異世界帰りな最強魔女の気まぐれ観光 ~帰ってきた日本はニチアサヒロインが戦う世界でした~ 作:龍翠
「ちなみに、こんなこともできるよ」
そう言って、指を鳴らす。なお指ぱっちんできないので魔法でそれっぽく音を鳴らしました。
そうして、その直後。
「魔法が……!?」
「ばかな、どうなって……!」
勇者くんたちは魔法を、というより魔力を使えなくなった。正確に言えば、すごく弱くなった、かな?
魔力の支配。ただそれだけ。周辺の魔力も扱ってるみたいだったからね。こうして制限させてもらった。この先は自分自身の魔力しか使えないわけだ。
「ん……。まあ、さすがにかわいそうか。やめとこ」
支配解除。いやさすがに、自由に魔法を使えないのはかわいそうかなって。魔法が楽しいのって、自由に使えるからだし。
「貴様……! 余裕のつもりか!」
「だから余裕だって言ってんだろ阿呆。悔しいならもっと死にものぐるいになれよ」
おっと、汚い言葉が出てしまった。気をつけないと。
勇者くんは忌々しげに私を睨んで……。そして、両手を上げた。降参、じゃない。魔力のうねりが見える。
「あ、あわわわわ……」
「こんなやつを相手に……私たちは、戦っていたの……?」
明菜ちゃんたちが怯えちゃってる。んふふ。かわいいね。まだ子供なんだから、それぐらいでいいんだよ。
「俺の……切り札を、見せてやる……!」
「おん。楽しみだね」
「ほざけ!」
勇者くんが長い詠唱を始める。長いので割愛します。ぱちん、とね。
「開け! 終焉の扉!」
上空に大きな穴が出現した。穴の先は宇宙のようにも見える。穴の直径は軽く百メートルはあるね。なかなかだ。
そんな穴から、巨大な岩石が落ちてきた。
「ほほう。隕石を落とす魔法か。分かりやすく強力な魔法だね」
シンプル。でもだからこそ強い。これなら私の結界も破れるかもね。多分だけど。
「言ってる場合ですか!?」
「い、隕石が! 恐竜が絶滅しちゃう!」
「落ち着いてシズちゃん! 恐竜はとっくに絶滅してるよ!」
後ろも大混乱だね!
「終わりだ! ラグナロク!」
おお! 魔法名がかっこいい! 少年してるなあ!
さて。さすがに私も無視はできないかなって。
「ズドン、とね」
指先から魔法を射出。レーザーみたいな白い光の魔法。その魔法は隕石に当たると、粉々に打ち砕いた。さらに極小のブラックホールのようなものが出現して砕かれた岩も呑み込んでしまう。全て呑み込んで、そのブラックホールも消失した。
「まあ、こんなもんでしょ」
「…………」
勇者くんが呆然としてる。いや、勇者くんだけじゃないね。明菜ちゃんたちもメルトたちもだ。私がまともな攻撃魔法を見せるのは初めてだったかな? こんなもんですよ、ふふん。
「さてさて。次の魔法は何かな? 後悔しないように、全力で来なよ。死んでから後悔なんてできな……、いやそうでもないかな。こうして転生した実例があるわけだし」
まあでも、どうせなら後悔せずにしっかりやりきってほしいよね。まだ実は手段があった、とか後で言われても、あとから蘇生とかできないわけだし。
勇者くんの反応を待っていたんだけど……。ただただ呆然として立ち尽くしていた。
「あー……。戦意喪失ってやつかな」
「…………」
「マジかあ。もうちょっと頑張ってくれるかなと思ったんだけどなあ」
いや、私も痛いのが好きってわけじゃないから、これで終わるならいいんだけどね。うん。でもちょっぴり不完全燃焼です。
どうしようかな。このままぼけっとするわけにもいかないけど……。
そんなことを考えていたら、キャスティアが勇者くんに歩み寄った。
「勇者様」
「…………」
「ごめんなさい。全然気付かなくて……。私が、真っ先に気付くべきだったのに……」
「何を……言っている……?」
「本当に、ごめんなさい。ツルギ様」
「……っ!?」
勇者くんが目を見開いた。キャスティアをじっと凝視してる。あり得ないものを見るような目で。キャスティアはそんな勇者くんを、優しく微笑みながら抱きしめた。
「孤独にしてごめんなさい。追い詰められるまで放っておいて、ごめんなさい。遅くなりましたけど、また一緒にいますから……」
「まさか……。ティーネ、なのか……?」
「はい……!」
たしか、ツルギは勇者くんの名前だったかな。ティーネがキャスティアの向こうでの名前だ。うろ覚えだけど、ね。
「まさか……。こんなことがあるなんて……。俺は、もうずっと一人だと思っていたのに……」
「そんなことは、もうさせません。私が一緒にいます。改めて、支えます。だから、もうやめましょう?」
「やめる……? 復讐を……?」
「はい……。復讐をしても、ツルギ様の故郷には戻れません。ですから、どうか……。また、私と一緒に、平和に過ごしましょう。悪意を向けられない場所で、静かに。復讐なんてすれば、きっと心穏やかに過ごすことはできなくなりますから」
「…………。ああ……。そうか、そうだな……」
ふむ。ふむ。なるほど。
かんどうてきだなあ。すばらしいなあ。これでまるくおさまって、めでたしめでたしだなあ。
「リッパー。メルト。あなたたちにも、迷惑をかけました。一緒に行きますか?」
「は、はい! もちろんです!」
「ディザスター様に拾われた命だからね。あたしは、ディザスター様に尽くすよ」
「ふふ。ありがとうございます。誰も知らない世界に行くとしましょう」
あくのそしきが、いなくなって、めでたしめでたし。
「もしかして……。戦いが終わるの……?」
「本当に……?」
明菜ちゃんたちも安心してるね。うん。
でも。
「いや逃がすわけないだろうがバカかよ」
勇者くんの胸を、私の右手が貫いた。
壁|w・)魔女さんは人の心なんてどっかにポイしてるからね、仕方ないね。