完結まで暫く貯蓄を切り崩しながら月一回更新を続けます。
どうぞよしなに。
ぽおくそてえ
「そういやぁ、3人は何故ダンジョン探索者になろうと?」
「俺は功を挙げて弟に良い暮らしをさせてやりてぇっす」
「ウチと似た理由だね」
「私は特には……魔法が使えるから、ただそれだけです」
「右に同じです。稼げりゃ何でも良かったんです」
「そっか」
「そういう貴方は?」
「俺か。話そう」
彼がダンジョン探索者になった理由。それは生きる為、恩あるギルドマスターに少しでも借りを返す為、そして自分の様に困った人を助けたい一心だった。ライサンダーの居た村の近くに突如ダンジョンが出現し、そこに群がるモンスターによって蹂躙されてしまったとか。その状況を改善させてくれたのがその時、いち冒険者だった他ならぬギルドマスターだった。少しでも彼に恩返しして、自分の他に困る人を減らしたい一心でギルドの門を叩いたのだ。
「そうだったんすね」
「ま、自分の気持ちを押し付けてんじゃねぇかって。そう思ってはいるがね」
「何もしない人より断然マシ、そう思います」
「そうか」
「『誰かの為』なんて簡単には口に出来るっすけど、実行するのは難しいですぜ。兄貴はそれが出来てるらしいじゃないですか」
「そうですよ、ライサンダーさん」
「うむ。じゃ、最期のその時まで戦おうかね」
途中の休憩を終えてまた、ダンジョンの奥深くまで潜り込もうとするが、徐々にモンスターの凶暴さが上がってくるし、数も上より多いから大変になってくる。
「7階層か」
「ひぃ、さっきよりモンスターが強くなってないですか?」
「まぁな」
「リーダー、ここからは私達では危険では?」
「撤退しますか?」
「そうだねぇ」
これ以上は新人の彼らには危険だと思われる。拙速は巧遅に勝ると言うから、リーダーとして判断は即座に下した方が良い時もある。グリーシャが思案した末に下した命令は残りたい者だけ残る様にとの事だ。判断を下す練習として良い機会だ。その結果としてヘイルは残る事になった。少しでも経験を積んでおきたいからだ。そして他の2人はグリーシャと共に撤退するという。ヘイルは責任を持って連れていく。
「グリーシャ、ヘイルは俺らで預かる。残りの2人と撤退を」
「はい」
「ヘイル、俺らについてくるんだ。俺らは無事に生きて帰る事を最優先にしている、良いかい?」
「う、うっす」
「緊張してたら本領を発揮できないわよ。まずは落ち着いて。冷静さを欠いては成功しないからね」
「金言、ありがとうございます。やっぱり長期間活躍されてる方は違いますね」
「生き残る為には色んな事を試したからな。よし、行こう」
「おお〜」
それからというもの、時折中級に相応しい強さのモンスターを適宜撃退しながら奥の方に進んでいく。9階層までたどり着いたが、ここまでどれくらいの地図と合ってるか確認しておく。ズレが大きいのなら報告する事が増えるし、出現モンスターに違いが出てもおかしくない。今まで得た情報から推察するに、結構変わっている。
「どうだ?」
「だいぶ違うわね、2割くらい変わってるかしらね」
「やはりか。探索中に少しずつ変わって帰り道で迷ったなんて話も聞く、注意して当たるぞ」
「うっす」
「ヘイル、その魔導銃、属性は?」
「オールマイティですぜ。火に水、風に氷、光などなど。それ以外にも色々でさぁ」
「頼れる人が居るわ」
「俺らは変わった属性が多い。万能型は助かるぜい」
とはいえ、2丁拳銃だから一度に発出できる属性は限られており、属性を変えるなら基本的に数秒ほど時間が必要となる。奥義として複数属性を射出できるものの、魔力の消費が多いから連発は出来ない。さて、そんな話をしていると大広間に辿り着いた。
「アレが、最奥部?」
「らしいな」
「なんか居ますぜ」
「四つ腕のワイバーンか?」
「こんな所に上級モンスターかな?」
「あいつらを帰して正解だったな」
「兄さん達、準備は良い?」
「応よ」
「や、やってやりやしょう!」
ワイバーンの類なら良くいるが、竜となれば伝説に片足を突っ込む事になる。だからワイバーン種ではないかと推論している。無理もない、竜種の情報はほぼ無いからだ。兎にも角にも敵として戦うなら容赦しない。
「グルル」
「まずは俺が行きますぜ」
「待て、同時に行くぞ」
「うっす」
「やるぞ。俺らの魔法で仕掛ける」
「撃つっすよー」
「下から水銀の矢で貫く」
「連射っすよ」
「速いわね、あの2人」
「初めて組むとは思えないよ」
今日初めて組んだ上にヘイルはまだ経験が少ないはずだ。だというのに、既に熟練コンビの様に攻撃を仕掛けられている。これも学校における教育の賜物か、はたまた本人の天性の戦闘能力によるものなのか。どちらにせよ上手く立ち回れている。だが、慎重にならざるを得ない理由が、今このチームにはある。それは補助役が、特に回復役が居ないのが理由だ。
「俺らに回復役は居ねぇ。相手の攻撃に良く注意して当たれよ」
「それならまずは動きを封ずるべきよ」
「翼の付け根を狙うってか?」
「後は全ての腕を使った隙を狙うとかだね」
「グレンダ、鏡で惑わせるか?」
「ええ、光を屈折させてなら。簡単な幻影を作れるから」
「よっし、ヘイル、ついてきな」
「お任せくだせぇ」
まずは目を眩ませて動きを封ずるという手段に打って出る。グレンダの魔法で幻影を見せ、そこに攻撃を当てるという寸法だ。腕に攻撃を当ててダメージを稼げば、多少なりとも戦いやすくなるだろうと踏んでいる。たった4人ではこれが取れる策の数少ないものの一つだ。
「だらぁ!」
「ほれぇ!」
「グオウ!」
「今だ、衝波!」
「ばら撒くわよ」
「あいよ」
「光だけじゃない。耳からも封じるよ」
「そんな事が出来るんですかい?」
「うん」
そう、それが歌魔法という魔法の存在である。耳に訴えかけて精神を揺さぶり、幻影を見せたり仲間を強化したりと便利な魔法である。グレンダの光魔法が目に訴えかけるなら、シオンは耳を攻める。大概どちらかなら幻影に嵌められるのだ。
「皆、散って!」
「おう」
「うっす」
「目眩しよ、『白夜光』!」
「グギャア!」
「今のうちだね。ル〜ララ〜……」
「(あれは幻影を見せる歌魔法だな)ヘイル、耳を塞げ」
「えっ?へい」
シオンの魔法に難点があるとすれば、味方にも幻聴が起こる可能性が捨てきれない点だ。そこで耳を塞いで戦うという戦法を取る他無いのだ。だが、その分強力である。相手には確実に効いており、混乱状態に陥れている。
「グ、グゥゥ……ウッ?」
「(混乱してるな。狙うなら、今)」
「連打だぜ」
「ほらよぉ」
「グリュウ!」
「どう?効いてる?」
「予想より硬いな」
「そっすね」
「光が薄れ始めてる。幻影もこれ以上長くは続かないわよ」
「ウチの魔法も効果が落ちてるよ」
「ま、情報が得られた。この後どうするかだが……」
「無理して戦わなくても良いんじゃねぇですかい?」
「そう簡単に逃げさせてもらえるかねぇ。逃げの一手を打たせてくれるなんて、そうは問屋が卸さねぇよ」
モンスターは獲物を確実に仕留めるまで逃してくれない、なんて事はザラだ。だから今回も安易に逃してくれるとは思えないのだ。だから仕方なく、ライサンダーの受け継いだこの
「それはお兄様の」
「あいつの力を借りる」
「グ、グググ……」
「何だ?」
「グルル」
「……立ち去ったな」
「相手が撤退を選べるほど冷静で助かったわ」
「戻ろう。壁に吸い込まれた感じからして、モンスターがダンジョンからダンジョンへ移動するコツみたいなのがあるのだろう」
「先導するよ」
とりあえずマスターに連絡しておこうとなった。途中でグリーシャ達と合流しておいて情報交換を済ませておくべきだろう。すぐにダンジョンを離れて安全を確保すべきだ。
「そうね」
「外に出たら電話を借りようよ」
「貸してくれるもんなんすか?」
「案外ね」
「へぇ。俺、ダンジョンなんてほぼ潜った事無いし、過去数回全部ギルドで簡単な報告しかしてねぇんすよね」
「ま、大体はそれで良いんだけどね。今回は例外、見た事の無いモンスターの目撃情報は重要だから」
もしも先程のモンスターが竜種なら危険度が跳ね上がるだろう。取れる手段を過去の教訓から導き出す為にもここで情報収集に出るべきだ。四つの腕を持つ竜種なんてそう多くは無いから、もしかしたら情報を集めるのに苦労するかもしれないが、できる限り集めておき、広く公開すべきだろう。そうこうしている内にギルドへと帰還する。毎度の恒例行事なのだが、別のチームから合同任務に出ないかと持ちかけられる。
「帰ったぞぉ」
「あ、ライサンダーさんだ!」
「今度ウチのチームとどうですか?」
「こちらのチームに是非!」
「悪いなぁ。俺は自分の目で実力を判断できなきゃ基本組まねぇんだわ。何処かで実力を見せて貰えばチャンスはあるかもな」
「はい」
「残念だったね」
「相も変わらず色んな女の子に声を掛けられるわね」
「目的は俺の実力、ってな訳じゃなさそうだがな」
いろんなお誘いを断りつつ、いつも通りマスターの座す場所へと向かう。帰ってくる前に連絡した事の具体的な説明をすべきだろうと、擦り合わせを行なっていく。目撃情報、大きさや特徴を具体的に伝えていく。
「戻った、マスター」
「報告は聞いてるよ。四つ腕の小型竜、翼竜の一種だろうね」
「赤紫の体色をしていたわ」
「ふむ、古文書で調べてみよう」
「ダンジョンの奥へ溶け込む様に消えたんだ。むしろダンジョンの内部をもっと詳しく調査すべきでは?」
「そうだね。でも、何度か最奥部を調べたが、負の気が関わっている事以外詳しくは……」
「負の気か」
「あれがモンスターの体に馴染んで溶け込めるのだろうと推察されるよ」
「人間には出来ないのか?」
「出来ないわけじゃなかろうよ。だが、リスクが大きい。精霊の力と負の気は善悪両面があるね」
負の気は本来それを喰らうモンスターの体質と合っている。魔法を使えない人間には危険だし、使えてもどこまで耐えうるか判断がつかない場合が多く、基本的に過剰摂取は危険と判断されている場合がほとんどだ。はてさて、少し戦ってみて感じた事も伝えていく。これは少しでも今後遭遇した場合の対処法を共有する為だ。
「俺の
「何か原因があるのだろうか」
「さぁね。言語を話さないモンスターは何を思っているのか分からないからな」
「とりあえず、また調べさせる」
「了解」
「疲れたわ」
「兄貴、ちょいと相談が」
「聞こう」
「……俺をチームに加えてください」
「俺は構わんが、理由を聞いても?」
「そうっすねぇ。自分磨きですぜ、一言で申すのであれば」
「ああ、そうか。なら良いぜ」
「ライ、本気?」
「こいつの成長が楽しみでよ。間近で見てみたくなったんだ」
「こう言ったら聞かないものね」
「言えてる」
「っしゃ!ありがとうございます!」
「早速仕事の終了記念と新人歓迎を兼ねて飲みに行くぞ」
「その前にグリーシャに報告だよ」
これで期待の新人が1人加わった。これで戦力の拡充が見込めるだろう。果たして次はどんな冒険が待っているだろうか。