バッドエンド後にやり直した人生で、初対面のクラスメイトからなぜか激重感情を向けられている   作:水島紗鳥

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第16話 危機回避の軌道修正

 陽葵とのあれこれがあったおかげで空気に緊張が走ったりもしたが、再び天音と二人になってからはまたいつものテンションに戻っていた。

 

「そろそろ足が痛くなってきたんだけど」

 

「とりあえず本殿までは後少しのはずだ」

 

「でもゴールって本殿のさらに先にある奥社よね? それを考えたらやる気が吹き飛んじゃったわ」

 

 そんなふうに愚痴こそこぼしてはいたが、その表情に陰りなどは一切無い。朝や先程見せたような息が出来なくなるほどのプレッシャーを放っていた姿がまるで嘘のようだ。しかし、あれは紛れもない現実だった。

 あまりにもギャップが激しいため果たしてどちらが本当の天音の姿なのだろうか。そんなことを一人で考えているとちょっと不満そうな、それでいて不安そうにも見える表情を浮かべた天音が話しかけてくる。

 

「さっきから急に黙り込んじゃってるけど一体どうしたのよ、もしかして私と一緒にいると苦痛なんじゃ……?」

 

「……あっ、ごめん。ちょっと天音のことを考えてたら頭がいっぱいになってて」

 

 天音に話しかけられた俺は思わずそう答えてしまった。すると、天音は一瞬驚いたような顔になった後、すぐに不適な笑みを浮かべながら口を開く。

 

「へー、頭の中がいっぱいになるくらい私のことを考えてくれてたんだ。その辺りについてもっと詳しく教えて欲しいわね!」

 

「そ、そんな大層内容じゃないから」

 

「それでも別にいいわ、瑛人は頭の中で一体どんな妄想をしてたのか聞かせなさいよ」

 

「何で妄想したことになってるんだよ、そんなことするはずがないだろ」

 

 妄想をしたとは一言も言っていないはずなのに、いつの間にかそういう方向に話が行き始めていたのだから否定するのは当然だ。

 

「男子ってクラスの女子を相手にあんなことやこんなことをしてる姿を妄想をするってよく聞くじゃない、だから瑛人の頭の中で私がどんな目にあってたのか気になっちゃってさ」

 

「いやいや、一体どこ情報だよ!?」

 

「いいから白状しなさい」

 

 本当にそんな妄想をしていたとしても本人に言えるはずがない。それをノリノリで聞きたがっている天音が一体どういう思考回路をしているのかは普通に気になる。

 だが、俺に迫ってくる天音の表情からは先ほどまでの不満や不安の感情が完全に消え失せていたため、結果オーライな気はする。そんなやり取りをしながら頂上を目指して歩き続け、ようやく目的地である頂上の奥社に到着した。

 ここに到着するまでに一時間ちょっとかかったため、想定していた通りの時間に限りなく近い。言うまでもなく俺達よりも先についている同級生達は少なくない人数いたため景品は既になくなっていた。

 

「やっとゴールね」

 

「ああ、頑張ってここまで来たから結構達成感はあるよな」

 

 そんな会話をしながら俺と天音は頂上で待機していた担任に到着報告を行う。降りるのは少し休憩してからにしようという話になったため空いていたベンチに腰掛ける。俺達と同じように一旦休憩しようとしている同級生は多かったため、空いているベンチがあったのはラッキーだった。

 

「そう言えば天音って髪を染めたりとかはしないのか?」

 

「急にどうしたのよ、そんなことを聞いてきて」

 

「ほら、うちの学校って髪の色は基本的に自由じゃん。お洒落に力を入れてる天音は明るい色とかに染めそうなイメージを勝手に持ってたからちょっと意外でさ」

 

 実際に今日の校外研修でも、染めている同級生はそれなりにいた。その辺りが自由だからうちの学校に入学したという話も耳にすることがあるレベルだ。だから天音と仲良くなって割とすぐくらいのタイミングから気になっていた。

 

「確かに私も最初は染めようかなとは思ってたんだけど、余計なトラブルに巻き込まれそうな気がしたから辞めたのよ」

 

「余計なトラブル?」

 

「ええ、髪を染めたら変な男が寄ってきそうな気しかしなくて。実際にそれで苦労した実例を知ってるから、あえて染めずにナチュラル路線で行ってるってのが質問の答えになるわね」

 

 なるほど、確かに派手な外見の女性が好きな男性は、結構面倒なタイプが多い気がする。大体そういう男性は自身もチャラい外見のパターンが多く、強引なアプローチをしがちなイメージが強い。

 実際に俺が前世の卒業式で助けた金髪の女子もまさにそんな感じの男のせいで不幸になりかけていた。恐らく天音の身近な知り合いにも変な男のせいで嫌な思いをした誰かがいるのかもしれない。

 

「あっ、でも瑛人が染めて欲しいって言うなら別に染めてもいいけど?」

 

「いや、むしろ俺は今の天音が好きだからそのままでいて欲しいな」

 

 俺がそう本音を口にすると、天音は何故か顔を真っ赤にして黙り込んでしまった。

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