黒ずくめの組織の暗殺者がアポトキシンで幼児化した件 作:ummt
『兄さん!! 面白い話をしてあげるから僕のラボに来てよ』
地主の男の殺人依頼を縛りゲーもとい絞殺縛りでこなし、使用したチモシーをウサギに食わせているタイミングでガラケーが鳴った。
「なんだよ、つまらないものだったら殺すからな」
黒い革手袋もそろそろ買い替えないと足がつく。
1件ごとに7組をローテーションしてはいるものの、流石に繊維から同一犯による犯行とされるだろう。
『ふふ、僕は簡単に殺せないよ?』
弟のバイジウはある組織のナンバー3の座まで登り詰め、俺はお溢れとして暗殺者の枠を用意された。
暗殺者稼業は性に合っているようで、今までに単独ミッションをメインで数十件の殺人を完遂している。
主な標的は『組単位』ばかりで、単身で乗り込んで行っては組を壊滅させ、その評価も相まってかラムの直下というポジションでのんびり仕事をさせてもらって有難い。
「あっそ。今行くから待ってろ」
、、、
「兄さん!! あのさ、ぼ」
バイジウが話始める前に心臓に一発鉛玉を撃ち込んだが、心臓を腕で庇いグラッと蹌踉めいただけで倒れない。
「お? 新しいアームアーマーか? 防弾チョッキの方か?」
2発目を準備しながら歩き寄ると、腕を振りながら白衣を脱いだ。
「痛った……僕の話はちゃんと聞いてよ!!」
腕を見ると薄いハニカム構造が折り重なったアームカバーが中のスポンジ状になっている部分に食い込むかたちで銃弾を受け止めていた。
「おー、新しい防弾方法か……カーボンナノチューブにしては柔軟性が有りすぎる……」
六角形の質感を革手袋越しに確認すると、バイジウは脱いだ白衣のポケットから錠剤のシートを二種類見せた。
「ジャジャーン! これは何でしょう?」
錠剤をよく観察するが、ただのカプセル錠にしか見えない。
「なんだ? 新作のセッピードラッグか?」
そんなものを理由に呼び出されたのなら心外だ。
「違うよ!! ほら、ラボにいたでしょ? 『可愛い』と呼ばれる女」
可愛い……ああ、コードネームとは裏腹に可愛げのない研究者だったシェリーのことか。
「シェリー? アイツは組織を裏切って始末されたんだろ?」
確かアイリッシュからはそう聞いたが。
「ブッブー、違います。シェリーには『アポトキシン4869 / APTX4869』を開発させていたんだけど、それは失敗作で『毒薬』ってことになってたんだよね」
つまり、別の効能が既に認められていたと。
「始末でないなら自殺か? まさか逃亡してるんじゃないだろうな」
あのジンが反逆者の逃亡を許すはずがない。
「近いかなー。試作品のアポトキシン4869は使用した際に必ず絶命するまで見張れって言っていたのが大ヒント」
……めんどくさ。
「で? 結論は?」
銃をくるくると回しながら回答を待つと、バイジウはニコッと微笑んだ。
「試作品には『体の変形』が認められていたんだけど、新しく捕まえたFBI捕虜に服薬させたらびっくり!! 幼児化したんだ!!」
にわかには信じがたいが、それが事実ならシェリーは自殺しようとして幼児化し、逃亡したのか。
死体を確認しなかった……?
「それが事実だとして、なぜ幼児化する者と死亡する者に分かれるんだよ」
幼児化と死亡では天と地ほどの差があるが。
「それはね? 被験者の脳内ニューロンみたいな電気信号を受け流す細胞が活発であるかどうか。簡単に言えば思考の量の差に起因するものが高い割合を占めるんだ。だからFBIみたいな知力を要する者は幼児化しやすい」
ずいぶんと簡単な話だが、常に同じ結果が得られなければ意味がない。
「それで、お前の面白い話って?」
地べたに座り込んで胡座をかくと、バイジウは二つのシートをヒラヒラと振ってみせた。
「これはね? アポトキシン4869を改良した若返り薬の『アポトキシン5011 / APTX5011』と成長薬の『トリアムパン0140 / TLPN0140』。年齢設定は1錠で『10歳』、半錠で『5歳』になる。どう? 使ってみたくなった?」
どうせ副作用として廃人化やら寿命が縮まる等がオチおるだろう。
「俺はラムから『記憶喪失』として警察内部に潜り込み、毛利小五郎の懐に入りこむミッションを与えられてんだけど」
シートを奪い取り、まじまじと見つめた。
「丁度いいじゃない。組織には未だ報告していないから実践してみなよ」
人生に未来はないから乗ってみるか。
「やった!! 生体サンプルとして使わせてね!!」