異世界帰りな最強魔女の気まぐれ観光 ~帰ってきた日本はニチアサヒロインが戦う世界でした~ 作:龍翠
ようやくたどり着きました温泉旅館! 昔懐かしい日本家屋な旅館で、周囲は豊かな自然に囲まれてる。
旅館の横には綺麗な川が流れていて、晴れの日とかは川で水浴びをしても楽しい、とのこと。とても、いい!
旅館の裏手には露天風呂。天然温泉の露天風呂! お昼は清掃で入れないけど、チェックインの時間の後はいつでも入れる!
あと……。無駄に広い! 無駄って言ったら失礼だろうけど!
「でっかい旅館だあああ!」
以前の日本にいた時にでもこんな大きな旅館に泊まったことないよ! なんだろう、テンション上がってきた! 最高にハイってやつだ!
「しかも! ご飯はすきやき! 最高級なお肉の! すきやき! すきやきだあああ!」
「し、シズちゃん! どうしよう! 師匠が壊れた!」
「師匠、落ち着いてください。恥ずかしい、ので」
「おばか! 落ち着いてられるかってやつですよ! 早速温泉に……」
「シオンさん。まずは部屋に行こうか。荷物を置いてから、ね」
「はい」
良介さんに怒られてしまった。ごめんなさい。
「す、すごい……。師匠がすんって落ち着いた……」
「明菜のお父さん最強説?」
「さすがお父さん……!」
いやあ……。雇い主様には逆らえませんので……。私が悪いのも分かってるしね。
案内された部屋は、二階の見晴らしのいい部屋。手前と奥に二部屋あって、一番奥はみんな大好き広縁だ。このスペースが大好きです。
夜になったら旅館の人が布団を敷いてくれるらしい。明菜ちゃん一家三人、私と静香ちゃんの二人で部屋分けかなと思ったけど、明菜ちゃんも私たち側で寝るとのこと。
あと、一階には売店があって、ちょっとしたお菓子や飲み物、もちろんお酒もある。お酒、いいよね。あまり飲まないけど、たまに飲むのは好き。
「ふむ。シオンさんは飲めるのかな?」
「飲めますよ。これでもとっくに成人しているので」
「じゃあ、夜にどうかな。桐子と少し飲むよ」
「あー……」
お誘い! とても、とても楽しそうなお酒のお誘い! 乗りたい! このビックウェーブに! 乗りたい、けど……!
「ごめんなさい、遠慮しておきます」
「そっか。いや、無理強いはしないよ。ただ飲みたそうにしていたからね」
「あははー……。お酒は好きなんですよ。本当に。ただ、飲むと魔力の制御が荒くなっちゃうもので……」
これ、かなり面倒なのが、私自身はそこまで酔ったりしないこと。かなりお酒には強い方で、かなり飲んでもほろ酔い程度で二日酔いの経験もない。
ただ、魔力の制御がかなり甘くなってしまう。大雑把になるというか……。なんでもかんでも強く使ってしまうんだよね。
そういうのを説明すると、なるほどね、と良介さんも納得してくれた。
「魔法使いというのは、なかなか大変なんだね」
「いやあ……。私ほど魔力の扱いが適当になるのは珍しいらしいですけどね。それでもやっぱり乱れる人が多いらしいです」
お師匠もちょっと乱れるほどだから。お師匠のお客様については……思い出したくない。死の恐怖をあれほど感じたのはあの時ぐらいだ。しかも本人に記憶がなかったのがやばい。
ちょっとだけ昔を思い出して身震いしていると、お風呂の用意をしていた明菜ちゃんが駆け寄ってきた。
「師匠! 温泉に……。師匠、震えてますよ? 寒いんですか? それならやっぱり温泉行きましょう!」
「温泉、きっと気持ちいいですよ」
静香ちゃんも一緒に言ってくれる。ああ、本当に。この子たちは優しいなあ!
「行く! 是非行こう今すぐ行こう!」
「きゅう! 温泉、楽しみだきゅ!」
「ただしクソ虫、テメエはだめだ!」
「きゅ!?」
「当然だろう?」
ぬっと良介さんの手が伸びて、明菜ちゃんの肩にいるキュルの頭を掴んだ。良介さんの顔は……目だけが笑っていない笑顔。怖い。
「まさか、僕の娘と一緒に入るつもりだったのかい? うん?」
「そそそそそそそそんなことありませんっきゅ! 本当だきゅ! お、お酌するっきゅ!」
「ああ。是非そうしてほしいねえ。じっくりと、話を聞きたいと思っていたんだ。なあ、桐子」
「ええ、そうね。じっくり、じっくりお話ししましょう?」
「きゅ、きゅうううう……」
うん。うん。よし。
「行こうか! 二人とも!」
「え、あ、え……。は、はい!」
「いいのかな……?」
いいんです。温泉は貴い犠牲の上に成り立っているのだよ。
私たちはキュルというクソ虫を部屋に残して、温泉に向かった。さらばだクソ虫、君のことは忘れるよ。
さて。念願の温泉に来ました。
目の前にはとても広い洗い場に大浴場! まだチェックインしてすぐだからか、人数はとても少ない! ほぼ貸し切りだよ最高かな!?
そんな浴場の奥にはスライド式のドアがあって、その奥は露天風呂があった。石造りの露天風呂で、周囲は木製の壁で覆われてる。それでも空はしっかりと開放的になっていて、夜ならきっと満点の星空を眺めながら温まれると思う。
うん。うん。控えめに言って最高かな?
夜とか、せっかくだし露天風呂で星見酒でも……なんて思ってしまう。大丈夫かな? やってもいいかな? あとで旅館の人に……、いや酒はだめなんだってばちくしょう。
「さあ! 明菜ちゃん! 静香ちゃん! 温泉だ!」
「はい!」
「温泉……!」
二人も温泉は好きらしい。若いのに見所があるよ。あまり見ない広いお風呂に興奮しているだけかもしれないけど。
三人で体を洗って、いざ温泉へ。さすがにスーパー銭湯みたいなたくさんの種類があるわけじゃないけど、サウナと水風呂ぐらいはちゃんとあった。ジェットバスもあるね。素晴らしい。
とりあえず……。まずは大浴場ですよ。シンプルなのが一番だと思います。
「ふへえ……」
「気持ちいいぃ……」
「温泉……とてもいいもの……」
不思議だよね。温かいお湯に入っている、という意味だけなら家風呂と何も変わらないはずなのに、温泉というだけですごく気持ちよく感じてしまう。
はああ……来てよかった……。
「そういえば、師匠の世界には温泉ってないんですか?」
「おん……。あるよ……。ただ、魔獣とかが棲み着いてることが多いかな……」
「ああ……。それだとあまりあったまれませんね……」
「なのだよ……」
体の汚れは魔法でどうとでもなるからそこまで困らないけど、やっぱり元日本人としてはお湯に浸かりたいわけで。
私に影響されて温泉に入るようになったお師匠と一緒に、時折魔獣を追い払って温泉に入るようになった。お師匠と二人での星見酒もなかなか良いものだったよ。私の世界の話とかよく聞いてくれたからね。
壁|w・)魔の森は魔境じゃけえ……。