バッドエンド後にやり直した人生で、初対面のクラスメイトからなぜか激重感情を向けられている   作:水島紗鳥

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第21話 所有の見せつけ

 赤レンガ倉庫のレストランで昼食を終えた後、俺達は船乗り場に移動した。これから観光遊覧船に乗ってクルーズをする予定だ。

 

「船に乗るのもかなり久しぶりね」

 

「こういう旅行の時くらいしか乗る機会がないもんな」

 

「ええ、最後に乗ったのがいつだったのかすら覚えてないし」

 

 クルーズは一時間ほどで港内を一周するような感じであり、前回の家族旅行の時も船に乗った記憶がある。ちなみに、前回は校外研修のバスで酷い目にあったばかりだったため事前に酔い止めをしっかりと飲んだ。

 当然今回に関しても同じく酔い止めを準備してきていた。俺は酔い止めを天音にお裾分けした後、自分も飲もうとして肝心なことを忘れていたことに気付く。そもそも飲み物を買っていなかったのだ。だから自動販売機へ行こうとして立ちあがろうとしたところで天音から声をかけられる。

 

「もしかして飲み物がないの?」

 

「ああ、だからあそこの自動販売機で買おうと思って」

 

 そう言えば今のシチュエーションって校外研修の時と似ているな。今回については飲み物がないのは俺なため立場は逆転しているが。

 

「それならこれを使って」

 

「えっ……」

 

 俺は思わずそう声をあげてしまった。天音が差し出してきたペットボトルは既に開封済みで飲んだ形跡があり、そして誰が飲んだのかは考えるまでもない。

 

「……もしかして嫌だった?」

 

「い、嫌じゃないから心配するな!」

 

 流石に天音が口をつけたものを飲むことには躊躇いもあったが、完全なる善意でやってくれている彼女を傷つけるようなことだけはしたくなかった。だから俺は天音の手からペットボトルを受け取り、そのまま酔い止めと一緒に飲んだ。

 完全に勢いだったため間接キスなんて気にしている時間すらなかった。だが、飲み終わった後でだんだんと恥ずかしくなってくる。そんな中、天音は俺の手からペットボトルを取り、そのまま中身を飲む。

 目の前でさっきまで自分が口をつけていたペットボトルを天音が飲む姿を見てドキドキしてしまった俺は、頭の中で素数を数えてそれを悟られないように振る舞った。それから乗船の時間となったため、俺達はクルーズ船に乗り込む。

 

「せっかくだからスカイデッキへ行かない?」

 

「賛成、そこからの景色はめちゃくちゃ良さそうだし」

 

「私とパパは中でのんびりしてるから、あとは若い二人で楽しんできなさいよ」

 

「俺達のことは気にしなくてもいいから」

 

 そんなことを言われて父さんと母さんから送り出されたので俺と天音はスカイデッキに向かう。到着したスカイデッキは屋根が無く、三百六十度のパノラマが楽しめたため凄まじい開放感があった。

 

「船の上から見てもお洒落な雰囲気の街よね」

 

「だよな、めちゃくちゃいい感じの写真も撮れたし」

 

 船の上から撮った海と街の写真はめちゃくちゃ映えていた。そんなに写真に詳しくない俺が適当に撮っただけでこれだけ映える写真が撮れたのは間違いなく素材が良いからだろう。

 

「そう言えば瑛人と二人で写真って今まで全然撮ってなかったわよね?」

 

「何だかんだ撮るような機会はなかったもんな」

 

「せっかくだから一緒に撮りましょう」

 

「そうだな、旅行の思い出になるような写真も欲しかったし」

 

 俺が提案を快諾すると天音はスマホをインカメにして密着してくる。やはり何回密着してもドキドキしてしまうのは俺がモテないからに違いない。天音は背景やアングルなどを調整し、何枚か写真を撮った。

 

「うん、いい感じね」

 

「めちゃくちゃ上手いな、俺には絶対に真似できそうにないわ」

 

 そもそも誰かとこんなふうに写真を撮る機会がほとんどないため、多分今後もインカメを使った自撮りは上達しないに違いない。そんなことを考えながら天音の方を見ていると、突然チャットアプリのLIMEを開いた。嫌な予感がした俺は天音に問いかける。

 

「なあ、急にLIMEアプリなんて開いてどうしたんだよ……?」

 

「さっき撮った写真をプロフィールに画像に設定しようと思って」

 

「いやいや、俺が一緒に映ってるだろ!」

 

 プロフィール画像に設定されると、色々な相手から見られるため面倒なことになりそうな気しかしない。

 

「そんなことくらい勿論分かってるわ」

 

「流石にそれは不味くないか?」

 

「友達と一緒に映ってる写真をプロフィール画像に使っている子もいるんだから、別にこれくらい普通のことよ」

 

 天音がそんなことを言ってきたため俺は黙る。同性同士ならともかく異性と一緒に写っている写真をプロフィール画像に設定するのは色々と意味合いが変わってくる気がするのだが、もしかすると天音の中では基準が違うのかもしれない。

 

「ってわけで設定したから」

 

「……あっ!?」

 

 黙り込んだ一瞬の隙をついて天音はプロフィール画像を変更してしまったようで、俺のスマホで見てもしっかりとツーショット写真が反映されていた。

 

「ちなみに変えるつもりとかは……?」

 

「うーん、当分の間は無いわね……少なくとも瑛人が私のものってことをみんなが理解するまでは」

 

 後半部分は声が小さく周囲の音にかき消されて聞こえなかったが、とにかくしばらくは変えてくれなさそうだ。

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