オリ主の練習回その2になります。
原作にないオリキャラも出てきます。
機体を動かす練習を始めてから3日ほど経ったある日の放課後、美春は相変わらず準備体操をしていた。
しかしながらこの準備体操の経験が機体のバランス制御に活きており、軽く走ったり跳ねたりする分には支障がない程度には扱えるようになってきた。
そして今は準備体操として新たに取り入れたジャンプ運動の真っ最中だった。
(そう言えば映画で見たヒーローがこんなこと言ってたな…)
「Sometimes you gotta run before you can walk.(時には歩く前に走ることも必要だ)」
(ひとつ言葉の力にあやかってみるか)
そう心の中でつぶやくと美春は機体の跳ねる高さを徐々に上げていった。
――トンッ、トーンッ、トーーーンッ
(今だ)
限界まで力をため込んだ体のバネを開放するのに合わせてスラスターの出力を一気に上げる。
そして、美春の乗るラファール・リヴァイヴは空高く飛び上がった。
勢い余ってアリーナの天井にぶつかるスレスレのところでスラスターの向きを変え衝突を回避する。
(危ねえ…ってか最初の水平移動もスラスターの出力が足りていなかったからトロかったのか)
新たな気づきを得た美春は引き続きアリーナの上空を飛び回る。やはり準備体操の経験がここでも効いているのか、姿勢を崩すことなく安定した飛行ができている感覚がある。
(次は着地か。足地面に向けてそのままスライド歩行すればいいか)
徐々に高度を下げていき、先ほどイメージしたとおりに体を制御する。
若干の不安はあったものの思いのほかイメージ通りに着地をすることができた。
―ドゴオン!
目の前の壁を見落としてたことを除けば。
幸い速度は落とせていたためアリーナの壁には大した傷はつかなかった。
(いてて…。とりあえずこれで第一関門は突破か。よし!)
美春は壁に貼りついた状態で心の中でガッツポーズを決めた。
そしてその一部始終を二人の女性が別々の場所で眺めていた。
(今日はこの辺で、といきたいところだけどまだ時間余ってるし武装の確認だけしておくか)
美春は姿勢を正すとコンソールを開きラファール・リヴァイヴに搭載されている武装を再度確認した。
ISには武器を量子化させて保存できる特殊なデータ領域があり、操縦者の意志で自由に保存してある武器を呼び出すことができるらしい。
とは言ってもコンソールのUIには呼出なんてボタンは存在しない。
どうしたものかと武装欄にあるアサルトライフルをじーっと眺めていると美春の左腕が光り、先ほど眺めていたアサルトライフルが現れた。
(なるほど、直接操作するんじゃなくてイメージしたら勝手に出てくるのか。便利だなあ)
感心しつつも手に持ったアサルトライフルの詳細を確認すると人間が扱うものとは違って大きさ的に片手でも扱えるように見える。
(とりあえず試し撃ちしてみるか)
アリーナの誰もいないところを狙ってトリガーを引く。反動は片手でも十分に受け止めることができ、やはり片手での運用を想定しているようだ。
授業や放課後の練習で撃った弾は回収するように事前に言われているため、後々のことを考えて乱射はせず数発セミオートで撃つにとどめた。
武装の呼び出し方がわかったところで、次はハンドグレネードの確認に移る。
コンソールに表示されていた武装をイメージすると再度左手が光り、パイナップルほどの大きさのハンドグレネードが現れた。
(でかっ。まあIS用だし握ろうと思ったらこれくらいがちょうどいいんだろうけど…)
周囲に練習している人がいる中で爆発させるのはいくら何でも危険すぎるため起爆方式だけコンソール上で確認することにした。どうやらレバーを引けば勝手に安全ピンが抜けて起爆する仕組みらしい。こちらも先ほどアサルトライフルと同様に片手での運用を想定しているようだ。
(両手に別々の武器持てるのはありがたいな。頭混乱しないか心配だけど)
ここは実戦でやってみるしかないかと割り切り、美春は練習を切り上げた。
整備室にラファール・リヴァイヴを戻し、帰路についている途中、美春の前にある女性が立っていた。
この前強引に練習の誘いを断ってしまったあの先輩だ。
「あ、どうも…」
「こ、こんにちは…」
二人の間に暫しの沈黙が流れる。耐えきれず二人は同時に切り出した。
「あの時はすみませんでした!」
「あの時はごめんなさい!」
「「え?」」
両者は相手の思わぬ言葉に困惑の声が出た。
「えっと、俺のほうはその、せっかくのお誘いを乱暴な感じで断っちゃって…それで次会ったら謝ろうと思ってて…」
「私のほうこそ強引だったわ。見ず知らずの人間にいきなり教えてあげるなんて言われたら警戒するのが当然だもの。断り方なんて気にしてないわ」
「じゃあ…一応、お互い様ってことで」
「そうね、お互い様ね」
そう言いながら二人は軽い笑みをこぼした。美春は心の霧の一部が晴れていくような心地がした。
「ところで先輩は何しにここへ?」
「単純に気になって見に来ただけよ。3日経ってもまともに動かせないようだったら改めて指導の提案をと思って。でも杞憂だったわ。あなた、センスあるわ。」
「ありがとうございます。先輩にそう言ってもらえると自信になります」
社交辞令感は否めないが経験者にそう言ってもらえるのは素直にうれしい。
その先輩はさらに話を続ける。
「良いものを見せてくれたお礼に一つ良い事を教えてあげる。来週対戦するセシリア・オルコットの専用機はライフルと無線遠隔装置によるオールレンジ攻撃を使う射撃特化型の機体よ。対策は難しいでしょうけど、何もないよりはマシでしょう?」
「あ、ありがとうございます!助かります!…でもなんで先輩がそんなこと知っているんですか?」
「そういえば私について何も話していなかったわね。私の名前はエミリー・エヴァンス。あの娘と同じイギリスの代表候補生よ」
「ええええ!?先輩も代表候補生なんですか!?でもなんで味方を売るようなことを…」
「代表候補生なんて案外ゴロゴロいるものよ。私と同じ学年にも、もう一人イギリスの代表候補生がいるし」
彼女は自身の特別さについて気にも留めてない様子で話を続ける。
「で、彼女の情報を渡した理由についてね。ほら、彼女自分の立場が特別だと思ってて少し高を括ってるじゃない?あのままでいられるとこっちも迷惑しちゃうし、ちょっとお灸をすえてあげようかなって。もう一人の男の子にも声をかけたんだけど篠ノ之博士の妹だっていう娘にとられちゃって」
「それで、俺に声をかけたんですね。納得がいきました」
「でもあなたの練習見てると彼女といい線いけるんじゃないかしら。まだ少し日数もあるし、頑張って」
「はい、今ちょうどコツを掴んできたところなんで、頑張ります!」
「その意気よ。それじゃあ、またね」
「はい、ありがとうございます」
美春が深く頭を下げると彼女は穏やかな顔つきでアリーナを後にした。
美春はふうっと一息つくと先輩から押された太鼓判を胸に刻み、駆け足で自室に戻っていくのであった。
そして数日後…
ついに決戦の日を迎えた。