黒ずくめの組織の暗殺者がアポトキシンで幼児化した件   作:ummt

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其の三 帝丹小学校  予想外の行動

 

「博士の家にお風呂を借りに行こうよ。週末のキャンプの打ち合わせもしたいから」

 

 おっちゃんの説教を聞き終えたタイミングで『風呂が壊れて使えない』と告げられた。

 蘭もエルダーという男に不信感を抱いている。

 それに、この事を一刻も早く灰原に伝えねーと……。

 探偵バッジ越しでは盗聴されるかもしれねえ。

「……そうだね。学園祭の朝練もあるし……行こっか」

 風呂が故障したタイミングが今日で不幸中の幸いか。

 蘭は学園祭の演劇『シャッフル・ロマンス』のヒロインに抜擢され、時間を見つけては稽古をおっちゃんとつけている。

 ……オレが元の姿に戻れたら。

 新出先生は練習相手になっているだけで本番は園子が男装する手筈だが、それでも男としては蘭の近くにいて欲しくない相手。

 

「うん!! 早く行こう!!」

 

 、、、

 

「……博士。蘭のオレをみる目が小学生相手に向ける目じゃなくなってるんだ」

 

 蘭が風呂を借りている間、阿笠博士に情報を共有した。

 ……ただ、まだシャラクとエルダーについて話すべきか否か。

「バレてるんじゃない?」

 死角から灰原が呆れと失望を滲ませた声を上げながら近づいてくる。

 ……もし、蘭がオレが工藤 新一だと知ったら。

 今の状況じゃ、渦中に引きずり込む事になっちまう。

「……だとしたら」

 全ての事情を話したとして、誰が蘭を守ってやれるんだ。

「あたし、朝まで地下室でやることがあるから邪魔しないでね」

 脇目も振らずに地下室に降りていく小さく壊れそうな背中を見送った。

「哀君の言う通りだったら、どうするんじゃ? 新一……」

 警察に保護を求められるならとっくにしているし、高跳びもしていた。

 ……奴らからは逃げられない。

 今はまだ、対抗できる力や人脈が殆ど無い。

 事情を知る服部くらいなもんだ。

 

「……だったらオレに……。何でもねえよ」

 

 、、、

 

「ねーシャラク君!! 週末のキャンプ、一緒に来ない?」

 

 翌朝、教室に入るなり歩美ちゃんがシャラクにキャンプの話をしてしまっている。

 クソッ、あれだけ『他の奴らには内緒で』と釘を刺しておいたのに。

「え? 誰と誰が行くの?」

 シャラクがランドセルから教科書を取り出しながら質問すると、元太が大きな声で参加者の名前を読み上げた。

「オレだろ? 光彦に歩美ちゃん、灰原とコナン……」

 その声には一切反応をせず、ランドセルをしまった。

「ちょっと!! 大切な人を忘れてますよ!! 阿笠博士もです!!」

 ピタッと手が止まって、シャラクは満面の笑みを浮かべた。

「阿笠博士……? どんな人?」

 灰原は顔が青ざめて、唇まで真っ青になって立ち尽くしている。

「博士、すっげーんだぜ!? 探偵バッジとか作ったり色んな発明をするんだ!!」

 そう言って元太が探偵バッジをシャラクに渡すと、目を見開いて観察し始めた。

「……超小型無線装置か。子供が操作しやすいような操作盤になってる。帯域は……? 超短波?」

 やはり、シャラクはただの小学生なんかじゃねえ。

「よく分かりませんけど、今度キャンプに行った時にでも聞いてみてください!!」

 光彦が両手で握り拳を作って鼻息を荒くしている。

「阿笠博士は哀ちゃんに怒られてばっかりだから、質問したらきっと嬉しくなって答えてくれるよ!!」

 ……ここで止めに入ったり話を逸らしたら『重要人物』だと明かすようなもの。

「……遠慮するよ。僕みたいな知らない子供が頭数に入ったら困るだろうし。ねえ? 灰原さん」

 灰原は唇を噛むのを誤魔化しながら、口を開いた。

「……そんなことないわ。……来たらいいじゃない」

 耳を疑った。

 あれだけシャラクに怯えていたのに……。

 あえて迎え入れることで探りを入れるためか、博士が留守中に空き巣に入らせないためか。

「それならお言葉に甘えさせてもらうね」

 ……こうなっちまったら仕方がねえか。

「あ、コナンくん。シャラクくんに教科書渡せた?」

 小林先生からの声掛けに冷や汗が垂れた。

 ……口実に使ったのはいいが、シャラクが教科書を実際に忘れたかどうかを確認していない。

「教科書……? ああ、あれか。はい、渡してもらいました」

 シャラクがにこやかに答えると、耳打ちしてきた。

 

「……僕が国語の教科書を家に忘れたの、気づいてくれたんだね。ありがとう。後で教科書を回し読みしてもいいかな?」

 

 、、、

 

「なあ博士、こないだの蘭の話だけどよ……。もしもの時のためになんかいいメカ作っといてくれよ。……あと、シャラクは少年探偵団じゃねえんだから不用意に情報を漏らしたりするな。何処に組織の目があるか分かったもんじゃねえからな」

 

 週末、子どもたちとビートルに乗り込む前に阿笠博士に耳打ちをした。

「そうかのう……わしには良い子にしか見えんぞい」

 ……外面だけならな。

 灰原はと言えば暗い顔を隠すように、酔い止めを飲んで『車酔いしているから青い顔をしている』という言い訳を用意してビートルに乗り込んだ。

「あの……すみません、僕なんかが助手席でいいんですか?」

 シャラクが遠巻きから尋ねると、阿笠博士は目を細めた。

「いいんじゃよ。遠慮しないで乗りなさい」

 こうしてオレ達7人を乗せたビートルは気乗りしないキャンプ場まで長い道のりを走った。

 

「わーい! テントが張れたね!!」

 

 シャラクは『ボーイスカウトをしていたから』という理由でテント張りを終わらせると、阿笠博士に纏わりついて『技術の話』についてしつこく聞き、阿笠博士も悪い気がしないのか説明に応じていた。 

「そろそろわしと哀君でかまどを作っておくから、君らはそのへんで薪を拾ってきてくれ」

 その指示が出ると、シャラクは何も言わずにオレ達と枝を拾い始めた。

「ちょっと皆さん!! 来てくださいよ!!」

 光彦が声を上げ、駆け寄ってみるとポッカリとウロが開いている。

「ただの鍾乳洞じゃねえか……」

 その入り口には立ち入り禁止の看板と一本の心持たないロープが木の杭で規制線としてぶら下がっているだけという事から、管理が行き届いていない場所だと伺えた。

「この石に書いてある文字、何ですかね?」

 龍の道に歩を進めよ、さすれば至福の光汝を照らさん

「刻まれた書体から比較的最近作られたものみたいだね。古ければ文字欠けもあるだろうし、それがない。それに五角形にひらがなの『と』、明らかに将棋の駒を表している」

 ……それくらいはオレだって把握してるっつうの。

「お宝かも!!」

 歩美ちゃんの声にエコーがかかった。

 ……まさか。

「お前ら!! 勝手に中に入るな!!」

 シャラクの見立てに気を取られて三人が鍾乳洞に降りていくのに気づくのが遅れてしまった。

「ちょっとだけだから!!」

 慌てて追いかけると、地面にはタバコの吸い殻が落ちており、煙はないがフィルターが湿っている。

 オレ達の他にも中に人がいるのか? 

「し、死体……」

 元太が身を翻して引き返してくると、見知らぬ男たち三人が現れて、うち一人は拳銃を所持していた。

「みんな伏せろ!!」

 子供達を庇おうと男たちに背を向けると、腹部に鈍い痛みが走った。

 ……撃たれちまったらしい。

「……みんな、静かに。弾は貫通してる。今から応急処置をするから君たちはコナンくんを連れて奥に進んで。僕が囮になるから決して振り返らないで」

 シャラクは自分のシャツを脱ぐと腹部を押さえながら創傷を縛り上げた。

 何をする気だ……シャラク……。

 

「餓鬼共は暗い穴蔵でおねんねしてもらうぜ」

 

 、、、

 

「あれ? ここはどこ……?」

 

 目が覚めると、病院のベッドの上に寝ていた。

 元太に背負われながらアイツらと奥まで進み、出口に通ずる道を伝えられたかどうかで意識が飛んでいる。

 いや……最後に目暮警部と警察からの救援の声を聞いたか。

 少なくともオレがここに居るんなら、みんなは無事か。

「おい、気がついたか!? 心配したぞ!! ったく……」

 小五郎のおっちゃんが椅子から立ち上がって顔を覗き込んだ。

「えへへ……ごめんなさい。みんなは無事……なんだよね?」

 恐る恐る尋ねると、厳しい顔が返ってきた。

 ……まさか、犯人達に追いつかれたのか? 

 

「お前らが助かってよかったぜ。犯人共は顔を見られたからなのか知らねえが、三人で殺し合いをしてみんな死んじまったからな」

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