戦う『シレイカン』   作:今はただの霧島

2 / 2
最近忙しくて全然投稿できませんでした。
他の皆様はいったいどうやって時間を作っているのでしょう。


02 「やあ、司令官Рад встрече(初めまして)。」

やあ、おはよう。ん?……ああ、いやすまない。君達の方ではどうだか分からないがこっちでは朝なんでね。おはよう、と挨拶させてもらうよ。

私は特Ⅲ型駆逐艦暁型二番艦「響」だ。この鎮守府に所属する数少ない艦娘の内の一人さ。

 

そう言えば今日はこの「首なし鎮守府」にやっと『(提督)』が来る日だ。

 

「首なし鎮守府」……そう。この鎮守府には訳あって提督が居ないのだ。時にはとある人物の「(提督)が無くても動くなんてまるでゴキ○リの様だな」という発言から「鎮守府G」なんて不名誉な酷い言われ方をしていた時期もあったがまあそれは明後日の方に放っておこう。今は関係ない。

 

そんな訳で(訳は説明してないが)私はこれから自身の上官に値することになるであろう人物を歓迎するための準備をしなければならない。

 

日が昇って暑くなる前に終わらせなければな………。早く他の艦娘も起こそう。早朝から忙しくなりそうだ。

 

────────────────────────────────────────

 

作業が終了したのは太陽が真上を通り過ぎた頃だった。やっと一段落着いた仕事に、思わず溜め息が出る。

やはり長年使用していなっかた提督の部屋等は手を焼かせられた。ホコリが溜まりに溜まり、物置に使用されていたのかあちこちにガラクタが散乱していた。

やはり今度からは定期的に使っていない部屋も掃除することにしよう。あれは酷い。

 

さて、仕事も終わったことで暇になってしまった。

何をしようか。

 

ふと執務室の机の上にある書類が目に止まった。今日着任する提督の履歴書やその着任による人員の移動などその他諸々の書類だ。そう言えば未だ履歴書に目を通していなかったな。色々あって忙しかったのだ。別に職務怠慢とかではない。ないったらない。

 

 

それにしても今度の提督はどのような方なのだろうか…?

 

前よりは酷い人じゃなければいいな……と淡い期待をこめつつ、どうだろうかと履歴書を見てみる。

 

 

 

見て、まず唖然。次に疑問。

 

「松本幸太郎…………じゅ、17歳!?な……若すぎでは…!?」

 

まだ高校生である彼を司令官にしようなど上は何を考えているのだろうか。言い方は悪いが若干十七歳の彼に何ができるというのだ。バイトじゃないんだぞ、これは。生と死のやり取りをする場に高校生提督など死んでも笑えないよ、冗談じゃない。

 

 

 

………わからないな。上の考えて(企んで)いることがわからないよ。

 

考えても見えない曇りの先、その不透明事項に私は疑惑の念と大きな不安を覚えずにはいられなかった。

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

 

 

─────ヒトゴヨンマル。

後20分で新提督が着任する時間だ。

 

新しい提督を迎える準備はもう完了した。後は玄関前で提督をお待ちするだけだ。

 

……何気なく執務室を見回してみると、椅子がなかった。

提督の、厳めしい執務机の前にあるべき椅子が、なかった。

 

「何故か」と考えて、そういえば2、3ヶ月前にウチの島風(スピードバカ)が壊したのだが、「どうせ誰も使わないから」という理由で廃棄して放置していたままだった。

 

仕方がないので他の椅子で代用しよう。そう考え、執務室を出て右手の方向、その廊下の突き当たりの処にある部屋────所謂物置部屋へ来た。

 

横開きの引き戸を木の軋む音を立てながら開けると、入口脇の壁を手で探り照明のスイッチを点ける。

 

薄らぼんやりとした蛍光灯の光に照らされ、反射して光る埃の舞う室内に入ると埃とカビの混ざり合った少しツンとする臭いが鼻をついてくる。

 

様々な(ガラクタ)が雑多に置かれた板張りの床を足で物を踏まないように大股で身体を左右に大きく揺らしながら奥へと進んで使えそうな椅子を探す。

 

「………よいしょっ、どこにか使える椅子はないかな………と」

 

積み重なった段ボールの裏にある革張りの椅子―――――は駄目だ。中のスポンジと骨組みが剥き出しになっている。

 

本棚と達磨の間にある椅子―――――も駄目。足が折れてしまっている。

 

ホコリかぶった机の下に転がっている椅子―――――は論外。児童用だ。

 

パイプイス―――――じゃ駄目だろうな。十中八九怒られる。

 

何に使うか分からない金属のパーツが沢山入った木箱と木箱の間に逆さになって突き刺さっている椅子―――――む、これはいけそうだ。……………と思ったが木が腐っている。駄目だ。

 

 

「……はぁ、どれもこれも駄目だ。使い物にならない。それになんでこんなに物置の中に壊れた椅子があるんだ…」

 

こんなの全部粗大ゴミじゃないか。

 

そんな悪態という名の独り言をついて、ふと気になった時間を見ようと懐から銀の懐中時計を取り出し見てみると、短針が3、長針が11をつまりは○三五五を指していた。

 

げ…マズい。あと5分で提督が到着してしまう。

 

「いたしかたない、これ以外無いからな。ちゃんと説明すれば怒られないだろう」

 

仕方が無いのでとりあえず物置にある椅子の中で唯一使えるパイプイスを小脇に抱えて私は執務室へとかけていった。

 

 

 

───────────────────────────────────────

 

 

 

 

……ふう。なんとか間に合った。

 

パイプイスを設置して鎮守府本館の玄関に向かう途中で「提督がもうすぐ到着するとの事」と、事務の係員の人から連絡がきたのだ。

 

玄関へ着くと、新提督はどんな方なのか、この鎮守府はこれから一体どうなっていくのか等とあれこれ考え、一抹の希望と多大な不安を胸中に燻ぶらせながら身なりを整えておかしな処がないか反射するガラスの前に立って確認する。

 

自分の格好に不備が無いことを確かめると門の方を向いて「気を付け」をする。と、同時に門の脇、人の出入り用の扉を開けて人が入ってきた。

 

写真で見たとおりの若い青年だった。

写真を見た時の印象よりだいぶ大人びてみえたが、それは写真が何カ月か前に撮られたものだからだろう。写真だけでは雰囲気や人柄などは極めて伝わり辛いだろうし、「男子3日見ざれば刮目すべし」という慣用句もあるぐらいだから、と自己完結型で納得した。

 

青年はゆっくりと鎮守府内を見渡すと、女性と少し話をする。女性が扉の向こう側へと消えるとこちらを向き、真っ直ぐに歩いてきた。

 

 

 

 

 

―――――――――開く扉。 歩いてくる男。 下卑た笑み。 不安そうな顔。 響く怒声。 轟く爆音。 痛む身体。 誰かの叫び声。 煙。 泣き声。 怪我。 閃光。 炎。 掴まれる髪。 

 

「大丈夫、心配しないで」は誰かの口癖。

 

 

走馬灯にも似た記憶のフラッシュバックが一瞬で私を駆け巡る。

 

その中の一つが今見ている場面と重なりそうで。

 

彼が一歩、また一歩と歩を進める度に、私の身体の中で薄い氷が幾重にも張っていった。

 




自分の場合、まずノートに下書き、そこで修正。そしてそれをPCのWordに打ち移してまた修正。それをコピーして投稿。

と、面倒極まりない方法で投稿しておりますので投稿が遅れるのはご容赦下さい。


'16.3/12 加筆、修正致しました。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。