ループが元の世界にも影響与えるのもあるけど個人的にあまり好きじゃない。救われないからこその美学があると思うのよ。
そんな訳で、多分ピクシブとかに行けば腐るほどありそうな超かぐや姫一周目モノ、始まります。
『彩葉!』
悲鳴にも似た声がイヤホンを通してボイチャとして聞こえてくる。
マウス操作でカメラを動かすと、パソコンの画面に鎧武者の雑魚敵が大量に映し出された。
長押しでチャージしてブレードを投げさせる。回転しながら飛んでいくそれがモブたちを一掃させた。
『やばいやばい!』
また別の声が聞こえた。
もちろん気づいていた私はエイムを合わせると素早く手首から先を動かして一網打尽にする。
敵が全て空中で消えていく姿が画面に見える。
勝った。あとは仲間たちに任せる。椅子の上で胡座を崩して顎の汗を拭う。薄暗い部屋で集中して画面を見ていたせいか、いつもより目が疲れているのがわかった。
窓を見た。そこには反射して映る酷く疲れた顔のみっともない女子高生と、綺麗な月が見えていた。
+ + + + +
ゲームしている普通の女子高生ありけり。
名をば、酒寄彩葉となむいひける。
この者、母親との相性が最悪だった為、身一つで生きていかんと上京す。せっせとバイトし、生活費と学費を稼ぎ、なんとか生計を立てて生き、学校ではまさに才色兼備文武両道、他の生徒たちに憧れられる優等生──
「──よりさん。酒寄さん?」
「っあはい!」
不意を打たれたお疲れ女子高生彩葉は目開き気絶から一気に覚醒。睡魔を彼方へ吹き飛ばすと咄嗟でありながらも超人的頭脳が完璧な回答を導き出した。
「ここでの『なりぬ』は、動詞『なる』の連用形と、完了系の助動詞『ぬ』の組み合わせです」
完璧女子高生、酒寄彩葉はこんなところでしくじらないのである。
授業が終わったあと、入学当初からは考えられないほどに窶れ、酷い隈と青白い顔の彩葉へと、その友人の真実と芦花が話し掛けて来た。
「……ねぇ、彩葉、そのさ、本気でゲームのプロ目指してみたら?」
「そーだよー。彩葉には彩葉の、お母さんとは違う道が────」
「────平気だから」
つい、強く言ってしまった。そう後悔した彩葉は咄嗟に頭を下げた。
「あ、ご、ごめん!」
「私たちは、その……」
「……彩葉が生きてさえいればいいから」
その他には、予習したり、バイトしたり、予習したり、バイトしたり、遊んだりして過ごしていた。
そんなめっっちゃ頑張り屋な彩葉の帰り道のこと。
+ + + + +
満月の下、私はいつもより遥かに遅い歩みで帰路についていた。
「三連休……か」
それ以上は声を出せなかった。疲れているのか、もう希望がないからか。牛歩のような足元以上に、私の声は羽虫みたいに元気がなかった。バイトでも最近は後輩だけじゃなく、私もミスが増えて来てしまったからか余計に心にキていた。
あ、満月……じゃなかった。ちょっと欠けてたわ。この調子だと、明後日辺りが満月だろうか。
近頃、月を見上げることが多くなった気がする。実家に居た頃は気にもならなかったのに、最近はふとした拍子に月を見上げていた。
理由は……わかっている。母だ。
何も考えないようにしていても、嫌というほどに言われ思い返し脳裏に焼き付いた母の言葉が何度も何度も何度も何度も、繰り返し響いていた。耳を澄ませなくても、いつだって私の世界には母の残響が聞こえていたのだ。
夜は学校やバイトで疲れているからだろうか。残響が大きくなる。綺麗な月を見ている間だけは、その残響が薄れた。
こんな時に好きな曲でもあれば残響を掻き消せるのだろうか。だが、残念なことにこれまで17年生きて来て運命を感じるような曲には未だ出会えていなかった。強いて上げるのなら、父と作っていたあの────。
「流れ星!」
「帝様の願いが叶いますように!」
周りの声に導かれるように目を向けると、月を飛び出すみたいに空で一筋の閃光が奔っていた。残響を少しでも遠ざけたくって疲れ切った手を何とか合わせた。
──神頼みするやつは阿呆や。
駄目だった。むしろより濃く思い出してしまった。
『帝様』なんて聞いちゃったからだろうか。彼を恨むつもりなんてないけれど、でも居てくれたらどれだけ救いになったか。いや、もしかすれば依存してしまっていて結局は母に引き裂かれる羽目になっていたかもしれないが。
それはそれとして、せっかくだし願わずにはいられなかった。
「か、金」
ははっ、と自嘲が溢れた。
気づけば俯いていた。
きっと、
でも、もう来ちゃったのだ。
もう無理だ。死のう。
何とかギリギリ営業時間に間に合った幾つかのお店で、ロープと練炭とブルーシートを買って来た。お店をバラけさせたから通報とかはされていないはず。誰の迷惑にもならず……いや、アパートの大家さん……ごめん。許してください。
さあ、もう家に着く。明日なんてなくていい。もう朝日を見ることなく──
「……は?」
辿り着いた最期の場所、その前にある電柱が七色に光っていた。ピカピカとレインボーに発光し、モクモクと妙に童話チックな様相の煙を吹かしている。
「……ゲーミング電柱…………?」
そうとしか言いようのない摩訶不思議なゲーミングな発光をする電柱。
目を擦り、もう一度擦り。天を仰いで月と睨めっこ。今日も綺麗ですね貴方は。さて、正面には……ゲーミングだな。
今朝に家を出た時はただの電柱だった……はず。昨日も、一昨日も……ていうか、一年以上は普通のコンクリートで作られた凡庸な電柱だったはずだ。それが、どうしてかいきなりゲーミング機能が実装されている。行政は気でも狂ったか。一応東京だぞここ。
「いや……幻覚か……」
私は自殺しようとしている人間だ。気が狂っているのは私の方だったのだ。
────ブッシュウーーー!!!
「うぅえぇ!?」
立ち去ろうとした直後、電柱が煙を吐き出した。まるで私を呼び止めようとするかのように。
思わず眺めていると、煙を吐き出したそこが扉となっているのに気づいた。竹柄の扉に竹の取手、和風というか竹が好きなのかと思わされるデザイン。ちょっと綺麗だと感じてしまう私にも腹が立った。
まあ、開ける気はない。だって幻覚なのだから、これから死に行く私にはどうこうする気も理由もなかった。
もう一度立ち去ろうとした。
すると、妙に軽快な音楽と共に独りでに扉が開き出したではないか。呆気に取られて眺めていると、なんと中から赤子が姿を現した!
「ふえっ」
「え……?」
呆然と眺めていると赤子が顔を顰めたかと思えばくしゃみを一つ。顔面に掛かった。汚いなこいつ。
思わず掛かった鼻水を拭うと僅かにヌメりのある水が手に残って……あれ。幻覚……だよな。なのにヌルヌルの手触りがあって…………。
「ん???」
実在してる……のかこれは!?
「い、いや……ごめん。もう、私手一杯だから……」
そう言って去ろうとすると、まるで引き止めるように赤子が小さく泣いた。
後ろ髪を引かれた心地。不味いとは思いつつも振り返ってしまって──
「あいっ」
くっ……。
「あー! もうどぉなってもいいんだぁ!!!」
遠くから酔っ払いの叫びが聞こえる。
うぐっ……。
「ワン! ワン! ワオォン──!」
遠くから犬の遠吠えが聞こえる。
んぐぐっ……。
「カァ──カァ──カァ──!」
遠くから烏の鳴き声が聞こえる。
むぐぐぐぐぅ……。
キキィ────!!
遠くから車のブレーキ音が響いてくる。
さすがに……うぐぐ……流石に、ここは駄目だ。こんなに治安悪い町だったっけ。ともかく、せめて、うん。警察に届けよう。生前最期の善行だ。きっと天国へ行けるに違いない。
「どうやって持つんだこれ……?」
不安に思いながらもまだ座っていない頭を手で支え、お尻から体全体を座らせるみたいに持ち上げる。抱き寄せ、私の胸に赤子を寄り掛からせればとりあえず首に負担が行くこともないだろう。
改めて、この小さく柔らかな体を抱き寄せた。軽い。柔い。やっぱり幻覚なのではないかと思うほどに希薄な存在感だ。私がちゃんと見てやらねば、私より先に死んでしまうのではないかと不安に思うほど。
「って、あれ……?」
私が赤子に夢中になっている内にゲーミング電柱はゲーミングを退職、もとい通常電柱に転職していた。当然、赤子が入っていた綺麗な竹柄の扉も竹の取手もなくなっている。
「お、おーい。忘れ物ですよー」
電柱をトントンコンコンと叩いて見るが全く反応は帰ってこない。ゲーミングじゃなくなったのは百歩譲って良い。だが、これではこの赤子を元に戻すことも、誰かに不思議現象を証明することもできない。だって証拠がないのだから。
しかし、ふむ……深夜、身元不明の赤子を抱き抱える私。
「これじゃ私が攫ったみたいでは……?」
自殺なんてしなくても、バレたら母に殺されるんじゃないだろうか。
冤罪の証明になりかねない赤子を見下す。
「たいっ」
「無理無理無理……」
こんな精神状態で母と相対すれば殺されなくてもショック死する自信がある。
どうしよう。どうする。赤子は……置いていくか?
いやいやそれは不味い。それで死んじゃってたら流石に私が私を許せなくなる。
じゃあ……バレないように育てる?
でも育てる余裕なんて一切ないぞ。金銭的にも精神的にも。身体的にも!
「ふえええええ!」
私が悩んでいると、まるでさっさと連れてけやこの野郎とでも言いたげな号泣が夜中の町に響き渡る。
「ああもう!」
慌てて私は自分の部屋へと走って行った。
彩葉
ーヤチヨが存在しない為、精神状態悪化。
かぐや
ー流星落下後の筍案内人ヤチヨが居ない為、電柱到着が遅れた。
両方とも家に向かうのが遅れたので結果的にピッタリ合流した。
どうなろうと二人は運命的な出会いをするし、して欲しいと思ってる。
多分、スマコンってヤチヨが関与してるよね? 少なくともあんな小さな機械でほぼフルダイブみたいな技術、今から最低でも二十年は要るでしょ。だから今作では存在しないってことで。
ついでに、おじさんと犬と烏とタイヤは一晩中鳴いてるってことで。夏の風物詩()なのね
見切り発車なのでよっぽどやる気が出ないと続かない。書いてて小説版アニメ版がゴチャ混ぜ過ぎてよくわからんくなったし。
最近はハーメルンで超かぐ二次の供給がめっきり少なくなって悲しいの……皆も超かぐ二次たくさん書こうね!