見た目もステータスもパッとしない中年がやりこみ知識でぼちぼち異世界攻略 作:雨(あめ)
<ケイブクラブ(Lv10)を倒しました。>
<経験値(51)を取得しました。>
「…。」
<ケイブクラブ(Lv9)を倒しました。>
<経験値(39)を取得しました。>
「…。」
<ケイブクラブ(Lv10)を倒しました。>
<経験値(51)を取得しました。>
<ケイブクラブ(Lv11)を倒しました。>
<経験値(67)を取得しました。>
「…。」
<ノイン・レーゲンシュラインのレベルが上がりました。6→7>
<スキルポイント(1)を取得しました。>
<拳闘士のクラスレベルが上がりました。6→7>
<クラス専用ポイント(1)を取得しました。>
<聖職者のクラスレベルが上がりました。6→7>
<クラス専用ポイント(1)を取得しました。>
「あ、レベル上がった。」
……ていうか、ここ。
「蟹しかいない。」
どれだけ歩いても、蟹、蟹、蟹…。
レベルアップのうれしさも半減している気がする。
道中でようやく違うモンスターに会えたと思ったら、それも『クリスタルクラブ』という蟹だった。
岩の代わりにクリスタルで擬態したレアな個体。
能力値や取得できる経験値はほとんど変わらないが、ドロップアイテムが違う。
『ケイブクラブ』は『洞蟹のハサミ』という食材と『洞蟹鋼』という素材を落とす。
設定では、この『洞蟹鋼』というのを口から分泌して岩を自分の殻に固定するらしい。背負う岩が大きい方がモテるとか。
鍛冶で武器やら防具やらに加工できるので、何か考えてみてもいいかもしれない。
『クリスタルクラブ』のほうは各種宝石を落とす。レアドロップだが。
宝石は装備に埋め込むことで、追加効果や、能力のボーナスを得られるものだ。
入手方法が限られているので、ゲームでは非常に高値で取引されていた。
残念ながらさっきの戦闘では落ちなかったが、また見つけたら積極的に狩っていきたい。
「さ、あと3レベル。やるかぁ。」
というわけで無心の蟹狩りを再開。
9体倒したところでレベルが上がって『8』になった。
レベルが上がると取得経験値は若干下がる。
さらに15体倒すと『9』に。
「はぁ…はぁ……しんどっ…。」
たぶん500発近くは殴ってる。さすがに疲れた。
それに、階層内のモンスターの数も減ってきたし。
今のレベルが9。
つまり、レベル8~9のモンスターから得られる経験値は減ってしまう。
ここのレベル帯を考えると効率は随分落ちるだろう。
「今日は潮時か。」
無理に欲張らず明日にしよう。
そう思い、来た道を引き返そうとしたとき。
ガシャン……ガシャン…ガシャンガシャンガシャンッ!
洞窟の奥から何やら耳障りな音が聞こえてくる。
音のなる方をじっと見ていると、水晶にぼんやりと照らされた洞窟の奥から、人型の何かがこちらに向かって走ってきている。
ボロボロの重装鎧。荒ぶる頭髪。
顔はよく見えない。
「モンスターか!?」
俺は走ってくる影に身構えた。
スケルトンの上位種にあんな鎧を着ていたやつがいた。
何て名前だったか。かなりの強敵だ。
そんなことを考えてる間にも徐々に近づいてくる。
ついにその顔が見えて……俺は少しがっかりした。
あれはモンスターではない。ただの走るおっさんだ。
「はぁっ!はぁっ!」
ガンッ!!!
すれ違う時に肩がぶつかったが、こちらを見もせずに走り去っていった。
完全に錯乱している。
「……なんだったんだ?」
たぶん何かから逃げているんだろうが、あの姿、どこかで見覚えが……。
「あ。」
そういえば、蟹を狩ってる途中に冒険者が通るのを見た。
遠目だったが、たしかあんな鎧を着ていた。
でも、その時は二人組だったような。
「まさか。」
嫌な予感がして洞窟の先へと進む。
何もなければそれでよかったんだが。
「ギィィイイイイ!」
「はぁっ!!」
これまた重装鎧の冒険者が一人で交戦しているのが見えた。
手に持つ剣は折れているし、鎧もあちこち装甲が剥がれかけていて、動くたびに激しく暴れている。あれを交戦と言っていいものか。
声からして女の子らしい。後ろ姿しか見えないが、随分とタッパがある。
さっきの二人組に間違いなさそうだ。
どちらも重装鎧という不思議な構成だからよく覚えている。
つまりあのおっさんは仲間を見捨てて逃げたってことか。まったく嫌なものを見てしまった。
女の子は折れた剣で何とか攻撃をいなしているものの、すでに限界が近い様子。
対する相手は。
==========================
マインスパイダー
種別:
Lv:13
HP:35.6/51
MP:22/22
状態異常:
なし
==========================
洞窟に住む蜘蛛型モンスター。『マインスパイダー』だ。
それが、1、2、3、4……まあ、いっぱいだ。
レベルが13。おまけにこの階層では一度も見なかったモンスター。
下の階層からついてきた?そんなことが起こるのか?少なくともゲームの中でそんなことは起きなかった。いや、特殊な条件下でそういったことが起こるのは知っているが、もしあれが起きていたとしたらこんな規模ではないはず。
大量のモンスターによって今頃圧死していてもおかしくない。
「まあ、そんなこと言ってる場合じゃないか。」
ついに女の子が地面へへたり込む。
剣が地面に転がり、カラカラと音を立てた。
勝利を確信した『マインスパイダー』の牙が襲い掛かる。
女の子も覚悟を決めたのか、肩をすくませている。
「…攻撃力上昇。」
だが、その牙が彼女に届くことはない。
ブンッ…!!!
洞窟内に鈍い打撃音がこだまする。
「ギ…ギギ……。」
俺の拳を受けた『マインスパイダー』は易々と吹き飛ばされ、そのまま動かなくなった。
<マインスパイダー(Lv13)を倒しました。>
<経験値(65)を取得しました。>
「えっ…?」
「大丈夫ですか、加勢しますよ。」
「…だれ!?」
誰って、この状況ではじめに出るのがそれなのかと少し笑いそうになる。
「自己紹介は後にしましょう。立てますか?」
「は、はい!」
随分と元気のいい子だ。
見た感じまだ動けそうだし、安心した。
「ギィ…。」
カタカタと独特な音を立てて『マインスパイダー』が近づいてくる。
ただ、まあ、正直言ってこいつらは敵ではない。
同レベルの『ジェネラル・マシュリン』は上位個体だが、こいつらはただの雑魚Mob。
その強さなど当然比べ物にならない。
速度と攻撃力は高いが、防御力が低い。二、三発も殴れば倒せる。
ただし――一つだけ厄介な技がある。
爪に麻痺魔法を乗せる『パララクロー』だ。
「もう負けませんよ!はぁっ……きゃっ!あばばばばばばば。」
喰らうとああなる。気を付けよう。
「…おっと!」
痺れて地面を跳ねている女の子を眺めていたら『マインスパイダー』が飛び掛かってきた。
爪の先が黄色く輝いている。
俺は左足を大きく下げてそれを躱すと、丸見えになった蜘蛛の腹に一撃を叩き込む。
「ギェッ!!」
叫びともつかないような奇怪な音を漏らして、『マインスパイダー』が吹き飛んでいく。
『ケイブクラブ』なんかよりずっと効率的で程よい緊張感もある相手だ。
戦闘とはこうでなくちゃいけない。
「さあ、来い!」
飛び掛かってくる蜘蛛を殴り、女の子を狙う蜘蛛も殴り、ひたすら殴って殴ってたまに蹴る。
ものの数分で『マインスパイダー』の群れがあらかた煙と残骸の山になる。
女の子の麻痺も解けたようだ。
<マインスパイダー(Lv14)を倒しました。>
<経験値(87)を取得しました。>
<ノイン・レーゲンシュラインのレベルが上がりました。9→10>
<スキルポイント(1)を取得しました。>
<拳闘士のクラスレベルが上がりました。9→10>
<クラス専用ポイント(1)を取得しました。>
<聖職者のクラスレベルが上がりました。9→10>
<クラス専用ポイント(1)を取得しました。>
ついにレベルが!!
ザシュ。
「ザシュ…?」
あ、ログに気を取られt...。
「あばばばばばば。」
「だ、大丈夫ですかー!!!!」
最悪だ。『パララクロー』を喰らった。
倒れこむ直前。女の子が『マインスパイダー』に切りかかるのが見える。
そして、ログがいくつか流れた。
彼女が残った『マインスパイダー』を倒してくれたのだろう。
数に押されていただけで、十分戦える実力は備えていたらしい。
いや、しかし、これは……酷い感覚だ。
水中の中にいるかのように視界や音がぼやける。
「うっ。」
あれ、なんか体が持ち上げられた気がする。
もしかして女の子が担いでくれてる?
運搬方法は少し雑だが、ダンジョンの中に放置はされないようで安心した。
身体も動かないので、今は彼女に任せることにする。