帰れない人を拾った話   作:ruae

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気晴らしで女性型になった宇宙人の話

気晴らしで女性型になった宇宙人の話

 

 宇宙人が気晴らしをする、という事実は、

 あまり歓迎すべきものではない。

 

 それに気づいたのは、金曜の夕方だった。

 研究室のドアが開いて、自分の知らない女性が入ってきた。

 白衣を着ているがサイズが合っていない。

 なのに、妙に似合っている。

 いや、なんかやたら着慣れている感が強い。

 

「やあ」

 声を聞いた瞬間、俺は理解した。

 理解したくなかったんだけど理解してしまった。

「……なんで女性になっているんすか」

「まぁ、気分転換だね」

 彼女――いや、彼――は即答した。

 

 見た目は二十代半ばくらいだろうか。

 黒髪、眼鏡、知的そうな顔立ち。

 研究者が一番警戒を解くタイプの外見だ、俺がそうだから間違い無い。

 あの外国人顔のイケメンフェイスが、こうも理知的で聡明な女性になるのか。

 ……最悪である。

 どう対応したらいいのか、まったく分からない。

 

「以前の一件で少し思考効率が落ちていてね、たまにはこういった催しも良いものだろう」

「失恋のせいですか、っていうか体を借りているとか言ってた割に容姿どころか性別まで変更可能なんですね」

「正直性別なんて魂のありかた次第だよ、君たちだって肉体と精神の性が一致しないことぐらいよくあることなんだろう?」

「また反応し辛いこと言いますね……ノーコメントで」

「見た目は君の好みだろう?造形の方向性は例の彼女と同じだしね」

 

 そこに図ったようなタイミングで例の彼女こと後輩が戻ってきた。

 狙ってただろ、コイツ

 

「お疲れ様でーす……え、どちらさまでしょうか?」

俺が答える前に、女性型宇宙人が一歩前に出た。

「初めまして。短期滞在の研究員です」

流れるような嘘、回答決め打ちしてたな?

「へぇ……」

 後輩は彼女を見て、少し目を輝かせた。

 ホントやめてほしい。

 

「よろしくお願いします!」

「こちらこそ。ぜひ仲良くしてほしいところですね」

 

 やめろ

 

 

 

 三人でコーヒーを飲む流れになった。

 なんかもうめんどくせぇから巻き込まないでほしい。

 

「その眼鏡、似合ってますね」

 後輩が言う。

「ありがとうございます。」

 ニコニコと愛想をふりまく美人系宇宙人は満足そうだった。

「やっぱりアンダーリムって理系って感じしますねー」

 

 俺は胃のあたりを押さえた。

 よく聞くお薬だしてください……

 

「なんかやたらと仲が良さそうなんですけど、ぶっちゃけ先輩とはどういう関係なんですか?」

 またいらんことを後輩が聞く。

 もうやめてよ……

 

「彼は――」

 一瞬だけ言葉を切った。

「私の協力者ですね。いろいろとお世話になっています。」

 

 お世話しているのは実際嘘ではない、同居中してますし。

 後輩は俺を見て、ニヤニヤと笑った。

「へぇ、色々とですか」

 ほら見ろこうなる……

 

 

 

 その日の帰り、俺は抗議した。

 

「なんでわざわざ、そんな見た目にしたんですか」

「何か不都合が?」

「いや、見た目が良いのは認めます。なんだったらわりと研究所じゃ評判が良かったのも認めますが、まぁ色々と不都合ですね」

 

 

宇宙人は少し考えて言った。

「安心しろ。君の後輩は私を恋愛対象としては見ていないよ、興味深そうではあったけれど」

「……アイツはまぁノーマル自称してますしそうなんでしょうけど」

「視線と呼吸、表情の変化から簡単に読み取れる。まぁやろうと思えば思考を読めるが手間がかかる、面倒だしね」

「思考盗聴は勘弁してください……」

 

 アカン、アルミホイル家にあったかな……

 

「だが、君の方は違うね。私に興味津々なのが良くわかるよ、読まなくても丸わかりだ」

「待ってください」

「君の視線が物語っている。見すぎだよ、もろバレってやつさ」

「……それはそうですけどね!」

 

 宇宙人は首を傾げた。

 クッソ、男性型の時もそうだったが女性型は本当に無駄に見た目がいいなコイツ……いちいち破壊力が高い。

 

「この形態は不要だったかな?君の視線を追う限り、予測は概ね正しかったと思うのだけど。」

「不要っていうか、こっちが気に入ると思って作ってくるのやめてくださいよ……困ります。」

 

 数秒の沈黙。

 宇宙人は少しだけ表情を崩した。

「面白いな」

「何がです?」

「いやなに、ただの暇つぶしだしね?こちらの事情を知っているモノにしかこんなことは出来ないからね」

 

 遊んでるだけじゃねーか、マジで暇つぶしだったのかよ。

 なんとか、こう家でやるだけとかにできないですかねぇ……

 

 

 

 

 翌日、宇宙人は元の姿に戻った。

 帰宅後、まだ女性型のままいつもの様にごろごろしているのを見て

 そのままでも良いんじゃないかな……なんて思っていたのに

 もちろん口には出さなかったが

 何事もなかったように元の姿に戻ってしまった、むさくるしい……

 

 先日からもうずっとにやにやしている後輩が絡んできた。

「昨日の人、もう?」

「実際短期赴任って話だったからね。会えなかった人も結構いたし」

「研究職で在席期間短期前提って珍しいですよね。残念、ちょっと素敵な方でしたのにねー」

 もったいなかったなー、先輩チャンスだったのになんて笑いながら去っていく。

 こいつ煽るだけ煽って帰ってきやがった。

 ……まぁ宇宙人と同棲している身としては色々面倒なことになる前にもどってよかったと考えるべきなのかな……

 

 宇宙人は宇宙人で

「やはり、女性型は効率が悪い、君の処理能力が落ちる」

「……でしょうね、色々と対応に困りますから」

「それだけではない気もするがね」

 

 俺はため息をついた。

「次やるなら事前に言ってください。こちらもレジャーとしてみるならまぁ楽しめますしね。」

 心の準備が必要なんですよ。

「事前申告、レジャーねぇ。検討するよ」

 

 

 どうせまた黙ってやるなコイツ。。

 こちらの利益を最大化するにはどうすべきか、仕事以外でめったに働かない知恵をフル回転させ

 宇宙人とのなんだかとてもくだらない交渉が始まった。




あと少しだけ書けそう
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