蝕ミ滅ボス 作:ムズスンギ
あれよあれよと用意されていた玉座に座らされ、めっちゃ大勢いる臣下を名乗る連中からの自己紹介を受ける羽目になった。
いや多すぎるだろ…
つか律儀に純ミューターとか付け加えんでえぇっての。
「では、改めてお話させていただく」
スーパー自己紹介ってだけでも疲れさせられたってのに…まだあるんすか…?
黒一色の仮面で顔を隠した、同じく黒の白衣を羽織る男。
全身が黒で染まってるから威圧感がすごいんだが…メガネみたいに仮面を指で押し上げる癖がついてしまっているらしく、若干のシュールさを感じさせる。
本人曰く、名をヴァッシュというらしい。
さっき話の中でチラッと出てきたんだが、俺の腹にくっつけられた”ブリードガヴ"もこいつの発明品なんだという。
「滅相もない。吾輩はクレア殿の
「模倣…」
そういえば、さっきもメイドが言ってたよな?俺が圧倒的な力を振るっていたって。
「王はこの力を欲していたのだろう?」
「いやなんでそうなる?」
こんなん欲しいなんて一言も言ってないんですが???
「ふむ?おかしいな、王は更なる力を有するガヴ器官の開発を求められていたと聞いたのだが…」
それマジどこ情報だよ。
ってかその王って本当に俺か?別人じゃないの?
「えぇ。カリエス様は、こちらのカートリッジに見合うガヴ器官の開発を命じられました」
いやそこで話ややこしくしないでメイドさん???
「…クレア、君の言うソレは、今の話か?それとも、
うわ、またなんかクールイケメンが話し始めた。
今の話やら未来のそれとか…俺その前提知らないんですけど?めっちゃ置いてけぼりで話しまくるじゃん。
本当に俺のこと王として敬う気あるのコイツら???敬われても困るけど。
「失礼しました…わたくしが
「…となると、まだ未来の話か。
それなら、王が何も知らないのも無理はない」
やれやれって顔してるけど、お前もお前だからな。説明責任果たせやコノヤロウ。
おい、聞いてんのか?この癖っ毛金髪イケメンが。
くそっ、こいつら全員顔いいの腹立つ…なんですか?悪の組織っていうのは顔がいいと入れないとかいうルールでもあるわけ?
だとしたら残念でござんした!
あなた方が王と呼ぶ俺のお顔は平凡です!まさしく佐藤太郎に見合ったモブ顔でございます!
大変残念でござんした!……ってわけで家帰してくれない?
「……それ、むり。あきらめる、べき」
「めっちゃ舌っ足らずな幼女!」
黒ロングゴスロリとは、なかなかに業が深いな。
見たところここに残ってるこの四人が幹部的なやつらなんだろうが…どいつもこいつも癖強すぎじゃね?
ミューターって我が強いやつらしかおらんのか?
「おっと、忘れるところでした。我が名はエナベル、どうか記憶に留めていただければ幸いです。王よ」
「アッハイ」
「ルルはルル。おうさま、よろしく」
「アッウン」
……ヨロシクシタクナイ(本音)
「早速だが、王には力の使い方をマスターしていただこう。諸君、ついてきたまえ」
有無を言わさずスタスタ行くスタイル…嫌いじゃない――わけないわ!
でもここは素直に従っといた方がいいっていう勘が働いた思から行く…何されるかわかったもんじゃない。
「どうかね、諸君」
仮面黒衣の後をついて行った先に待っていたものは、これまた変なやつであった。
見方によってはスタイリッシュにも見えるマスク、妙にボロボロな服、あと三又に伸びた槍。
見た感じ…戦闘員ってとこか?
でもさっきの大量自己紹介でも、戦闘員って名乗ってるやつらがいた記憶あるんだが。
なんか差でもあるのかと眉間に皺を寄せる俺、…また違った感想を抱いたらしい仮面以外のメンツ。
「…また何か妙な手を加えたのですが?」
「改良と言ってくれないか。既存の発明品をより良くする、それもまた、科学者の役目故に」
まーった始まったよ…いい加減俺にわかるよう説明してくれんかね?
「まずは――「ヴァッシュ、せつめい、ながい。めんどい」…ふん。一言も聞きもせずそれか。
だが――「ルルの言う通りだ。君の説明はいつもいつも長すぎる。簡潔に纏めてくれ」……チッ」
ボロっカスに言われてて草。
「そこまで言うのならば、説明は不要だな?……愚か者どもめ」
拗ねやがったし。つかそれで困るの俺なんだからな。
マジでコイツら殺したろかな…多分、つか確実に無理だけど。
ンァァァァァー!あかん…!コイツらあまりにも好き放題し放題すぎてキレそう…!
顔の筋肉に力を込め、表情に出てしまいそうなのを必死こいて堪える。
耐えろ、俺の血管ッ!プチッたら終わり、終わりなんや…!
怒りに震え、血管のピキりに怯える俺へと、豪華な台の上へ乗せた毒々しい紫の何かを持ってくるのは……いつもいつも話をややこしくしてくれるメイド。
恭しい態度が妙に様になってまなすねぇ…腐ってもメイドってか。
「カリエス様、こちらを
…使い方はご存知の筈」
いやしらねぇよ。なんやねんそれ。
『シュヌ…』
鳴いたし!?
えっ、これ生きてんの…?異能で呼び出す使い魔とか式神みたいなやつなの???
TERROR
ッ、今のは…?
脳内に浮かび上がるなにかのシルエット。
あんな姿のやつなんか知らない筈なのに、なんでか見覚えがあるような気がしてならない…マジでなんなんだ、今の。
「カリエス様」
「……」
期待に満ちたメイドが差し出すソレへと手を伸ばす。
普通に考えたら触るべきじゃないんだが…さっきのが、どうにも……
ダメだとわかりつつも、止められない衝動。
恐る恐ると伸ばした指先が今、触れる―――
「っ!!」
HORROR!
ズキィィィィッ…!
――その瞬間、新しいイメージが俺の脳内に溢れ出した。
「カリエス様!」
「グッ、うぅ…ゥ」
ズキりと走る頭痛。
あまりにもタイミングが良すぎる。
痛む額を抑え、後退り、焦った表情を浮かべたメイドに背中を支えられた。
な…るほど、今度は…割とはっきり見えたな。
俺の背中を摩るメイドに変わってか、仮面野郎の手の中に収まったソレをじぃっと見つめる。
もしあの力が俺に宿っているという話しが正しければ…。
あれほどの力…これまで捨ててきた夢を拾って、尚もお釣りがもらえるのは間違いない。
……が、どう考えてもリスクがあるようにしか思えない。
"タダより高いものはない”なんてことわざが生まれるくらいだ、あれほどの力、絶対何かしらの代償がある筈。
……それに、こいつらのことだってある。
こいつらが俺を選んだ理由がなんなのか、そこは何となく理解できた。
けれど、根本的な話として、なぜそうしたのかがわからんのである。
このブリードガヴってやつを付けられるまでの俺は、異能持ちに嫉妬するだけのごく普通の好青年に過ぎなかった。
それこそ、どっからどう見ても強者ですって顔してるこいつらからすりゃあ、吹けば飛ぶ埃同然と言ってもいいカスさに違いない。
それをわざわざ王だのなんだの言って下につく?
タダでこのガヴ器官とかいう”力"をプレゼントしてくれる?
全くもって意味がわからん。どこにメリットがあるんだか。
普通こういうのって俺が王になる!とかでバトるもんじゃねぇの?なんでわざわざ外から連れてくるわけ???
「…もう、大丈夫っす。ありがとございます」
「カリエス様…」
……なんて、ウダウダ考えたところで意味はない。
帰り方はおろか、脱出方法もわからなければ、そもそもが生殺与奪を握られてる状況…まず考えるべきは、生き残る術を如何にモノにするか。
幸いにも、答えは
故に、今の俺にとって重要なことはひとつ。
あの力を…一刻も早く使いこなす。
それぞれのキャラの勝手なイメージはこんなのです。
クレア:前話の通り
ヴァッシュ:アクナイのドクター
エナベル:ハンドレッドのタソガレ
ルル:眠たげな黒ゴスロリ
佐藤太郎:佐藤太郎