異世界帰りな最強魔女の気まぐれ観光 ~帰ってきた日本はニチアサヒロインが戦う世界でした~ 作:龍翠
「何の謝罪?」
「あなたを……助けられなかった。見捨ててしまった」
「えっと……? もしかして、最初の?」
「そう」
「ええ……」
もしかして、ずっと気にしてたのかな。私はそんなこと考えもしなかったけど。
「あの魔の森に追放されたって聞いて、一度は行ったんだ。でも、あの魔獣たちを見て、これは生き残れないなって思ってしまった。あなたはまだ、生きていたはずなのに」
「いやあ……。あれはむしろ、生き残ってると思う方がおかしいから。気にしなくても」
「それでも! それでも、ずっと謝りたかった。見捨ててしまったことを。だから……。申し訳ありませんでした」
「…………」
本当に、私としてはどうでもよかったんだけど……。でも、ずっと気にしていたのなら、謝罪は受け取っておいた方がいいか。これ以上気にしてほしくないから。
「いいよ。許す。ぶっちゃけ本当に気にしてないけど、その謝罪を受け取ります」
「あはは……。ありがとう」
うん。ということで、これで昔のわだかまりは終わりだ。ぶっちゃけ私は当時のことはもうぼんやりとしか覚えてないけど、これで勇者くんが満足するのなら良しとしよう。
「それじゃ、思い出話はここまでにしておこっか」
「そうですか。それでは……」
「うん。ここからは、魂魄の魔女シオンとして」
「ディザスター首領として」
話を、していこう。
「なんて言ってみたけど、ぶっちゃけそこまで重要でもないです」
「え?」
「私の知的好奇心を満たすためのものさ」
そこまで重要じゃない、どころか、せっかくだし聞いてみよう程度のものだから。
そう言うと、勇者くんはちょっと呆れてしまったようだった。
「まあ、せっかくだしね。というわけで、聞きたいんだけど」
「よかろう」
「ぶはっ! キャラは戻すんだ! いいよかっこいいよそれでいこうあはははは!」
「やめてくれないかな……!?」
いやだって! あの頃の勇者くんはもっとおとなしい子だったはずだからさあ! それが、よかろう、だよ! 悪の組織の首領だよ!
「私を……笑い死にさせるつもりか……!」
「違うよ!?」
「あっはっは!」
いやあ、最高だよ! うん。満足した。
「それで話だけど」
「急に落ち着くね……。んんっ。なんだ?」
「ぶふっ……。えっとね。なんかティアストーンの回収に失敗しまくってるけど、大丈夫なの?」
何の計画かは知らないけど、ほとんど負けてる現状だと絶対に足りないと思うんだけどね。
勇者くんは少し考えて、そして教えてくれた。
「今となっては必要ないからだ」
「必要ない?」
「そうだ。代わりのものが手に入るようになった。だが、そのためには、しっかりと戦ってもらわないといけないのでな。続けてもらっている。手に入れられればそれが一番だからな」
「へえ……。代わりのもの、ね」
ティアストーンは手に入ればラッキー、みたいな感じ、かな。なるほどねえ。
「まあ、なんとなく分かったよ」
「ほう?」
「残留した魔力を利用してるわけだ。あの子たち、その辺りは無頓着だから」
どうしてキャスティアが協力しないのかなと思っていたけど、多分キャスティアはその残留した魔力をこっそり集めてるんだろうね。なるほどなあ。
それでもあの子たちを倒してしまった方が手っ取り早いと思うけど……。それも、何かあるのかな。
まあ、いっか。うん。全部聞いてしまうと楽しみがなくなりそうだからね!
「ありがと。まだ知りたいことはあるけど、ネタバレしすぎると私も楽しみがなくなっちゃうからね。これだけにしとくよ」
「楽しみ、か……。やはり、ずいぶんと変わってしまったのだな……。以前のあなたなら、我らに怒りを覚えていたはずだろうに」
「おん。当然じゃないか。あれから何百年も経ってるんだ。魔女として、人だって殺してる。今の私は、こうだよ」
「ああ……。そうか。そう、か……」
そんな悲しそうな顔をされても困るんだけどねえ。私自身はわりと楽しく生きてるし、これで良かったと思ってるから。
「それじゃあ、帰るよ」
「うむ。ああ、そうだ。ティアフレイムどもに伝えてほしい。近々、俺が出ると」
「おん。いいよ。伝えておこう」
つまり、それが最終決戦ってわけだね。集めてる魔力もそれで足りてしまうということかな。んふふ。何をするのか、どうなるのか、とても楽しみだ。
「魔女殿」
「おん?」
「もう少し……もう少しだ。解放してみせる」
「……? まあ、うん……? 楽しみにしておくよ」
何から解放なのか全くわからん。わからんけど……期待はしておこうかな!
勇者くんに軽く手を振って、私はその場を後にした。ああ、楽しみだなあ!
さて。それはそれとして。どうしよう。
「信じてたのに……!」
メルトがめっちゃ落ち込んでる。
「あっはっは。ごめんて」
「友だちだと……思っていたのに……!」
「あっはっはっは! いや悪かったと思ってるよ。ほんとほんと」
ディザスターたちの城の前。案内役としてメルトにここまで送ってもらったんだけど、ここまで来たところでメルトにめちゃくちゃ文句を言われてしまった。
いや、言われるようなことをしたという自覚はあるけどね。本当に申し訳ない。
メルトはもうすごく泣きそうな顔になってしまってる。まさかここまで心を許してくれていたとは思わなかった。さすがにちょっぴり罪悪感を覚えるよ。
「まあ、あれだよ。別に友だちのままでもいいんじゃないかな?」
「何を……! あんたは、敵だろう!」
「いんや? 敵じゃないよ」
確かに明菜ちゃんたちにいろいろ教えてはいるけれど、それでも私はあくまで中立だ。あの子たちが危なくなっても助けるつもりはないし、その逆もしかり。
「愚痴を聞くぐらいなら今後も付き合ってあげるよ」
解決策を提示する、なんてことはできないけどね。それでも、誰かに言うことで楽になることはたくさんあると思うから。
メルトはなんだか複雑そうな顔になっていたけど、やがて小さく首を振った。だめだ、と。
「おん。どうして?」
「そんなの……。ディザスター様が許してくれるはずがない……」
「いやいや。案外大丈夫だと思うよ」
そこまで狭量じゃないはずだ。話せばきっと分かってくれるさ。
「それに、私がさっきディザスターと話をしても、特に争うこともなくこうして出てきてるでしょ? 別に私と仲良くしたからって怒られたりしないよ」
「…………。本当に?」
「おん。不安ならあとでディザスター本人に聞いてみるといいよ」
くだらない質問をするな、なんて怒られたりはしないはずだ。だって、勇者くんだからね。何を思ってこんなことをしているかは分からないけど、あの子は根は善人だと思うから。
人はそう簡単に変わらないのだ。私みたいに数百年生きたならともかく、転生をしているだけならね。
「聞いてみる……」
「そうしなそうしな」
「あとで……。また、連絡する」
「んふふ。待ってるよ」
なんだかんだとこの子と話すのは私も嫌いじゃないからね。愚痴を聞くだけ、というのも悪くないものさ。私に何も責任がないからだろうけど!
聞いてくる、と城の中へと戻っていくメルトを見送って、私はその場を後にした。明菜ちゃんたちにもうすぐ最終決戦だって教えてあげないとね。
壁|w・)なんか解放されるらしいですよ。