スカベンジリサイクル……これは公的な記録にあるスカベンジャーとリサイクラーというシステムの複合能力と思われる。
スカベンジャーは死体やゴミから有用な物質や資源を手に入れる能力。
リサイクラーは既存の道具を分解したり別の用途の道具に組み替える能力。
これだけ効くと2つのシステムを使えるすごい能力に聞こえるけど、俺のスカベンジリサイクルはこれらのシステムの能力を
なぜそんな名前になったというとシステムは使い方しか分からないので本人が名付けることが多く、俺は面倒くさかったので似たようなシステムを数珠つなぎに名付けた結果こうなった。
ゴミ処理が出来てそれを資源に使って戦うシステムだったのでこんな名前になり、そしてハローワークでシステムの能力を登録をしたら、ある自治体がこの死体の山脈の処理に俺を雇ったというわけだ。
「ここは元々景観も良く程よく波が来るのでサーファーや海遊びに人気の場所だっんですが……2つのダンジョンに1つのゲートがここの海岸線に集中して出現しましてね……結局異界橋頭堡が近場に3つもあればお互いが刺激しあって全部が大氾濫をしたんです」
大氾濫とは異界橋頭堡にいるモンスターとかいわれている生物達が地球側に流入してくる現象である。
大氾濫なら少なくとも数百万から数千万のモンスターがこの海岸線で溢れかえった筈だから、それが3つともなればこんな死体の山脈も致し方ないか。
「貴重な資源となる魔石や特定の部位ならともかく死体はいつかは腐りますし、異界橋頭堡が全て攻略されて封鎖するまで3年かかったお陰でこのような惨状になりまして」
一緒に同行しているあの時の行政の人も俺と同じガスマスクをつけてここの査察に足を運んでいるが、こんな場所の監督とか可哀想すぎる。
山脈を作る死体は3つの異界橋頭堡から出てきたモンスターの特徴がよく出ていた。
魚系、虫系、海洋生物系。
魚人みたいな奴や体長一メートルはあるフナムシ、3メートルクラスのチョウチンアンコウとかまんま化け物みたいにデカい双頭のサメ等々……殆ど腐っているが虫系は腐敗がそこまで進んでないので死体の七割は虫系が多い。
さて……ガスと腐敗臭にまみれたここでオッサンと二人でゴミ処理なんだが早速システムを使っていく。
ボコン!
スカベンジリサイクルの能力の1つである【混沌穴】を起動すると俺の目の前で直径1メートル位の円形に砂浜が10センチ程凹み、その凹みに僅かに青白く光る液体が満たされていく。
端から見ると僅かに青白く光る水溜りである。
「これがシステムの力ですか……気味の悪い水溜りにしか見えませんが」
「まあ見てくれはアレですけどね……よっと」
取り敢えず手近の死体をその水溜りに放り込むとシュワシュワと泡立ちながら死体が分解されていく。
分解スピードはかなり遅く、重さ換算でいうと一キロを分解するのに一時間かかる計算である。
「やはり聞いていた通り遅いですが分解後に何かしらの有毒物質が出ないようですね」
「毒だろうと核汚染物質だろうと完全に分解するらしいですから……おお!」
「どうしました?」
嬉しそうな声を上げた俺にオッサンが顔を向けてくる。ガスマスクつけてるんで表情はわからないが。
「色んなゴミをどんだけ入れても増えなかったのにシステムのリソースポイントってやつが増えてます! これで使えなかった機能が使えるようになるな……やっぱ異界橋頭堡由来じゃないとポイントは貰えないのか」
「レベルアップするシステムだったんですか?……これは思った以上に期待できそうです」
「そう言えば真鍋さんのシステムもレベルアップするタイプでしたっけ?」
「環境順応というシステムですね。過酷な環境にいるとその環境に適応した身体に進化するシステムです。」
公務員である真鍋さんは周囲を警戒しながら重いため息を吐いた。
「普通はこんな場所に人をやるなんてあり得ないですけど、私は過酷な環境に身を置けば置くほど強くなるので上が率先して私をこういう場所に派遣するんですよね」
「なんという環境、ブラックを超えてダークネスですね」
「良くも悪くも環境順応のお陰で体も心もピンピンして仕事が出来るし、こういう場所への派遣の危険手当はガッチリもぎ取ってるので文句は言いませんけど」
「強かだなー」
社畜を生み出す悪夢のシステムにしか聞こえんぞ?
混沌穴の分解スピードは一時間に一キロ程度とかなり遅いが、リソースポイントは5秒毎に1ポイント入ってきてる。そのポイントをシステムに割り振ってレベルアップしたり機能拡張をするのがスカベンジリサイクルの基本運用になる。
取り敢えず俺と真鍋さんは混沌穴に入るだけ死体を持ってきたシャベルで死体をほおり込んで小休止だ。
「3つの異界橋頭堡が無くなって1週間ですけど、この辺りの地価は3年で当時の百分の一以下まで大暴落して少なくない不動産業者が首を吊ったなんて聞きます……できる限り早く死体の処理をしろと行政側は駆けずり回ってたんですが、そういったシステムの使い手はどこも引っ張りだこですからこうして青田刈りじみた事をして貴方を雇った次第なんです」
「普通は焼却処分とか物資輸送系のシステム使いが雇われるじゃ?」
「ここを処理できるレベルの人は既にほかの行政や企業に囲われてますし、うちの予算じゃとてもとても……。貴方の能力はとてもこんな量の死体処理に使えないとデータベースに載ってましたけど、藁にも縋る思いで求人を出した次第なんです」
住居と3食飯付きの住み込みで日当五千円+死体とゴミ処理を1キロ10円の歩合でつくこの仕事は中卒施設育ちの俺にとって食い扶持とシステムの成長を行えるいい求人だった。
まあこれぐらいしか
朝からガスマスクつけて死体と格闘する仕事がまともとは言いたくないが……。
ガスマスクのフォルターを2時間ごとに交換しながら混沌穴に少しでも隙間が出来たら死体をギチギチに詰め、昼は真鍋さんと二人で現場から自転車で移動して二人とも別々の仮設宿舎で体をよく洗ってまた合流し、近くの食堂で飯を食う。
「まだ体に匂いが残ってる気がする」
「あれだけ腐敗した死体の中にいれば鼻だって馬鹿になりますよ」
カツカレーを食べる俺と肉野菜定食を食う真鍋さん。食費は朝に纏めて三千円真鍋さんから貰うのでそれで一日を過ごす計算である。
カツカレーを食っている俺は視界にシステムのメニュー画面を出現させる。
このメニュー画面みたいなものもシステム毎に表示がバラバラだし、個人毎に書式や言語やインターフェースに違いが出るのが面白いところだと思う。
ゲームなら統一しろとクレームものだがその人の為の能力っぽさが出ていて好みではある、管理する側はブチ切れ案件だろうけど。
メニュー画面には俺の名前とリソースポイント、そしてその下にずらずらーっとリソースポイントを注入できる項目が並んでいる。
現在は1500弱のポイントが手に入ってるので取り敢えず1000ポイントで分解力向上を5レベルまで上げてみる。更に500ポイントを経験値という項目に入れてみると名前の横にレベル2と表示されるが、特に体に変化は起きていない。
さて午後はどうなるかね。