異世界帰りな最強魔女の気まぐれ観光 ~帰ってきた日本はニチアサヒロインが戦う世界でした~ 作:龍翠
ニチアサアニメの変身ヒロイン。いいよね。すごく憧れる。そんな子たちに出会うことができて、私はちょっぴりテンションが上がっていた。
ちょっと高いビルの屋上、その端っこに座って、私は明菜ちゃんたちのことを考えていた。
いやあ、本当にいい子たちだったよ。これぞニチアサ変身ヒロイン主人公、みたいな感じで!
汚れきった私とは違うよね! 感動した!
あの子たちにも言った通り、私は敵にも味方にもなるつもりはない。けれど、せっかくなので見学はさせてもらうつもりだ。
理由? 楽しそうだから。テレビアニメを実際に見ることができるこの感動! 最高だね!
でも。でもだ。その最高の娯楽を楽しむためには、やっぱり双方の事情を知っておきたいと思う。ファンとして当然の心理ではないでしょうか!
というわけで。
「はい、お邪魔します、と」
あの黒マントの男が使った転移魔法を解析して、こうして敵の本拠地に乗り込んでみました。
「おー……」
なんか、いかにもな悪の組織の根城だね。
真っ黒い空間に稲光が走る亜空間。その亜空間の中央に大きめの島が浮かんでる。その浮島に、城みたいな大きな建物が建っていた。
いいねえ。こてこてで最高だよ。来て良かった!
お城の前に着地して、さて、と考える。訪問者なんて想定してないだろうし、インターホンなんてないはずだ。どうやって中に入れてもらおうかな。
押し通ることも当然できるけど……。わざわざ心象を悪くする必要もない。私は話が聞きたいだけなのだから。
というわけで、とりあえずおっきなドアを叩いてみた。
「ごーめーんーくーだーさーいー!」
ドアをどんどんと叩きながら言う。反応はない。困った。非常に困った。やっぱり叩き破るか……?
わりと本気でそう考え始めたところで、ドアがゆっくりと開かれて。
「お前……どうしてここにいる……」
現れたのは、黒マントの男だった。どう見ても私を警戒してる。当たり前だね!
「やあやあ。ごめんね、お邪魔して。ちょっと話を聞きたくて来たんだよ」
「どうやってここに来た!」
「おっと、無視? ひどいなあ。どうやってって、君が使った転移魔法を解析しただけだよ?」
うわあ、驚きに目をまん丸にしてる。おもしろい。あり得ない、とかぶつぶつ言ってるけど、あり得るからこうして私はここにいるわけだよね。
「で、もう一度言うけど、話を聞きたくてね。せっかくだから、両方の話を聞いておこうかなと!」
「両方? あのガキどもの仲間というわけか……!」
「どうしてそうなる」
いや、アホなのかなこいつ。もしもあの子たちの味方をするなら、さくっとこんな城ぶち壊してるから。
黒マントの男は手の平に魔力を集めて、黒い玉を作った。魔力の塊。それをぶつけてきた。ただそれだけ。
「お前から始末してやろう!」
へえ。へえ、へえ、へえ! つまり、私とやりあうと!
「いいね、最高だよ!」
こんな門のところで戦うとか狭いよね! 君の狙い通りにはじき飛ばされてあげよう!
衝撃に合わせて後ろに下がる。お城の前は結構広い空き地だから、ここでならある程度戦っても問題ないでしょ。
さっと後ろに下がって、華麗に着地。黒マントの男もしっかり出てきた。彼の両手には、剣。いわゆる西洋の剣だ。二刀流。いいね、かっこいいね!
「この場所は闇の魔力で満ちている! 人間界のようにはいかない!」
「そっか! 楽しみだ!」
「ほざけ!」
おお、動きが速い! 単純に真っ直ぐ私に突っ込んできただけだけど、私の目では捉えられない動きだ。結構ひょろっとしていたわりにこの動き。魔力で身体能力でも上げてるのかな?
「おっと……」
適当に魔力で剣を形作って、相手の剣を受け止める。相手の動きは見えないけど、私は周囲に纏った魔力で相手の動きを感知できる。あとは魔法でオートで体が動くから、それに任せるだけ。すると簡単に相手の攻撃を受け止められるってわけだね。
まあ知っている相手には通用しない戦法なので、格下相手にしか使えないやつです。つまり何が言いたいかと言うと。
「この程度かあ」
「な……っ!?」
というわけです。
いや、分かってる。期待するのがだめだよね。だって。
私の一割程度の魔力をぶつけただけでびびる相手なんだから。
人間界だからとか闇の魔力がどうとか言ってたけど、それを含めてもその程度だ。戦いにもならない。
せめてもうちょっと工夫を見せてくれたらよかったけど……。真っ正面から来たからね……。
なんかもうまともに打ち合うのも面倒になったから、そのまま無防備で立つ。すると黒マントの男は私が諦めたと思ったのか、にやりと笑った。バカかな?
「諦めたか! ならば我らに楯突いたことを後悔するがいい!」
そうして剣を振ってきて。
私が纏う魔力に弾かれた。
「は……?」
は? じゃないが。見ての通りだが。
「君程度だと、私の魔力に弾かれて攻撃を届かせることすらできないよ」
「ふざけるな……!」
おお、連撃だ。剣を振り回して私を攻撃してる。がんばるなあ。
でも。
「うざい」
男の顔面をわしづかみにして、地面に叩きつけた。魔力で強化したから、結構痛いと思う。
男は意識こそ手放さなかったものの、その場で痛みに喘いでる。まあ、しばらくは動けないでしょ。
「さて……」
そんな男の頭を踏みつけた。
「ぐがあ!?」
「私は話をしたいだけなんだよね。ねえ、ディザスターさん、だっけ? どうせ見てるでしょ? お話ししようよ。でないと……踏み潰しちゃうよ?」
ゆっくりと、足に力を入れていく。男が悲鳴を上げるが、無視だ。私は敵対する者に容赦はしない。ディザスターとやらが本当に話をするつもりがないのなら……。やるよ。当然。
幸い、こんなところでこの男を失いたくなかったのか、門が大きく開かれた。どうやら入っていいらしい。助かるね。
「悪いね。案内は誰がしてくれるの?」
「うぐぐ……。ディザスター様が認めたのなら……僕が案内してやる……」
「おん。そうなんだね。じゃあ頼むよ」
足をどけて、軽く回復魔法をかけてあげる。黒マントの男はゆっくりと立ち上がって、私を睨み付けてきた。そんなに睨まなくてもいいじゃないか。
「ところで、君が案内していいの? 弱いものに用はないって殺されたりしない?」
「ふん……。その時は、受け入れる。負けたことは事実だ……」
「おん。案外しっかりとした忠誠心があるんだね」
もっと恐怖政治みたいなものかと思ってたけど……。慕われてるのかな? ちょっと会うのが楽しみだ。
わくわくしながら、私は黒マントの男の後に続いて城に入った。
壁|w・)おじゃましまーす。