いつもよりちょい短めです。
倉持技研の射撃場を訪れた美春は訓練用のISを貸与してもらい、搭乗する。
「本当にISに乗れるんだ…。疑ってたわけじゃないけど、実際この目で見るとちょっと感激するわ」
初めて男性がISに乗る姿を目の当たりにした沙世は小さな拍手をしながら感嘆の声を漏らす。
美春の横の棚には様々な種類の銃火器が並んでおり、男心をくすぐる。
まずは今の美春のISに搭載されているアサルトライフルを手に持ち、的に向かって数発撃つ。
決して悪いわけではないのだが、狙いをつける速度や時々ISの装甲に干渉するのが気になる。
「…あまりお気に召さない感じね。じゃあ次はアサルトライフルが置いてあった場所の上にある銃に持ち替えてみて。制圧力を重視した軽機関銃よ」
そう沙世に通信越しに言われて、美春は軽機関銃を手に取る。軽という漢字はついてはいるが、ずっしりとした重みが伝わってくる。これを片手で扱えるというのだからISというものは恐ろしい。
美春が持ち上げた感触を確かめていると、沙世から通信が飛んでくる。
「途中で撃つの止めちゃうと弾詰まっちゃうことがあるから一気に撃ち切っちゃって大丈夫だよ」
そう言われて美春は的に狙いをすまし、トリガーを引きっぱなしにする。怒涛の勢いで弾丸が発射されていき、美春の足元には空になった薬莢がバラバラと音を立てて落ちていく。
弾をすべて撃ち切った美春は弾の勢いに圧倒されたのかふうっと一息つく。
「ここまで撃った感触はどう?」
「どちらも威力的には申し分ないのですが、取り回しの難しさが気になりますね。特にこの機関銃だと途中で撃つの止めると弾が詰まるってのが引っ掛かりますね。かといってサブマシンガンみたいなものはISで戦うには威力不足のような気もするし…」
「なるほどね。このあとサブマシンガンも試してもらおうと思ってたけど君の言う通り威力はちょっと物足りないかも。…となれば、右端にある銃を取ってみて」
美春は指示された銃を手にする。
「これは…?さっきのアサルトライフルと同じように見えますけど…」
「銃身をよく見て。さっきのより短くなってるでしょ。これは所謂ショートバレルって言われるタイプのアサルトライフルで君みたいな威力は欲しいけど取り回しをよくしたいっていう人に向けて開発されたの。ISでの搭載例はまだ少ないかも」
「なるほど…。とりあえず撃ってみますね」
そういって美春はサッと銃口を的に向ける。沙世の言う通り先程までの銃に比べて格段に動かしやすい。
数発撃ってみたところ、的の中心にはなかなか当たらなかったが、相手がISと考えれば十分な命中精度だろう。
美春はこの銃への確かな手ごたえを感じながらあることを思いつく。
「すみません、これ両手に2丁持つことってできますか?」
「…男の子ね。理論的にも実戦的にも可能だよ」
沙世は呆れ半分に答える。
「じゃあ、最終版はそれでお願いします。両手で使えた方が都合がいいかなと思ったので」
「了解。こっちとしても数少ない実戦データが取れるから助かるわ。ちなみに中遠距離での支援射撃をしたいときは銃身を延長するアタッチメントがあるからそれで対応できるよ。」
「色々と至れり尽くせりな銃ですね」
「ユーザーって結構わがままなことを言ってくることが多いからね。それに応え続けた結晶だと思ってもらえれば」
「…自分も結構わがまま言っちゃったりしてます?」
美春はふと自分が失礼な態度をしていないかが気になり、問いかけてみる。
「これくらいは全然平気だよ。むしろこっちの都合を結構飲んでもらってるくらい」
沙世はなんてことない様子で美春に答える。
「良かったです。これで改修に向けての材料は揃いましたかね?」
「ええ。十分すぎるくらいに。最終確認をしたいからISを解除してこっちに来てちょうだい」
「わかりました」
そう言って美春はISを解除し、沙世の待つ別室へと向かっていった。
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こうして美春の初めての打ち合わせが終わった。ダンパーを組み込んだ手甲の設計作業から始めるとのことで、完成するのはお盆休み前ということになった。それまでは入学初期の頃と同じように学園に配備されているISで訓練するように伝えられた。
エントランスまで見送ってもらった美春は沙世にお礼を伝える。
「今日はありがとうございました。色々な銃を触れたり、普段したことのない細かい話ができて楽しかったです。
」
「こちらこそ。若いエネルギーを直に感じたから、こっちも元気貰っちゃった。それにあなた沙苗の言ってた通り自分の感覚を人に伝えるのが上手だから、ウチのテストパイロットに欲しいくらいだわ」
「そう言ってもらえて光栄です」
「じゃあ完成したらまた先生通して連絡するね。あなたの期待に沿えるように精一杯やらせてもらうわ」
「よろしくお願いします!ではまた伺います」
「またねー」
美春は沙世に頭を下げ、倉持技研の製作所を後にした。
(濃い時間だったなあ。学園で改修したときはこっちの要望を一方的に伝えることが多かったけど、今回は向こうから要望を聞き出そうとしてたもんなあ。それにしてもカッコいい人だったな…。後で石川さんに言っとこう)
美春は帰路につきながら今日1日の出来事を振り返る。とても一般の高校生では体験できないことを沢山させてもらった。
(精一杯作ってくれるって言ってたし、俺も頑張らないとな)
美春は新たな決意を胸に学園へと戻るのであった。