Fate/-(フェイト・マイナス)   作:名無しのレイ

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今までのHPを閉じるので、HPに乗せていた小説をこちらに持ってきました。
よろしくお願いします。


第一話

 

 

―――それはとある些細な間違いから始まった。

発端は管財課のほんの少しだけの手違いからだった。

ケイネス講師の依頼により、アイルランドから取り寄せた英雄の聖遺物。

ケイネスの弟子であるウェイバーに引き継ぎで頼まれた一通の郵便と共に、その重要極まりない輸送物が紛れ込んでいたのだ。

古代、強大な力を誇り、戦場を駆け抜けた英雄たち。

その彼らの力は神秘の劣化した現代の魔術師では対抗できるはずもない。

 

そんな英雄の聖遺物をケイネスが集める理由はただ一つ。

―――聖杯戦争。

 

……ケイネスの弟子であるウェイバー・ベルベットにも聖杯戦争の噂は聞いている。

膨大な魔力を秘めている願望機である聖杯。

それを求め、古代より伝わる英雄をサーヴァントとして召喚し、使い魔として使役して魔術師同士がお互いに戦う文字通りの戦争。

 

元々、自分の実力が全く認められていないウェイバーは時計塔の魔術協会自体に多いに不満を抱いていた。

確かにベルベット家は三代しか魔術師としての血統を得てはいない。

だが、自分の才能は他の血統に胡坐をかいているだけの魔術師などには断じて劣らないはずである。

だが、彼の才能はついぞ理解されることはなく、自らの会心の大作である論文すら講師であるケイネスに一読して破り捨てられる始末。

これで不満を抱かない方がどうかしている。

 

そんな彼に飛び込んできたチャンス。

もとより何の肩書もなく実力で勝負をつける聖杯戦争に並々ならぬ興味を抱いていたウェイバーにとっては、

これは二度とないチャンスそのものにしか見えなかった。

ウェイバーは表面上は平然としながら、自分の部屋に帰ると、その輸送物の梱包を解き、中身を覗き込んで驚きのあまり硬直した。

 

「こ……これは、まさか!!?」

 

それを見てウェイバーは戦慄した。

それは、砕け散った剣の刃の破片の一つだ。

だが、見る者が見れば分かる。これは英雄たちが使用していた強力無比の武装『宝具』の現物なのだ。

宝具『ベガルタ』の欠片。

これはとあるケルトの英雄が魔猪に襲われた際、魔猪に対してそれを振い戦ったが、最後には砕け散ってしまったという悲劇の剣である。

今や遥かなる昔の英雄が使用していた聖遺物などほとんど存在しない。

ましてやその武具である宝具など言わずもがなだ。

例外として、伝承保菌者(ゴッドホルダー)とよばれる特殊な魔術師たち……主に神々に仕えた者たちの末裔……が極めて稀に現存する宝具を伝えていると

噂では聞いたことがあるが、それは極めて稀である。

 

それを知れば、例え破片といえど、神代の英雄が振るった武装であるベガルタの一部が極めて貴重である事が解るだろう。

そして、その剣を使用していた英雄と言えばただ一人。

―――フィオナ騎士団が一人、ディルムッド・オディナ。

 

それを知ったとき、ウェイバーの背筋に狂喜が走った。

神代の英雄といえるフィオナ騎士団の最強の一人であれば、その戦力は強大なものであるに違いない。

 

そして、ウェイバーにとって幸いしたのは、これがエルメロイにとって『予備の』聖遺物だったということである。

恐らくは、念のために予備の聖遺物を探していたが、まさかこれほどの物が見つかるとは思っていなかったのだろう。

推測だが、征服王の触媒を手にいれたが、これほどの英雄の聖遺物を手放すのは惜しい。

このベガルタの破片を使って、己の魔術をさらに高めるために自分の手元へと輸送していたのだろう。

 

エルメロイにとっての本命は征服王イスタンダル。

そして、今や彼は征服王の召喚に全力を注いでいる。

予備の聖遺物がどうなろうが、今のエルメロイにとってははっきりいって瑣末事だ。

ならば、戦う準備を行う時間はある(といっても急がなければならないが)

 

「見ていろ、ロード・エルメロイ……。この聖杯戦争に勝ち抜いて、ボクの実力を時計塔に示してやる……!」

 

だが、そのためには入念な準備が必要だ。

ウェイバーの目から見ても、ロードエルメロイは恐るべき力を秘めた魔術師だ。

恐らくは同等の力を秘めた魔術師が、他に五人。

いかにウェイバーであろうとも、自分がいまだ魔術師としては見習いであり、未熟である事は知っている。

ならば、じっくりと戦略を練らなければならない。

しかも、恐らくケイネスが召喚するのは、世界を征服しかけた征服王。

さらにケイネスは認めたくはないが、時計塔きっての天才魔術師。

その強大な力は容易くこちらを捻りつぶすだろう。

彼らと戦うならば、できる限り最善の準備をしなければ、やられるのはこちらだ。

しかも、ディルムッドにも「愛の黒子」という自滅要素がある。この対策も練らなければならない。

 

 

恐らくベガルタの欠片で呼び出されるディルムッドはランサーの可能性が高い。

セイバーの適性もあるだろうし、ディルムッドがセイバーとして呼び出されればそれに越したことはない。

だが、敵……他のマスターたちもそんなに無能ではない。

ディルムッドよりさらに強力なセイバー適性を持つ英霊を召喚する可能性が極めて高い。

 

ランサー……槍の英霊は派手さはないが、極めて堅実性のある手堅いクラスである。

戦術としては悪くないように思える。

ならば、こちらも手堅い戦術でいくべきである。

まあ、戦術は後で考えるとして、まずはディルムッドの情報について集める必要がある。

 

そう考えたウェイバーは、まずはケルト神話……特にディルムッドに関する神話を徹底的に調べ直すことにした。

そして、彼は時計塔の資料をかき集め、宝具『ベガルタ』についてもさらに調べなおした。

 

―――時間はない。

できる限り即座に迅速に事をはこばなければならない。

あらゆる資料を調べなおして、彼は宝具ベガルタの大まかな形状を掴むことができた

(ゴッドホルダーの家系ならさらに資料があるかもしれないが、一度失われたケルト神話の内容では漠然としたことしか解らないのである)

さらに、即座に彼は時計塔の魔剣を鍛える錬金術師に依頼して、ベガルタと出来うる限り似た剣の作成を依頼した。

 

その錬金術師も《ケルト神話の剣の形だけの再現》などというあまりに不可解な依頼に首をかしげていたが、

「魔術師としての研究である」という一言に了承し、早速取りかかった。

 

ここは魔術師としての性質がウェイバーに味方した。

魔術師は自分が根源に至ることが第一。他の人間の研究などどうでもいいし、そもそも知りようがない。

それゆえ、ウェイバーが不可解な依頼をしても「魔術師として研究」の一言で済んでしまうのである。

ただ、そこで錬金術師から一つ気になる情報を聞くことになったのは幸運といえた。

 

「……ああ、そういえば、そんなにケルト神話に興味があるなら、

ルーン文字の研究者に会ってみたらどうですか?

より詳しい話が聞けると思いますよ。

ま、大きな声じゃ言えないんですが、それなら某封印指定の魔術師に会うのが一番でしょうね。

何せ、彼女は協会から三原色を授かったほどのトップクラスの魔術師ですから。

最も、封印指定を嫌ってどこかに姿を隠したらしいですし、

彼女に三原色の話をした人間は全て葬られているらしいですが。」

 

これは極めて重要な情報である。

もし、彼女と接触することができるなら、より多くの収穫があるに違いない。

 

そして出来た模造のベガルタ。

いかに錬金術師によって鍛えられた魔剣といえど、現代の神秘の衰えた技術で、しかも急造の出来栄えでは、神代から見れば神秘などないも同然である。

(今回は神秘を高めるよりも、よりとにかく強靭に鍛えてもらったのも理由の一つである)

現代の魔術師から見ても、魔剣というよりは、ただ強靭なだけの模造品という意味合いが強い。

だが、今回はそれで問題ない。

……魔術には類感魔術という基本的な原理が存在する。

《形の似ているものは感応し合い、同じような働きを持っている》という原理である。

つまり、全く力はなくとも、それが本物のベガルタと似たようなカタチであるならば、

必然的に呼び出すための英霊との繋がりは強くなるはずである。

 

ベガルタの破片だけでも召喚は可能だと思うが、念には念を入れておくに越したことはない。

 

そして、彼はその模造のベガルタの柄に、本物の宝具であるベガルタの破片を内蔵した。

魔剣として鍛えられ、本物の宝具の破片が内蔵されたこの模造のベガルタならば、

ほんの少しだけだが、霊体に対してもダメージを与えることはできるはずである。

(もっともダメージを与えるだけで、到底英霊の対抗や打倒などできるはずもないが)

 

これにより、ディルムッドを呼び出すための『縁』は強くなったはずである。

これならば、確実にディルムッドを召喚できるだろう、とウェイバーは確信した。

 

そして、彼は時計塔を駆けまわり、とある封印指定の魔術師の情報とあらゆる戦うための準備をし、即座に時計塔から日本へと旅立っていった。

 

 

―――日本に到着したウェイバーはさっそくとある封印指定を受けた魔術師の探索を始めた。

その魔術師の名前は蒼崎橙子

 

封印指定の魔術師には大きく二種類に分かれる。

一つは隠者。魔術を秘匿し、世間や協会から身を隠しひっそりと過ごす魔術師。

こちらは協会としてはその才能が埋もれる前に発見・保護したい所だが、危険性の低さからよほどの才能でなければ無理に追跡はしない。

もう一つは賢者。

自身の領地に引きこもり、研究を続ける。

結果短期間で大きな成果を得られるだろうが、封印指定を受けて追いつめられているが故か、無関係の人々を犠牲にする。

蒼崎橙子は確実に隠者の方だ。

 

だが、極めて優れた人形師である彼女は人形を作るために、当然材料を必要とする。

優れた人形を作り出すためには、当然ながら極めて貴重な素材とそれなりの物資が必要となる。

彼自身の魔術師としての知識を利用し、必要な物資を逆算して、それらの取り扱い先、そしてそこから流れる物資の先などを調べ上げ、

彼女の隠れ家……『伽藍の洞』へとたどり着いたのである。

 

……魔術師である以上、相手の工房に足を踏み入れることの危険性がいかに高いかは解っている。

下手をすればやられても全く不思議ではない。

だが、これでやられてしまうようならば、到底聖杯戦争で勝ち残ることなどできない。

彼は、できる限り自分に敵意がないことを示すために、魔術品や魔術武器などは一切所有せず、

魔術回路を発動させ、向こうからもわかるように魔力を解き放ちながらゆっくりと伽藍の洞内部へと入っていく。

 

「……ほう。魔術師見習いがこんな所まで来るとはな。何の用だ?」

 

じろり、とスレンダーな美人がこちらに対して冷たい視線でウェイバーを睨みつける。

正直、それだけで腰を抜かしそうになったのは秘密だ。

メガネをかけていない彼女はすでに戦闘モードに切り替わっている。

一目見た瞬間に理解した。

彼女は化け物だ。ウェイバーとて魔術師。今まで何人もの人外じみた魔術師にも会ってきた。

だが、その中でも彼女は飛びぬけていた。

下手をすれば、この場で何の躊躇いもなくベルベットを冥府送りにするだろう。

 

「君とは初対面なので言っておくが、無駄話をしにきたのならお帰り願おう。」

 

それだけでヒトを凍りつかせるほどの眼光。

今のウェイバー・ベルベットでは封印指定を受けた魔術師に対抗できようはずもない。

……自惚れていた。自分は天才で才能があるのだと思っていた。

だが、目の前の本物の怪物の前では自分では太刀打ちできない、と本能的に彼は悟っていた。

だが、それでも……今までの自分自身の誇りにかけて、ここで屈するわけにはいかない。

がちがちと恐怖に歯を鳴らして、崩れ落ちそうな膝を必死で支えながら、彼は死に物狂いで言葉を放つ。

 

「ア……アオザキトウコ!ボ、ボクは……ワタシは、ウェイバー・ベルベットという!

き、君は極めて優秀な魔術師だとボクは……い、いや、ワタシは聞いているっ!!

そ、その封印指定の魔術師として依頼がしたい!」

 

「ほう……。面白い。言ってみろ。」

 

にやりと、まるで震えるネズミをつついて面白がっている猫のような笑みで彼女はそう呟いた。

……その後、ウェイバーは彼女が作り上げたいくつかの物品を手にして、模造のベガルタに彼女のルーンを刻み込んでもらった。

ウェイバーの話を聞いた彼女はとても楽しそうに大爆笑した。

曰く「聖杯戦争なんて大博打に打って出るなど、随分度胸のある見習いだ」と。

不愉快ではあるが、一面の事実ではあるので、いかにウェイバーといえどそれには反論できなかった。

どうもウェイバーの話は彼女のお気に召したらしく彼女は喜んで承諾した。

彼女自身もルーン魔術の復元に努めたほどの魔術師である。やはりケルト神話の英霊には無関心ではいられなかったのだろう。

 

当然、彼女に対しては大きな借りができたため、この戦いで生き残れたら借りを返さなければならない。

……最も、生き延びることができれば、の話だが。

 

 

そして、冬木市に降り立ったウェイバーはさっそく暗示によりマッケンジー家の老夫婦の息子になり済まし、自らの根拠地を得た。

適当な倉庫を一日だけ借受け、鶏の血ではなく、聖別された水銀により念入りに魔方陣を描いていく。

さらに、聖遺物であるベガルタの破片を内蔵し、ルーン文字が刻み込まれた模造のベガルタを振りかざし、魔方陣に突き立ててサーヴァント召喚の呪文を唱えだす。

 

「―――告げる。

汝の身は我が下に。我が運命は汝の剣に。

聖杯の寄る辺に従い、この意、この理に従うならば答えよ―――。」

 

魔術回路の起動。それは全身に凄まじい悪寒と苦痛を齎す。

実際にサーヴァントを召喚するのは聖杯だ。マスターは現われた英霊をこちら側の世界へと繋ぎとめ、実体化できる魔力を供給すればいい。

それでも、英霊を召喚するなど、膨大な魔力が必要とされるのはいうまでもない。

それに歯をくいしばって耐えながら、なおも呪文を唱える。

今やウェイバーの肉体は人としての機能ではなく、一つの神秘を成し遂げ、奇跡に至るための回路へと変貌する。

 

「―――誓いは此処に。

我は常世全ての善と成る者、我は常世全ての悪を敷く者。

汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ―――!!」

 

その瞬間、全てが眩い光に包まれた。

膨大な吹き荒れるエーテルと魔力と閃光。

それが収まった時、一人の長身でまるで体に張り付くような軽鎧に身を包み、双槍を手にした美貌の青年がそこに存在していた。

その身から放たれる膨大な魔力と闘気。

まぎれもなく、彼こそが遥か昔に神秘渦巻く戦場を駆け抜けた英霊に違いない。

 

「―――問おう。貴殿が俺のマスターか?」

 

彼の両手に持つは強大な魔力を放つ長槍と三割ほど短い短槍。

端正な造形の顔立ちと精悍で強い意志を秘めた瞳、そして涼やかな目元には涙粒のような黒子が存在する鍛え抜かれた肉体を持つ彼。

……彼こそが、フィオナ騎士団、ディルムッド・オディナ。

フィオナ騎士団最強と謳われた騎士のひとりである。

そう問いかけると、彼は双槍を地面に置くと、地面に膝をついて、恭しくウェイバーに対して頭を下げた。

 

「フィオナ騎士団が一員、ディルムッド・オディナ。

貴殿の召喚に従い参上した。 これより、我が双槍は御身に捧げることを誓おう。我が今生の主よ。」

 

―――そして、彼らの戦いはここから始まる。

異なるマスター。異なるサーヴァント。狂い始めた歯車。

異なる第四回聖杯戦争の幕開けが今始まる。

 


 

というわけで初めてしまいました。

フェイト・マイナスです。

これからできるだけ頑張っていこうと思います。

 

ZERO本編も面白かったのですが、納得いかない部分があったので、

そこの所を自分なりに変えてみようと思って書いてみました。

本編では不遇だったセイバーとディルムッドを何とかしていきたいですね。

 

Fate本編との繋がりはあまり考えずにいきたいと思います。

特に過去の縛り(セイバーの戦闘回数は七回とか)をあまり詳しく考えると物語が書けなくなってしまうので。

本編やZEROとはまた異なる並行世界だとお考えください。

またゼロの設定もオミットしたり付け加えたり改編したりすることがあることもご了承ください。

とりあえずキャスターは第四次ではなく、第五次のキャスターになる予感。

 

トウコさんの繋がりですが、征服王が某大統領の話題を口にしていたことと、

空の境界が大よそ90年代なので大体合うかな、ということで出してみました。

細かい計算はしてないので矛盾があったらすみません。

本当はバゼットを出す予定だったのですが、逆算すると13歳なのでさすがに諦めました。

 

感想などいただけるととてもうれしいです。

これから頑張っていきたいと思います。

どうぞよろしくお願いします。

 

なお、これらの小説は全てフィクションであり

実在の人物、団体、法人、国家、宗教等とは一切関係有りません。

また登場する人物は全て18歳以上です。

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