ぽおくそてえです
どうぞご覧ください
「ライサンダーさん!」
「はぁ、キッツイ」
「この怪我、一体何が?」
「伝説の竜種に出会ったの」
「竜種?」
「とりあえず治療させようよ、この傷で良く立てるね」
「流石に、目が、眩む……」
「ライ!」
「兄貴!」
傷だらけ、出血が多い、耐性が他の人に比べてあるが毒となる水銀を喰らった。普通なら死んでもおかしくない攻撃を喰らっているのだ。倒れて気絶した程度で済むなんてあり得ない状況だ。とりあえずギルドまで至急連れ帰って傷を塞いで毒を抜かなければならない。
「意識、失ったね」
「あちこち水銀で射抜かれてるのよ。耐性が有るとはいえ、前の戦いを含めて出血も多い。当たり前だわ」
「それぞれが戦略上重要な存在とは言え、ここまで仲間の為に体張る人はそう居ませんぜ」
「そういう男だよ、ライサンダーさんは」
「私の魔法で傷は塞いだよ」
「本格的な回復は帰ってからだね」
とりあえずはシャラの回復魔法と解毒魔法で応急処置はしておいたが、本格的な治療はギルドに帰らねば薬などの関係で難しかろう。グレンダの作り出した硝子の台車に乗せてギルドまで連れて帰る事にした。事の顛末はギルドマスターに早急に伝達された。
「そうかい、そんな事が。伝説の鏡黒竜相手に良く生きて帰ってきた」
「相手はどんな奴なんです?」
「見てる魔法が悉く撃ち返された」
「ああ、話そう。奴らは鏡面反射、つまりコピー魔法の使い手さ」
「コピー!?そんなのアリっすか?」
「だが、君達の話を聞く限り弱点はありそうだ」
「ええ、同時に二つか三つくらいかしら?」
「そして今言えるのは対処できるのは目で追えている範囲、かな?」
「その様だね」
とりあえず情報は無事にギルドへと持ち帰った。各地へ赴くダンジョン探索者にこの情報は伝達して注意喚起を図る。いつどこで出会っても良い様にしておくのだ。だが、肝心のその情報を持ち帰ったライサンダーが気絶して目を覚ます予感がしない。産まれた時からの幼馴染のグレンダからしてみれば、いつもより無茶をしたと感じている。昔からこんな感じだったが、ここまで無理して庇う事は少なかったのだ。
「ライ……」
「姐さん」
「心配っすね」
「今に始まった事じゃないの、小さい頃から時折無茶してたわ。そこは変わってないね」
「……ごめん」
「シャラ、貴女のせいじゃないわ。こいつが勝手にやった事だから」
「でも」
「こいつは自分の納得する行動をしたから。自分を責めちゃダメ」
「うん」
そうは言うものの、纏う空気は結構重い。重傷となったライサンダーを心配そうに見つめるメンバー達だが、こうしていても良くなるとは限らない。だから一旦解散して各々のやりたい様にする事になった。
「俺らは先に酒場に戻ってます。姉御はどうなさいます?」
「残るわ。出来る事はしたいから」
「そっすか」
「無茶しないでよ、姐さん」
「ええ。休息は取るから」
「じゃ、行こう。邪魔しちゃいけないからさ」
「またね」
グレンダはライサンダーの包帯を取り替えたり、薬を塗ったりと治療に専念する。こうなるのも久々だが、昔からそれなりの怪我は偶にあったのだ。こうなると心配しながら治療するしかない。怪我はあるが、気絶したのは久々なのだ。
「まったく、貴方はいつもこう。心配するこっちの身にもなってほしいわ」
「おや、やはりここだったか」
「マスター……」
「幼馴染が心配だね」
「怪我が原因で気を失ったのが久しぶりだから尚更です」
「彼ほどの実力者でも油断ならない。言っちゃ悪いが、これを見本とせねばならんね。強敵との連戦の難しさってのも」
「言えてる」
「薬代はこちらで負担する。彼のお陰で稼げてる部分も多々あるからさ」
「ありがとうございます」
これから暫く、グレンダがつきっきりで看病し、少し値の張る効果が大きい秘薬を利用して傷の手当てを迅速に終えていく。そしてようやくライサンダー目覚めの時を迎える。
「ん?ここは」
「ライ!」
「ギルドの医務室か。気を失ったのは覚えてるが……」
「兄貴、心配しましたっすよ!」
「ああ、皆無事だったか」
「何寝ぼけてんのよ。重傷なのは貴方だけ」
「そうか……で、何時間寝てたんだ?」
「何言ってんの?4日だよ」
「よ、4日も?」
「姉御に感謝してくださいや、毎日世話してましたぜ?」
「こら、余計な事言うなっての」
「痛っ」
「そうか、悪い事したな」
「ふん、幼馴染として当然よ」
4日間全く動いてないとなると体は鈍りに鈍っているはずだ。少しでも動かして元通りに戻しておきたいが、立ちあがろうとした時に異変を感じた。
「よいしょっと……痛てっ」
「無茶しないの」
「少し回復魔法掛けとくね」
「助かるぜ」
「姐さんも甲斐甲斐しいよね」
「まったくっすよ。スーパー幼馴染ですしね」
「そうそう」
「なんか言った?」
「「いいえ」」
「あ、そっ」
「あ、あはは……」
ようやっと立ち上がったら、そこへやってきたのはマスターだ。起きたと医務室の者に聞いたのだろう、心配な顔をしてやってきた。無理もない、主戦力の1人が久々に気絶して帰ってきたと聞けば心配しないなんて出来ないだろう。
「おや、起きたかね」
「立つのも一苦労だ」
「まったく、それでは早く死ぬよ?」
「理解してはいる、そのつもりだが……」
「それでは君らしくもない。それもそうだ」
「だが、気をつけねばならんな」
「うむ。これから10日間はゆっくり体を休めなさい。これはマスター権限での命令だよ」
「重く受け止めておく」
「では、またね」
「ああ」
ここまで重傷なのは久しぶりだ。マスターから10日間の休養を言い渡されたので、まずはリハビリに専念すべきだろう。果たして10日程度でどこまで歩ける様になるか疑問だが、最大限活かすしかない。まずは歩くところからだろうか。
「とりあえずは体のリハビリからだな」
「歩けなきゃ不便だもんね」
「シャラのお陰で動けはするがな」
「無茶したら姉御に怒られますぜ?」
「分かっとるがな。まずは飯食って体をもっと動かせる様にせねば」
「そうだね」
「それと、単純に腹が減ったんだ」
「まぁ、そりゃそうだよね。四日間飲み食いしてないし」
そう言うと分かっていたのか、グレンダがキッチンから貰ってきたのは体に優しそうなお粥だ。彼女曰く自分が作ったそうな。この行動を見ると周りからしてみれば彼らが夫婦にしか見えないと感じるくらい完璧な幼馴染ムーブだ。
「まずは胃に優しい物から食べる事、良いわね?」
「へいへい」
「まるで母ちゃんっすね」
「それだけ心配かけたんだよ」
「仲良いなぁ、流石幼馴染」
「4日ぶりの飯がお前の作ったお粥とはな」
「贅沢言うなっての」
「いやいや、骨身に染みるね。お前の優しさを感じる」
「は、恥ずかしい台詞ね」
「そうか?」
「こ、今回は素直に受けてあげる」
少しずつ食事を味わい、体への負荷をかけない様に食べていく。そして十数分で食べ終えると、体を動かして10日以内にダンジョンに向かえる様にしておく。まず思いついたのが歩行訓練である。出来ればプールに行って鍛錬したい。しかし、ここでドクターストップがかかる。
「辞めなさい、傷に染みる」
「じゃあどうすっかなぁ」
「ギルドの庭で周回して歩くのはどう?」
「それだ!」
「制限つけたら?ライの体に負担かけたら私が治療する羽目になるんだけど」
「よし、まずは1キロからだな」
「ちょっ!?」
「諦めなさい。こういう時の彼は言う事聞かないから」
医務室から出てギルド裏の庭へ向かおうとすると周りがざわつき、ギルドの他のチームのメンバー達も止めに入ろうとしてはいたが、こういう時のライサンダーは少しでも早く復活したいと聞き入れない事がある。普段ならそうでもないが、チームに心配をかけまいと少しでも早く動ける所を見せて安心させたいのだ。ゆっくりではあるものの、確かに歩を進めていく。
「ふぅ、歩いたぜい」
「病み上がりなのに良くやるわ」
「少しでも元の状態に戻りたいんでね。時間が無いんだ」
「そうっすね」
「じゃ、次は魔法の射出だな」
「えっ!?」
「もうやるつもり!?」
「ああ、こういう時だからこそだ。まずは椅子を作り出して、っと」
座った状態から自分の作り出した動く的目掛けて弾丸を打ち込むというものだ。魔力を使いながら正確に射抜く練習というものだ。弾丸で自分の作った的を射抜く。これが確実だとひとりごちる。
「おお、器用っすねえ」
「能力の一端でよ、的を自由に動かせるから偏差撃ちの練習にもならぁな」
「動く獲物を狙う練習かぁ」
「グレンダも似た様な事、出来るでしょ?」
「まぁねぇ」
「そうなの?」
「硝子の的とかね」
「ああ、あれっすね」
弾丸を撃ち込む練習をしているのはライサンダーなりの信条として、相対したモンスターを最期は楽にさせてやりたいからだ。だからトドメは急所に向けて撃ち込むのだ。それが彼なりの考えだが、その前にメンバー全員でボコボコだけど、それは言わない約束だ。
「皆の衆、10日間ほど休んだら軽めの仕事に行くぞ」
「ええ」
「兄さんの指示なら」
「頼ってくださいや」
「うん」
「よし、しばし自分を見つめ直す時間とする。有意義に使え」