クラス対抗戦前日の昼休み。いつもの4人で昼食を囲んでいるが、そこに鈴の姿はない。
一夏曰く、ここ数日鈴から避けれているようで会話もまともにできてない状態らしい。
(あんだけ喋っても、すっきりしたから仲直りとはいかないよな。一応悪いのは一夏だし)
「鈴の奴、一体どうしたんだろうな」
一夏は皆目見当がついていないようで、困惑の声を漏らす。
美春は事情を知ってはいるものの、ここで伝えるのは彼女からの信頼を落とすことにつながりかねないため、敢えて的外れな励まし方をする。
「自分の手の内がバレたくないとかじゃないか?対抗戦が終わったらきっと元通りになるって」
「…そうだよな。対抗戦の準備で忙しいだけだよな」
予想以上に素直に受け止められてしまったため美春は言葉に詰まってしまったが、セシリアと箒が後に続くように一夏を激励する。
「一夏さん、絶対優勝してくださいね。デザートのために」
「またこの間みたいな無様な姿見せたら承知しないからな」
「ああ、絶対に勝ってみせるさ」
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そして迎えたクラス対抗戦当日。1組のクラス代表の一夏とそのサポートとして入室を許可された美春はアリーナのピットで白式の最終確認を行っていた。
「どうだ一夏、いけそうか?」
「ああ、いつでも大丈夫だ。」
白式に既に搭乗している一夏は準備万端といった様子だ。
「しかし、なんでサポートクルーが俺なんだ?技術方面の知識は全然ないのに。整備課の子連れてきたほうが絶対よかっただろ」
「女子が一人付いていくっていうのを危惧してじゃないか?変な噂立ちそうだし」
意外にも核心を突いた返答をする一夏に美春は目を丸くする。その勘の良さを鈴との約束でも使ってやれよ…。
そうこう話しているうちに出撃のアナウンスが聞こえてくる。
「よし、じゃあ行ってくる」
「おう、頑張れよ」
一夏がピットから飛び立つと既に出撃していた鈴が怒りに満ちた様子で待ち構えていた。
「アンタ、なんで謝りに来なかったのよ」
「なんでって、お前が避けてたからだろ。それに俺が謝る要素どこにあるんだ」
「~~~~ッ!あったまきた!一夏、覚悟しなさい!」
試合開始のアナウンスが鳴ると同時に鈴は彼女の専用機甲龍(シェンロン)の左右の翼から見えない砲弾、龍咆(りゅうほう)を放つ。
数発は喰らってしまったものの、ハイパーセンサーが検知する空間の歪みで砲弾を感知できることに気づいた一夏は機体を高速移動させ砲弾の雨をかいくぐる。
「なかなかやるじゃない。だけどこれはどう?」
そういうと鈴は両手に持っていた青龍刀、双天牙月(そうてんがげつ)を連結し、一つの双刃剣にすると一夏目掛けて放り投げる。
龍砲の砲弾に気を取られていた一夏は投擲された双天牙月を懐にもろに食らってしまった。
「ぐっ…!さすが代表候補生、やるな!」
「どう?謝る気にはなった?」
「だから何に謝るっていうんだよ」
「…!まだわからないようね。これでも食らいなさい!」
鈴は龍砲の弾幕をさらに濃くする。一夏はすんでのところで回避しながらあることの準備をしていた。
(遠くで動き回っても埒が明かない。千冬姉から教えてもらったあの技を使うときか…)
弾幕が途切れたタイミングで一夏は零落白夜を起動し、構えを取る。
「その距離から切りかかるつもり?龍砲の餌食になるだけだと思うけど?」
鈴の挑発は意に介さず、一夏は集中し、深呼吸をひとつ。
(今だ!)
一夏の駆る白式は猛スピードで前進し、甲龍の眼前まで迫り寄る。
(これは…瞬間加速(イグニッション・ブースト)!?)
驚きで動けない鈴を捉え、その勢いのまま一夏が刃を振り下ろそうとしたその瞬間。
――ズドォォン!――バギャァァアン!!
アリーナ上空のシールドが破壊され、破壊された穴から正体不明のISが入り込んできた。
驚いて切りかかるのをやめた一夏はその場に呆然と立ち尽くす。
「何だよ…あれ…」
そのISは二人を見つけると腕部を向け射撃体勢に入る。
「二人とも、避けろ!」
美春からの無線でハッとした一夏は動けなくなっていた鈴を抱きかかえ、放たれたビームを間一髪で避けた。
「ちょっと一夏!何するのよ!放しなさい!」
一夏の腕の中でじたばたとする鈴を開放すると顔を真っ赤にした鈴は一夏に問いかける。
「っていうか何なのよあれ。見たことないわ」
「俺もだ。一つ確かなのは味方ではなさそうだ。…鈴、協力してあれを止めるぞ!」
「アンタ本気で言ってるの!?アリーナのシールド壊すくらいの威力あるのよ?敵うわけ…」
「それでもやるんだ」
「ああ、もう!わかったわよ!どうなっても知らないからね!」
そういって二人が正体不明のISと対峙すると美春からの無線が入る。
「一夏、聞こえるな?戦うのはいいけど、まずは観客の安全が第一だ。あのビームが観客席に向かわないようにうまくやってくれ」
「わかった、やってみる。鈴、何はともあれもう少し高度を上げよう。今のままだと観客席に流れ弾当たるかもしれない」
「了解、アンタ意外と冷静に周り見れるのね」
「優秀なサポーターのおかげだ」
二人は水平方向に観客席がない高さまで上昇する。これで観客席に弾が向かう可能性はうんと下がった。
正体不明機は二人に銃口を向けレーザービームを発射した。
二人はすんでのところで回避し、鈴は龍砲の射撃を開始する。
射撃に気を取られているうちに奇襲を仕掛けようとする一夏だったが中々隙を見せてくれない。というよりかは射撃をしながらずっとこちらを見られている気分だ。
いくらハイパーセンサーがあるとはいえ、その動きはあまりにも機械的だ。
(機械…?まさか…)
ある仮設を立てた一夏は鈴に通信を飛ばす。
「鈴!もしかしたらなんだが、あの機体、無人機じゃないか?」
「無人機!?そんなわけ…」
「人が動かすにしてはあまりにも無茶な動きをしてくるんだ。そっちの方が辻褄が合わないか?」
「だとしても、どうすりゃいいってのよ!」
「それは…」
二人が考えあぐねているとアリーナの放送から怒号が飛んでくる。
「一夏!男ならそのくらいの敵に勝てなくてなんとする!」
…箒だ。放送席でマイクを奪い取って話しかけているらしい。
無人機と思われる正体不明機は音声に反応してか放送席に銃口を向ける。
美春はその様子を見て強い危機感を覚える。
(まずい…!放送席は今戦っている高度のちょうど真横だ。しかもあの機体が放送席と二人の間に立っているし二人とも距離が離れてる。助けに入っても間に合わない可能性が高い…!)
美春は慌ててピットを見渡し、鎮座している打鉄を見つけて乗り込む。
跳躍して追いつきたいところだが地面に着地している暇はない。
再度周囲を見渡し、足場になりそうな場所を探す。
(2階席…!あそこから斜めに跳べば…)
一方そのころ一夏と鈴も箒を助ける手段を模索していた。
「…でもそんなことをしたらあんたが!」
「追いつくにはこれしかないんだ、頼む!」
「わかったわよ!そのあとのことは自分でどうにかしなさいよ!」
放送席に向かってビームが発射されたその瞬間。
美春は2階席の壁を蹴って跳躍し、一夏は龍砲を背中に受けた勢いを乗せた瞬間加速で無人機に接近する。
…放送席周辺に煙が立ち込める。