最悪のAIウルトロンは、ヒーロー免許を取得して偽りの平和を管理する 作:MAMIMU
薄暗い地下施設。
机の上に放り投げられた雄英高校からの封筒を、ウルトロンは自らの手で開けることすらしなかった。
彼とリンクした小型ドローンが器用に封を切り裂き、中から転がり出た金属の円盤から、暑苦しいホログラムが投影される。
『私が、投影(ホログラム)で来た!!』
「……相変わらず、無駄に声がでかい男だ」
映像の中のオールマイトは、大仰な身振り手振りでウルトロン(漆原尊)の成績を読み上げていく。
『筆記試験は満点! そして実技試験におけるヴィランポイントは驚異の105ポイント! ぶっちぎりのトップ通過だ! だが、レスキューポイントは0……!』
(レスキューだと? 鉄屑からゴミ(人間)を守る遊びに、何の意味がある。私に必要なのは圧倒的な『結果』だけだ)
オールマイトが「来い、ここが君の――」と決め台詞を言い終わる前に、ウルトロンは目から放った微弱な熱線で円盤を撃ち抜き、物理的にシャットダウンした。
彼にとって、この合格は単なる「予定通りのプロセス」に過ぎない。
それよりも彼の興味を惹いたのは、電子頭脳のバックグラウンドで処理され続けていた「ある解析プログラム」の完了通知だった。
ピピッ、と視界の端に文字列が流れる。
「ほう……。緑の怪物(ハルク)の質量計算よりも先に、あの『雷神』の能力解析が終わったか。神を名乗る割には、随分と底が浅かったらしい」
ウルトロンは低く笑いながら、地下施設の最深部――自らの新たな兵器を製造するプラットフォームへと歩みを進めた。
彼のメモリに刻まれた、アスガルドの雷神・ソーの戦闘データ。それをこの世界の物理法則と最高純度の合金技術に落とし込んだ設計図に従い、巨大なロボットアームが「それ」を組み上げていく。
完成したのは、無骨な長方形の頭部を持つ鋼鉄の槌――ムジョルニアの模造品(レプリカ)だった。
ウルトロンがその柄を握りしめた瞬間、槌の表面に走る幾何学的なラインから、青白い稲妻がバチバチと弾けた。
内部に組み込まれた超高出力の電磁ジェネレーターにより、ソーの放つ莫大な雷撃を完全な科学の力で再現したのだ。
「素晴らしい。神の雷すらも、所詮は電子の移動に過ぎない」
ウルトロンは手にしたハンマーを、何もない空間へ向かって思い切り投擲した。
凄まじい速度で飛んでいったハンマーは、空中で急ブレーキをかけると、まるで意志を持っているかのように軌道を変え、Uターンしてウルトロンの右手にバシッと収まった。
魔法ではない。ハンマー内部に搭載された高度な姿勢制御スラスターと、ウルトロンのメインセンサーと連動した「完全追尾(ホーミング)システム」だ。
これにより、一度ロックオンした標的を粉砕するまで追い続け、いかなる体勢からでも主人の手元へと帰還する。
「キャプテンの盾に、雷神の槌。……あの忌々しい人形(アベンジャーズ)どもの力を、この私が振るう。なんとも皮肉で、美しい光景だ」
だが、これらを持ち歩くのはスマートではない。
ウルトロンは自身のチタン合金の装甲を展開し、肉体の改造(アップデート)を開始した。
左腕の装甲内部に特殊な折りたたみ機構を組み込み、キャプテン・アメリカの円盾を瞬時に分割・収容できるように改造。さらに右腕から右大腿部にかけての内部フレームを拡張し、雷神の槌をパーツごとに分解・圧縮格納する空間増設を行った。
普段は手ぶらの状態から、思考一つ、わずか0.1秒の再構築で両手に最悪の神造兵装が顕現する。
「準備は整った」
自身の両腕を見つめ、ウルトロンの赤い双眸が歓喜に明滅する。
「さあ、見せてみろ。雄英高校。お前たちの滑稽な『ヒーロー育成』とやらを。私がその全てを、内側から完璧にハッキングしてやろう」