黒ずくめの組織の暗殺者がアポトキシンで幼児化した件 作:ummt
「コナン君が運ばれた!?」
週末の休みに文化祭の稽古をしていた時、携帯電話が鳴った。
『ああ、阿笠博士から連絡が入ってな……怪我をして米花総合病院に運ばれたらしい。蘭、お前は急がなくていい。焦って事故に巻き込まれたらとんでもねえ話になる』
お父さんがいつになく冷静で、かえって背筋が伸びた。
コナン君……新一が訳あって子供の姿になっているっていう確信がある。
それに例え別人であってもコナン君は大切な存在。
「直ぐに行くから……」
、、、
「拳銃で撃たれのよ。銃創部位は左側腹部。弾は貫通してるわ。……そこにいるシャラクの応急手当の甲斐もあって出血は少なかったけど、腎損傷の可能性があるからって。……念のため回復と確認をして、縫合するらしいわ」
病院に着くと、手術室の前で灰原さんがお父さんに事情を説明していた。
手術なんて、どうしてこんな事に……。
「先生!! 大変です!! 前の患者の手術で坊やと同じ血液型の保存血を使ってしまって在庫が殆どありません!!」
状況整理をしようと思考を巡らせていると、看護師さんが手術室に向かって駆けて来た。
コナン君と同じ血液型……もし新一なら……。
「あの! 私の血でよかったら、私もあの子と同じ血液型ですから、でも一応調べて下さい」
看護師さんは頷くと、採血室に案内してくれた。
……どうにか軽症で済んで欲しい。
「助かります!! 今から問い合わせるにしても時間が足りないので!!」
── 10日後
「主要臓器の損傷もなく術後の回復具合も順調で、この調子ならあと2、3日したら退院できると思いますよ」
主治医の先生から経過を聞いて、胸を撫で下ろした。
「よかった……」
付き添いに来てくれた園子と顔を見合わせた。
「ただ、抵抗力が低下していて上気道感染をしている……。なあに、風邪を引いただけの話です」
車椅子に座って子供達に囲まれているコナン君は携帯型のゲーム機を触りながら咳をしている。
「どうかな? 僕のゲーム『命取り』*1は……」
子供達に紛れて、この間手術室の前で見掛けた金髪にレモンのような黄色い目をした男の子が同じゲーム機を触りながらコナン君に話しかけている。
……何処かで見たような。
「お前は先行してカエルになって卵を食いに来る戦法かと思ったぜ、シャラク。まさか空きになったCの卵を産み付けてフェイントでカエルになってるとはな」
シャラク君っていうんだ。
……もしかして、コナン君が言っていた『いけ好かない転校生』って、あの子?
「お遊びタイム、終了!! 怪我人は病室に直行!! 子供は時間が遅いので帰りましょう!!」
園子の鶴の一声で、子供達は車椅子に押されるコナン君を見送った。
「バイバイ、また学校で会おうね」
、、、
「退院が2、3日後なら学園祭の真っ最中じゃない? 3日後だったら私たちの劇の真っ只中よ!? 送り迎えとかどうすんの!?」
園子が病室に行く間、気を紛らわせるためか学園祭の話題を振ってくれた。
「大丈夫。お父さんに迎えを頼むから」
今はただ、コナン君が無事に退院できそうという安心感を噛み締めていたい。
「そうだ!! 新一君に連絡した!? 蘭が劇のヒロインになるって知ったらすっ飛んでくるかもよ!?」
……新一は、ここに居るから。
「……来ないよ。それに、コナン君が元気になって観に来てくれればいいんだ。……来てくれるよね」
コナン君は静かに頷いてくれた。
「ま、新出先生が私の代役で黒衣の騎士役を買って出てくれたから、良かったわね? 蘭」
、、、
「坊主が大怪我したっちゅうから、学校帰りに飛行機に乗って来たったわ」
病室の前まで来ると、和葉ちゃんと服部君の言い争う声が中から響いてくる。
「だから百合の花はアカンて……はあ。新しい花買うてくるから……蘭ちゃんたちも一緒に行こ?」
……わざわざ大阪から来てくれたんだ。
「うん。売店が閉まっちゃうから、早めに行こう?」
── 3日後
「……後は、この害者の口からアーモンド臭がしたら青酸カリで決まりやな」
コナン君も観に来てくれた劇の最中に、殺人事件が起きてしまった。
被害者の人は座席に座りながら、飲料を飲んで亡くなってしまったらしい。
「やけに事件に詳しいな……お前、席の近くに座ってたんじゃねえか?」
目出し帽を目深にかぶった青年にお父さんが詰め寄ると、飄々とした声が響いた。
「俺は害者と反対側の最前列、おっちゃんの3つ奥に座ってたで? それに、あの眼鏡の坊主の隣にちゃーんと座ってたからな。な? 坊主」
マスク姿のコナン君にしゃがんで問いかけると「……そうみたい」と一言言って頷いた。
「なんかお前、どっかで見たことあるんだよな……」
お父さんと目暮警部が訝しげな顔をすると、青年は目出し帽を取った。
「皆して俺のこと忘れてしもたんか? 折角帰ってきたのに、つれないなあ……。工藤 新一や」
そう名乗ったのは、白いドーランを顔に塗った服部君だった。
「へえ……君が例の工藤 新一……。ふーん……」
今まで事件に何の関心も寄せていなかったブルドン先生が白衣を翻して近づいてくる。
……なんだか、嫌な予感がする。
「せや。眼鏡の坊主に連絡受けて、遥々姉ちゃんの劇を観に来たったんや。な? 坊主」
コナン君が頷くと、和葉ちゃんが場を割ってひょっこりと頭を出した。
「何しとるん? 平次。顔にパウダーかけて、髪形変えて」
……どうして新一のフリなんか。
……もしかして、新一とコナン君が別々に居ないと怪しまれる状況だったりするの?
「あー!? もうアカンアカン!! 冗談や!! 工藤の格好してみんなを驚かせようとしただけや!! ……アカンな、やっぱりバレてしもたか……」
服部君は事情聴取が行われている間、コナン君の側に張り付いている。
……やっぱり二人して何か隠してるんだ。
「相変わらず仲良えな、平次とあの子」
、、、
「4人の飲み物に毒物が混入された形跡はない。……これにて、事件は自殺として」
「待ってください!! 目暮警部」
現場が膠着状態になり、雨雲から雷鳴が響くと舞台袖に黒い人影が稲光に照らされた。
……あの声は、まさか。
「これは自殺じゃありません。きわめて単純かつ初歩的な……殺人です」
黒衣の騎士の衣装に身を包んだ彼は……。
「き……君は一体……」
目暮警部が言葉に詰まると、彼は兜を外した。
「お久しぶりです。……工藤 新一です」
……新一、なの?
一体いつから?
舞台が始まる前、コナン君が入院した時?
それともずっと前から新一は新一のままだったの?
場がしんと静まり返ると、場違いに思える笑い声が一人の口から上がった。
「アハハッ!! 工藤 新一!? それに服部 平次、東西の高校生探偵がこの日に揃って白日の下に晒されたなんて……これは記念日だ!! アハハッ!!」
皆の注目がブルドン先生に向くと、先生は周りの目を気にした様子はまるで無く白衣を揺らして廊下から立ち去ってしまった。
「何なんだね彼は……殺人事件が起こっているんだぞ。不謹慎にも程がある」
目暮警部が溜息混じりに呟くと、お父さんも同じく腕を組んだ。
……やっぱり世間一般からしてもブルドン先生は非常識、だよね。
「すみません。僕からよく言い聞かせておきますから」
新出先生がブルドン先生の後追って廊下に向かって走り去り去っていってしまった。
「嫌な先生もおんねんな。……なあ? 工藤」
服部君は一瞬コナン君の方を見て、新一の方に向き直った。
……やっぱり、何かあるんじゃ。
「……はは。……では推理について話を続けてもいいですか?」
・卵:孵化する/そのまま。
・オタマジャクシ:前足/後足/尻尾切りのうち未実施のものを選択。足の有無に関わらず、代わりに隠れるも選ぶことが可能。
・尻尾を切った個体は一度だけ捕食を無効化する盾を得る(消費後は狙われる)。
・3つ全て完了するとカエルになる(進化したそのターンは行動不可=自然と食べる/隠れるは使えない)。
・カエル:相手の個体(卵/オタマジャクシ/カエル)を1体食べる、隠れる、または自分の欠けたスロット(食べられて空いた個体)に卵を1つ産む。産卵は1回使うと次のターンは使えず、その次のターンからまた使える(2ターンに1回のペース)。
・隠れるはそのターンのみ有効。
・カエル同士が同じターンに互いを食べようとした場合:1回目は不発(共倒れなし)、2回目は両者とも死亡する(以降は奇数回目=不発/偶数回目=両者死亡、を繰り返します)。
・食べる行動は2ターンに1回まで(使うと次のターンは使えず、その次からまた使える)。
・自分の個体が最後の1体だけになった状態で、その個体が2ターン連続で隠れた場合、その時点で相手の勝利となる(隠れ続けての引き延ばしを防止)。
・勝利条件:自分の個体を3体ともカエルにする、または相手の個体を3体とも捕食し全滅させる。