翌日、寮に戻った美春は一夏から貰ったプールの割引券を手にラウラの部屋を訪れた。
部屋のドアをノックすると中からラウラが出てくる。
「美春か。何の用だ?」
物珍し気に聞いてくるラウラに美春は割引券を差し出す。
「実は一夏からプールの割引券を貰ってさ。良かったら今度一緒に行かないか?」
思わぬ誘いにラウラは頬を赤らめながら美春に問う。
「その…行くのは二人でか?」
「いや、一夏やみんなも来るとは思うけど…」
「そうか…。せっかくの機会だ。是非行かせてもらおう」
美春の返事にラウラは少し落胆したような様子を見せながらも美春の誘いに乗る。
「じゃあ詳しい時間とかはまた連絡する。用はそれだけだ」
「うむ、了解した。ではまたな」
ラウラは部屋に戻ると顔のニヤつきが抑えられずベッドに倒れこむ。
「ラウラ、どうしたの?そんなにうれしいそうな顔して」
同室のシャルロットが問いかけるとラウラは驚き飛びのく。
「シャ、シャルロット!?そんなに顔に出てたか?」
「うん、思いっきり」
その後一夏から誘いを受けたシャルロットが先ほどラウラと同じ表情を浮かべていたのは言うまでもない。
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数日後、いつものメンバーがプールの入口前に集合する。
一夏から誘いを受けた少女たちは心なしか落ち込んでいるような様子が見受けられる。
恐らく二人きりで遊びに誘われたと勘違いしていたか一夏の説明不足かのどちらかだろう。
「あはは…ラウラも一緒だったんだね」
「うむ、皆も来ると聞いていたから特段驚きはしなかったが、シャルロット達は聞いていなかったのか?」
「いや…うん、まあそうだよね。あはは…」
シャルロットの笑い声に力がこもっていないことにラウラは不思議で仕方がないといった様子だった。一夏も同様にみんなの反応に理解が追い付いていないようだ。
「みんなそんなにガッカリしてどうしたんだ?」
「な、なんでもありませんわ…」
「そうだ…一夏はそういう奴だった…」
「信じたアタシが馬鹿だったわ…」
皆口々に不満を漏らす。美春は落ち込む女子たちに同情の気持ちを覚えるのだった。
「じゃあ早速入ろうか」
美春が励ますように先導していき、一同はそれに続いて入場していった。
着替えを終えて一夏と一緒に女性陣を待っていた美春はプールの全体を見渡す。
(プールなんて学校の四角いのでしか泳いだことなかったけど、今はこんな施設があるのか…)
流れるプールに小さい子供が遊べるような浅いもの、更にはウォータースライダーなどプール慣れしている美春にとっても新鮮な景色がそこには広がっていた。
そうこうしているうちに女性陣が合流する。
みんな臨海学園とは違い、少し動きやすい水着を新調したようだが、ラウラだけは当時と同じ黒い水着を身に着けていた。
それに気づいた美春はラウラに声を掛ける。
「ラウラ、やっぱりその水着似合ってるよ」
美春に不意に褒められラウラは顔を真っ赤にする。
「これは…その、他に着ていくものがなかっただけで…」
必死に誤魔化そうとするラウラにシャルロットが割って入る。
「折角美春が選んでくれたやつだもんねー」
「そうか、気に入ってくれてよかった」
「いやっちが…これは、その…」
ラウラは上手い返しが思い浮かばずしどろもどろになる。その様子をシャルロットが微笑ましく見守っていた。
「じゃあみんな集まったことだし、遊ぶぞ!」
一夏の号令にみんなが続く。
美春たちは噴水のトンネルをくぐり抜けてみたり、ウォータースライダーで思い切り滑ってみたりと思い思いに楽しんだ。
途中、フロートを渡っていくウォーターアスレチックに行ったときは他の面々が次々と脱落していく中、美春だけ抜群のバランス感覚でスイスイとフロートを飛び越えていき、クリア記念のかき氷を貰った。
美春がかき氷を食べてながら中央のプールで遊んでいる一同を眺めていると、隣に鈴が座り込む。
「皆のところ行かなくていいのか?」
「アタシは疲れたからちょっと休憩。にしてもアンタさっきの凄かったわね」
「自分でも何でかわかんないんだよ。もしかしたら鈴とラウラとの特訓のおかげかもしれないな」
「じゃあそのかき氷はアタシとラウラのおかげってことでもあるわけね」
鈴がいたずらっぽく笑って見せるが、美春の顔は真剣になる。
「そういうことになるな…。少し食べるか?」
「いいの?やったー!作戦成功!」
鈴は大はしゃぎするが美春はしてやられたと頭に手を当てる。
「初めからそのつもりだったのかよ…」
「でもアタシ間違ったこと言ってないしー。あー美味しい」
かき氷を笑顔で口に運んでいく鈴だったが、途中である事実に気づく。
(あれ?このストローって美春が使ってたやつよね。ってことは…かかかかか間接キス!?)
衝撃の事実に気づいた鈴は顔が一気に赤くなりかき氷を美春に突き返す。
「あれ?もういいのか?」
「も、もう十分よ!それにクリアしたのはアンタ自身なんだしアンタが最後まで食べなさい!アタシは皆のところ行ってくる!」
そういって鈴は駆け足で中央のプールに向かっていった。
何が起こったのかわからず引き続きかき氷を食べ続ける美春だったが、食べ終わった後に同じ事実に気づき彼もまた顔を赤くするのだった。
プールを遊び切った一同はプールに併設されている縁日コーナーへとやってきた。
水着から浴衣に着替えた一同を見て美春は思わず感心する。
「おお~!外国の美人さんたちの浴衣姿は映えるねえ~」
「うふふ、美春さんったらお上手ね」
セシリアが素直に受け取り笑顔を浮かべる。
「一夏、その…私はどうだ?」
箒が不安気に一夏に問いかける。
「うん。箒も似合ってるよ」
「そうか。よかった…」
一夏の答えに安心したのか箒も笑みを浮かべる。
縁日コーナーでは一夏がスーパーボールすくいの才能を開花させたり、代表候補生組が射的で片っ端から景品を獲得して担当者から引き止められたりと驚きと笑いの絶えない時間を過ごした。
そして夕方になり帰りのバスに乗っている道中。
一同は遊び疲れたのかバスに揺られながら眠りについている。
そんな中美春だけは織斑先生から届いたある連絡に胸を躍らせていた。
打鉄・甲式の改修が完了したとの連絡だ。