蝕ミ滅ボス 作:ムズスンギ
「いやいややっぱ人違いですって」
初対面で思いっきり違う名前呼ばれた件について。
つかカリエスて…どう考えても日本人の名前じゃなくて草。
我日本人よ?普通わかるくない???
銀髪がマジ性癖にぶっ刺ささる系の美少女メイドさんなんだけど…なんか急に残念に思えてきてならない。
案の定首振るし。やめろよ、俺そういうあざと可愛いのに弱いんだから。
「絶対違いますて。俺カリエスなんてかっけぇ名前じゃないですもん」
今世の名前聞いたら絶対笑うぞ?
佐藤、太郎…!俺、佐藤太郎!!
すんごいメジャーな名前だろ?あえてそうつけたらしいからなぁ!!
事故で昇ってった両親のことは今でも大好きなんだけどさ、正直こればっかりはキレそうでピキピキする。
もうちょい名付けられる側のことも考えて欲しかったですねぇ。
何が「たくさんいたら寂しくないよね」、だよ。いや全くもって嬉しくねぇ!?
「佐藤といえば!」って前々から考えてたのも話してて余計頭真っ暗なったわ!
やけに目ぇキラキラさせてたのが余計に救われなさ感じて、ほんと。
そんな目されたらぁ、文句も言えなくなっちゃうのよ!
「っ、クソッ。ほんと、なんで死んじまったんだよ……」
メイドが見ている前で、情けなく涙を流す。
ダセェって思われちゃ嫌だなぁ。
こんな美少女に嫌われちゃ俺もう生きてけない…
でも、好きだったんだよなぁ。
父さんも、母さんも。
「…」
懐から取り出したハンカチで俺の目を拭うメイド。
変に慰めるでもなく、ただ何も言わず拭ってくれたのが余程ありがたく感じた。
「…ありがとう、ございます」
「いえ」
腫れぼったい目で、改めてメイド――クレアさんを見た。
肩まで伸ばした銀髪はサラサラと銀糸のようで、陽の光に照らされ輝いていて。
アメジスト…よりは暗い紫の瞳には、どこか吸い込まれるような魅力的な光を感じる。
西洋人形みたいな小顔も相まって、クラシカルなメイド服が死ぬほど似合ってるんだよなぁ。
「落ち着かれましたか?」
「え、えぇ。お陰様で」
頬があちぃ。
こりゃあ血集まって赤くなってるな。
羞恥心丸わかりでおいは恥ずかしか!
「こちらへどうぞ」
「こっちって、どこ行くんです?」
指さしてる方なんもないんですけど。
「ご心配なく」
あれ、もしかして声に出てた?
あっと口元を手で抑える俺の前で、何やら合図を送るような仕草をするクレアさん。
なんとなくで何しようとしてんのかは伝わるんだけど、そんな都合のいいこと……あったわ。
わぁーお、如何にもって感じのワープゲート出てきた。
…いやこん中通るの?初見で?
あ、あのー、俺達ってまだ会ったばかりっすね…?
見えてる建物明らか本拠地ですって感じしてんですけど。
「どうなさいましたか?」
「今言った通りなんですけど」
話通じてないな。ポンコツか?
「ご安心を。
我らは皆カリエス様へ恭順の意を示しています。
愚を犯す愚か者は存在しません」
「そこじゃないんですよね」
まずそのカリエスってのがなんなのかを知りたいのよこっちは。
「…わかりました。では、お先にお話させていただきます」
「あっはい」
――カリエス。
それは”ミューター"の王が冠する名。
全てを圧倒する力を持ち、その力をもってミューターを統べしキングが代々引き継いできた名である。
…そして、今代のキングは「いやいや…それはおかしいと思うんですけど」
「俺、人間。NINGEN。普通のホモ・サピエンスなの。そのミューターってやつじゃあないんすよ」
――いやなぜそこで普通に頷く!?
めっちゃさも当然そうな顔してるけど、その理論だと困るのそっちじゃね???
「…あなた様は、自らのお力の振るい方をお忘れになられています」
「急にそれっぽいこと言い出すじゃん」
じゃあなに?
俺にはあとから覚醒するタイプの異能が宿ってるとかで、よくある危機的状況とかに陥ったら、どこぞの主人公よろしくケツに火がつくとでも言いたいの?
……いやだからねぇのよ、ンなもん!!
それ期待した分後で惨めになるやつだからほんとやめて!
「でしたら、こちらを」
ついには話進まんなと言わんばかりに、”どこかで見たことあるようななにか”を持ち出してくるメイド。
ひょいって出したけどどっから出てきたよそれ。
「なんなんすか、それ」
「
「が、がぶきかん?…ていうか、何か付いてません???」
メカメカしい本体?に似つかわしくない生々しさ…正直気味悪いんだけど。
しかもなんか青いの垂れてるしさぁ…嫌な予感しかしないの俺だけ?
「こちらに見覚えが?」
俺が反応するや否や、その綺麗なダークアメジストの瞳を期待の光で満たすメイド。
行間読めなさすぎて本当に訳がわからないよ!
「えっ、いや、その、少し…」
「まぁ…!」
わぁ嬉しそう…で、何故に???
喜ぶ要素なんかあった?
「カリエス様、あなた様は先程、己はなんの力も持たないただの人間だと称しました。
…しかし、それはありえないのです。なぜなら――」
な、なんだ…?なんで近づけてくる…?
お、おい服めくるんじゃねぇよ!?
やめろおいやめ――アッー♂!!!
「――わたくしが
尽く全てを捩じ伏せ、思うがままに滅ぼせし王。
それこそがあなた様、カリエス様なのです」
は、腹にくっついちまったよ……しかも外れねぇし。
急にモヤっぽいのが浮かび出すもんだから、なんかやべぇなとは思ったけどさ……こォレはちょっと想定外がすぎるッ!
完ッ全にくっついちゃってんだけど、どうすりゃいいのこれ!?
「もう馴染まれたのですね…!」
「なじむ。実に!馴染むぞッ!とでもいえばいいのか俺はぁ!?」
おまっ、笑ってないで外せよコレ!?
……ってあら?なんか見た目変わってら。
上の部分に黒いトゲトゲのなんかが追加されて、『おめでとう! なんかワルっぽい感じに 進化した!』ってなっとるわ。
出自不明のパーツが急に生えてくるとコッワ…(ボソッ)
「それではこちらへ。邪魔が入らぬうちに」
「えっ?あ、ウン…」
流れるようにゲートを再度呼び出したメイドに手招きされ、ボケっとしたままゲートを潜り抜ける。
そのまま完全に、先に繋がっていた空間へと足を踏み入れ…ふと思う。
……あれ、嵌められた???
シュバっ!という擬音がつきそうな勢いでメイドの顔を振り向く俺。
ニコりと微笑みを返してくるメイド。
「お、おまっ」
コンチクショウ!こんがらがってパンクするとこまで想定通りってことかよ!
あ、あぁぁっ!結構な人数「待ってました!」ってスタンバってるぅ。
逃げ道をとワープゲートの方を振り返っても、既にそこにゲートはナッシング。
…俺、どうなっちゃうの…?
はやく変身させたいなぁ