ありふれたギャルは世界最狂   作:バグッた左スティック

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しばらくは書き溜めしていたやつを投稿していきます


#3虚飾の数字と、規格外のマイペース

王宮の一室。

 

異世界に召喚されてから初めての本格的な講義とやらで、クラスメイトたちは整然と並べられた椅子に座らされていた。

 

教壇に立つのは、神聖教会の高位神官か何やら難しい顔をした偉い老人だ。この世界の歴史や地理、魔物についての説明が延々と語られている。

 

(……ねむ……ていうか、言ってることがファンタジーすぎて逆に頭に入ってこないし……)

 

前日からの怒涛の展開と、慣れない環境での疲れもあってか、ハジメはぐにゃりと姿勢を崩し、こっくりこっくりと船を漕ぎ始めていた。あわや机に突っ伏して本気で寝落ちそうなその瞬間――。

 

「おい、南雲。起きてろ、話が進まねぇだろ」

バシッ、と隣の席から容赦ない手刀がハジメの肩に飛んできた。清水だ。

「いったぁ!? なにするわけ清水サン! あーしは今、深い思考の海に……」

「思考の海じゃなくてただヨダレ垂らしかけてただけだろ。いいから前向け、先生が見てるぞ」

 

清水に呆れたように指摘され、ハジメが「うっ……」と慌てて姿勢を正すと、斜め前の席からこちらを振り返っていた香織と目が合った。

 

香織はハジメの寝ぼけたやり取りを見て、ふふっと楽しそうに目を細め、まるで見守るような慈愛に満ちたニコニコとした笑みを浮かべていた。

 

そんなハジメの緊張感のない様子を、少し離れた席から見ていた雫は、スッと深い溜息をついて呆れ混じりに首を振った。

「……全くあの子は、いついかなる時もマイペースというか、危機感がなさすぎるというか……。もう少し場をわきまえなさいよ、まったく……」

 

やれやれと呆れながらも、雫はどこか呆れつつ目が離せないといった様子でハジメから視線を戻すのだった。

 

 

そして――翌日、王宮の広大な訓練場。

 

日差しが照りつける石造りの広場に集められたクラスメイトたちの前で、豪快な顎髭を蓄えたごつい鎧姿の男が、両手に銀色の金属プレートの束を抱えてドンと立っていた。

 

「よし、全員揃ったな! オレはこのハイリヒ王国で騎士団長を務めるメルド・ロギンスだ。神聖教会からの頼みで、今日はお前たちにこの『ステータスプレート』を配る! まぁ、これからお前たちの命を預かる……そして、命を懸けてもらう身だからな。まずは自分にどんな力や適性があるのか、しっかり把握してもらう必要があるわけだ!」

 

その後メルド団長の横に整列していた騎士団の面々によりクラスメイト達にそのステータスプレートが配られていく。

 

「よし、全員に配り終わったな? このプレートは。文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。最も信頼のある身分証明書でもある。これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」

 

メルドはフランクに髭をかきながら、豪快に説明を続ける。

 

「使い方は簡単だ。支給されたそのプレートに、自分の指先をちょこっと傷つけて血を垂らしてみろ。そうすれば、この世界の神から授かったお前たちの『天職』と『能力値』が浮かび上がるはずだ。……あ、ちなみに言い忘れてたが、このプレートがどういう魔法の原理で文字を浮かび上がらせてるとか、そういう難しいことはオレたちもさっぱり知らん!なにせ神代のアーティファクトの類だ 聞かれても答えられんから、質問は一切受け付けんぞ!」

「アーティファクト?」

 

アーティファクトという聞き慣れない単語に光輝が質問をする。

 

「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。まだ神やその眷属達が地上にいた神代に創られたと言われている。そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。身分証に便利だからな」

 

なるほど、と頷き生徒たちは顔を顰しかめながら指先に針をチョンと刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。プレートの表面に透き通るような文字が次々と浮かび上がり始めた。

 

「えっ、なにこれ……数字がたくさん出てきたんだけど」

「私の筋力『45』……? これって高いの、低いの?」

 

クラスのあちこちから、自分のプレートを覗き込みながら戸惑いの声が上がる。何が何だか分からず首を傾げる生徒たちを見かねて、メルド団長が豪快に髭をかきながら声を張り上げた。

 

「おっと、戸惑うのも無理はないな! よし、簡単に説明しておこう。そこに浮かんでいる一番大きな項目が、神からお前たちに与えられた『天職(クラス)』だ。文字通り、この世界でどんな役割や生き方に向いているかを示す天性の適性だな。で、その下の並んでいる数字が『能力値』、さらに下に書かれているのが特定の特殊行動や魔法が使える『技能(スキル)』ってやつだ!」

 

メルドは生徒たちの間を歩きながら、分かりやすく解説を続ける。

 

「ちなみに、この世界の一般人や普通の兵士の平均ステータスはおおむね『10』程度だ。だが、異界の扉をくぐり、神の神託によって肉体を作り変えられたお前たちは、最初からその常識を大きく凌駕する力を秘めているわけだ。だから、筋力『45』なんて数字は、この世界じゃ立派なエリート兵士並みの数値だぞ!」

 

メルドのその説明を聞いて、生徒たちの中から「マジか」「すげえな」と納得の声が漏れる。

 

そんな中で、真っ直ぐに驚愕の声を上げたのは、光輝の周囲だった。

天之河光輝 17歳 男

【天職】勇者

【筋力】120

【体力】115

【耐性】120

【魔力】180

【魔耐】175

【敏捷】130

技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解

 

「すっげえ……! 天職『勇者』!? ステータスも全部100オーバー……! 普通の兵士の10倍以上だぞ!?」

「さすが光輝くん! やっぱり本物のヒーローなんだ!」

 

平均値が10程度とされるこの世界で、オール100越えの数値を叩き出した光輝のプレートを覗き込み、メルドは「なっ……!?」と目を丸くした。

 

「す、凄まじい……! 天職『勇者』に加え、初期ステータスがいずれも100オーバーだと!? 普通の兵士の十倍以上の数値……まさに神に選ばれし勇者の名に恥じぬ破格の力だ!」

 

メルドが心底感心したように声を上げ、光輝の肩をドンと叩く

 

「最初から使える技能も普通は二つ三つなんだがな……規格外な奴め!世界の救済、期待しているぞ、勇者殿!」

「は,はい……ありがとうございます…。」

 

メルドの力強い言葉と、周囲からの大きな歓声を浴びながら、光輝はひとまず肩の力を抜き、安堵の息を吐いた。

(俺が……勇者……)

だが、その安堵と同時に、光輝の胸の奥にはどこか割り切れない、なんとも言えない感情が広がっていた。

(……でも、本当に俺なんだろうか)

 

転移前の日常からそうだった。特別ぶることもなく、ただ素のままで周囲を引き寄せ、温かい輪を作っていたハジメ。

 

そして昨日、パニックに陥りかけた神殿で、焦って一人で空回りしそうになった自分を止め、クラス全員の命を守るために冷静かつ対等に話し合いへ導いたハジメの姿。

誰に言われるでもなく自然と人を納得させ、正しい方向へ引っ張っていける彼女こそが、本当の『勇者』なのではないか——。

 

『勇者』という称号を手に入れたはずなのに、自分の心を満たすのは誇らしさよりも、どこか不甲斐なさと「南雲さんじゃないのか」というかすかな落胆だった。光輝は歓声の中で、どこかぎこちない笑みを浮かべることしかできなかった。

 

そのまま、他の生徒たちも続々と自身のステータスを開示していく。

 

天職:拳士

 

「おっ、俺の天職『拳士』だぜ! なんか身体の底から力が湧いてくる感じがする!」

龍太郎がガッツポーズを決めると、すかさず横からハジメがニヒヒと不敵な笑みを浮かべて絡んできた。

 

「うわぁ〜やっぱり! 筋力バカのゴリにはお似合いじゃん! 拳で殴るしか能がないもんね〜w」

「ゴリって呼ぶなっつの! 俺には龍太郎って名前があるだろーが!」

 

龍太郎は青筋を立てて吠えた。

高校で同じクラスになってすぐの頃、清水からこっそり借りパクした『スラムダンク』をハジメが教室の隅で読んでいた際、たまたま目の前を通りかかった龍太郎を見上げて「あ、なんか赤木に似てるw 今日からアンタ『ゴリ』ね!」と勝手にあだ名をつけられて以来の不名誉な称号だ。

 

正直、龍太郎から見たハジメは、不真面目でチャラチャラしていてあまり馬が合わないタイプだった。それなのに、教室の重い荷物運びや班の雑用で「ねぇゴリ〜力仕事手伝って〜」と平然とコキ使ってくる、なんともペースを狂わされる理解不能な奴である。

 

「はいはい、ゴリゴリ拳士くんw 荷物持ちは任せたからね!」

「誰が荷物持ちだ! まったく……異世界に来てまで人使い荒ぇなアイツは……」

 

龍太郎は苛立ち紛れに頭を掻き回しつつも、ハジメの調子を狂わせるノリに毒されて、苦笑い混じりに拳を握り直すのだった。

 

その後も、鈴が『結界師』と出て「防御は鈴に任せた!」とハジメに背中を叩かれ、「まかしときー、ナグモン!」とはしゃいだり、恵里が『降霊術師』という少し不気味な天職に首をひねるのをハジメが「なんかミステリアスでカッケーw」と軽くフォローしたりと、ハジメを中心にした賑やかな空気が広がっていく。

 

そんな中、少し離れた場所で――。

 

「あ、そういえばゾノちゃんは何だったー?」

ひょいと軽快に声をかけようとしたハジメだったが、声をかけられた園部は「南雲さん……っ」と他人行儀に呟きながら、あからさまに一方的に距離を取るようにスッと視線を逸らした。

 

「……え? なにその反応、あーし何かした?」

 

ハジメは「???」と不思議そうにいつも首を少し傾げるも、深く気にする様子もなく「まあいっか」と、またすぐに他の仲間たちの賑やかな輪へと戻っていくのだった。

 

さらにその傍らで、担任の畑山愛子も自分のプレートを緊張した面持ちで見つめていた。

 

天職:作農師

 

「あ、愛ちゃん先生は……さくのうし?なんか技能やたら多ない? いや、めちゃくちゃ農業系に振り切ってて草! さすが先生、家庭的っていうか地味に実用的じゃん!」

 

ハジメがひょいと覗き込んで、ちまっとしていてどこか頼りない愛子先生の頭を「よしよし、先生らしいじゃん」といつもの調子でなでる。

 

「もう、南雲さん……私は先生なんですからねっ。子ども扱いしないでください……」

 

口ではそう言いながらも、愛子先生はハジメに頭をなでられてちょっと嬉しそうに頬を緩ませ、どこかトロンとした目をしているのだった。

 

そんな和やかな空気をさらに盛り上げるように、香織のプレートに綺麗な文字が浮かび上がった。

 

天職:治癒師

 

「あ、香織は『治癒師』なんだ! 回復系とかマジ最高じゃん、超助かる〜! あーしが擦り傷つくったらよしよしして治してねw」

 

ハジメが軽快なノリで香織の肩を組むと、香織の瞳の奥が一瞬でトロンと深まり、両手を胸の前で固く握りしめた。

 

「うん……! 任せてね、ハジメちゃん。ハジメちゃんの傷も、痛みも、指先ひとつ分だって私が全部治してあげる……! 私がハジメちゃんを完璧に守るからね……?」

「お,おう……なんか急に愛が重くて心強いわw」

 

圧倒的な愛の重圧を放つ香織にハジメが苦笑いしていると、その隣で静かにプレートを見つめていた雫が、スッと息を吐いた。

 

天職:剣士

 

前衛としての能力値が高く、剣術補正のついた圧倒的な武の天職。ハジメが覗き込んで「うわっ、雫『剣士』じゃん! カッコよ! 侍みたい! 後で雫専用のカッコいい軽甲冑デザインしてあげよっか?」と目を輝かせる。

 

雫はいつものクールな表情を崩さず、ふいっと顔を背けた。

 

「……別に頼んでなどいないわ。戦うのは私たちの仕事、ハジメは後ろに下がっていなさい」

 

つれなく言い放った雫だったが、ポケットの中で握りしめた手は微かに震えていた。

 

(私に……甲冑を……?)

 

素っ気ない態度とは裏腹に、胸の奥で爆発するような愛おしさと歓喜。だがそれと同時に、相変わらず誰に対しても無防備で眩しい笑顔を振りまくハジメへの、泥のように重い嫉妬と独占欲が胸を締め付けるのだった。

 

「うぇい清水、アンタの何だったー?」

 

ハジメが今度はひょっこり清水の後ろから覗き込む。清水のプレートには『闇術師』の天職とともに、異質な固有技能が刻まれていた。

 

【技能】魔眼(闇):目を媒介とし、闇属性魔法を無詠唱で発動する。ただし高威力の魔法を行使した場合、過度な負担により一時的な視力喪失(失明)を引き起こす。

 

「うわっ、なにこれ『魔眼』!? カッコよ!! 中二病の血が騒ぐ奴じゃん! でも失明とかリスクえぐ!」

「うるせぇ……負担大きすぎて気軽に使わせる気ねぇだろこれ。使わねぇよこんな物物しいもん」

 

清水は鬱陶しそうに溜息をついたが、ハジメは「えー、目が真っ赤に光ったりすんのかなw」とニヒヒと悪戯っぽく笑っている。

 

と、そのすぐ隣で、気配もなく佇んでいた遠藤が、自分のプレートを見て顔を青ざめさせていた。ハジメがスッと横に移動してそのプレートを覗き込む。

 

【天職】暗殺者

 

「……ぶっ、だははは!! 待って遠藤、アンタ『暗殺者』とかウケるんだけど!! 普段から存在感なさすぎて空気なの、ステータスにまで証明されてんじゃん! うわぁ〜なんかめっちゃそれっぽいww」

 

ハジメが腹を抱えて爆笑すると、遠藤は顔を真っ赤にして、かき消されそうな存在感を必死に振り絞りながら吠えた。

 

「うるせぇ!! いちいち言わんでいいわ!! 殺すぞ!!」

 

「殺すぞってw さすが暗殺者〜コワ〜いw」

 

「煽るな!! 好きでこの天職になったわけじゃねぇよ!!」

 

普段の影の薄さを微塵も感じさせない必死の逆ギレを見せる遠藤の姿に、思わず清水は肩を震わせ、口元を手で覆いながら「……くっ、ぶっ……」と必死に笑いを堪え始める。

しかし肩の揺れで完全にバレており、ハジメが「しっ、清水も笑ってんじゃんwwww」と笑いながらさらに煽り立てた。

それに耐えかねた遠藤が、顔を真っ赤にして清水の胸ぐらに飛びかかる。

 

「おい清水!! お前も笑ってんじゃねぇよ!!」

 

「っ、おまっ、急に揺らすな! 俺だって必死にこらえてただろ……っ!」

 

「こらえてねぇよ! 肩めっちゃ揺れてたわ!」

一触即発の(しかし完全にコントな)言い合いを始める遠藤と清水を横目に、ハジメはケラケラと楽しそうに笑い声を上げるのだった。

 

「あはは、ごめんごめん! で、あーしのプレートは……どれどれ?」

 

涙目を拭いながら、ハジメが自分のプレートに血をひとしずく落とす。

次の瞬間、プレートが眩い光を放ち、そこに刻まれた文字を見たメルド団長が「なっ……!?」と目を剥いて絶句した。

南雲ハジメ 17歳 女

【天職】錬成師

【筋力】20

【体力】20

【耐性】10

【魔力】300

【魔耐】60

【敏捷】20

【技能】錬成(派生技能:物質鑑定、範囲内地形構成把握(自身を中心としたX軸Y軸半径nmの範囲の地質と地形構成を把握・理解する※nmの部分は本人のステータスに依存する))・言語理解

 

「魔力300ゥゥゥゥ!?」

 

メルドが頭を抱えて叫ぶ。

『勇者』である光輝の魔力ですら100代後半。クラスの魔法適性が高い者でも200に届かない中で、ハジメの「300」という異次元の魔力、そして他の能力値や魔耐がそれに追いついていない極端な偏り。

 

「えっ……魔力300……って、なんかすごそう?」

 

クラスメイトがざわつく中、光輝は目を丸くしてぽかんと口を開けた。圧倒的な魔力なのに天職は『錬成師』で他の能力値は一般人並み、おまけに魔耐も60と、飛び抜けた魔力に対して守りがおぼつかない危険なガラス細工。やっぱり南雲さんはどこに行っても規格外で変な人だな……と光輝は苦笑いする。

 

「な,南雲さん……、その魔力は一体……」

 

光輝が尋ねようとしたその時、ハジメは自分のプレートをまじまじと見つめ、首をかしげながら近くにいたメルド団長に軽いノリで尋ねた。

 

「ねぇおじさん、この『錬成師』ってどういう職業なん?」

「ん? 錬成師か……。それはだな、主に鍛冶屋や細工師と同じ非戦闘系の職業だ。鉱物や布地などの物質を組み合わせて、形を変えたり加工したりする技術を扱う職種だな。まぁ、戦闘向けの力じゃないが、クラフト系としてはそれなりに重宝される部類だ……が」

 

メルドの説明を聞いて、ハジメはパッと顔を輝かせた。

 

「マジで!? 鉱物とか布地を自在に加工・デザインできる魔法ってことぉ?! 超最高じゃん! しかも魔力300もあるし……って、ナニコレ?『ぶっしつかんてい』に『ちけいこうせいはあく』?……なんじゃこりゃ、地味でいかにも使えなさそうな名前じゃん。なんかいい事あんのこれ?」

 

首をかしげるハジメに、隣でチラリとプレートを覗き込んだ清水が、やれやれといった様子でため息をつきながら補足を入れる。

 

「……お前、少しは文字通り読めよ。多分物質鑑定ってのは目の前の素材の性質や価値を完璧に見抜く能力だ。それに地形構成把握なんて多分もっとエグい技能なんじゃねぇか?文字通りの効果なら未知の迷宮とかに入った時、周囲の地質や構造が頭の中に丸わかりになるようなもんだぞ。探索系やクラフト系としてはこれ以上ない超便利な補助能力じゃねぇか」

「マジ!? え、それってめちゃくちゃヤバない!? 石材の硬さとか一発で分かって、ダンジョンの構造も丸わかりとか、最高にイカしたクリエイターになれんじゃん!! 服もアクセも限界突破で錬成しまくれるし、神職じゃんコレ!!」

「そこかよ!!」

 

清水が間髪入れずにツッコミを入れる。

世界の危機も、自分の異質なステータスも関係ない。ただ「自分の好きな服やデザインが魔法で作れる」という一点において大歓喜するハジメの姿に、静まり返っていた訓練場の空気が一気に脱力した。

 

そんなハジメの様子を遠巻きに見つめながら、メルド団長は冷や汗を拭いつつ、なおも頭を抱えてブツブツと呟いていた。

 

「……ありふれた非戦闘職とはいえ、この魔力のステータスは一体どうなってやがる……おまけにこの妙な固有技能は……まったく、前代未聞の化け物か、それともただの不良在庫か……」

 

「ナグモンすごい! 魔力300だって! 私に可愛い服作ってね!」

「ちょっとハジメ、私にも何か錬成して見せてよ!」

 

鈴たちが「すごいすごい!」とハジメの周りに群がり、ハジメは「任せなさーい! 超絶可愛いやつ作ってあげる!」と鼻高々に胸を張る。

 

「……ふふ、やっぱりハジメちゃんは特別な存在なんだね」

 

香織はハジメの圧倒的な存在感とうっとりとした笑みを深め、雫は「まったく……相変わらず自分の『好き』にしか興味がないのだから」と呆れつつも、自分に向けられるハジメの笑顔に胸を熱くさせる。

 

どこへ行っても自分の『好き』を貫き、あっという間に周囲を巻き込んで笑顔にしてしまうハジメ。

 

光輝はその賑やかで眩しい輪を見つめながら、釈然としない胸のざわめきを押し隠すように、複雑な笑みを浮かべる。

 

(……俺が『勇者』で、南雲さんはあんな変なステータスなのに……。それでも、やっぱり彼女はどこか特別なんだろうか……)

 

正体の知れないモヤモヤを胸の奥に抱えたまま、光輝はどこか落ち着かない眼差しでハジメの背中を見つめ続けるのだった。

 

 

 

 

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