ぽおくそてえです
第10話ですが、まだ先は長い予定です
最後までお付き合いいただければ幸いです
「だいぶ回復したな」
「体も動きが戻って来たわね」
「特にバリスとシャラのおかげでな」
「私達、少し手伝っただけだよ。ライの体が異様に頑丈なんだ」
「みたいだな。よし、動くぞ」
「行きますかい」
「兄さん、待ってたよ」
これからはダンジョンに潜入してモンスターを狩りながら情報を収集していく。簡単な方のダンジョンに行っているだけあって最奥部まで特に大きな問題なく到達し、そこに居る大型モンスターを倒して持ち帰る事にする。
「そっち行ったぞ、狙い撃ちにしろ」
「歌魔法で補助をかけたよ」
「私もついでに」
「やったりますか、姉御」
「ええ。まずは下から貫く、硝子連山!」
「ブフゥ」
「下がったな」
「上から失礼。
「バッ!?」
「仕留めたな。ダンジョン制覇だ」
病み上がりだというのに何故ライサンダーがここまで機敏に動けるのだとヘイルやシャラは思うが、リーダーの体が傷を負う事に慣れているのだろう。学生の頃から
「鉱石や植物、キノコ類に魚や昆虫等々、モンスター以外にも研究材料として回収出来る物は多いんだな」
「生態系を学べばそこから得られるダンジョンの知識も増えると、そういう訳ですかい」
「そういう事。恐らく生態系の根本やダンジョン全体で繋がっている部分があるんだろう、そのヒントや答えが分かるかもしれん」
「負の気を何らかの形で吸収してるだろうから、具体的な事も何か分かるかもね」
「出来る限り持ち帰りましょ」
メンバーも増えた事だし、持ち帰れる材料も以前より多くなった。今回もまたグレンダとライサンダーの作り出した荷車に乗せてギルドのある街まで持ち帰ってくる。荷運びの業者に頼んでも良かったのだが、忙しいと断られてしまったから、自らの手で研究所まで持っていき、そこからギルドへと帰参した。
「ただいま戻った」
「おかえり。調子はどうかな、ライ」
「少しまともに動ける様になったさ」
「ほうか、それを聞けて安心したね」
「まだ本調子じゃねぇけどよ」
「10日近く休んでれば当然だ」
「ま、戦う内に元に戻るだろうぜ」
「すぐに戻ると良いね」
「どれくらい掛かるか分からんが」
「酒でも飲んで体を休めなさいな」
「ああ、そうさせてもらう」
今回は全員無事に帰れたからいつもの様に法皇の酒場へと繰り出す事になった。前回出来なかった酒の酌み交わしだ、間に休みを幾許か取った為に少し期間が空いてしまった。
「やれやれ、大怪我するとこれだから」
「無茶したの貴方だけだけど?」
「まぁなぁ」
「にしても、あのコピーしてくる小翼竜は何者なんですかね?」
「確かに気になる」
「古の人竜戦役で人が竜に勝ったのは知ってるな?」
「まさか、その一つの種族の末裔?」
「竜化した姿から察するに疑いようがほぼ無いな」
「ええ……」
「俺も詳しくは知らねぇよ」
でも、可能性は捨て切れない。後天的に竜化したならそれはそれで厄介だろう。だが、後天的な竜化の場合、条件は何だろうかと疑問に思うが、やはり原因としてまず挙げられたのが負の気である。
「あり得るね」
「もしかしたら遺骸を貪って力を得たとも考えられるのではないか?」
「原初の魔法使い達もモンスターの血肉から力を得たと、確かに噂に聞いた事があるけど」
「魔法は血の
「ああ。そう考える研究者もいる」
本人の話している事を全て信じるのであれば、恐らくヴァーリエは原初の魔法使いに近しい存在か、その基礎となった存在のモンスターと考えられる。竜種が大量絶滅した当時にその肉体を喰らって今の姿になった可能性も十二分にあり得る。
「だが、特徴的な四つ腕は健在だった。直接変身する姿は見れなかったが、原初の竜の可能性は高い」
「そっすね。警戒して当たる他無いっすね」
「話を統合すると奴はコピー魔法の天才、死角から手数で押し切るしか無いかもしれん」
「やっぱそうなんだ」
「野蛮だわ」
「生き残るのに野蛮もへったくれもあっかよ。取れる手段は取る、それがダンジョン探索者のやり方だ。お前の兄ちゃんもそう言うだろう」
生きる為に戦い、戦う為に生きる。それがダンジョン探索者の心構えというものだ。はてさて、肝心のヴァーリエとは出来うる限り遭遇したくない。正しい対処法がまだ出来上がってないからだ。しかしこういう時に限って悪い方向の予感は当たるのだ。
「アイツとそう沢山は遭遇したくねぇな」
「コピー、俺らの魔法は強力かつ個性的なもんが多いっす。一気にやられたら厄介っすね」
「だが、あの戦いから察するに視認出来る範囲で、しかも一定数以下でなきゃ難しいのかもしれんな」
「何故そう思うのかしら?」
「ヘイルの弾丸を避けて撃ち返さなかったからだ。
「確かに言えてるね」
「ならばライは各方面から攻め立てろって言うの?」
「端的に言えば」
多種多様な属性を見えない範囲からも撃ち込めばあちらは対処しきれずにダメージを喰らうのではないか。そういう推測が立つが、果たしてこれが
「よっしゃ、明後日また潜るぞ」
「また無茶を」
「小言は後で聞く」
「まったく、兄さんの頑丈さには呆れるばかりだよ」
「あっははは、良く言われる」
「兄貴、本当に休んだ方が良いですぜ。マスターも心配なさってました」
「ああ〜、それを言われちゃキツいね。あの人には返しきれねぇ恩義がある」
「確かに私達はマスターに大きな借りが有るわね」
「生きる道標を与えてくれた人だもんね」
「仕方ねぇ、マスターの頼みなら休むか」
マスターの指示は道理に適っている場合が多いから、基本は従っている。休めという時は体や魔法を扱う精神に負荷がかかっている場合が多いから、知らず知らずのうちに自分では気づかない疲れがあるのかもしれない。しかし、魔道士である以上精神の疲れは避けられない。如何したものかとひと思案する。
「正直、魔道だけじゃキツいなぁ」
「でも魔法はウチらの基礎だよ?」
「ライ、体術に深く手ェ出すつもりなの?」
「それを今思案中だべ」
「手段は増やしておくに越した事はねぇっす。俺は賛成ですぜ」
「私も賛成だよ。補助魔法を活かすには使える方法は増やして欲しい」
「だとさ。俺ぁもう少し鍛えてみせる。今度は倒れる事なく誰かを守る為に」
「そう言うと思った。こうなったら聞かないでしょ、貴方」
「良く分かってんじゃねぇか、グレンダ」
「それに、仕事帰りに私達に隠れて既に何年もやってんのは知ってんのよ」
「バレてた?」
「何年一緒に居ると?」
「だよなぁ」
グレンダとライサンダーは20年以上の付き合いだ、下手に隠そうものならすぐにバレてしまう。体を動かす事自体は決して悪い事ではないし、むしろ推奨されるべきだが、ライサンダーの場合は無茶をしかねないのがグレンダからしてみれば問題なのだ。怒りの矛先が向かってくるのを察知したので、話題を急転換させる事で回避しようとする。
「シオン、学校の方はどうだ?」
「楽しいよ、兄さん。でも、ウチよりネネの事や学費が心配だね」
「授業中は授業に集中しろ。実戦演習と称して無理くり仕事させてもらえてんだから。それにネネは積極的に色々学んでるぜ?」
「そうだよねぇ」
「稼ぎなら余りある俺の分も回してやるから」
「いつもごめんね?」
「妹分の生活の保証はリーダーの務めだ」
「言うわねぇ。それなら、姉貴分としてそれを支えるわよ」
「頼らせてもらうぜ、相棒。じゃ、修行に行ってくる」
体を動かす事でリーダーとして動くに際する煩い事を忘れられる。その上で体を鍛えられるのなら、魔力切れなどのいざという時に備えられるから一石二鳥だろう。体術は体さえ動かせれば魔力切れとなっても幾らか攻撃できるメリットがあるから中学校の頃からやり続けているのだ。今日も今日とてギルドの修練場にて汗を流して己を追い込んでいく。その体は遠距離系の普通の魔道士とは違ってかなり鍛え上げられている。
「よっ、せい!」
「おお、今日も修行かね」
「俺の場合、力無くして守れる者は無いからな」
「それでも、無理は禁物だよ」
「限界は分かっているつもりだね」
「ほっほっ、君の言動なら信用に足るね」
「流石に恩義あるマスターや仲間達に心配かけてまで修行するもんじゃないからさ」
「そうかい。程々にね」
「心得ている」
そんな彼を陰から見守っていたのはグレンダだ。彼の力をよく知っていて信頼している身近な存在だからこそ、追い込み過ぎないか心配なのだろう。帰り際に微笑むマスターが声をかけていく。
「グレンダ」
「マスター」
「彼を信じなさい」
「完全にそれが出来ればどれ程楽か……」
「まぁ、気持ちは分かるよ。心配になるその気持ちは」
「マスターが?」
「先代マスターは我が叔父。彼が身を粉にして働く姿をいつも心配になって見ていた記憶がある」
「そう、ですか」
「だが、ライは君達の為に動いてる。信頼に応えてみせようとね。盲信する事と心配しながら信頼する事は違う、それを分かっていれば良い」
「はい」
互いに信頼するから、無茶しないか心配したり期待に応えようとするのだ。ライサンダーも心配してくれるのが分かっているから限度を見極めて修行しているし、この前のヴァーリエ戦で無茶したから少し抑え気味で修行しているのだ。グレンダも彼の性格を理解しているから一つの答えを導き出した。
「せい、はい、おりゃあ!」
「一旦そこまでよ、ライ」
「お、グレンダとマスターか?どうしたんだ?」
「少し見させてもらってたんだ」
「一つ言っておこうかと」
「聞かせてくれ」
「貴方には戦う理由がある、その為に強さを追い求める決意も固い。そんな貴方の背中を守らせて。一人で全てを抱え込まないの」
「そんなつもりはなかったが……」
「良いから。長らく貴方と戦ってきたから分かる事も多い」
「ははは、そうだな」
この前受けた大きな傷は皆の協力があってなんとか治ったみたいだ。マスター曰くシャラ達の回復だけでなく、ギルドに置いてある結構高い薬も幾つか使ったし、治らなきゃ困るそうだ。こればかりは恩に着るほかないし、マスターにまた一つ借りができた。言い方は悪いかもしれないけど、ライサンダーはギルドの稼ぎ頭の一人だから、他のメンバーの為、ギルドの為、所属する街の発展の為にも稼いでくれると助かるとの事だ。
「無論だ。恩義ある相手の頼みだから、無碍にはせんよな」
「さて、さっきはああ言ったけど、互いに強くなるなら損は無いわ。私も手を貸す」
「有難い。流石は長らく共に過ごしてるだけあるね」
「心配なら自分の手で守れば良い。覚悟を決めたって、ただそれだけよ。さっきも言ったけど貴方の背中を守り通す」
「そうかい。やはり一番頼りになるのはお前だな」
「当たり前でしょ?ただの幼馴染じゃない、一緒に戦うスーパー幼馴染よ」
「へっ」
互いに協力しあってここまでやってきた。ならばそれを続ける為に互いに強くなっていくのが一番手っ取り早い。さて、次にダンジョンへいつ行くかをチームに伝えて準備を各々進めさせていく。
「皆の衆、ダンジョン潜入は4日後だ」
「おー」
「これでも妥協してるの忘れないでよ」
「私の魔法のお陰なのよ」
「兄貴が復活して良かったっすよ」
「へいへい。アグニ、居るんだろ?」
「うむ」
「相変わらず心臓に悪いわね」
「次はここへ向かえとの事だ」
「あいよ」
「アグニさんってどんな方です?」
「ギルドお抱えの情報屋だ。俺ら先発隊より更に先駆けて色々と調査してくれてる」
「寡黙ながら仕事には誇りと熱意を持ってあたっているらしいわ」
「へぇ」
「あいつの齎す事前情報のお陰でダンジョン探査がしやすい」
「あの人が居なきゃウチらはもっと大変だよ」
「凄いっすね」
「我々の稼ぎの源泉は彼によって生み出された事前情報によるところが大きいわ」
さて、数日後に潜入するにあたり、事前に得られた情報の整理をする。今回のダンジョンは変化がなければ全6階層となる。ダンジョンの深さと難度は比例しやすいが、このレベルでも油断ならない。
「そうなの?」
「最後の方の階層で急激に難易度が上がるなんて事もザラよ」
「確かに」
「生き残るには使えるアイテムは何でも使わな」
「ふむ、アグニ曰く草が生い茂ってるのね」
「衝撃を吸収しやすい。良くも悪くもな」
「ウチらは燃やす手段が乏しいよ。ヘイルの弾丸くらい?」
「だからこそのアイテムでは?」
「そうだよね」
「都合良く
「彼の扱うアイテムは良い品ばかりだし」
「だけど、燃えやすいって事はこちらにも被害が出る可能性もあるよ?」
「そこは俺の魔法でカバーする。防火壁に近いものを作れば良い」
「どんなモンスターが居たっけ?」
「報告書と今までに得られた知見を照らし合わせよう」
草が生い茂る環境なら、それを食糧としていたり、同化しやすい体質を持ち合わせている種族が居るのが今までのダンジョンから導き出された結論だ。そして資料にめをおとしてまると昆虫種が多く、それを喰らう鳥人族も沢山居る。どちらも飛べるから厄介なモンスター達でどう攻めるか議論となるが、飛べるとはいえ、範囲は限られる。地形を上手く利用する他ないとなった。
「じゃ、また4日後な」
「またね」
「あ、兄さんと姐さん、ちょっと良い?」
「どうした?」
「妹に会わせたいんだ」
「ネネに?何故今更?」
「授業で分からない所を聞きたいんだとさ。ウチでも良いんだけど、経験豊かな兄さん達の方が良いんじゃないかな?」
「うむ、そういう事なら良いだろう」
「大切な仲間の家族なら」