Fate/-(フェイト・マイナス)   作:名無しのレイ

13 / 13
第十三話

 

―――冬木の市内に存在する市民会館。

そこは、御三家の手によって歪められた地脈の力が偶然にも収束した後初的な霊地である。

龍洞寺や冬木協会には劣るとはいえ、この場所でも十分聖杯の召喚は行える。

龍洞寺や遠坂家、ホームグラウンドである冬木協会ではなくここを狙ったのは、他のマスターからの意表を少しでもつくためである。

その場所には、切嗣の元からさらってきたアイリスフィール、言峰、そしてバーサーカーのマスターである雁夜が存在していた。

 

「う……うう……こ、言峰……。約束通り本当に俺に聖杯をくれるのだろうな……。」

 

刻印蟲の蠢く激痛に顔を歪めながら言葉を放つ雁夜の言葉に、言峰は静かにうなづく。

彼自身には聖杯に対しての願いなどない。

彼の目的は切嗣に会うことのみだ。

そのためなら、今だ宿敵である時臣がいなくなった事も知らぬこの哀れな男も利用してやろう。

 

「ああ。私には聖杯は不要だ。

現れたのなら貴様にくれてやろう。

だが、確実の他のマスターやサーヴァントが邪魔をしに来る。貴様はそれを排除しろ。」

 

「く……くく……。

聖杯を手に入れられれば……俺は、俺は時臣に……。」

 

あくまで時臣にこだわり続ける雁夜に対して、言峰は今だ彼が亡くなった事を教えてはいない。

教えてしまっては彼の戦う理由が無くなってしまうからだ。

他のサーヴァントの排除役の手駒がいなくなってしまうのは、彼としても困る。

そのためには、ありもしない餌を目の前にぶら下げて戦ってもらう必要がある。

その姿は、言峰か見れば、非常に滑稽な姿といえた。

そのためか、つい口が滑って余計な事をを言ってしまう。

 

 

「確かに、聖杯を手にいれられれば、遠坂の鼻を多いに明かす事ができるだろうな。

……だがな雁夜。君の目的は時臣への復讐だったのか?それとも誰かを救いたかったのではないのか?」

 

その言葉に雁夜は呆然とした。

そうだ。彼の本来の目的は■を救うためだ。

だが……いつの間にか目的がすり替わっていたのではないか?

時臣への復讐への快楽に酔いしれていたのではなかったのか?

 

「ち……違う。俺は、俺は……。俺は……!!」

 

まるで逃げ去るように、雁夜はその場を足早に立ち去る。

それは自らの醜さを見せつけられた自己矛盾に悩む人間そのものだった。

それを見て、言峰の内部では震えるような『何か』がこみ上げてくるのを感じられた。

その『何か』を懸命に押さえつけていると、他の部屋に待機し霊体化していたアーチャーが壁をすり抜けた後で実体化する。

 

「ふむ、言峰。あやつに真実を教えてやらなくてもよいのか?『時臣はすでに存在しない』と。

全くひどい奴だな貴様は。神父でありながら嘘をつくとは。」

 

「……それを教えて何になる?

今彼の戦う理由の一つを無くして、モチベーションを下げられてもこちらも困るのだ。

それに私は嘘をついてはいない。ただ本当の事を言っていないだけだ。」

 

「フン、それを詭弁というのだぞ言峰。

まあいい。 あの狂犬をセイバーにぶつけるのも一興か。

それならばあの狗の存在を許してやろう。

あの狂犬とセイバーがぶつかりあった時のセイバーのの絶望は甘美なものとなるだろうからな。」

 

その言峰の詭弁をせせら笑いながら部屋の外に出ていくアーチャーを無視して、

言峰は、床に横たわるアイリスフィールに向かって話しかける。

 

「さて、女。教えてもらうぞ。

あやつの事を。衛宮切嗣の事をな。

確かに私は虚ろな人間だ。それは認めよう。

だが、それはヤツも同じのはずだ。

そんな虚ろな人間が……聖杯になにを望むというのだ!!」

 

その問いかけに、アイリスは哀れむような視線を向けると淡々と言峰に対して言葉を放つ。

 

「いいわ。教えてあげる。あの人の願いはね……人類の永遠の平和。

恒久的な世界平和なのよ。」

 

―――流れる沈黙。

その長い沈黙の後、言峰は絞り出すように声を出す。

 

「ふざけるな……。」

 

「ふざけるなッ!!」

 

言峰の拳が、部屋の壁を破壊する。

それは溢れんばかりの彼の怒りをありありと示していた。

 

「目の前の幸福を切り捨てて……幾多の幸せを切り捨てて……。

その果てに理想を手にしたとて何になる!

己の大事な者すら切り捨てるそんな理想に……価値などあるものか!!」

 

あの男が今まで手にして、それでも切り捨ててきた些細な幸福と喜び。

それらのほんの些細な喜びですら、通常の幸福を感じる事のできない言峰にとっては、

まさしく価値ある宝石そのものだったのだ。

自らの手にした物の価値を知らずに、それを無意味に投げ捨てる愚か者。

己の理想に踊らされた愚者……。

言峰の瞳には、切嗣に対する怒りが湧き出していた。

 

そう、ついに言峰は己の戦う真の理由を見つけたのだ。

 

そして、彼は無意識にアイリスフィールの首に手をかけていた。

 

―――それから少しした後、部屋に黄金のサーヴァント、アーチャーがコツコツと足音を立てながら入ってきた。

アーチャーは床に横たわるアイリスフィール『だったもの』にちらりと視線を投げかける。

 

「ふん、やはりこうなったか。

随分とよい顔になったな。言峰。

己自身を祝福し、そして喜べ。空虚なお前はようやく心の底から戦う理由を見い出せたのだからな。」

 

「分かっている。私は私の思うがままを行う。

アーチャー。貴様も貴様の好きな事をなすがいい。

……これより、他のサーヴァントを引き寄せる。準備はいいな。」

 

その言峰の言葉に、アーチャーは壮絶な笑みを浮かべた。

 

 

 

 

 

―――それからしばらく後。

魔術が使用できる者だけが感知できる特殊な狼煙が上げられたことにより状況は一変することになった。

『達成』と『勝利』を意味する狼煙。

それは、誰かが聖杯を手に入れる一歩手前まで来ているという印だ。

そうでなければ、ここまで堂々と勝利宣言はできはしない。

それは明らかな挑発ではあったが、それを無視できるものはいなかった。

その中心地へと向かうソラウとライダーもそのひと組みである。

 

「ふふ、いよいよ最終決戦というわけね。

ライダー、貴方のマスターとなるべき人間は、共に戦場を駆けれる人なのでしょう?

こうやって共に戦場に立てば何も問題はない。

そうでしょう?」

 

―――今まで地下に雲隠れしていた穴熊の分際でよくも言う。

共に戦場を駆けずに穴熊を決め込み、しかもこそこそと外道を行うような人間がマスターでは、窮屈や役者不足ところの騒ぎではない。

今までは女性という事で貴婦人としてそれなりに付き合ってきたが、最早この女はライダーにとっては貴婦人とは認められない。

そんな彼の内心は知らずに、彼女はなおも言葉を続ける。

 

「全く、ふざけているわね。

私たちを差し置いてもう聖杯戦争に勝った気でいるなんて。

まあこちらとしては好都合。

あんな解りやすい挑発ならば、間違いなくランサーも来るでしょう。そこで彼を捉えればいいだけの話よ。」

 

「……もう少し状況を判断してだな。」

 

「ふふ、最早そんな物は不要よ。

今までの情報収集でもう十分に戦況は理解したわ。

それに私には貴方とケイネスが残してくれたこの月霊髄液や様々な魔術礼装がある。

それに貴方の実力があれば、ランサーを手に入れる事も容易。

ふふ、いざとなれば聖杯を手にいれて、その力でランサーを私の物にする事も考えなければ。

ランサーは今の主に対して強いこわだりがあるようですから。まあ、そんな所も魅力的なのですが。」

 

……今までのこの余の扱いで、肝心な時に余が動くとでも本気で思っているのか。

 

英霊と言えど元は人間。

人間同士が動くためには、お互いの信頼関係というものが大事である。

それはマスターとサーヴァントと言えど例外ではない。

 

だが、彼女はサーヴァントをただの強い兵器、ランサーを手にいれるための都合のいい駒とだけしか考えていない。

ランサーを手に入れるためならば、なんの迷いもなく、彼女はライダーを使い潰すだろう。

 

もはやこのマスターに対して完全に愛想が尽き果てていたのだ。

それでも一応従っていたのは、彼女が一応貴婦人であるからにほかならない。

もし、男性のマスターでこれほど愚かであったら、とうの昔に反逆していただろう。

だが、それも最早おしまいだ。

そんな風に冷ややかな視線で見つめられているのも知らずに、

ソラウは夢見る瞳で自らの手の甲の令呪を見つめると、ライダーに向けて話しかける。

 

「さて、ライダー。

もはやここからは最終決戦。

故に貴方には私が最大の力を与えてあげましょう。

 

―――令呪の理を持って第二のマスターが命じます。

『ランサー以外の全ての英霊を打倒しなさい。』

『ランサーのマスターを倒し、ランサーを無力化させなさい』

『ランサーを必ず生きたまま私の元に連れてきなさい』以上よ。」

 

 

その瞬間、膨大な魔力がライダーへと注ぎ込まれる。

令呪はただ一つを使用しただけでもまさしく奇跡とも呼べる力を引き起こせる。

それを三つ連続で使用したのならば、今まではとは比べ物にならない膨大な魔力がライダーに注ぎ込まれるのも当然だ。

 

令呪を三つ使い切ったのは、ライダーが自分自身に危害を与えるはずはない、と思い込んでいるからだ。

ライダーは貴婦人を丁重に扱う英霊。

その彼が自分自身に逆らうことなどありえない、と思い込んでいるからだ。

いかに口先だけで「ソラウを貴婦人とは認めない」と言いつつ、こちらに刃を向けることはあるまい。

女性に刃を向けるなど、彼の矜持に反する事であると知っているからだ。

 

通常ならばこんな愚かな真似はできない。

少なくとも、最後の一画はサーヴァントの制御のためにとっておくのが当たり前である。

だが、ランサーを手に入れるという妄執に取り付かれた彼女は、最早精神の均衡を失いつつあるのだ。

それゆえに、自分が判断をを下した「ライダーは自分に危害を与えない」という思い込みに疑問すら感じないのだ。

自分の頭の中の想像が全て正しく、それが現実そのものであると思い込んでいる彼女は、明らかに危険な領域へと向かいつつあった。

 

令呪を使用したソラウは夢見る瞳から、ギラギラと狂気と執着に囚われた瞳に切り替わり、ライダーを見つめる。

 

「ライダー……必ず手に入れなさい。彼を。ランサーを。

これは私からの絶対命令……ッ!?」

 

そこでソラウは気づいた。

すぐ傍の電柱の上に、煌々と光り輝く黄金の鎧を纏った存在がいることを。

 

「……ふん、ライダーよ。

貴様はそのような妄執に囚われた女に従うべきではない。

我が、貴様を自由にしてやるとしよう。」

 

姿を表したのは、黄金の鎧を身に纏ったサーヴァント、アーチャー。

だが、アーチャーはそんなソラウを無視するように、不機嫌に黙りこくっているライダーに向けて同情の視線を向け、

言葉を紡ぐ。。

その言葉と共に、彼の背後の空間が歪み、無数の宝具がソラウに向かって射出される。

 

「くっ……防ぎなさい!月霊髄液!!」

 

それに反応して、ソラウは月霊髄液を発動し、水銀の盾を構築して防ごうとする。

だがそれも無駄な事。

神秘はより強い神秘によって打倒される。

いかにクレイモアや弾丸を弾ける強度を持った水銀の盾と言えど、

それは神秘を所有しない物理的攻撃だからこそ。

神代の神秘を所有する宝具の『原典』の前では文字通り紙切れ同然である。

 

月霊髄液の水銀の盾を貫いた無数の宝具は、そのままの勢いでソラウの体を次々と貫いていく。

 

「ぐ……ふっ!!」

 

口と傷口から大量に出血しながら、ソラウは地面に倒れ伏す。

だが、そんなもがき苦しむソラウを、ライダーは冷ややかな目で見下ろしていた。

 

「あ……ああああ!ライダー……!!

私を……私を助けなさい……!

貴方は、貴婦人に敬意を払う英霊でしょう……!!」

 

「だが断る。余は貴様を貴婦人と認めぬと言ったはずだ。

余は余のやりたい事をやる。貴様に構っている暇などない。」

 

ライダーが受けた命令はあくまで他の英霊を倒す事、

そしてランサーを連れてくることである。

そこにソラウ自身を守るという命令は存在しなかった。

……それに例え命令があってもライダーが彼女を守りはしなかっただろう。

それほどに、もはやライダーは彼女に対して愛想が尽きていたのだ。

 

「それに余が命じられたのは、ランサーを手に入れろという命令だけだ。

貴様を助けろという命令は受けてはおらぬ。

貴婦人ではない貴様の事など、最早知った事ではないわ。」

 

「ラ……ライダー……!!待ちなさい!待ちなさい!

わ、私を……ラ、ランサー……。ラ……ン……サー……あ、いして……。」

 

そんな風に自らの作り出した血だまりにのたうち回りながら、次第にソラウの動きは停止していった。

そんなソラウを冷ややかに一瞥した後で、アーチャーはライダーに同情を込めた視線を投げかける。

 

「やれやれ。本当に妄執に捕らわれた女というものは度し難いな。

同情するぞ。ライダーよ。

あの女がマスターでは貴様の実力の十分の一も発揮できまい。

もしも良いマスターに召喚されておれば、貴様ももっとこの余興を楽しめたものを……。」

 

かつて、英雄王ギルガメッシュは、その堂々たる容貌ゆえに女神イシュタルに恋を寄せられた事がある。

だが、ギルガメッシュは今までイシュタルの恋人が何人も最後は悲惨な目にあっていることをなじり、

それを拒否したのだ。

 

それに怒り狂ったイシュタルは、ギルガメッシュとエンキドゥに向かって

天の牛を差し向けたが、二人は協力してこれを打ち倒す。

……だが、これがきっかけとなって、神の怒りによりエンキドゥは最後を迎えることになったのだ。

アーチャーは、ソラウに似たものを感じていたのだろう。

 

「言うなアーチャー。

貴様には礼を言わねばならんな。

最後の最後で……貴様のような存在と正々堂々渡り合える機会を持てたのだからな!!

時の彼方より来るがいい!我が同胞たちよ!

―――《王の軍勢(アイオニイン・ヘロイタイ)!!》」

 

そのライダーの言葉と共に、固有結界が発動し、彼の朋友たちが英霊の座から再び召喚され、英霊の軍勢を築き上げる。

荒涼たる荒野、吹き付ける熱い風。

そこに次々と姿を表す征服王と心情風景を共にした英霊たちの軍勢。

その無双にして勇壮な英霊たちの軍勢たちは、再びファランクス陣形を敷いて戦闘準備に入る。

 

マスターを失い、今のライダーははぐれサーヴァントにすぎない。

だが、ソラウの令呪の一つ目『ランサー以外の全ての英霊を打倒しなさい』という命令は十分に効力を発揮し、

今のライダーは十二分の魔力が補給されていた。

他の二つ目の令呪は、ソラウを失った今では最早意味のない内容であるが、

その分の膨大な魔力がライダーへと注ぎ込まれる事になったのである。

その魔力は、王の軍勢を複数回使用してもなお問題ないほどだ。

そのライダーの不敵な笑みに、アーチャーも釣られるように不遜な笑みでほほえみ返す。

 

「くくく、時の果てまで訪れて茶番にはうんざりしていたものだが……

良い、これは良い。これでこそ戦争よ。

行くぞ征服王よ。我を楽しませるがいい。」

 

「おうよ!一世一代の大戦!思う存分に楽しもうぞ!!

行くぞ!!我が朋友たちよ!!進め!!」

 

全てを殲滅せんと襲いかかる無数の英霊の軍勢。そして無敵のファランクス陣形。

ファランクス陣形の前衛の弓を持った歩兵たちが、アーチャーに向けて無数の矢を放ち、

突撃力のあるヘロイタイ騎兵がアーチャーに突撃していく。

だが、それらの威容を持ってしても、アーチャーの不敵な微笑みを消すことはできない。

 

「蹂躙せよ。我が剣群。群れて誇るあやつらに真の王の力を見せるがよい!」

 

それに対し、アーチャーはゲートオブバビロンから《熾天覆う七つの円環(ローアイアス)》の原型を出して、空から振り削ぐ矢の雨を防御する。

《熾天覆う七つの円環(ローアイアス)》は射撃武装に対して非常に強い防御力を有している。

それを撃ち抜くためには、一点集中の貫通力を有する宝具が有効であるのだが、

逆に、多数の矢の雨などでは、相性は最悪と言える。

 

そしてこちらに迫り来るファランクス陣形は、アーチャーのゲートオブバビロンから射出される無数の宝具によって、

次々と切り崩されて行ってしまう。

征服王の迫り来る軍勢に対して、英雄王の宝具の軍勢は彼らに襲い掛かり殲滅していく。

まさに物量対物量。これぞまさしく戦争の名にふさわしいだろう。

だが、この戦いは征服王にとって不利だ。

征服王の英霊の軍勢は、英雄王の宝具を防げるほどの身体能力は存在しない。

そして、彼の固有結界は英霊たちと共有のため、英霊たちが数を減らせば維持できなくなってしまうのだ。

さらに、今の彼はマスターを失った状態だ。

いかに令呪三つ分の膨大な魔力があるとはいえ、その状態で膨大な魔力を消費する固有結界を使用しているのだ。長くはもつまい。

 

英雄王の切り札である乖離剣・エアを始めから出せばいかなる軍勢であろうが、

悉く粉砕できるだろうが、それでは余興の面白みが足りないというものだ。

ゆえに、英雄王は征服王の真っ向勝負に付き合っているのである。

 

「おおおおおおおおおおおお!!」

 

次の瞬間、王の軍勢が次々とゲートオブバビロンから射出される宝具に打ち倒されている中、

その中央にいるライダーは戦車を駆り、空を駆けて直接アーチャーへと襲いかかる。

それは、つまり王の軍勢を囮にしてゲートオブバビロンの宝具を引きつけ、その隙にアーチャーの懐に飛び込み直接攻撃しようという魂胆であろう。

ゲートオブバビロンからの攻撃は基本的に射出であり、遠距離攻撃である。

それならば、接近戦に持ち込めば勝機はあるはず。

 

確かに順当な戦略だ。

だが、それはこの例外たる英雄王でなければの話である。

 

「ふむ、では余興はここまでだ。夢を束ねて覇道となす、か。

ならば、そのか細い夢の悉くを断ち切り、目覚めさせてやるは英雄王たる我の役目か。」

 

瞬間、彼の背後の空間が歪み、異質な『剣』が姿を表す。

それは『剣』というにはあまりに異質だlった。

刃はなく、三つに別れた円柱が交互にゆっくりと回る剣。

そんな物が武器として使用できるはずはない。

だが、ギルガメッシュは、それが己の最強の武器といわんばかりに悠然とその円柱をを構える。

 

「さあ、貴様の出番だ。エア。

幻想に酔いしれる者たちを目覚めさせる暴威となるがいい。」

 

乖離剣エア。

それはギルガメッシュが持つ最強の宝具である。

かつて混沌とした世界を天と地に切り裂き、世界を作り出した最強の神造兵装である。

 

そこから生み出される暴風は、擬似的な次元断裂を引き起こし、万物全てを引き裂き無に還してしまうのだ。

その次元断裂は、地面を打ち砕き、軍勢を悉く無へと還していく。

いかに無敵の軍勢であろうと、世界を切り裂く対界宝具にはかなわない。

征服王の軍勢は乖離剣エアによって悉く虚無に帰っていくのを悔しげに睨みつけるライダー。

 

「くっ……ラララララライ!!!」

 

己の軍勢が固有結界と同時に壊滅していく中、なおもライダーは神威の戦車を駆り、雷撃を放ちながら空中からアーチャーへと襲いかかる。

 

「《天の鎖(エルギドゥ)》―――!!」

 

空間から無数の鎖が飛び出し、ライダーの神威の戦車の神牛へと巻き付き、動きを封じ込める。

神牛は雷撃を放ちながらも、なおももがき続けるが、対神兵装であるエルギドゥはそんなことではびくともしない。

この神牛たちは元々ゼウスに捧げられた物であり、神牛と呼ばれるように彼ら自身もある程度の神姓を持っている。

 

そして、神性を持っているのならば、神性が上がればあがるほど硬度が上がる対神兵装であるエルギドゥには勝てない。

もはや神牛は蜘蛛の糸に絡め取られた獲物同然である。

 

「ぬあああああああ!」

 

とっさにライダーは最早身動きの取れぬ神威の戦車から飛び降り、

天の鎖を足場にしながら駆け下りて、剣を振りかざしながらアーチャーへと襲いかかる。

 

そう、あの黄金の存在こそ、この地上で最高の存在。

ならば、それを征服することが、征服王たる余の役割―――!!

 

だが、その突撃しているライダーに対して、アーチャーは乖離剣を一時的に停止させると、

ゲートオブバビロンからいくつかの剣を射出させる。

 

王を選定する、『選定の剣』の原型である原罪(メロダック)

北欧神話における選定の剣、最強の魔剣である太陽剣グラム。

アーサーを王にした選定の剣たる勝利すべき黄金の剣。

 

それらが次々とライダーへと突き刺さり、彼の動きを止める、。

 

「どうだ?征服王?王を選ぶ選定の剣の味は?

王である貴様には格別の味であろう?

誇れよ征服王。貴様は我が王と認めてやったのだからな。」

 

「アー…チャー…!!」

 

動きが止まりながらも、なおも剣を振るおうとするライダーの胸の中央に、乖離剣が突き刺さる。

 

がはっ、と征服王の口から大量の血が吐き出される。

それを見ながら、何処となく同情の視線でアーチャーははライダーを見つめる。

 

「全く、女の妄執というのは度しがたいな。

あの女神といい、神代の時代からそこは変わらないと見える。

もし、貴様が、貴様自身を自由にしてくれるマスターに召喚されていればあるいは……

いや。言っても詮無き事か。」

 

かつてギルガメッシュは神々ですら無視できないその光輝によって、

女神イシュタルに好意を寄せられたが、

今までイシュタルの恋人になっていた英雄達の末路を言って、それを断った。

そして、それが元になって、ギルガメッシュは親友であるエンキドゥを失ってしまう事になったのだ。

それを思うば、散々ソラウに縛られたライダーを見て自分と重ねて思う所があるのだろう。

 

「「ではさらばだ。征服王。納得いかなければ幾たびも我に挑んで来るがいい。

我も、この世界も決してそなたを飽きさせる事はない。

それはこの世界の王である我が保証しよう。」

 

「その言葉……忘れるでないぞ英雄王……。

征服王たる余に……征服できぬものなどないのだ……。」

 

その言葉に、にやりと口元を歪めると、そのままライダーは消え去っていった。

それが、彼らの戦いの終焉だった。

 

 

 

 

―――1方、ランサーとウェイバーも冬木市の市民会館へと向かっていた。

あんな狼煙を上げられて、放置できるマスターやサーヴァントなどいない。

念のため、ウェイバーは全てのルーンストーンと模造のベガルタも持ち出してきている。

最早最終決戦。

この状況では何があるか分からない。切れる札は多いほうがいい。

と、そこまで考えてウェイバーはふと足を止める。

そうだ。切れる札が多いほうがいいというのなら、ここに最大の切り札があるではないか、と彼は自分の手の甲を見つめる。

 

「どうやら……これが最終決戦のようだな。

だったら、僕は僕に出来る事を行うしかない、か。

部下に最大の力を与えるのも上に立つものの勤め、か。」

 

ちらり、と彼は自分の手の甲に存在する令呪を見て、すうと息を吸うと決意を固めて令呪を使用する。

 

「第一のマスターが三つの令呪に重ねて命じる!

 

―――『必ず主の元に帰還せよ!』 以上だ!!」

 

令呪を三つ続けて使用した膨大な魔力はそのままランサーへと流れ込んでいく。

これでウェイバーにはランサーを制御する術は無くなったも同然だ。

だが、そんな事は問題ではない。

忠誠を誓った臣下を信頼する事こそが、王である事の勤めだ。

自分に忠誠を誓ったこのランサーならば、令呪などなくても問題ない、と彼は判断したのだ。

 

「いいかランサー!必ず僕の元に帰ってこい!必ずだ!

帰って来なかったら許さないからな!」

 

「必ず帰ってこい」という令呪を全て使用したその命令により、

今のランサーには一時的に新しいスキル【戦闘続行A+】が追加されている。

このスキルは、いかなる状況に陥っても生還できるという能力を表したスキルであり、

最高位のA+ならば、例え霊核が破壊されても数ターンは活動できるほどである。

 

このランクは、かの生き残る事に特化したと言われるクーフーリンが所有する戦闘続行Aより

さらに一ランク高いといえば、その凄さがわかるというものだ。

本来戦闘続行スキルを持っていないランサーに、三つの令呪を連続使用したとはいえ、

一気に最高位のA+まで与えるとは令呪の力はさすがと言える。

 

(もっとも、それのみに特化されたため、ステータスアップなどはされていないのだが。

逆にいえば、それのみに特化したからこそ、ここまでのスキルランクが与えられたと言える。)

 

「は!ありがたき幸せ!

このディルムッド・オディナ、必ず主の元に帰ってくると約束します。

『蒼天我らが上に落ちたらぬ限り、緑なす大地引き裂けて我らを飲み込まぬ限り、

泡立つ海押し寄せて我らを溺らしめぬ限り、この誓い破らるることなし』。

我が名とこのゲッシュの元においてそう誓います。我が王よ。」

 

そうランサーはウェイバーに誓うと深々と頭を下げる。

ケルトの英雄にとってゲッシュは絶対的なものであり、

それを破る事は破滅を意味していた。

そこまでランサーに誓わせるとは、完全にランサーがウェイバーを自分の王として認めているという証である。

 

だが、その時、猛烈な轟音が響きわたる。

彼らに向けて、根こそぎから引っこ抜かれた電柱が巨大な投げ槍と化して彼らに襲いかかったのだ。

次々と投げられてくる擬似的な宝具となった電柱を、ランサーは手にした破魔の紅薔薇で無効化する。

ウェイバーも何とか運良く回避することができたが、その攻撃によって、彼らは分断されてしまう。

 

「……ッ!?ランサー……!!」

 

もしウェイバーの所に行こうとした瞬間、バーサーカーはウェイバーの元に襲いかかるだろう。

 

「主よ!その辺に身を隠してください!必ずお迎えに上がります!必ず!」

 

このバーサーカー相手に隙を見せたらこちらがやられる。

いかに宝具の特性上優位に立てるとはいえ、それで油断していたらあっさりとやられてしまうだろう。

 

「わ……解った!ランサー!必ず僕に元に帰ってこいよ!

必ずだぞ!ランサー!!」

 

そのランサーの言葉に、ウェイバーはうなづくと、そのまま走ってその場を去っていく。

―――それが彼らの今生の別れになるような嫌な予感が、彼ら二人に共通した予感だった。

 

 

 

こんにちわ。零です。

ここまで読んでいただきありがとうございます。

お待たせして申し訳ありません。

 

征服王と英雄王の戦いは原作と似たようになってしまってすみません。orz

頑張ったんですが、これが限界でした……。

本当は今回で最後まで書き上げようかと思っていたんですが、

結局分割する形になってしまいました。申し訳ありません。orz

頑張って次も早く書き上げようと思っています。

 

なお、これらの小説は全てフィクションであり

実在の人物、団体、法人、国家、宗教等とは一切関係有りません。

また登場する人物は全て18歳以上です。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

優雅ではない戦い、優雅な結末(作者:折無堂)(原作:Fate/)

刃が沈む寸前、遠坂時臣は死ななかった。▼言峰綺礼の裏切りを退けたことで、時臣は聖杯戦争の裏側を見ることになる。▼大聖杯の異常。間桐の契約不履行。桜に施された処置。▼そして、魔術師殺し・衛宮切嗣。▼優雅であることは、目を逸らすことではない。▼遠坂の当主として、魔術師として、そして父として。▼時臣は、優雅ではない戦いへ踏み込んでいく。


総合評価:2105/評価:8.26/完結:54話/更新日時:2026年07月30日(木) 21:00 小説情報

Fate/atlantis:衛宮切嗣生存stay night(作者:星P/すたーりん)(原作:Fate/)

※基本原作設定に準拠しますが、補完できない部分は独自解釈で進んでいきます。▼※感想や評価をいただけると、とてもありがたいです!!執筆のモチベーションにもなるので、ぜひよろしくお願いします!▼ *▼ 第四次聖杯戦争から十年。再び冬木の地に、聖杯戦争の幕が上がる。▼本来であれば、それは一人の少年の物語だった。▼理想を追い続ける衛宮士郎が、数多の出会いと別れを経て…


総合評価:545/評価:7.5/連載:17話/更新日時:2026年07月09日(木) 00:05 小説情報

仮面ライダーウィザード  in第四次聖杯戦争(作者:T氏@pixiv)(原作:Fate/)

日本の地方都市、冬木で過去三回にわたって行われてきた聖杯戦争が始まろうとする中...とある少女を救うこととその父親に復讐を望んだ男が召喚の儀式を行う。▼「俺があんたの希望になってやるよ。」▼だが、呼び出された英雄は決して臨んだものではなかった。▼召喚された指輪の魔法使いは、その輝きを両手に宿し、“絶望”を“希望”に変える!▼※この小説はpixivでも投稿して…


総合評価:200/評価:8.4/完結:36話/更新日時:2026年05月24日(日) 22:00 小説情報

パーフェクトゲームを目指すには!(作者:メタ(ル))(原作:Fate/)

Perfect Game(パーフェクト ゲーム)、またの名を完全試合。▼主に野球なので使われる用語なのだが、その俗的一般的な意味は「ミスや欠点が全くなく、完璧に成功した状態」という。▼それは神々たちの遊戯か、はたまた抑止力の遊び心なのか、それとも第4の壁の向こうにいる者たちの意志なのか。▼かつて『聖杯大戦』と呼ばれた戦いがあった。▼"黒"…


総合評価:1334/評価:8.47/完結:62話/更新日時:2026年08月09日(日) 10:00 小説情報

神代から弾かれたアマゾネス女王は、間桐桜を攫って聖杯戦争を壊す(作者:あかちゅきぼちゃん)(原作:Fate/)

神代の果て、アマゾネスの女王ヒッポリュテは妹ペンテシレイアの手を握ったまま、世界から弾かれた。▼次に目覚めたのは、第四次聖杯戦争前夜の冬木市。▼現代人としての原作知識を持つ彼女は、間桐へ渡される直前の少女――遠坂桜を救うため、ただ一つの選択をする。▼「なら、奪うしかない」▼だが、その選択は聖杯戦争を大きく歪ませる。▼桜に刻まれる令呪。▼狂戦士として召喚される…


総合評価:222/評価:6.29/連載:44話/更新日時:2026年05月09日(土) 20:52 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>