Fate/-(フェイト・マイナス)   作:名無しのレイ

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第三話

 

 

キャスターのマスターである龍之介は鬱屈していた。

キャスターと呼ばれる超越的な存在を召喚して、最高にCOOLだと浸っていたのもつかの間。

彼女……メディアは目立つことはするな、と龍之介の「趣味」に強く釘を刺し、全く何もさせず、ただ閉じこもっているだけの毎日。

その欲求不満がたまっているのだ。

キャスターからしてみれば、聖杯戦争に勝ち抜くのに当然のことなのだが、

このマスターは聖杯戦争のことなど何も考えておらず、ただ自分の楽しみにしか興味がない。

それもキャスターにとっては非常に腹ただしいことではあった。

そのため、マスターを裏切ろうと虎視眈眈と策略を練っていたのだが、きっかけは龍之介の鬱屈した感情が爆発したこの一言だった。

 

「何を言ってるんだキャスター!!

アンタだって自分の■や■■を―――したじゃないか!!」

 

その一言を言って気がすんだのか、龍之介は言うだけ言って、さっさと去っていったが、彼女……キャスターの口元には壮絶な笑みが浮かんでいた。

 

「……そう。私の前でそれを言うのね。マスター。」

 

龍之介は全く気づいていなかった。

それは絶対の禁忌。

彼女にとっては自らを「魔女」と呼ぶ以上の絶対的な放ってはいけない言葉である。

 

「いいでしょう。マスター。

あなたには最高の苦しみを味わっていただきましょう。

このメディアの名前にかけて、ね。」

 

そう言いながら、彼女の口元に妖艶で壮絶な笑みが浮かんだ。

 

 

 

時間は少し戻る。

聖杯戦争に参加するマスター……御三家の一つである魔術師遠坂時臣は、本来敵対する関係である教会に使える言峰綺礼と話をしていた。

様々な利害が絡み合い、綺礼は教会に使える身でありながら魔術師の時臣の弟子となり聖杯戦争に参加することとなる。

表面上は敵対しているが、水面下では共闘する関係として。

……そして、綺礼は誰にも理解できない、己自身の懊悩をひた隠しにして。

 

「さて、それでは言峰。

君にはアサシンのサーヴァントを召喚してもらおう。」

 

冬木市の教会の地下内部。

そこで共闘状態にある二人は会話をしていた。

もはや時臣の召喚するサーヴァントは決まっていてその聖遺物も用意してある。

―――それは、「この世界で初めて脱皮した蛇のぬけがら」である。

そこから召喚される英霊といえばただ一人。

―――英雄王ギルガメッシュ。

無数の宝具の原典を所有する彼は、英霊の中でも最強の戦闘能力を保有している。

およそ、英雄である以上、彼に勝つことはできないだろう。

 

「私の召喚する英雄王ギルガメッシュは最強の英霊だ。

これに勝てるサーヴァントなど存在しないだろう。

だが……。」

 

そう、ギルガメッシュはその暴君ぶりでも名が知れた英霊である。

それを制御しきれるのか、さすがの遠坂でも不確定要素が大きすぎるというものだ。

何らかの気まぐれを起こして、戦うべき時に戦ってくれない状態に陥るかもしれない。

ならば、こちらも予備の保険をかけておく必要があるだろう。

 

「それゆえ、君の召喚するアサシンは諜報活動だけではなく、

戦闘能力もある程度あるサーヴァントを召喚してもらおうと思う。

そのための触媒が……これだ。」

 

それは、ほんの小さな石のかけら。

何の変哲もないこれは、本来神殿だったものの一部である。

それは、ギリシア神話の怪物、メデューサたちがかつて住んでいた神殿「形なき島」の一部。

そこから出る結論は一つだけである。

 

「そう。君にはメデューサをアサシンとして召喚してもらおう、」

 

「そのような事が?そもそもメデューサにアサシン属性があるのですか?」

 

「何をいう。彼女は自分の神殿に侵入してきた者たちを次々と陰ながら石へと変えて葬った存在だ。

アサシンとしての属性は少なからずあるだろう。

それに……聖杯戦争のシステムを作ったのはアインツベルン、マキリ、遠坂の我ら御三家だ。

ならば、システムのルールをかいくぐる方法を知っていてもおかしくはないだろう?

もっとも、優雅ではないから使いたくはなかったがね。」

 

実際、アインツベルンも聖杯の器をホムンクルスへと変貌させたりするなどの反則的手段を取っている。

マキリにいたっては言わずもがなだ。

(もっとも、遠坂はこのことを全く知らないが。)

ならば、御三家のひとつである遠坂がルールの抜け道を知らないとだれが言えるだろう。

 

「よし、それでは、召喚の準備に入るとしよう。」

 

その言葉に頷きながらも、言峰の内面は虚無的だった。

ただ気になるのは、資料で見た他マスターの一人のこと。

衛宮切嗣。

彼の行動は全く自滅的だ。そんな彼がなぜこの戦いに参加したのか。

彼は何を求め、何のために戦うのか。

それを何としても問わなくてはならない。

 

 

 

 

 

―――最強のサーヴァント、セイバーは疾走していた。

彼女の鋭い感覚は、ランサーとライダーの激しい戦いの余波を感じ取ったのだ。

切嗣からすれば、お互いに潰し合って、傷ついたランサーとライダーを確実に葬るためにセイバーに命じたのだろう。

そして、仮マスターともいえるアイリスフィールもそれを了承した。

恐らくは、彼女の本来のマスターである切嗣も彼女を囮にし、敵マスターを捕捉して狙撃するために行動を開始しているかもしれない。

 

だが、セイバーの考えは違う。

―――ランサーもライダーも、二人纏めて叩き切る。

傷ついて弱っている敵の駆逐や、敵マスターの狙撃など、正面からの戦いを好む彼女にしてみれば好ましい方法とはいえない

(もちろん、戦いである以上否定はしないが)

と、そんな風に人間などを遥かに凌駕する速度で息も切らさず夜の街を疾走している彼女に向かって、いきなり剣や槍などが彼女に向かって襲いかかる。

 

「―――!!何奴!!」

 

だが、彼女のスキル:直感Aは瞬時に敵の攻撃を把握していた。

その第六感はもはや未来予知に等しい。

セイバーは手にしていた『剣』を振るうとたちまち襲いかかってきた剣や槍を斬り払う。

 

「……ほう。雑種どもの喧噪を見にわざわざ来てみれば……。」

 

その声は、セイバーの真上、街灯の上から響き渡った。

そこに存在していたのは黄金の輝きを放つ眩いばかりの存在だった。

黄金に輝くフルプレートアーマーを装備し、同じく黄金の髪を逆立てた禍々しいほどの深紅の瞳をもった青年。

彼が通常の人間でないことは誰の目から見ても明らかだ。

しかも、その鎧からすれば恐らくキャスターでもないし、言葉を放った所からすればバーサーカーではない。

アサシンは論外だし、ライダーならば何らかの乗り物で攻撃を仕掛けてこない事から可能性は低い。

ならば、彼は三騎士の一人。しかも、その中で遠距離攻撃を仕掛けてくる騎士といえば……。

―――アーチャーのサーヴァント。

断言はできないが、その可能性がもっとも高いとセイバーは判断した。

 

「ふむ、貴様のような存在がいるとはこの戯けた争いも悪くはなかろう。

貴様のような眩さを持った存在はなかなかに得がたい。

そして、それが絶望に満ちた慟哭を叫び、我の物になるのはこの上なく喜ばしいことだ。

喜ぶがいい。貴様はこの我に選ばれたのだからな。」

 

「……まだ一戦も交えていないのに随分と傲慢だな。アーチャーのサーヴァント。

私は誰の所有物でもない。貴様のその高慢さ、この剣で斬り捨ててみせよう。」

 

そう言って、怒りを瞳に宿したセイバーは手にした剣を構えなおす。

アーチャーの高慢極まりない言動は、セイバーの怒りに火をつけていた。

 

「いいだろう。アーチャーよ。

初戦はランサーとライダーだと思っていたが……三騎士の一人とならば、何ら不足はない。

いざ、参られよ。」

 

「戯け。その言葉、後悔するがよい!!」

 

次の瞬間、アーチャーの周囲の空間が歪み、そこからおよそ十の剣や槍などがセイバーに向かって射出される。

 

「く……っ!!」

 

アーチャーの攻撃をセイバーは剣で弾くが、それでも完全に弾ききれず、セイバーの二の腕を深々と切り裂き、血が舞い散る。

セイバーの鎧は強力な幻想種でもないかぎり破壊することはできない。

それをいとも容易く貫くなど、あのアーチャーの攻撃力は半端ではないということである。

さらに、アーチャーの宝具の中には、魔力を一時的に無効化する能力をもった武装もあり、

それを弾いた時に、セイバーの剣を覆っている風王結界が一時的に解除され、一瞬だけだが彼女の黄金の「剣」が露わになる。

もちろん、それは一瞬だけで、すぐさま風王結界は再起動するが、

一瞬だけ露わになった「剣」を見て、ほう……とアーチャーが感心したような声を上げる。

……そして、それを見ている使い魔の存在があることなど彼らは知らなかった。

 

セイバーはこちらを串刺しにしようと襲い掛かる宝具をさらに剣で弾き、回避しながら近くにあった車を盾にする。

当然、アーチャーの攻撃はそんな物では防げはしない。

瞬時に、車は鉄屑へと変貌するが、その隙をついてセイバーは少しづつアーチャーへの距離を詰めていく。

セイバーは近くにある遮蔽物を盾にしながら少しづつ間合いを詰めていく戦術を取ったのだ。

あの弾幕に真正面から突っ込んでしまっては、いかにセイバーが弾いて回避しようとも、いつかは針鼠にされてしまうだろう。

だが、あのアーチャーの攻撃は基本的には直線的だ。

(もちろん追尾式や軌道が変化する宝具も山ほどあるのだが、今の彼はそこまで本気を出してはいないらしい)

相手の反応を上回るランダムな横軌道と、とにかく何でも遮蔽物を盾にして少しづつ間合いを詰めて、一気に斬りかかる。

そもそもが開けた場所で距離がある状態でアーチャーのサーヴァントと戦うなどという地点で圧倒的に不利なのだ。

これくらいはしなければ、まちがいなくこちらが敗北する。

だが、そんな二人の戦いに、予期せぬ邪魔者が乱入することになる。

 

 

―――ちょうどその時、ランサーはウェイバーを抱えて疾走していた。

ライダーからの戦いで上手く離脱した彼らだが、ライダーのあの宝具ならばいかに機動力を削いだといっても追いつかれる可能性がある。

追撃戦が最も恐ろしい可能性だったが、向こうも自分たちの力が落とされた以上無理はしないことにしたらしい。

 

「どうやらライダーは追撃をしてこないようですね。

こちらとしては助かったというところですが……。」

 

通常の乗り物を遥かに凌駕する速度で移動するランサーに抱きかかえられながら、

ウェイバーはルーンストーンの加護で自分自身の身を守りながら、何とかランサーに返事を返す。

 

「あ、ああ。さ、さすがに宝具の力を削がれてはいくら奴らでも……」

 

「―――!主君よ!喋らないでください!舌を噛みます!!」

 

前方で不穏な気配を感じたランサーはウェイバーを片手で抱え、猛烈な速度を出しながら急速に方向転換してこの場から離脱しようとする。

だが、それも遅い。

セイバーによって弾かれたアーチャーの宝具がくるくると回りながらこちらに飛ばされてくるのを、ランサーはさらに槍で弾いて、急停止する。

そして、その場で繰り広げられている光景に絶句する。

そこにいたのは、道路の街灯の上から無数の宝具の攻撃を放つサーヴァントと、それを目に見えない剣で弾くサーヴァントとの戦いだったからだ。

 

「な……っ!ど、どういう状況なんだよ!どうなってるんだよ!これは!!」

 

「……恐らく、アレはセイバーに……もう一人はアーチャーのサーヴァントかと。

二人とも偶然出くわした遭遇戦なのでしょう。

しかし、単独行動を持つアーチャーならまだしも、セイバーのマスターが見当たらないのが気になりますが……。」

 

「バ、バカ!そんなことはどうでもいい!

こっちはさっきライダーと闘ってきたばかりなんだ!連戦なんかできるかっ!!

いいかランサー。ここは防衛戦に徹するんだ!奴らの隙を見て全力で離脱するぞ!!」

 

「承知!!」

 

だが、ランサーには気がかりなことがあった。

それは先ほど言ったアーチャーとセイバーのマスターである。

アーチャーならば単独行動のスキルがあるので、現在マスターからの単独行動中という可能性もある。

だが、それならばセイバーのマスターは?

先ほどのライダーのマスターと同様に、どこかに隠れ潜んで遠距離攻撃でウェイバーを攻撃するという可能性が高いのではないだろうか?

ましてや、ここは道路。周囲は、道路を見下すことができるビルで取り囲まれている。ならば遠距離攻撃を仕掛けてくる可能性が高い。

ならば、ここはセイバーやアーチャーに戦いを挑むのではなく、自らの主君を守護するのが第一。

俺が傍にいる限り、いかなる攻撃であろうと主君に傷一つつけさせはしない。

それこそが、ディルムッドの騎士の誇りだった。

―――そして、そのディルムッドの推測は完全に当たっていた。

 

 

 

 

「……チ。この状態では無理、か。」

 

セイバーのマスター、衛宮切嗣。

彼は道路を見下ろせるビルからワルサーWA2000セミオートライフルを構え、

その銃にセットされた巨大な暗視スコープと熱感知スコープを覗き見ながら、サーヴァントの戦いを見下ろしていた。

あわよくは敵マスターを一撃で仕留めるために監視を行っていたのだが、

どうやらアーチャーのマスターはここにはいないらしい。

アーチャーには、クラス特性として「単独行動」のスキルが存在する。

そのスキルが高いのならば、サーヴァントの単独での行動も十分に可能になる。

アーチャーのマスター、時臣は経歴・性格からするといかにも自信に充ち溢れた魔術師であり、彼がどこかに隠れている可能性は十分にあったが、

単独行動ができるサーヴァントのみを戦いに投入し、自らは現地にはこないこの状況を見ると、

彼は意外と冷静さと慎重さを兼ね備えた狡猾なマスターかもしれないと切嗣は判断した。

……もっとも、それは切嗣のかいかぶりというもので、単にアーチャーが勝手に動き回って偶然セイバーと出会ったにすぎないが。

 

そして、今乱入してきたランサーとそのマスター。

マスターが姿を隠しもしないのは、よほどの自信家かただの間抜けにしか思えないが、

その傍にいるランサーはセイバーとアーチャーの戦いに参戦せず、マスターを護る防衛戦闘の態勢に入っている。

アレでは、下手をすればこちらの銃弾を防御される可能性も十二分にある。

現状では、彼らの戦いを見守るほかないだろう、と無線で舞弥に指示した切嗣はそこで驚くべき存在を発見する。

 

ビルの上に立っているのは、体のラインが見えるほどにフィットした黒い服をまとい、

釘剣をもって顔の上半分をマスクで覆い、右腕がびっしりと鱗に覆われた異型の女性の姿。

それをみて、彼は叫ぶ。

 

「アサシンのサーヴァントだと!?」

 

それはどこから見ても人間ではありえない。

ならば推測される正体は一つ。アサシンのサーヴァント。

しかもアレはどちらかというよりも、まっとうな正英雄というよりも、反英雄の属性が強く出ているように切嗣には感じられた。

 

彼女はワルサー狙撃銃の暗視スコープと熱感知スコープで監視している切嗣の方を見て、にやりと口元を歪めた。

 

「―――!!」

 

その瞬間、猛烈な予感に襲われた切嗣はワルサーWA2000ライフルを捨ててその場から逃げようとする。

そして、次の瞬間、ふっと姿を消したように見えたアサシンのサーヴァントはかなり距離が離れていたにも関わらず、

ビルを足場にとび越え、まるで疾風のように瞬時に間合いを詰める。

そして、鱗に覆われた右腕を翻し、手にした釘剣を投擲するとワルサーWA2000ライフルの銃身を突き刺し、破壊する。

もし、ほんの少しでも遅れていたら、返す刃で切嗣の喉元も同じようにされていただろう。

 

「……なるほど。貴方がマスターですか。

ふむ、見たところセイバーのマスターというところですか。」

 

じゃらじゃらと釘剣を鳴らしながら、顔半分をマスクで覆ったアサシンはにんまりと、口元に残忍な笑みを浮かべる。

 

「このような超長距離からの武装で相手を攻撃するとなると、

貴方は正面からの近接戦闘があまり得意ではないか、それか相手からの攻撃を恐れリスクを最小限にする……つまりは臆病者ということでしょう。」

 

そこまで言って、アサシンのサーヴァント……メデューサは不敵に微笑む。

 

「さて、臆病者でないというのなら、その実力を見せてもらいましょうか。セイバーのマスター。

狩る存在から、狩られる存在になった絶望を味わうといいでしょう。」

 

にやり、と口元に笑みを浮かべてアサシンは呟いた。

 

 

 

 

再び、場面はセイバーたちの場所に戻る。

ランサーたちの乱入に一番驚いたのはやはり、苦戦を強いられているセイバーだった。

 

「―――っ!!?ランサーにランサーのマスター……っ!?

くっ、このような時に……!!」

 

まず声を上げたのはセイバーだった。

それも無理はない。

今の彼女はアーチャーに一方的に攻撃を受けている最中だ。

ここにランサーすら加わってしまえば、いかに最優を誇る彼女でも倒されてしまうだろう。

 

「ほう、このような所に雑兵が混じってくるとはな。

まあ、王の慈悲を持って許そう。貴様ごとき狗が何をしようが我の知ったことではないからな。」

 

それに比べ、余裕がある……というか先ほどと全く態度が変わらないのがアーチャーだ。

最強のサーヴァントといっても過言ではない彼にとっては、例え三騎士のうち二人が結託して襲い掛かってこようと

容易く撃退できる自信はある……というかそもそも最強の英霊である彼には自分が敗北することなど考えすらしていない。

だが、ランサーがウェイバーをかばっているのを見て、彼は少しだけ面白そうに声を上げる。

 

「ほう……。なるほど。今回の槍兵はなかなかの忠犬と見える。

だが、我は犬ごときには興味はない。

我の宝にも劣らぬ煌めきを放つ存在がいるのでな。

そこで大人しく主人を守っているがいい。忠犬。」

 

「くっ……!!」

 

だが、三騎士の一人、ランサーである彼は、あのアーチャーがとてつもない戦闘能力を秘めていることを察知していた。

恐らくは、あの威圧感からして大英雄クラス……自らの主であったフィン・マックールですら上回るであろうと本能的に悟ったのだ。

アレに対抗できるのはヘラクレスやシグルド、イスカンダルなどといった大英雄クラスでもなければ真っ向勝負はできまい。

ましてや、ライダー……イスカンダルと渡り合って消耗してしまった今の状態では、一揉みされて終わりだろう。

そんな存在と不利な条件で渡り合っているあの恐らくはセイバーも大したものだといえるが、一歩間違えば敗北は間違いない。

そしてその次は、あのアーチャーの牙はこちらに向くだろう。

そうなれば、いかにランサーであろうが、主を守りきれはしないだろう。

今は、状況を見極めるときである、と彼は判断していた。

それをウェイバーも感じ取っているのか、彼はとっさに防御用のイチイの木、防御の意味を持つルーン、エイワズが刻まれたルーンストーンを手にしながら呟く。

いかに封印指定が刻んだルーンの攻撃といえど、サーヴァントの前では、戦車に石を投げつけるようなものだと知っている彼は気休めでも防御戦闘の態勢を取っているのだ。

 

「ラ……ランサー。」

 

「ご安心ください。今の奴等ではこちらに手を出す余裕は……!!」

 

次の瞬間、ランサーは双槍を構えて横へと身構える。

とてつもない負の気配とどす黒い闘気。

唐突に、そのとてつもない負の存在をランサーの鋭敏な感覚は感じ取ったのだ。

そして、それはセイバーやアーチャーも同様である。

 

「……ぬ!」

 

「あ、あれは……!!」

 

どこからともなくそこに存在していたのは漆黒の異型のフルプレートアーマーを纏った存在だった。

漆黒の甲冑に兜に籠手。

全身を覆い尽くすその異型のフルプレードアーマーでは、その存在が男性か女性であるかすら判別はできない。

そして、そこから放たれる膨大な漆黒の魔力の本流。

アレが、ただの人間や魔術師であろうはずがない。

 

「ま、またしてもサーヴァントだって……!?

し、しかもアレは……!!」

 

現在確認が取れているのは、セイバー、アーチャー、ランサー、ライダーの四人のサーヴァント。

残るは、アサシンとキャスター、そしてバーサーカーである。

あのフルプレートアーマーからしてキャスターではないだろう。

漆黒の鎧という所はアサシンに近いかもしれないが、影ながら敵を討つというアサシンが堂々と姿を現すとも考えにくい。

ならば、残された可能性としては一つ。……バーサーカーのサーヴァント。

 

「くそっ……!!こんな時にバーサーカーだと……!!

どうなっているんだよ一体!!」

 

ウェイバーの喚きは恐らくはその場にいた者たちの総意だったに違いない。

こんな短期にサーヴァントが四騎も揃うなど異例中の異例である。

 

「AAAAAAAAAAAAAAA!!!」

 

バーサーカーは、弱っているはずのランサーを見むきもせずに、アーチャーへと疾走する。

いや、正確にいえば、その先にいるセイバーに向かって突撃していて、進行方向に偶然街灯の上にいるアーチャーが存在するだけなのだが、

バーサーカーのマスターの意思もあり、邪魔者を排除するために、バーサーカーはアーチャーにむけて戦いを挑んだ。

それはまさしく獲物に襲いかかる猟犬そのものだ。

それを見て、アーチャーは嫌悪に顔を歪めながら、バーサーカーに向けて腕を振るう。

 

「無礼者め。王である我に許可なく近寄るとは……。非礼にも程があるぞ!!狂犬!!」

 

腕を振るうと同時に、セイバーに向けられるはずであった原初宝具の切っ先がバーサーカーへと向けられ、凄まじい勢いで射出される。

巨大な雷撃を纏った鉄鎚……北欧神話のミョルニールの原型。

空間を引き裂くケルトの魔剣、カラドボルグの原型。

フランスの聖騎士ローランが所有していたデュランダルの原型。

それらが、バーサーカーに向かって襲いかかる。

 

英雄王が所有する宝具の原型の威力は凄まじいというほかない。

それらの攻撃を受ければ、並のサーヴァントならば、いともたやすく打倒されてしまうだろう。

……だが、このバーサーカーも「並み」ではなかったのだ。

バーサーカーは、最初に射出されたカラドボルグの原型を手に取ると、それを振るいデュランダルの原型とミョルニールの原型を打ち払う。

 

「貴様……我の宝物をその汚らわしい手で握るとは……!!

不敬極まりないぞ!!雑種が!!」

 

怒りに顔を歪めたアーチャーは、さらに自らの蔵からおよそ17挺の宝具を取り出してバーサーカーに向けて射出する。

だが、バーサーカーは右手で手にしたカラドボルグの原型と左手で手にした宝槍でその宝具を弾き、

より強力な宝具が飛来してきたら左手の宝具を投げ捨て、新しい獲物をつかみ取り、より強力になっていく。

 

「な……っ!!あのバーサーカー……アーチャーの武器を掴んで自分のものにしているだって……!!」

 

「恐らくは、アレがあのサーヴァントの能力……。

あのバーサーカーが掴んだモノは「ヤツの宝具になる」のでしょう。

 

アーチャーの本気の宝具の射出はまさしく爆撃機の爆撃にも等しい。

だが、バーサーカーは、それらすべてを華麗極まりない動作で全て回避し、防御し尽くす。

……しばらくの後、道路のアスファルトは完全に破壊され、クレーターと化したその中央に、バーサーカーは無傷の漆黒の姿をさらけ出した。

彼は、そばに転がっていたハルバードに似た宝矛を手にとると、無造作にそれをアーチャーに向かって投擲する。

その宝矛はアーチャーの乗っている街灯を容易く両断し、アーチャーは地面に着地するが、彼の怒りは限界を超えていた。

 

「痴れ者が……。仰ぎ見るべきはずの我を同じ地面に立たせるか。下郎が。 もはや許さん!!肉片一つたりとも残しはせんぞ!狂犬!!」

 

憤怒に燃えるアーチャーはさらに宝具を繰り出そうとするが、まるで何かに強制的に止められるように、動きをぴたりと止める。

 

「貴様ごときの諫言で王の怒りを鎮めろとは大きく出たな時臣……。

命拾いをしたな狂犬。

興が覚めた。今宵はここまでだセイバーよ。

……だが、貴様のその輝き、煌めき、そして己の器以上のモノを求め苦しむその道化っぷり。

なかなかに面白い。せいぜい励むがいい。」

 

それだけいうと、アーチャーはすうと姿を消していった。

 

 

 

そういうと、彼女は、じゃら、と手にした釘剣の鎖を軽く引っ張る。

それと同時に、まるで鎖が生き物のように凄まじい勢いでワルサーWA2000に巻きついていく。

と、次の瞬間、彼女は軽々と鎖を引くと重量のあるワルサーWA2000がまるで砲丸の弾丸のようにこちらに打ち出される。

 

「固有時制御―――二倍速!!」

 

瞬時に、切嗣は固有時制御を使用し、自らの体内時間を加速させ、砲弾と化した狙撃銃を回避する。

衛宮家では代々時間操作についての魔術についての探究を行ってきた。

だが、この時間操作の魔術は極めて大規模なものが主であり、到底戦いでは役に立たない魔術ばかりである。

そのため、彼はその魔術をアレンジし、外界と遮断された自らの体内に固有結界を施し、自らの体内の時間を加速・減速する魔術を編み出した。

それが、彼の魔術、固有時制御である。

この術の欠点は自らの肉体にかかる極度の負担であり、せいぜい倍速が肉体を傷つけない限界である。

彼は、その魔術により、砲弾と化したワルサーWA2000を回避するが、次いで襲いかかるアサシンの攻撃を回避はできない。

いかに倍速で動こうと、人間を上回るサーヴァント、しかも敏捷性に優れる彼女の行動を上回ることはできないのである。

ぐさり、と、彼の肩口にアサシンの釘剣が突き刺さる。

 

「ふふ、教えてあげましょう。セイバーのマスター。

貴方は今までは狩人だったのかもしれませんが、今では狩られるだけの獣だということを。」

 

状況は切嗣にとって最悪といえた。

霊的要素を持たない魔術礼装でもない通常の銃火器では魔術師を排除はできてもサーヴァントと戦うことはできない。

唯一の彼の所有する切り札と言っていい魔術礼装。

トンプソン・コンデンター。

この銃には、自らの肋骨から作り出した「起源弾」が内臓されている。

だが、敵は魔術回路をもつキャスターではなく、アサシンである。

魔術回路を全く持たない彼女に対しては、ダメージを与えられても到底致命傷にはなりえない。

ならば、最後の手段である令呪を使用して、セイバーをこの場に召喚するのが最善の戦略であるが、

アサシンの猛攻の前では、令呪を使用しようと精神を集中させた瞬間、命を落とすに違いない。

 

切嗣は少しでも牽制になれば、と思い、左腕で予備兵装であるキャレコM950の引き金を引き絞る。

キャレコM950の銃口から獲物を引き裂こうと連続で銃弾が音速でアサシンに襲いかかる。

毎分700発の発射速度を誇るサブマシンガンは、

通常ならば獲物を瞬時に穴だらけに変貌させるが、アサシンは口元に嘲笑を浮かべながらそれらを回避する。 銃弾を回避しているのではない。

銃口の向きとトリガーのタイミングを読み切って左右のランダムな動きで狙いを絞らせないのだ。

敏捷性に優れるアサシンならではの戦法である。

それに、元よりなんの神秘もない通常兵装でサーヴァントを傷つけることは難しい。

だが、これはあくまで牽制と、自分にはもはや武装はないと思わせるための罠である。

弾倉を交換する余裕もなく、ただ連射するだけしかできないのでは弾切れは必然。

カチリ、と銃弾が切れた瞬間、アサシンは切嗣に襲いかかる。

肩口を貫かれ、右腕が上手く動かず、銃弾も切れた彼は無力であると判断したのだ。

 

「固有時制御―――二倍速!!」

 

だが、彼女は知らない。

銃使いにとって、利き腕だけではなくもう片腕でも銃を撃てるようにするのは、基本的なスキルだと。

切嗣は十分にアサシンを引きつけると瞬時に左手のキャレコM950を投げ捨て、コンデンターを持ちかえ、アサシンに銃口を突き付ける。

―――近距離射撃。

サブマシンガンの銃撃すら回避できるアサシンに通常の攻撃が通用するとは思えない。

ならば、切嗣は切りかかってくるアサシンをギリギリまで引きつけ、アサシンが釘剣で切りつけると同時に、急所にコンデンターの起源弾を叩きこむつもりである。

 

同時に動かない右腕は盾替わりにして、喉元と心臓をガードする。

たとえ右腕を持っていかれても、急所さえ突かれなければ何とかなる。

切嗣の肉体に刻まれた魔術刻印は術者を簡単に朽ちさせはしない。

右腕をもっていかれたとしても、最悪アインツベルンの技術により交換してしまえばいい。

 

同時に一発の銃弾が、アサシンの頭めがけて襲いかかる。

隣のビルにいた、舞弥の攻撃。

彼女は、この一瞬の攻撃を狙って今まで切嗣の支援をしなかったのである。 当然、アサシンはそれを回避するが、その瞬間、一瞬だけだが、アサシンの動きが止まる。

そして、固有時制御により倍速で動く切嗣は、その一瞬を狙って、彼女の胸部分にコンデンターの銃口を押しつける。

魔術礼装である起源弾で、霊核が納められた心臓を貫かれれば、いかにアサシンであろうと無事ではすむまい。

そして、アサシンの釘剣が切嗣の肉体を切り裂き、切嗣の指先がコンデンターの引き金を引こうとした瞬間、

彼女は何かの命令を受けたようにいきなり攻撃をやめて大きく後ろへと跳躍する。

コンデンターの引き金を引くタイミングを逃した切嗣がアサシンの不可解な行動に疑問を感じていると、彼女は言葉を放つ。

 

「衛宮切嗣。我がマスターからの伝言です。「必ず、会いに行く」と。」

それだけを言い残して、彼女はすう、と姿を消した。

 

 

 

「A……GAAAAAAAAA!!!」

 

アーチャーが去った後でもバーサーカーの猛威はやむことはなかった。

むしろ、帰ってその狂暴性を増したかのように見える。

彼は、両断された街灯を拾い上げると、彼の手から発せられる漆黒の光が、鉄柱に纏わりつき、鉄柱を完全に覆い尽くす。

さらに、右手に手にしたカラドボルグの原型も、じわじわと漆黒の光が覆い始めていた。

本来ならば、アーチャーの射出された宝具は射出された後、空間の歪みを通して再び彼の蔵に戻るのだが、バーサーカーの手にある以上それすら許されない。

片手にカラドボルグの原型を持ち、もう片手は街灯を槍のように構えながら、バーサーカーはセイバーに襲いかかろうとする。

豪快な”槍捌き”で、バーサーカーは手にした鉄柱でセイバーに向かって狂ったように襲いかかる。

恐らく、このバーサーカーの手にした武装は全て宝具としての力が与えられてしまうのだろう。

何の変哲もない鉄までもが、彼の手にかかれば、疑似宝具へと変貌するのである。

 

「ちいっ……来るがいい、バーサーカー!!」

 

だが、セイバーもさすがに最優のクラスに位置する英霊。

彼女はそれら全ての槍捌きを、華麗にして優美な剣戟により全て迎撃する。

本来ならば、ただの鉄などセイバーの剣に耐えられるはずもない。

だが、バーサーカーの魔力により疑似宝具と化したその「槍」はセイバーの攻撃にも十分耐えうるほどだった。

だが、その槍……もとい、鉄柱の攻撃はフェイント。

本命は、手にしたカラドボルグの原型の攻撃である。

胴体部へ対する強烈な突きの一撃。

これを食らえば、いかにセイバーの鎧であろうが耐えられはしないだろう。

 

「ぬ……!!」

 

とっさに、セイバーの脚が跳ね上がり、猛烈な回し蹴り……ミドルキックがバーサーカーの胴体に炸裂する。

魔力放出によりブーストされたセイバーの攻撃は、ただの蹴りや拳でも十二分な威力がある。

胴体に強烈な一撃を食らったバーサーカーは、まるでサッカーボールのように凄まじい勢いで吹き飛ばされていく。

そして、ランサーたちにとっては運悪く、それはランサーたちのいる場所だったのだ。

 

「わ、わわわ……!!」

 

「主君よ!失礼します!!」

 

とっさに、ランサーはウェイバーを引っ掴み、地面に伏せさせることにより、吹っ飛んできたバーサーカーを回避する。

あのままなら、バーサーカーに巻き込まれてウェイバーは命を落としていただろう。

凄まじい勢いで地面に叩きつけられたバーサーカーだが、鎧が傷づき、胴体部がへこんだだけで、大きなダメージは負ってはいない。

そして、土煙を巻き上げながら立ち上がると、セイバーに戦いを挑むために邪魔になる障害物……すなわち、ランサーたちに向かって襲いかかった。

 

「主君よ!お下がりください!!」

 

当然、それを座して待つランサーではない。

漆黒の嵐と化して襲い掛かるバーサーカーを迎撃するは、激しくも涼やかな猛風と化したランサーだ。

狂ったように魔槍と化した鉄柱を振りかざし、攻撃を仕掛けるバーサーカー。

ランサーは手にした必滅の黄薔薇で、バーサーカーの手にした鉄柱を迎撃する。

 

バーサーカーの手にした鉄柱はランサーの一撃をもってしても両断できない。

セイバーの一撃ですら防ぎきる疑似宝具と変貌した鉄柱は、ランサーの宝具ですら安々と受け止めるほどの硬度を有しているのだ。

 

「なるほどな。大した槍捌きだと一応は言っておこう。

だがな、バーサーカー。

槍兵である俺に槍で挑むなどと……身の程を知るがいい!!」

 

確かにバーサーカーの槍捌きは凄まじいものがある。

だが、ランサーの槍捌きはそれを遥かに凌駕していた。

ランサーが左手に持つ宝具「必滅の黄薔薇」が唸りをあげ、

襲いかかる鉄柱に、連続攻撃が叩き込まれる。

それにより、大振りでこちらを攻撃しようとしていたバーサーカーの鉄柱が大きく軌道をそれる。

その瞬間を見計らって、右手に持つランサーの宝具「破魔の紅薔薇」が唸りをあげ、バーサーカーの疑似宝具となった鉄柱を容易く両断する。

 

ランサーの魔槍、破魔の紅薔薇は対象の魔力を一時的に遮断する力を秘めている。

その能力ゆえ、バーサーカーの疑似宝具となっていた鉄柱はバーサーカーの魔力を遮断され、ただの鉄柱となって両断されたのだ。

まさしく、ランサーこそが、バーサーカーの天敵と呼べる存在なのだ。

そして、その槍捌きたるやまさしく槍の英霊。

いかにバーサーカーが猛烈で苛烈な槍捌きだろうが到底かなうはずはない。

 

「槍」を失ったバーサーカーは、左手に持っているカラドボルグの原型を振りかざしてなおもランサーに襲いかかる。

その剣捌きは槍捌きの比ではなかった。

これほどの剣の冴え。セイバーで呼ばれても何の不思議もない。

だが、彼とて三騎士の一人。

バーサーカーのクラスにあるものに敗北はできない。

 

カラドボルグの連撃を必滅の黄薔薇の柄で弾き、まるで舞を舞うように回避し、弾き返す。

そして、こちらの攻撃として、必滅の黄薔薇を大きく薙ぎ払い、続いて破魔の紅薔薇を下から突き上げる。

それを何とか回避するバーサーカーだが、大きく体勢を崩した彼に対して、

さらにランサーは、必滅の黄薔薇の石突きの部分でバーサーカーの手の甲を殴りつけ、カラドボルグの原型を地面にたたき落とす。

 

「狂犬が……。これでも食らうがいい!

《破魔の紅薔薇(ゲイ・ジャルグ)》!!」

 

武器を失ったバーサーカーに畳みかけるように、ランサーは自らの宝具を発動させる。

いかに強靭な装甲を持ち、強力な神秘を持つ鎧であっても、それが魔力で構築されている以上、

魔力を断ち切る破魔の紅薔薇の前では無力に等しい。

ランサーの破魔の紅薔薇は、バーサーカーの鎧を無視し、深々と左肩口へと突き刺さる。

だが、これだけではダメだ。

バーサーカーの鎧は魔力によって構築されているので、一瞬だけ魔力を断ち切っただけでは再び構築されるだろう。

また、マスターの魔力や回復魔術によって傷口を再生させることもできる。

そして、破魔の紅薔薇を引き抜くと同時に、ランサーはもう片方の魔槍を発動させる。

 

「《必滅の黄薔薇(ゲイ・ボウ)!!》」

 

ランサーの魔槍、必滅の黄薔薇の切っ先は、バーサーカーの鎧が修復される前に、

先ほどバーサーカーに突き刺さった破魔の紅薔薇の傷口へと寸分違わずまたしても深々と突き刺さる。

それはまさしく槍兵にしかこなせない神業。

高い敏捷性で動きまわる敵に対して、一度負わせた傷口に、再度寸分違わず槍を突き刺すなどどれほどの技量が必要なのか。

 

破魔の紅薔薇から必滅の黄薔薇へのコンボ。

これこそが、ランサーの必勝手段である。

その痛みに、悲鳴を上げながらさすがに不利を悟っていたのか、バーサーカーは霊体化して姿を消していった。

そして、そこに残るは、セイバーとランサー、そしてウェイバーのみである。

 

「さて、次は貴様だけだな。セイバー。」

 

「ええ、そうですね。ランサー。

この場で決着をつける……と言いたい所ですが、お互い万全ではないようですね。」

 

ランサーはライダーとバーサーカーという強敵相手に二連戦を行っている。

さすがにこれ以上の戦闘は無謀以外の何者でもない。

セイバーはアーチャーと戦っただけだが、マスターである切嗣の危機を感じ取っていた。

一刻も早く彼の元にいかねばならない。

(なぜランサーとバーサーカーが戦っているうちに離脱をしなかったかといえば、

彼女が離脱しようとした瞬間、二人から攻撃を仕掛けられる可能性があったからである)

 

「三騎士の一人である貴方と戦えるなど願ってもないこと。

貴殿の誇り、闘いで確かめさせてもらおう……といいたいところですが。」

 

状況は一見ではセイバーの圧倒的有利に見える。

だが、セイバーの令呪はマスターの危機を知らせていた。

ここで時間を食うわけにはいかない。

本来ならば先ほどの戦いも撤退すべきだったのだが、あのアーチャーとバーサーカーは相手では、

少しでも隙を見せた瞬間、瞬時にやられていたことは間違いない。

セイバーから放たれる清浄なる闘志。

威風堂々たる誇り高き騎士たるその姿。

その姿に、同じ騎士であるランサーは強敵と見出して思わず笑みを浮かべる。

 

「分かっている。セイバーよ。

騎士の誇りに賭けて、貴様との決着は正々堂々とつけねば俺の気がすまない。

また、いずれこの決着はつけよう。行くがいい。」

 

「感謝します。ランサー。いずれ、また。」

 

それだけいうと、セイバーは猛烈な勢いで跳躍し、主である切嗣の元へと疾走する。

あの誇り高い騎士であるランサーならば、後ろからの攻撃はないと判断したからだ。

だが、セイバーには一つ気になることがあった。

 

「ですが……バーサーカーのあの剣筋。どこかで見たような……。いえ、気のせいでしょう。」

 

その時のセイバーは気づなかった。

それは気のせいではなく、ただ単に「気づきたくなかっただけ」だということを。

 

 

 

 

 

 

―――誰もいなくなったはずの戦場。破壊され、残骸のみが横たわるその場所にチキチキと蠢く影があった。

それは、小型の異型の使い魔の一種である。

その使い魔が確保しているのは、地面に飛び散った血。

セイバー……アルトリア・ペンドラゴンの血痕である。

本来、強力な幻想種である竜の血を引くセイバーには『竜の心臓』と呼ばれる強力な魔力炉心が存在する。

ただ息をするだけで膨大な魔力を発生させるその魔力炉心の力と、その魔力を利用した強力な魔力放出により、

彼女は幾多の戦いを勝ち抜いてこれたのである。

一瞬だけだが、彼女の「剣」を使い魔の目を通してみたキャスターはすぐさまセイバーの正体に気づいたのである。

 

だが、本体ではなくエーテルで構築されたサーヴァントの体では、その魔力炉心は使用することはできない。

それでも、彼女の血はその強力な魔力炉心の一部としての力を秘めている。

もし、この血液を特殊な加工をして通常の魔術師に飲ませたならば―――1時的に魔力回路のブーストを行うことができるだろう。

だがもし、この血液を何の訓練もしていなく魔術も使えない魔力の使い方もわからないただ魔術回路をもつだけの人間に飲ませたらどうなるか?

恐らく、あまりの負荷のため魔術回路が暴走し、ニンゲンとしてのカタチすら保てないただの肉塊……簡易的な魔力炉へと変貌するだろう。

そして、それこそがキャスター……魔女メディアの狙いだった。

 

 

こんにちわ、零です。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。

後、アサシンなんですが、本当は本編のアサシンをそのまま使おうかと思ったのですが、

何か使うのが怖いな、ということでメデューサさんがアサシンになりました。

まあ、これもイレギュラーな召喚だったということで。

アサシンとして召喚されているので、ゴルゴンの属性が出ているのを表現したくて、右腕は鱗に覆われているという設定です。

後、アサシンなので、騎英の手綱がオミットされてオリジナルの宝具がついています。

 

・アサシンの新規宝具「自己封印・漆黒宮殿」

「形なき島」を覆っていた鮮血神殿の術式がアレンジされた宝具。

鮮血神殿は、形なき島を覆う大結界だったが、こちらは自分自身を覆う事によって、自分自身を外界から遮断し、姿を隠すことができる。

魔術的な光学迷彩であり、探知系の魔術なども完全にすり抜けることができるので、これを発動しているメデューサを探知するのは極めて難しい。

簡単にいうと、これを発動させることにより、気配遮断Aとほぼ同等の効果を得ることができる。

今回メデューサはライダーではなく、アサシンとして召喚されてしまったので、「騎英の手綱」はオミットされ、この宝具が付与されることになった。

 

オリジナル設定ばかりで本当にすみません。orz。

 

よろしければ感想などを送っていただけると嬉しいです。

作者が大喜びいたします。

それでは。

 

なお、これらの小説は全てフィクションであり

実在の人物、団体、法人、国家、宗教等とは一切関係有りません。

また登場する人物は全て18歳以上です。

 

*[一部修正]2話でアサシンがギルガメッシュに葬られたシーンはこちらのミスです。

申し訳ありません。orz

 

 

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