異世界帰りな最強魔女の気まぐれ観光 ~帰ってきた日本はニチアサヒロインが戦う世界でした~   作:龍翠

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壁|w・)新作です。ニチアサヒロインものを書きたくなりました。
よろしくお願いします。



ニチアサに迷い込んだ魔女さん
変身ヒロインだ!


 

 日本……だと思う公園の真ん中で、私はとても困っていた。とても、非常に困っていた。

 私の右側にいるのは、なんだろう、日曜日の朝にアニメでやってそうな、変身ヒロインっぽい女の子。ドレスみたいな衣装の子が、赤いのと青いのとで二人いる。

 赤い子は剣を持っていて、青い子は杖を持ってるね。青い子の杖の周りにはぷかぷかと水球が浮かんでいて、赤い子の剣には炎がまとわりついてる。

 いやあ、最近のおもちゃってすごいなあ!

 

 で、左側にいるのは、なんかいかにも化け物みたいなやつ。でもなんかかわいい。二メートルぐらいの高さで、消しゴムみたいな体に顔とかついてる。あの質量で襲われたら怖そうだけど。

 その消しゴムさんの隣にはもう一人、黒いマントのいかにも悪の幹部っぽいやつもいる。なんかこっちを唖然とした顔で見てるけど。

 ふむ……。ふむ。どうしようこれ。

 

 私は、えっと……。魔女、みたいなやつだ。日本から異世界に召喚されて、いろいろ魔法を研究して、どうにかこうにか戻ってきた、というところ。転移で戻ってきたら、なんかその直後に左右から攻撃をされたんだよね。

 多分だけど……。赤い子たちと消しゴムさんが戦っていて、お互いに必殺技を繰り出したとか、そんな感じだと思う。どんな確率か、そのど真ん中に割って入っちゃったのが私、というわけだ。

 うーん……。とりあえず、言いたい。

 

「いつから日本はニチアサアニメの世界になったのか」

「え、にちあ……、え?」

「ああ、ごめんごめん。気にしないでね」

 

 赤い子がすごく狼狽えてる。ごめんね、君に言ったわけじゃないから。ちょっと愚痴を言っちゃっただけだから。

 間違いなく日本のはずだし、私が知っている公園なんだけど……。こんな変身ヒロインなんていなかったはずなんだけどなあ。それとも、私が知らなかっただけで、実は日本もいろいろファンタジーやってたのかな。

 

「あー……。そこの赤い子!」

「は、はい! なんですか白いお姉さん!」

「白いお姉さん!?」

 

 えっと……。ああ、うん。確かに、私は白いお姉さんかな……。白いローブに、長い髪もいろいろあって銀色になっちゃってるし……。確かに、白いお姉さんだ。

 お姉さん……お姉さんか……。ふへ、なんかいいかも。

 

「やれ!」

 

 ふと、そんな声が聞こえてきた。左側、消しゴムさんの方。多分黒マントの人の声だと思う。

 

「あ、危ない!」

 

 そんな、赤い子の声。左側に視線を向ければ、消しゴムさんが私にその大きな腕を振ってきたところだった。

 轟音と共に私の頭にクリーンヒット! まあ、今更この程度でダメージなんて受けないわけですが。

 

「ふむ……。消しゴムさん」

「ガア!?」

「ああ、喋れないんだね。ふむふむ。まあいいけど。攻撃してきたってことは、死ぬ覚悟はあるってことだよね?」

「ガ……」

 

 返事は待たない。覚悟なんてないと言われても知ったことじゃないから。

 対象を消しゴムさんにして、軽く指を鳴らして魔法を発動。するとそれだけで、消しゴムさんは消滅した。

 

「は……?」

 

 黒マントの人が呆然としてるけど、そんなに驚くことかな。

 消しゴムさんはどうやら魔力で作られた疑似生命体だったらしい。だから、その魔法を解除した。ただそれだけだ。正直、相手になるならない以前の問題だね。

 

「あと、君たちのそれもちょっと危ないから、消しておくね」

「え……。ええ!?」

 

 赤い子の炎と青い子の水球も指を鳴らして消しておく。ちなみに別に指を鳴らす必要はないけど、かっこいいからやってる。かっこいいからという理由で何年も指パッチンを練習したからね!

 さて、と。

 

「割り込んで悪いんだけど、ちょっと帰ってもらっていいかな。どうせもう何もないでしょ?」

「な、何者だお前は! こんなことをして、ただですむと……」

「私は帰れと言ったんだけど?」

 

 軽く魔力を練り上げて黒マントの男に叩きつける。攻撃にすらならないものだけど、実力差を理解したのか黒マントの男は顔を真っ青にした。

 

「な、なんだ、これは……。ディザスター様レベルじゃないか……」

 

 ふむ……。ディザスター、ね。わりと分かりやすい名前だね。さすがニチアサアニメ! いや知らないけど!

 黒マントの男は青ざめていたもののこっちを最後に睨み付けて、そうして空間に溶けるように消えてしまった。転移魔法みたいなものかな。とりあえず座標は覚えた。後で遊びに行こっと。

 

「あ、あの……」

「おっと、ごめんね」

 

 赤い子に話しかけられて、私はすぐにそっちに向き直った。

 

「もしかしなくてもいいところだったよね? 見せ場奪っちゃったかな?」

「み、見せ場? 別にそういうのじゃないけど……」

 

 なんだろう。すごく良い子のような気がする。荒んだ心が浄化されるね! この程度で浄化される程度の黒さじゃないけど!

 

「君たちのこととか、聞いていいかな? さっきのやつのこととか、ね」

「あの……。あなたのことも、聞いていい、ですか?」

「あははー。いいよいいよ。あと敬語じゃなくていいからね」

 

 そう言ってあげると、赤い子はほっと安堵のため息をもらした。なんだか緊張していたらしい。そんな気にしなくてもいいのにね。取って食べたりはしないのに。

 もしかしたらさっきあの男にぶつけた魔力を感じ取っていたりする、かな? そうだとしたら申し訳ないけど、さすがに私も小学生を殺そうとは思わないからね。ほんとほんと。

 というわけで、お話を聞くためにちょっと移動することになった。

 

 

 

 移動した先は、赤い子の家、らしい。喫茶店らしいけど、お客さんは少ない。いくつかあるテーブル席のうち、使われているのは一つだけだった。

 赤い子に案内されて、隅っこのテーブル席を使わせてもらうことに。ここが一番目立たないんだとか。

 ちなみに、赤い子も青い子も今はすでに普通の服装になってる。やっぱり変身ヒロインだよ! なんだろう、ちょっとわくわくしてる自分がいる! 憧れだよね!

 

「あの……。まずは、自己紹介からします……ね?」

「あはは。どうぞー」

 

 敬語になっちゃうのか、なんだか少し話しづらそうだね。私としてはどっちでもいいんだけど。

 

「私は、明菜(あきな)です。えっと……。ティアフレイム、です」

「ほうほう」

 

 そう自己紹介してくれたのは、赤い子だ。今は赤いパーカーに黒いスカートといった服装。髪は赤に近いピンクのショートカットで……。なんだこの髪色。本当に日本か? ていうか地球か? 生え際から同じ色だから染めてるわけでもなさそうだし。

 

「私は、静香(しずか)です。ティアアクア、です」

「ふむふむ」

 

 青い子。今は水色のワンピースだ。髪は青くて、セミロング。やっぱり不思議な髪色だね。

 二人とも中学一年生らしい。若いっていいなあ。

 

「あと、こっちが、キュル」

「へ?」

 

 明菜ちゃんが持っていたかばんから引っ張り出したのは……犬? 子犬? いや、子猫? なんかよく分からないけど、かわいい小動物。

 これはあれか、マスコットってやつか!

 

「きゅ! キュルだきゅ! よろしくきゅ!」

「語尾がうざい」

「きゅ!?」

「ちょ……。かわいそうなので言わないであげてください! 私も思うけど!」

「明菜!?」

 

 やっぱり思うんだね。いやだって……。きゅうきゅううるさいよ。普通に話せないのかと思ってしまう。

 

「それじゃ、私だけど。私はシオン。日本から異世界に召喚されて、異世界で魔法を学び、このたびようやく日本に帰ってきた魔女です」

「…………」

「うん?」

「情報量が多い……!」

「ですよねー」

 

 私でも思うよ。情報量が多いって。

 でも仕方ないじゃん。真実なんだから。本当はもっといろいろあったけど、簡単に説明すればこうなってしまうのだ。

 

「で、明菜ちゃんたちは何やってるの? ティアフレイムとか、なに?」

「えっと……」

 

 明菜ちゃんと静香ちゃんはちょっと顔を見合わせて、拙いながらも丁寧に説明してくれた。

 半年前、この町に隕石が降り注いだらしい。隕石といってもそんな危険なものじゃなくて、キュルの世界から弾き出された魔法の石なんだとか。ティアストーンというらしい。

 その石を狙って、ディザスターを名乗る一味が日本にやってきた。ディザスターもおおやけにはしたくないのか、魔法を使って隠れながら集めていたらしい。

 石を回収しに来ていたキュルが悪い人の手に渡らないように抵抗しようとしたけど、勝ち目なんてなくて大怪我して……。そんな時に出会ったのが、魔法の適性を持つ明菜ちゃんだった。

 明菜ちゃんに事情を説明して、一際強い力を持つ魔法の石、ティアクリスタルを渡して、変身して戦うことになった。静香ちゃんはしばらく後に明菜ちゃんに協力するようになったお友だち、と。

 なるほどなるほど。

 

「いや、明菜ちゃん関係なくない? 放っておきなよ。よその世界のことだよ?」

「み、見捨てるなんてできないよ! それに、ティアストーンが全部集まったら、その力を使って地球も征服するって言ってるし!」

「ああ、なるほど。完全な無関係ではないと。やっかいだねえ」

 

 このキュルとやらの世界は何をやっているのかと言いたくなるけど……。まあ、いいか。私はそこまで首を突っ込みたくはない。

 

「ありがとう。事情は分かったよ」

「は、はい! あの、それで、シオンさんにも手伝ってほしいなって……」

「え、嫌だけど」

「即答!?」

 

 そんな、ガビーン、みたいな反応されても困る。微妙に反応が古くさい気がするよ。

 

「どうして私が協力しないといけないのかな? 確かに地球は生まれ故郷だけど、どうやらこの地球は私の知ってる地球じゃなさそうだし、助けてあげる義理はないよ」

「違う地球……?」

「あー……。気にしないで」

 

 そもそも。そもそもだ。向こうで過ごした年月を考えると、私の生きた地球に戻ってこれるわけがなかったんだ。期待していただけに、泣きそうなぐらいにショックだけど。

 でも、いいかなって。平行世界みたいな感じで似通った地球らしいから、食べ物は美味しそう。せっかくだし、あっちに帰る前に師匠へのお土産とか買って帰ろうかな。

 

「あの……!」

「ん? ああ、ごめん。お金だよね。あいにくこの世界のお金は持ってないけど……。金とかどうかな。確か日本では価値が高かったよね?」

「お金の話じゃないです!」

「おん?」

 

 あー……。どうしても私を説得したいのかな。そこまで期待されるのは悪い気はしないけど……。

 

「せめて……。せめて、敵には、なってほしくない、です……」

「へ?」

「シオンさんとは戦いたくないから……」

 

 ふむ。あれか。私が強すぎるからか。いやあ、悪いね、こんな乱入者が強くて。これでも師匠には勝てないんだけどね。

 いや……。違うか。まっすぐに私を見つめる明菜ちゃんを見る。この子は本当に、純粋に、私と戦いたくないと思ってるみたいだ。勝てる勝てないの話じゃなくて、こうして少しでも親しく会話した相手と戦いたくない。そういうことだと思う。

 あはは。甘いなあ。甘すぎる。ホットチョコにさらに砂糖をぶち込んだぐらいに甘いよ。

 

「でもまあ……。嫌いではないかな」

「え?」

「ふふ。なんでもないよ。約束してあげる。私はあなたたちの敵にはならない。味方にもならないけどね」

「……っ! はい! ありがとうございます!」

「おん」

 

 きっとこの子は主人公だね。話していて気持ちいい子は久しぶりだ。無駄に長く生きてしまったけど、こういう子と出会えると生きてて良かったと思えてしまう。

 

「それじゃあ、私は行くから。何も注文してなくて申し訳ないけど」

「あ、ケーキ注文しておいたので待ってほしい」

「いつの間に!?」

 

 静香ちゃん、会話に参加してこないなと思ったら、なんかいつの間にか注文をしていたらしい。しかも私の分も含めてだとか。

 

「いや、私はこの世界のお金を持ってないから……」

「助けてくれたお礼です!」

「いや、助けてないけど……。もしかして、私がこっちに来た時のやつ? あの消しゴムくんは君たちだけでも倒せたでしょ?」

「それでも!」

 

 おお、強情だ。この子たちは大物になる。何のと聞かれたらわかんないけど。

 でも、奢りだと言うならありがたく奢られよう。ケーキなんて久しく……本当に久しく食べてないから。

 少し待って、若い店員さんがケーキを持ってきてくれた。しかもセットなのか、カフェオレつきだ。ありがたい。

 店員さんは私に笑顔で会釈して、明菜ちゃんに言った。

 

「明菜、遊び回るのもいいけど、宿題も忘れないようにね」

「うん。お母さん」

 

 お母さん!? この店員さん、お母さん!? わっかい! めちゃくちゃ若く見えるんだけど! 大学生と言われても信じるよ!

 ていうか髪色違うんだけど! 緑色なんだけど! なんかこの世界、髪色めちゃくちゃじゃないかな!? 遺伝どこいった!

 ちょっと頭が混乱しそうになったけど、とりあえず甘いものを食べたい。というわけで、ケーキを食べよう。

 ケーキはいたって普通のショートケーキ。美味しそうな苺が一粒のっているのがいい。ちなみに私は先に苺を食べる派だ。というわけで、ぱくり。

 おお……。おお……!

 

「ぐす……。苺だ……苺だよぉ……」

「泣いた!?」

「きゅ!? 明菜、何をしたっきゅ!?」

「何もしてないよ!?」

 

 うん……何もされてない……。ただ、久しぶりに食べる苺に感動しただけだから……。

 異世界にも果物はあったけど……。品種改良って、偉大だなって思うよ……。甘くて、美味しい。素晴らしい。生きてて良かった……!

 続いて、ケーキだ。白いホイップクリームとケーキ生地を一緒に口に入れる。

 ああ……。甘い! 甘さの暴力が! 私を襲う!

 

「つ、次はなんだか震え始めてる……」

「し、シズちゃん! どうしよう! 怖い!」

「わ、わたしに言わないで……!」

 

 日本のケーキって最高だなあ!

 

「ぐす……。ごちそうさまでした……。美味しかったよ……」

「あ、いえ……。よかった、です?」

「また来る。絶対に来る。常連になる」

「あ、はい。是非……?」

 

 いやあ、本当に美味しいケーキを食べさせてもらった。これは至急お金を手に入れないといけない。とりあえず手持ちの金でも売ろうかな。いろいろ手続きが面倒そうだけど、魔法で適当に誤魔化せばいいよね。

 

「それじゃあ、ありがとう」

「は、はい! また!」

「うん。また」

 

 それじゃあ、お店を出て……。あ、その前に。

 

「帰る前に、一つだけ」

「はい?」

「敵にならないって言ったけど……。君たちが私と敵対した場合は、その限りではないからね」

 

 今のところないと思うけど、可能性がゼロとは言えないから。もしもその時は……。

 少しだけ魔力を二人にぶつける。二人は青ざめた顔で、こくこくと何度も頷いた。

 中学生を脅すなんて大人としてだめだとは思うけど、許してほしい。敵対したら、私は容赦しないと思うから。

 それじゃあ、と手を振って、今度こそ店を後にした。

 

   ・・・・・

 

「はあ……。びっくりした……」

「ん……。怖かった……」

 

 明菜と静香の二人は、椅子に深く腰掛けてため息をつきました。キュルもテーブルの上でぐったりとしています。

 二人の視線の先は、綺麗に食べ終わったお皿と飲み干されたカップが一組。先ほど出ていった少女を思い出して、明菜は少しだけ残念に思ってしまいます。

 ディザスターの幹部が呼び出した怪人との戦い。その決着間際に、あの少女は現れました。

 目映い光と共に現れた白い女の子。真っ白なローブに長い銀髪を揺らした少女で、自分たちよりも少し年上に見えました。

 そんな少女が急に現れたことに驚きましたが、何よりも驚いたのはその魔法の技巧です。

 

 怪人をどういった手段か消滅させ、さらには自分たちの魔法すら消してしまいました。しかも、指を鳴らしただけで。それだけでも自分たちよりも遙か高みにいる人だと察しがつきます。

 その上、黒マントの男に向けて放たれた魔力と、先ほど自分たちへと放たれた魔力。明らかに、自分たちよりも格上の魔女です。

 明菜たちの魔法はティアクリスタルを利用した借り物です。そこまで魔力に詳しいわけではありません。それでも、あの魔女の力は察することができました。

 自分たちが逆立ちしても勝てない、と。

 

 だからこそ味方になってくれたら心強かったのですが……。敵にはならない、と確認できただけでも十分でしょう。

 それに、と明菜は思います。あまり戦ってほしくないな、と。

 直感ではありますが、戦うことがあまり好きではなさそうだと思いました。どうしてこの世界に来たのかは分かりませんが、ただ地球に来たかった、との気持ちだけは伝わってきました。

 きっとそれは、戦うためではありません。それぐらいは分かります。

 だからきっと、これで良かったのです。あの優しい人を巻き込む必要なんてないから。

 それに。それに! 名前も聞けました! シオンさん。名前を呼び合えば、それは友だちです。次に出会うことができれば、またお喋りしてみたいと思います。

 

「ねえ、明菜」

 

 シオンさんのことを思い出してちょっとふにゃっと笑っていたら、静香が声をかけてきました。

 

「なに? どうしたの、シズちゃん」

「さっきの、シオンさんのことだけど」

「うん」

「あまり、関わらない方がいいと思う」

「え」

 

 それは、かなり衝撃的な言葉でした。まさか静香がそんなことを言うなんて。

 

「えっと……。どうして?」

「関わらない方がいい、というより、絶対に敵対しないでほしい」

「へ? それはもちろんだけど……」

 

 気持ち的にも、戦力的にも戦いたくなんてありません。けれど、静香はそういうことを言いたいわけではなさそうです。

 静香はゆっくりと息を吸って、それから言いました。

 

「あの人は……容赦しない人、だと思う」

「えっと……。敵対しちゃったら、当たり前じゃない?」

「そうじゃなくて……!」

 

 いつも冷静な静香には見られない言動に、明菜は少し戸惑ってしまいます。

 静香は気持ちを落ち着かせようと深呼吸して、もう一度言いました。

 

「あの人は、敵対したら容赦しない。私たちを容赦なく倒す……わけじゃない」

「うん?」

「殺しにくる。多分、ためらいなく、躊躇なく、容赦なく、殺す。一瞬で、希望もなく」

「…………」

 

 それは……。反論したくても、できませんでした。

 思い出すのは、怪人を一瞬で消してしまった魔法です。明菜たちには仕組みが分からなかった、不思議な魔法。

 もしもあの魔法が、自分たちに向けられたら……?

 それを想像して、明菜は怖くなってしまいました。

 

「明菜。関わらないでは言い過ぎたかもしれない。でも……」

「うん。気をつけるよ」

 

 どのように気をつければいいのか、それは分かりません。けれど、明菜はしっかりと頷きました。

 

   ・・・・・

 




壁|w・)小説家になろうの方では5話ほど先行して投稿しています。
もし続きを先に読みたいとか思っていただければ、そちらを是非是非。
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