空き家は蔦に絡め取られ、骨のように痩せた柱を晒しながら、半ば朽ちかけていた。かつては誰かが暖を取り、食を分かち合っていたのだろう。崩れかけた煙突からは、今はもう何の煙も立ち昇らない。日は既に山の稜線に半分身を沈め、辺りは橙と藍が溶け合う、頼りない残光に包まれていた。
僕たちは少し離れた茂みに身を潜めていた。視線の先、二頭の影が蠢いている。丸みを帯びた灰色の体、剥き出しの前歯。土の匂いに混じって、獣とも違う、腐りかけた果実のような饐えた臭いが鼻先を掠める。中型犬ほどの大きさだろうか、鼻面を地面に擦りつけながら、餌を漁っているようだった。
「思ったより、デカイな……それにしたって気持ち悪ぃ」
カイが声を潜めて言う。
「静かに。聞こえたら襲ってくるぞ」
僕は小さな声でカイを窘めた。
「で? どうするんだ? 既に二匹外に出てるぞ」
「そうだね……どうしようか」
◆◆◆
遡ること少し前。向かう途中、僕は作戦について話していた。
「何匹いるか分からないけど、全て倒す必要もないと思う。スキーヴァーだって動物だし、怖い思いをすれば、二度と近寄らないだろ?」
「たしかに。で、どうやってやるんだ?」
「煙突から、火をつけた枝木なんかを投げ入れて煙を起こす。そこから燻り出されたやつを仕留めればいい。これなら中に踏み込まなくて済むし、遠くから弓や魔法で攻撃できるよ」
「煙突なんかあるのか? なかったらどうする?」
カイが怪訝な顔で聞いてくる。
「あるに決まってる。こんな寒い地方なんだから、暖炉がない家なんて作らないよ。家の中で火を起こすんだから、排気口は必ずある」
僕が根拠を持って答えると、カイは納得したように軽く首を縦に振った。
「俺は何をすればいいんだ?」
レンが純粋な疑問を投げかけてくる。
「驚いて出てきたやつが襲いかかってくることもあるだろう。そいつらから僕らを守ってほしいんだ。距離を詰められると弓はキツいし、僕も咄嗟に魔法をまだ放てないから」
「わかった。その時は任せてくれ」
「追い払うだけでジャルデュルは納得するかな? 嘘ついてると思われるかもしれないぜ」
カイが肩を回しながら聞いてくる。
「大丈夫。彼女はスキーヴァーを殺せとは言ってない。退治しろと言ったんだ。まさか証拠に首を持ってこいなんて言わないだろ? だから、そこから居なくなれば問題は解決するってことさ」
◆◆◆
そして今に至る。状況は、僕の想定に反してスキーヴァーは二頭、見張るように徘徊している。さらに悪いことに、煙突はあるものの崩れていて、建物も穴だらけで、獣道のようにどこからでも出入りできそうだった。夕暮れの風が、崩れた壁の隙間を掠めるたびに、獣の唸りにも似た低い音を残していく。
「一度戻って、仕切り直さないか?」
レンが心配そうな顔で提案してくる。
「もう夕方だ。仕切り直してたら夜になる。余計に分が悪い」
カイが答える。その声には、確かな焦りと苛立ちが滲んでいた。西日が、彼の横顔に濃い陰影を刻んでいる。
「予定外だけど、仕方ない。カイ、あの二匹を狙えるか?」
「ああ、やってみよう」
そう言うと、カイは背中の弓を取り出した。続けて矢筒から矢を引き抜き、番える。淀みのない、流れるような手さばきだった。カイが矢を放つ前に、僕はレンに耳打ちした。
「外したら、こちらに襲いかかってくるかもしれない。用心してくれ」
レンは黙って小さく頷くと、腰の斧を静かに引き抜き、低く身構えた。
弦がギリッと軋む、乾いた音。それに重なるレンの静かな息遣い。僕の心音も、それに呼応するように速さを増していく。まもなく、戦端が開かれる。
――ヒュッ。トスッ。
あたりの静寂を、カイの放つ矢が一直線に切り裂いた。矢はスキーヴァーの首筋に、鈍く重い音を立てて突き刺さる。スキーヴァーは声を上げることもなく、崩れるようにその場に倒れて動かなくなった。もう片方は驚いたのか、鼻先を持ち上げ、鋭く辺りを警戒し始める。
「すげぇ……」
僕とレンは、思わず同時に呟いた。
「あと一匹……」
そう呟きながら、カイは再び弦を引き絞る。しかしその右腕は小刻みに震え、顔は険しく歪み、額には汗が浮いていた。狼に噛まれた古傷が、今になって疼き出しているのだろう。
痛みに耐えながら、二の矢を放つ。矢は同じく真っ直ぐに飛び、狙いも定まっていたはずだったが、惜しくもスキーヴァーの左肩を掠めるように命中した。
――ギピィィッ!!
スキーヴァーは悲鳴を上げながらのたうち回り、壊れた壁の穴へと、血の尾を引きながら廃屋の中へと転がり込んだ。
中では、複数の唸り声が呼応するように渦を巻いた。爪が床板を掻き毟る乾いた音。それはまるで、闇そのものが息を吹き返し、蠢いているかのような、粘りつく不気味さを孕んでいた。
その時だった。斜陽に切り取られた壁の割れ目の奥に、大きく不気味な赤い光が覗いた。刹那、視線が交わったような気がした。これほど離れているのに、気付かれたというのか――背筋を、冷たい何かが這い上っていく。茂みから飛び出すべきか、それとも音を殺して身を隠し直すべきか。判断のつかないまま、僕の思考だけが空しく空回りしていく。
「悪ぃ、外した……」
カイが力なく言う。右腕の痛みが激しいのか、顔が苦しげに歪んでいた。
「仕方ねぇよ。腕を痛めてるんだし、無理すんな。一匹仕留めただけでも、すごいじゃないか」
レンがカイを励ますように言った。
レンの言う通り、カイの弓は、想像以上だった。しかし、僕はそれを素直に喜べなかった。
「嫌な予感がする……」
レンとカイが、何のことか分からないといった顔をする。だが、それを説明する間もなかった。
空き家の中で、二つの鳴き声が縺れ合うように渦を巻く。一つは甲高く、逃げ込んだあの個体のもの。もう一つは――
――グルォォォォ。
野太く、腹の底から響くようなくぐもった唸り声が、威嚇するかのようにあたりを揺らした。その声とほぼ同時に、声の主は廃屋の壁を内側から突き破り、瓦礫と共にその姿を現した。
漆黒の毛に覆われた巨躯。体高は人の肩に届くほどもあるだろうか。剃刀のように鋭利な牙が、大きく開かれた口の奥で妖しく光っている。人の腕ほどもある太い尾を、鞭のようにしならせながら地面を打ち鳴らしていた。その凶悪な出で立ちは、ただのスキーヴァーとは、明らかに一線を画していた。
「……おいおい。なんだよあれ、あんなの聞いてねぇぞ」
「スキーヴァーなのか? あまりにもデカすぎる……」
あまりに想定外の事態に、僕たちはただ立ち尽くすことしかできなかった。
化け物は後ろ足で立ち上がり、鼻先を天に向けて僕らの匂いを探っている。ひとしきり嗅ぎ回った後、悟ったかのように太い首をこちらへ擡げた。血のように赤い眼が、真っ直ぐに僕らを射抜く。
――グォォッ!!
叫び声とともに、四本の足で地を蹴り、こちらに向かって突進してくる。僕は恐怖に喉を締め上げられ、声すら出せなかった。
最初に狙われたのはカイだった。彼もまた恐怖に足を縫い止められたのか、その場に立ち尽くしている。白く巨大な牙が、瞬く間に目前へと迫った。
最早これまでか――
そう思われた刹那、灰緑の太い腕がカイの体を横合いから突き飛ばした。カイは弾かれるように地を転がり、間一髪のところで牙の餌食になることを免れる。
巨獣の突進をまともに受けたレンは覆いかぶさられてどうなっているか見えない。茂みの中に舞う土埃が余計に見えにくくする。
「レ、レン!!」
ようやく僕は声を絞り出せた。
恐る恐る回り込んで見てみると、喰われたかと思われたレンは、斧の柄を横にして牙を受け止め、ぎりぎりのところで踏みとどまっていた。だが、馬乗りにされてしまえば、さすがの怪力も分が悪い。牙は、レンの顔のすぐ寸前でかろうじて押し止められているに過ぎなかった。柄に牙がくい込んで軋む音がする。じり、じりと、その距離が針の先ほどずつ、確実に詰まっていく。
「ち、畜生が! レンを離しやがれ!!」
我に返ったカイが矢を放つ。矢は見事、横腹に吸い込まれるように命中した。巨獣は不気味な悲鳴を上げ、身を翻してレンから離れる。血の滴る脇腹を庇うように、じりじりと距離を取り、こちらを警戒し始めた。
レンが素早く身を起こし、斧を持ち直して構える。頬には数本の切り傷が赤く走っていたが、幸いにも大怪我には至っていないようだった。
黒い巨躯が後ろ足で立ち上がり短く牙を打ち鳴らすと、廃屋の奥へ向けて低く唸った。それに応えるように、二つの影が壁の穴から滑るように現れる。数を、味方に呼び戻したのだ。三対一という、辛うじて保っていたはずの数的優位さえ失った
――手負いのまま逃げ込んだあの一匹の姿は、そこになかった。深手を負い、もはや戦う力も残っていないのだろう。奥のどこかで、息を潜めているに違いない。今はそれを気にかけている余裕などなかった。
このまま三匹を同時に相手取るのは自殺行為に等しい。戦力を分散させ、各個撃破するしかない。そのためには、大型個体の注意を誰かが引き付けておく必要があった。少々酷な頼みだが、引き受けてもらうしかない。僕は声を張り上げる。
「カイ! しばらくそのデカいのを引き付けておいてくれ!」
カイは目を丸くして聞き返す。
「はぁ!? そんなこと出来ねぇよ! 無茶言うな!」
悲痛な叫びに心が痛むが、迷っている余裕はなかった。
「先に小さい二匹を片付ける! それまで何とか耐えてくれ! お前にしか頼めないんだ!」
「ふざけ……うわぁぁっ!」
会話の隙を突き、獣牙が襲いかかる。カイはすんでのところでそれを躱す。転がるように距離を取りながらも、その身のこなしには、敵の動きをしっかりと見切っている確かさが滲んでいた。幸か不幸か、真紅の眼はカイに執着しているようだった。
「任せたぞ!」
そう言うと僕は、目の前の敵に集中する。
通常個体のスキーヴァー二匹が、僕とレンを扇状に取り囲むように、じりじりと間合いを詰めてくる。二人は自然と背中合わせになり、それぞれ身構える。レンが振り返らずに耳打ちする。
「一人一匹ずつだな。やれるか?」
「……やるしかないよ。出来なきゃ、死ぬ」
背後では、カイの怒声と、大型個体の唸り声とが交互に響いていた。土を蹴る音、何かが崩れ落ちる鈍い響き。視界の端で、土埃が薄闇に白く舞い上がるのが見えた。あちらも、まだ持ちこたえている――そう信じるしかなかった。
スキーヴァーが低い唸り声を上げながら、さらに間合いを詰めてくる。後ろ足を深く沈み込ませるその姿勢から、飛びかかろうとしているのが見て取れた。
――躱されれば終わりだ。先手を取る。
制御よりも速度を求めて集中する。躊躇うことなく両の掌に力をかき集め、練り上げる。それは、これまでとは比べ物にならないほどの、熱い奔流だった。僕は狙いを研ぎ澄ますのではなく、力を解き放つように掌を押し出す。
「当たれ!」
放たれた炎は、まるで火炎放射器のような勢いでスキーヴァーへと直撃した。炎は瞬く間にその全身を舐め尽くし、一匹は声を上げる間もなく、黒い炭と化して地面に伏した。
勝利の余韻に浸るまもなく、代償はすぐに訪れた。指先から肘にかけて、痺れにも似た熱が這い上り、視界の端が僅かに白く滲んでいく。膝が笑いそうになるのを、僕は奥歯を強く噛んで堪えた。
「……もう一匹、来る!」
レンの声が、僕を現実へと引き戻した。その声とほぼ同時に、スキーヴァーが跳躍し、レンの首筋めがけて牙を突き立てようとする。
「むぅぅん!」
レンは斧を両手で握り直した。肩から腕にかけての筋肉が、青筋を立てて盛り上がる。渾身の力を込め、獣の脳天へと斧を振り下ろした。
頭骨の砕ける鈍い音が響き、片方の目玉が飛び出す。スキーヴァーは地面に叩きつけられたまま完全に沈黙した。
「とりあえず、二匹は潰せたな」
「ああ。問題は、あいつだ……」
僕は息を整えながら視線を巡らせた。巨獣とカイは、依然として睨み合ったままだった。両者とも息が上がり、消耗の色が濃い。獣は弓を強く警戒しているらしく、カイが構えるたびに距離を取ろうとする。カイもまた、迂闊に矢を放てば躱された隙を突かれると分かっているのか、不用意に動けずにいた。そこには危うい均衡が、辛うじて保たれているように見えた。
「遅せぇんだよ、お前ら! もうこっちは限界だぜ!」
カイが、駆けつけた僕たちに声を張り上げる。土壇場での善戦は、本当によく耐えてくれたと言うほかない。一人に任せきりにしてしまったことに、僕は密かな後ろめたさを覚えた。
スキーヴァーが、こちらに気づいた。血のように赤い眼が、僕らを射抜くように睨む。既に手勢の二匹は絶たれ、形勢が逆転したことを悟ったのだろう。視線をこちらに据えたまま、獣は廃屋の方へとゆっくり後ずさり始めた。
既に息の上がったカイが、その隙を見逃すはずもなかった。
「逃がさねぇ……」
素早く矢を番え、頭を狙って放つ。だが狙いは僅かに逸れ、スキーヴァーは身を屈めてそれを難なく躱した。疲労と痛みが、確実に精度を蝕んでいる。それを見て、レンが叫んだ。
「もう十分だ! 休んでろ、囮には俺がなる!」
休めと言われても、今更退けるものか。カイは唇を噛み、弓を下ろさないまま、その場に踏みとどまった。
「こっちだ!この化け物が!」
レンは声を張り上げながら、大きく円を描くようにして獣の意識を僕らから引き剥がしていく。
カイが僕に身を寄せ、耳打ちした。
「俺たちの弓や斧だけじゃ、あいつに致命傷は与えられそうにない。でも、お前の魔法なら…殺れるかもしれない」
カイの言葉に、僕は短く頷いた。作戦を練る余裕などない。それでも、それぞれが果たすべき役割はわかっていた。
カイが矢を番え、放つ。狙いは急所ではなく、あくまで注意を逸らすための一射だった。矢は巨躯の肩口を掠め、獣の意識を僅かに散らす。
「今だ!」
付かず離れずの距離を保っていたレンだったが、その刹那、地を蹴って一気に間合いを詰める。振り上げた斧を、前脚に叩き込む。
漆黒の巨躯が痛みのあまり甲高い悲鳴を上げ、血飛沫が夕闇に赤黒く舞う。
前脚に深手を負って怯んだように見えたが、鞭の様な尻尾をしならせ、レンに叩きつけた。直撃の瞬間、爆ぜるような音が響く。
「うぐぅっ!」
レンは衝撃で吹っ飛ばされ、うつ伏せに倒れ込む。痛みで蹲って動けないようだった。無防備な状態で追撃に遭うと思われたが、巨獣は後ろ足で大地を踏み鳴らして威嚇するに留まった。その動きは明らかに精彩を欠いていて、度重なる出血が、巨躯の力を確実に削いでいる事が見て取れた。
僕がレンを助けに行こうと駆け出したその時、カイが声を張り上げる。
「ジュンヤ! 今だ!」
「え…でもレンが…」
「つべこべ言うな!俺たちの働きを無駄にする気か!?」
カイの叫びに、優先すべき事に気づかされる。僕は掌に意識を集中させた。既に一度、大きな魔力を引きずり出した後の腕は鈍く痺れ、思うように力が練り上がらない。それでも、止まるわけにはいかなかった。
僕は横合いから回り込むようにして、巨躯の正面に立ちはだかった。
――無駄にはしない!ここで、終わらせる。
震える指先に無理やり力を注ぎ込む。身体中を流れる魔力が掌の中心に凝縮していくのが分かった。
「喰らえ……!」
両掌から放たれた炎は螺旋を描き、やがて1つの火炎柱として収束していく。それは傷を負い動きの鈍った巨躯を、真正面から呑み込んだ。
獣は絶叫し、業火に包まれながらのたうち回る。黒煙を纏った巨体が、狂ったように地を転がった。逃げ場を求めてか、それとも本能のままにか、燃え盛る体のまま、破れた壁の穴から――半壊した廃屋の中へと、転がり込んでいく。
「まずい、引火する!」
僕の叫びも虚しく、屋内からはたちまち白い煙が立ち昇り始めた。乾ききった木材は、火種を待ちわびていたかのように、あっという間に炎を纏っていく。パチパチという爆ぜる音が、瞬く間に轟音へと変わった。屋根裏の梁が悲鳴のように軋み、崩れ落ちる音が続く。
橙色の光の中、断末魔じみた獣の唸りが一度、二度と響き――そして、静かに止んだ。
崩れ落ちる屋根の下から、もう二度と、あの赤い目が覗くことはなかった。
誰も、しばらく言葉を発せなかった。ただ、燃え上がる炎を、呆然と見つめることしかできなかった。爆ぜる音に混じり、時折、木材が崩れ落ちる重い音が響く。やがて夜の帳が下りかけた空に、黒々とした煙が、真っ直ぐに立ち昇っていった。
「……終わった、のか」
レンが、うつ伏せから起き上がり当たりを見回しながら言う。カイが安堵の表情を浮かべながら答えた
「ああ、さすがに死んだだろ。でも……」
僕もまた、その場に膝をついた。全身から、一気に力が抜けていく。
「なんて説明すればいいんだよ…」
その呟きに、誰も答えられなかった。ただ、燃え盛る家屋を、いつまでも見つめ続けていた。
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黒煙は、夕闇に沈みかけた空に、いつまでも太い筋を描き続けていた。それは、村のどこからでも見上げられるほどの高さにまで、真っ直ぐに立ち昇っていく。
どれほど経った頃だろうか。遠くから、複数の足音と、慌ただしい話し声が近づいてくるのが聞こえた。
「おい、あそこ見ろ! 空き家の方から煙が!」
「まさか、山火事か!?」
松明を手にした村人たちが、次々と姿を現す。その先頭には、見覚えのある衛兵の姿もあった。彼らは燃え盛る廃屋と、その傍らに座り込む僕たち三人の姿を目にすると、一様に息を呑んだ。
「お前ら……一体、何があった」
衛兵の誰何するような声が、静まりかけた炎の音に重なる。
僕は、乾いた喉から、どうにか言葉を絞り出そうとした。だが、疲労と、これから説明しなければならない厄介事の重さを前に、すぐには声が出てこなかった。
燃え尽きようとする廃屋を背に、僕らはただ、村人たちの視線を受け止めることしかできなかった。