黒ずくめの組織の暗殺者がアポトキシンで幼児化した件   作:ummt

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其の三 ブルドン兄弟 予想外の結果

 

「餓鬼が……戻ってきやがったぜ」

 

 鍾乳洞という暗く足場が不安定な空間、しかも三人が殺害したと思われる遺体には銃創が1発分あった。

 そして江戸川を撃ったことと拳銃が日本の警察が使うM360……SAKURA、つまり多く見積もっても残りは3発。

 恐らくはヤー公が仕入れたか、紛失品か……どちらにせよ誰かの首が飛ぶ。

「……すみません。僕たち何も見ていないから許してください」

 岩陰から頭を下げると、三人の男達は気が緩んだのか口元が笑った。

「ごめんで済んだら警察は要らなっ」

 男の一人に向かって20cm程の石灰岩の塊を投げつけると、流石に男の顔は潰れて死んだ。

「な……は?」

 死んだ男に目線をやる拳銃を持った男の手首をハンカチ越しに掴んで、引き金をもう一人の男に引いた。

「な、な、何しゃが」

 拳銃を奪い取り、死んだ男の手に持たせて引き金を引くとあら不思議。

 

「仲間割れなんて……可哀想ですね」

 

 、、、

 

「大丈夫!? 吉田さん!!」

 

 洞窟の奥で出口に向かう四人に駆け寄って江戸川の容体を見た。

「うぅ……コナン君、意識がないの……」

 それは良かった、意識があると子供達への心配で余計な体力を使うから。

「小嶋君、コナン君を降ろしてくれる? あとライトを貸して」

 おぶさっていた江戸川を小嶋がゆっくりと降ろすと、巻いたシャツの下から創部を確認した。

 腎臓や脾臓の位置ではないが、大腸を掠っていたら命があやうい。

「背負うの疲れたでしょ? 僕がコナン君を背負うから」

 運搬役を交代して急ぎ足で出口へ向かうと、既に警察が到着していた。

 

「大丈夫か!? な、怪我をしているじゃないか……直ぐに救急車を呼べ!!」

 

 、、、

 

「……アナタの処置が早かったから、失血死にならなかったみたいね」

 

 緊急手術とはなったものの、江戸川は奇跡的に2週間程の入院で退院出来る目処が立ったらしい。

 シェリーが言うそれは流石に過大評価であって、たまたま撃たれた位置が臓器を傷めない奇跡的なものだったからだ。

「なんにせよ、江戸川君が一命を取り留めてよかったね」

 悄気る阿笠博士の背中を追いながら下を向く子供達に声をかけた。

 

「……うん! シャラク君、一緒にお見舞いに行こうね!!」

 

 、、、

 

「……ってなことで、江戸川が重症を追った」

 

 家達家に戻ると、ヤンは対して興味なさそうな声を出した。

「へえ、兄さん……情が移ったりしてないよね? 兄さんは直ぐに標的に感情移入して足元をすくわれるからさ」

 ……おっと、その態度はなんだ? 

「ヤン、お前こそ隠し事してないだろうな? 情報の有無が結果を左右する」

 俺が紗洛の姿に成って小学校に通っている時、ヤンも同じように高校に通い勤務をしている。

 ……ただ、ポアロでアルバイトをしている数時間と今日のような移動を伴う休日の用事の時、ヤンが何をしているかを把握できていない。

「それはそうだけど。ああ、江戸川が入院しているの米花総合病院でしょ? 警察病院の医師塞本、ガリアーノを使って『江戸川コナンの血液検査の結果』から工藤 新一の古い血液検査の結果を照合して本人鑑定をするよ。米花町に住んでたんだから、どこかしらで血液検査はしているはずだから」

 ……今更ではあるが。

「……ヤン。もし江戸川 コナンと工藤 新一が同一人物だとして、上に報告するか?」

 するとヤンは真顔になり、苛立ちの色を滲ませた。

「……はあ? 愚問が過ぎる。僕達は『幼児化のアポトキシン5011』と『成長化のトリアムパン0140』を独占的に抑えてるんだよ? 上に報告なんてしたら経過観察なんて出来なくなるでしょ。折角シェリーが作ったアポトキシン4869の被検体が二人も居るのに、潰すわけない。同一人物かどうかは検証のために必要だから鑑定をするだけ」

 そりゃそうだ。

 

「ならいい。俺のミッションにくれぐれも手を加えたりしようとするなよ。……出かけてくる」

 

 、、、

 

「……で、プーシィ。指紋採取の記録は?」

 

 東都大学にいつものように忍び込むと、プーシィが溜息をついた。

「とーりーまーしーたー!! はい、予備のフロッピー。僕だって新しいミッションで忙しいのに扱き使って。……指紋、本当に照合しなくていいんですか?」

 ヤンがDNAを血液で採採取するとは言っていたたが、証拠品はあればあるほどいいからな。

「今は必要ない。……ミッションって、お前とよく組むアクアビットは今国外じゃなかったか?」

 フロッピーと教科書、携帯電話を受け取ると肩をガッチリ掴まれた。

「あれえ? 話を逸らしましたね? 師匠だったら警視庁に忍び込んで容疑者達の指紋を登録したデータベースに細工して取ったデータを流し込んで照合するくらいお茶の子さいさいですよね? ……この指紋の持ち主達は……犯罪に無縁な一般人ですか?」

 ……いちいちうるさいな。

 

「用は済んだ。……じゃあな。……早く帰って連絡が付かなかった理由を説明しなきゃならないんでね」

 

 ── 13日前

 

「バイジウ……なぜナンバー3のアナタがこんなところで油を売ってるのよ」

 

 バイジウが日本に来日したとは聞いていたけど、彼は組織のラボの総責任者で企画立案者。

 本人は薬剤による自白と洗脳、戸籍の隠蔽が専門で諜報員としては使い道がないし、ラムからもバイジウにミッションが下されたといった類の連絡も受けていない。

 兄であるイザラの『記憶喪失ミッション』の手助け……? 

 それはあり得ない。

 だって、この二人の仲の悪さは組織内部でも知れ渡っているから。

 会った瞬間、引き金を互いに引く場面を幾度となく見ている。

「だからって切りつけることないじゃないか。替えのシャツ用意していてよかった。理由は日本の教師に成ってみたかったからだよ」

 飄々と嘯くバイジウを止めなければ、必ずエンジェルに牙を剥く。

 ……それだけは絶対に阻止しなければ。

「ならどうして帝丹高校なのかしら」

 バイジウはエンジェルとその父親を狙っているの? 

 ……死んだ工藤 新一について情報を得るため? 

「……ふうん。やっぱり校医に成りすましているのは米花町に溶け込むためだけじゃなく、帝丹高校の中に監視対象が居るからなんだ」

 ……しまった。

 余計な発言だった。

「あら、ただどうしてこの学校を選んだかを聞いただけなのに随分と過剰に反応す」

 話終わる前にバイジウの顔が鼻先まで近づき、身構えようとすると口に何かを捩じ込まれた。

 身体が高熱を帯びて、骨が軋み始めた。

「ベルモット、これがお前が欲しがっていた薬だ。……お前達が総責任者である僕に無断で宮野とシェリーに開発させていたもの。落とし前をつけろ」

 まさか、組織の悲願が既に掌握されていたなんて。

「なぜ上に言わない……アナタの事だから解毒剤も作っているはず……それは組織にとっての」

「あ、やっぱり『あの方』は幼児化してるんだ。今は乳児? 園児? それとも胎児?」

 コイツ、端から組織への忠誠心など無かったのか。

「お前を殺して薬だけを手に入れる」

 手足が溶けるような錯覚に襲われ続けて動ない。

「残念だけど、レシピは頭の中、隠しているラボを暴く事は出来ないよ。ビール暗号くらい探し当てるのは難しいんじゃない?」

 薄れゆく意識の中でバイジウがスマホ越しに誰かと話している声が聞こえる。

「あ、もしもしシュナップス? これは命令なんだけど、帝丹高校の校医新出として潜伏して。あとは7歳くらいの女子と住んでくれない? 簡単に言えば親戚の子供かな」

 私のミッションを乗っ取るつもり? 

 それに女子と暮らすなんて……いきなり何の話をし始めたの? 

 兎に角……身体が痛み、意識がそろそろ途切れてしまう。

 バイジウがスマホをしまうと、しゃがみながら私を見下ろしている。

 

「名前、何にしようかな。ベルモットだから鈴本、シャロンだなら……ロンシャン! これから君は鈴本 ロンシャンだ。よろしくね? ロンシャン」

 

 

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