異世界帰りな最強魔女の気まぐれ観光 ~帰ってきた日本はニチアサヒロインが戦う世界でした~ 作:龍翠
お城はなんというか……。普通だった。
いや、ね。悪の組織の根城だよ? もっとこう、トラップとか、怪人とか、いっぱいあると思ってたんだよ。
普通のお城だね! アニメとかで見るような、豪華絢爛なお城。いや、調度品とかそういった類いはないけど、それでも普通のお城に見える。
つまり、何が言いたいかと言うと。
「つまんない」
「お前は何を想像していたんだ……」
めちゃくちゃ呆れられてしまった。
てくてく階段を上って、最上階へ。そうしてたどり着いたのは、謁見の間、みたいな部屋の前。なんだか大きなドアだ。ドアの両隣には、骸骨の兵士さん。悪の組織の根城っぽい! 写真とか撮りたいところだよ!
「無礼を働くなよ」
「おっけー! まかせて!」
「…………」
めちゃくちゃ胡散臭いものを見るような目で見られました。ひどくない?
ドアを開けてもらって、部屋の中へ。部屋の中は、まさに謁見の間といった部屋だった。真っ赤な絨毯がまっすぐに敷かれていて、その奥が少し段差になっている。その段差の上に大きな椅子があって、そこに男が一人座っていた。
ぱっと見は優男にも見える、まだ若い男だ。二十代前半ぐらいだと思う。真っ黒な髪に漆黒の鎧を着ていた。全体的に黒い。さすが悪い組織。
でも、なんだろう。その顔にはちょっと見覚えがあるような、ないような……。ちょっと分からないね。
「お前が、我らの邪魔をする者か」
声は……見た目によらず、結構低い声だ。その声音から怒りを感じ取れる。後ろ、案内してくれた黒マントの男は顔を青くして沈黙してしまってる。
なるほどなるほど……。結構な魔力だ。少なくとも、明菜ちゃんたちではまだ勝てないと思う。
そんな彼、ディザスターは私を見て、少しだけ驚いた……ように見えた。無表情だから分からないけど。
「ここに何の用で来た。異界の魔女よ」
「大した用事じゃないよ。ただ、ちょっと話を聞いてみたかっただけ」
「話だと?」
「そう。どうしてティアストーンを集めているのかなって」
力を求める、だけなら正直必要ないと思う。このディザスターという男、私という異分子さえいなければ、現時点では最強のはずだから。
ディザスターは私をしばらく睨み付けて、嘲るように鼻で笑った。ちょっとむかつくやつだな。怒るぞこのやろう。
「魔力が足りないためだ」
「ふむ……。まだ足りないの? かなり強い魔力を持っているみたいだけど」
「ああ、足りないなあ……。足りないとも」
「何に使うのかな?」
「それを貴様に話してやる義理はない」
それもそうだ。私はあくまで部外者だ。
「それとも……。理由を話せば、我らに協力するとでも?」
「んー……。それはない、かなあ……」
例え目的が世界平和とか、世界を救うとか、そんな理由であったとしても。私はどちらの陣営にも協力しない。
だって、私は眺めたいから。このニチアサっぽい世界を!
十分に楽しむために悪役の目的も知りたかったけど、話してくれないのなら仕方ない。ここは素直に諦めるしかないね。力尽くで話を聞く、なんてしたら、それこそ明菜ちゃんたちに協力するようなものだし。
「いいよ。じゃあ私は帰るから……」
「待て」
「おん? もしかして……。このまま無事に帰られると思うなよ展開ですか!?」
「どうして嬉しそうなんだお前は」
黒マントくんの呟きが聞こえてくるけど、無視だ無視。
私はどちらの陣営に立つ気もない。でも、私に害意を抱くなら、それはまた別の問題だ。私は敵対する者に容赦はしない。その時は組織ごとぶっ壊してやる。
ニチアサ世界を楽しむことはできなくなるけど、それはそれ、だからね。その時はおとなしく日本のアニメやご飯を楽しむとするだけ。無事に帰れると思うなよ展開はそれはそれで一度は経験してみたいから。
わくわくして待っていたら、ディザスターは大きなため息をついた。
「違う。お前の質問に答えたのだ。俺の質問にも答えてもらおう」
「ええ……。理由すら教えてくれなかったのに……」
「黙れ。簡単なことだ」
「ふむ」
「貴様……名前は何だ?」
「…………。名前?」
名前。名前。名前!?
え、なんでこいつ、私の名前に興味があるの? まさか……。まさか、まさか!?
「わ、私の体に興味があるの!? いけない、私には心に決めた人が!」
「…………。うわあ……」
「あ、待ってガチのどん引きは心にくるから」
今まで威厳たっぷりだった悪の組織のボスさんが、なんかすっごい顔を引きつらせたんだけど。心の底から出たようなうわあ、だったんだけど。ちょっと、いやかなり悲しい。ごめんて。
「名前ぐらいいいけどさ。シオンだよ。これでいい?」
「…………。そう、か……」
「ん……? 本当に、私の体に興味があるとかじゃないんだよね……?」
「そんなわけがないだろう気持ち悪い」
「ひどくない!? そこまで言う!?」
これでも体は十代後半とかそれぐらいにしてあるんだぞ! ぴちぴちだぞ! 実年齢はごにょごにょだけどさ!
「不愉快だ! 帰る!」
「ああ、帰れ帰れ」
ふんときびすを返して出口に向かう。そうして部屋を出て、お城を出て……。
「いつまでついて来るの?」
「お前が……何もしないか見張っているんだ。怒っているようだしな」
「ああ……」
なんかついてきた黒マントくんに話しかけたら、そう言われてしまった。勘違いさせちゃったのか。ちょっと反省だ。
「いや、まあ実際はそこまで怒ってないよ。そしてそれは多分あっちも分かってるんじゃないかな」
「そうなのか?」
「そうなのです。多分だけど」
「多分なのか……」
なんとなくだよ。なんとなく。だって結局は赤の他人。あいつの心なんて私には分からないから。
「まあ、気にしないでよ。それじゃあ私は帰るから」
「ああ、二度と来るな。二度とその姿を見せるな」
「あっはっは」
約束はできないかな!
私は笑い飛ばしながら、転移魔法でその場から姿を消した。
さて……。それじゃあ、お金稼ぎと拠点探し、だね!
壁|w・)次回はディザスターさん視点とによによ魔女さん。