
「彼女とかはいませんけど…気になる子は…いるにはいます」
「その辺詳しく聞かせて!ここ女ばっかりだから恋バナとか久しく聞いてないの」
「実はその…二人くらいいまして…」
「キャー!そういうのそういうの!ちなみに聞くけど沙苗ではないよね?」
「沙苗さんはよきチームメイトって感じでやらせてもらってます」
沙世は美春の返答を聞いてホッと胸をなでおろす。
「よかった…。で?その二人はどんな娘なの?」
「一人はちょっと強引なところあるけどいざというときに引っ張ってくれたり自分のことを心配してくれる子で、もう一人はちょっと堅苦しいところもあるけど時々見せるあどけなさがいいというか…って何言わせるんですか」
「あはは!ごめんごめん。でも二人かあ…悩ましいねえ」
「…まだ自分の気持ちははっきりしてないのでしばらくはこのままだと思います」
「いいのいいの。そういう時期が一番楽しいんだから。精一杯青春しなさい」
沙世はそう言って席を立つと美春を射撃場へと案内する。
美春は沙世の後についていきながら先ほど話した内容を反芻する。
(俺ってあの二人をそんな風に見てたのか…)
美春は頭に浮かんだ二人の少女の笑顔に鼓動を早めながら射撃場へと向かうのであった。