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「暑いよぉ、溶けちゃうよぉ」
「ここまでとは、予想外っす」
「ここの生態系は過酷な熱に耐えられる外殻を有している場合が多い。にしても暑いな」
「兄さんでもキツイんだ」
「当たり前だ、俺だって魔法は使えてもそれ以外は普通の人間とそう大差はない」
「お
「ああ。冷却魔法とクールダウンのアイテムを使ってもこれとは……」
出てくるモンスターも上級なだけあって単独でもかなり厄介な存在が多い。魔法を発動するが、いつもの様に固まりやすい半液体とは行かない。出た瞬間溶けてしまうのは前々から分かっていたから液体状の弾丸にして打ち出していく。
「だらぁ!」
「ギャウ!」
「最早半液体を通り越して液体ね」
「暑さのせいか、やっぱり上手く固まらねぇな」
「鞭とか出来ないんだ」
「ま、液体には液体なりの強みがあるがね」
「俺が援護しやす」
「頼むぜ」
「あ、私の強化魔法、要る?」
「無論だ」
こうなれば至近距離から放とうと大して形状が変わらない以上、接近戦に持ち込む。この為に修行を重ねているのだ、自分の魔法にあった戦い方は良く知っているつもりでいる。この切り替えの早さこそがダンジョン探索で生き抜くには必要な技能の一つだ。
「はっ、せい、しゃあ!」
「拳法と魔導のコンボとはね」
「流石兄貴っす!」
「ライサンダーさんならこれくらい出来るか」
「リーダー、我々はどう動けば?」
「こちらは援護に回るよ」
「はい」
今度現れたモンスターは戦い慣れているライサンダー達ではなく、後方で支援に回っていたグリーシャ達を狙ってきたが、彼らも幾度かのダンジョン探索を通じて経験値と自信をつけており、容赦なく倒していく。グリーシャの指示が的確だったから慌てる事なく陣形が崩れずに戦えている。
「そっち行ったぞ」
「岩壁錬成!」
「水連弾!」
「足場を崩落させる」
「上手いね、彼らも」
「戦力が増えて良いじゃないの」
「俺らの出番がねぇかもな」
「ふう、中間層ですね、ライサンダーさん」
「やはりマグマ溜まりがあちこちにあるな」
「皆無事かしら?無茶はしてない?」
「OKだよ、姐さん」
「そっちのチームは?」
「グリーシャさん達は平気っすか?」
「大丈夫。全員無事だよ」
「そろそろ何か来そうだ」
「経験則なの、お
「ああ」
ダンジョンにはそのダンジョンのボスが居る。多くのダンジョンでそうなっているから、奥へ進むと強力な個体に出くわす事が多い。だからここにも居るだろうし、たとえ居なくても何かしら不穏な空気を発する存在は居るだろうと。そしてその予感通り最奥部に待ち構えている輩が居た。
「やはり、居たか」
「ほほう、おいでなすった」
「その赤紫の四つ腕、テメェか?ヴァーリエの関係者ってのは?」
「左様、如何にも。ハシャと申す」
「ならば斬らせてもらうしかねぇなぁ」
「ふん、反射魔法を使いたくはないが、やむを得ん。殺す」
「まずはあたいから。
「俺も行こう」
ここはリーダー達が自ら先駆けて攻め込む事で情報を少しでも引き出そうとする。後発隊に少しでも安全な状況を作り出してやりたい一心でもある。しかも2人の魔法は吸い込めば危険な魔法、当てれば良い流れをこちらに引き寄せられるだろう。ヴァーリエと同じ対処法で攻めるべきか、そう結論づける。
「おらぁ!」
「拳法で合わせます」
「早い、やりおるわ」
「私も行きます。二刀居合・絶華!」
「厄介な魔刀だ、斬られたらタダでは済むまい」
「隙あり!」
「水銀と毒の蹴り、喰らいやがれ!」
「ほほほ、避けるまでもない」
「ちっ、止めやがった」
「掴まれなかっただけマシです」
かなりの経験をして様々な死戦を潜り抜けて来たリーダー達の蹴りをあっさりと止めて見せたあたり、ハシャもかなりの戦闘経験を積んでいるのだろう。コピーした魔法を繰り出してくる。
「ほれほれぇ!」
「グリーシャの毒魔法の反射か」
「あたいが撃ち落とします、共に進みましょう」
「だが、量がいかんせん多い」
「撃ち落としたのも霧になってる」
「吸い込むなよ、少しずつ下がれ」
ライサンダーの水銀魔法ではなくグリーシャの毒魔法をコピーしてきたのは、より強力な毒とみて狙ってきたのだろう。しかも防がれても霧となってその場に留まって吸い込ませようという作戦だ。実際、グリーシャ以外には有効な手となって少しずつ動きが鈍ってくる。
「ちっ、少し吸い込んじまったか」
「はぁ、仕方ない。早く片付けよう。行くわ、『白夜光』」
「歌魔法も加わるよ」
「む、これがヴァーリエの言っていた……はぁっ!」
「くっ」
「無属性の
「掻き消したのね」
「秘技……」
「やらせぬ」
「おっと、そう焦るなよ。行け、ティア!」
「一刀・旭日昇天!」
「ばはっ!」
「効いた?」
ライサンダーが食い止めている間にティアの持つ太刀『白耀』で以って斬り抜ける。本来硬くて斬りにくい筈のモンスターの体毛や竜族の鱗を断ち切ってみせた。腹から肩にかけて切創が大きく出来ている。だが、毒が回り始めている以上、こちらにも悠長に戦っている余裕があるわけではない。
「ぐっ、クソゥ」
「こちらも余裕がないっす。早く終わらせましょう」
「私の回復が追いつかないよ」
「はぁ、はぁ、仕方ねぇ。この
「私も行く。少し毒を抜いてもらったから」
「良いぜ」
もう互いになりふり構わずに攻撃していく。このままでは命に関わりかねない。少しでも早く相手を撤退に追い込むか倒すしかない。だからありったけの力をぶつけていく。全ては兵器たる
「魔力の弾丸じゃあ!」
「痛てっ!」
「少し逸らすわ。二刀・往ナシ崩刃」
「おお、凄い。ウチらの居ない方に流れてる」
「援護するわ」
「いや、一旦ここはあたいが。はっ……でやぁ!」
「ぐっ!」
「至近距離で魔法を体にまとって発動すると反射できないみたいです」
「よく突き止めた。だが、かつての魔法をコピー出来るのなら岩にでも変ずることも可能な筈だが……」
「よく見ておるわ」
そう、鏡黒竜一族はコピーや反射出来る数が限られているのだ。体への負担がかかるのがその理由だ。ライサンダー達からしてみればそうかと感じる部分である。とはいえ、それでも充分戦える自信があるのだ。
「やってみろ。俺らは超えていく」
「大口を叩きおる」
「行くぜぇ、ティア、グレンダ」
「ええ」
「任せなさいって」
「ばはぁ!」
「うわぁ!」
「きゃあ!」
「マリー、ワーズ!」
「余所見とは余裕だな」
「(速い!)くっ」
「これを避けるか」
攻撃を避けていくのにもそろそろ限度が来るだろう。毒が少しずつ回ってきており、足が動きにくくなっている。複数の相手に同時に行なっているシャラの即席の回復魔法を受けても治りづらくなっているのが現実だ。
「へいやぁ!」
「また流す」
「待って、少し退くよ」
「でも……分かったわ」
「あれは毒じゃない、硝子だよ。切れるところだったね」
「あ、危ない」
「でも、時折別の属性弾も飛んで傷が……」
だがそうはいうものの、飛んでくるのはこのチームのメンバーの魔法属性ばかりだ。初対面時の属性は出てこなくなっている。だからか、少しばかり対処が出来始めている。
「私の硝子、力が入りづらいわ。形成できる限界間近ね、全く以ってやりづらいわ。でぇい!」
「全くだぜ」
「二人の作ってくれた道、使わせてもらうわ。白耀と玄耀を最大限、使う!二刀・
「あたいらも続くよ。まずは、ワーズ」
「ええ。はいやっ!」
「マリー、リュウシュウ、続いて!」
「「はい」」
「逃げ場を封じられたか」
「行きまっせ、国崩シ!」
ここで登場したのはヘイルの最終兵器の一つ、召喚式で両手で抱える大筒だ。これを喰らった奴は大抵かなりのダメージを喰らうが、魔力の消費が激しいからそう多くは使えない。だが、これで以っても決着がつかなかったのだ。やはり毒が回っているからか。
「なるほど、隠し大筒の召喚か」
「ちっ、大してダメージが……これでも切り札なんすがね」
「心配ない。あれは響いてる、間違いなくな」
「音響魔法、行っとく?」
「ワーズの水魔法と組み合わせるのはどうですか?上手く操れば莫大な音の反響と振動の刃になります」
「それだ」
「俺らが仕掛ける。上手く当てろよ」
ハシャに対して攻撃を連鎖させて上手く奥へと誘導し、ワーズの作り出した水球へと追い込む算段だ。そこに突っ込ませてシオンの音響魔法で大ダメージを与えるという寸法なのだが、ここで必要なのは如何に気づかせないかという点だろう。まずは上から仕掛けて後方への視線を逸らす。
「
「追撃する、岩戸礫崩!」
「これくらいなら……ちぇい」
「ほう、防いだか」
「こちらも崩落させるか。はあっ……」
「させない。一刀居合・瞬閃!」
「ぶっ!」
「さぁ、水のドームに突っ込め」
「この、離れづらい!」
「すぅ……破ぁ!」
「ご、ごふっ!」
反響が大きくなり、先程の国崩シと合わさってかなりのダメージを稼げた筈だ。相手もかなりふらついており、出血も多い。あと少しでノックアウトだろう。だが、互いにボロボロ、いつ気絶してもおかしくない。
「あ、頭がガンガンする……」
「あれを喰らってふらつく程度で済むとはな」
「どういう体質なのだ?」
「竜特有の感覚?」
「恐らくな」
「なるほど、妹が手負いとなるのも納得だ」
「だが、こっちも傷があるし毒も喰らった」
「次は勝つ。必ず」
「くそ、また逃した」
「その方が得策です、ライサンダーさん」
とりあえず帰って治療を受ける事を最優先にすべきだ。ここで出来るのはシャラの簡易治療とグリーシャによる毒抜きくらい。本格的な治療はギルドの薬と医師によるものを受けねばならないだろう。ここまで危ない目に遭わせてしまった事にリーダーたるライサンダーは苦悶の表情を浮かべている。
「済まない、皆を危険に晒した。これではリーダー失格だ」
「何言ってんすか。ついてくと決めたのは俺らでっせ?」
「そうそう、兄さんは前向きゃ良いの」
「良い仲間に巡り逢いましたね、ライサンダーさん」
「毎度助けられてるよ、彼らには」
「あたいもそうです」
「案外、リーダーの素質って皆の協力を得られるって事も含むのかもな」
「かもしれませんね」
「皆の衆、出るぞ」
その頃ギルドでは報告を受けていたマスターが帰って来たメンバー達を見て安心した表情を浮かべ、すぐに申し訳なさそうな顔に変わった。まさか鏡黒竜一族が再び同じチームの前に、こんな短期間で姿を見せるとは思っていなかった。
「おお、無事だったかい!心配したよ!」
「皆の助けがあってな」
「そうか。報告の通りヴァーリエの兄に会ったのだな?」
「ああ。手強かった」
「恐らく腕や指の数に近い数の能力を捻出出来るのだろうね」
「そこまでは把握してないが、有り得ん話ではないな」
「まぁ、とにかくよく帰って来た。暫く休みなさい」
「済まん、そうさせてもらうぜ」
全員治療室へと向かい、本格的な治療を受けた。特にライサンダーの傷が酷く、もう少しダメージを受けていたら手遅れになっていた可能性すらあっただろうと告げられた。ここで傷の手当てを終え、全員で別室に集まる。今後の行動指針を示す為だ。
「全員揃ってるな」
「ええ」
「ここから1週間はダンジョンに潜らない。暫くは休息と鍛錬の時間とする」
「毒を喰らったのも関係してるんですか?」
「ああ。グリーシャの毒を模倣したなら強力なものの可能性が高い」
「あ〜、自分で言うのもあれですが、確かに言えてますね」
「治療に専念するも良し、体を動かすも良し。勉学に励むのも有りだ。皆、思い思いに過ごしてくれ」
「おお〜」
このままではまともに動けず、仕事先で大きなミスをして取り返しのつかない事になりかねない。だからまずここで休息を挟む。チームの安全管理と体調管理はリーダーの務めだから、無理をさせないのも必要だ。早速シオンの勉強を教えてこの日を過ごしていく。
「兄さん、これ教えてよ」
「ああ、これはだな」
「……」
「どうしたの?ティア」
「あ、グレンダさん。いえ、私もお
「ライが?そう」
「この時代からそうしていたなんて」
「学科は並程度だけど、経験に基づく独自の戦い方を持ち合わせてる。実地研修の教官を務めた事もあるの。人に教えるのには慣れてるのよ」
「そう、なのね」
さて、日が暮れてそれぞれが
「お〜う、ライ〜」
「バリスか」
「焼肉に行こうぜ。ちょいと色々と聞かせてくれ」
「焼肉か。良いぜ」
「お、その子が噂の娘さんかね」
「シャラから聞いてたか?」
「まぁな」
「ティアと申します。常日頃からお
「こいつぁ、どうもご丁寧に。シャラの兄、バリス・グレイセスだ。シャラが世話になってるね」
「飯、ティアも連れて行って良いか?」
「構わんよ」
「ありがとうございます」
3人で行く焼肉の店は国に複数店舗出店してる大衆向けの店だ。ここでなら個室で仕事の話をゆっくり肉を焼きながら出来るだろうとのバリスの配慮からだ。
「じゃ、聞かせてくれ」
「おうよ」