最悪のAIウルトロンは、ヒーロー免許を取得して偽りの平和を管理する 作:MAMIMU
実技試験が終わった後、僕の右腕と両脚は、雄英の誇る治癒ヒーロー・リカバリーガールの「癒やし」の個性によって完全に元通りになっていた。
極度の疲労でフラフラになりながら家に帰った僕を、母さんは心配そうに出迎えてくれたが、僕はうまく笑うことができなかった。
(0ポイント……。1ポイントも、取れなかった……)
オールマイトからもらった力を、たった一撃のために使い果たし、自滅した。
お茶子さんを助けるために体が動いたことに後悔はない。でも、試験には落ちた。オールマイトの期待を、十ヶ月の血のにじむような特訓を、すべて無駄にしてしまった。
それからの一週間、僕はまるで抜け殻のように過ごした。
オールマイトに合わせる顔がなくて、彼からの連絡も取れないまま、ただぼんやりと天井を見つめる日々。中学校でも、かっちゃんから「落ちた面してんじゃねぇぞ没個性」と凄まれたが、言い返す気力すら湧かなかった。
そして、運命の通知日がやってきた。
「出久!! 来た! 来たわよ!!」
部屋のドアを勢いよく開け、母さんがパニックになりながら一枚の封筒を突き出してきた。
「雄英から……! 速達で!!」
震える手で封筒を受け取る。分厚い。
「母さん……僕、一人で見るよ」
「わ、わかった! 母さん、お茶淹れてくるわね!」
部屋に一人残され、机の前に座る。
(不合格でも、結果は受け止めなきゃいけない)
意を決して封筒を破ると、中から出てきたのは紙の通知書ではなく、小さな金属の円盤だった。
「なんだ、これ……?」
カチャッ、と円盤が机に置かれた瞬間、そこから光が放射され、空中に巨大なホログラム映像が投影された。
『私が、投影(ホログラム)で来た!!』
「オ、オールマイト!?」
映像の中でスーツを着たオールマイトは、いつものように豪快に笑っていた。
『待たせて悪かったね! 実は私、この春から雄英高校で教鞭を執ることになったのだよ!』
驚きで声も出ない。オールマイトが、雄英の先生に……?
『さて、君の試験結果だが……筆記はギリギリ合格ラインだった。しかし、実技試験でのヴィランポイントは0。残念ながら……』
わかっていたことだ。わかっていたのに、目の前が涙で滲む。
だが、映像の中のオールマイトは、そこで言葉を区切り、手元のリモコンを操作した。
『この映像を見てほしい』
モニターに映し出されたのは、試験直後の大講堂の裏口。
そこには、僕が試験中に助けたあの女の子、麗日お茶子さんが、審査員であるプレゼントマイクに必死に頭を下げている姿があった。
『あ、あの! 縮れっ毛で、ソバカスの男の子……!』
『うん? わかるぜ』
『あの子の……ポイントって、私のに分けられませんか!? 私、あの子に助けてもらったんです! だから、お願い……!』
(お茶子さん……僕のために、そこまで……)
涙で視界がぼやける中、オールマイトの力強い声が響いた。
『自身の命を賭して、他者を救う。それこそがヒーローの大前提! 雄英(ウチ)は、敵ポイントだけで評価するわけじゃない!』
ドンッ!と、映像にスコアボードが映し出された。
『レスキューポイント! 審査員による隠し評価だ!
麗日お茶子、45ポイント!
そして……緑谷出久、60ポイント!!』
信じられない数字だった。
僕が0ポイントで絶望していた裏で、僕の行動は、ヒーローとしての資質として、しっかりと評価されていたのだ。
『合格だ、緑谷少年』
オールマイトが、画面の向こうから僕に向かって、真っ直ぐに手を差し伸べていた。
『来い。ここが、君のヒーローアカデミアだ!』
その言葉を聞いた瞬間、僕は机に突っ伏し、声を上げて泣き崩れた。
ずっと否定され続けてきた僕の夢が、今、最高のヒーローの言葉と共に、現実の扉を開いたのだ。