ハンバーガーの戦い 〜この異世界のスキルはハンバーガ〜 作:石林留
「香ばしく食欲を唆る匂いテリヤキソースだ!ハンバーガーIQ1000の俺の勘がそう言っている!」
芳賀は一連の流れに驚きつつもその嫌でも感じられるハンバーガーとこの世界の繋がりに感動を覚えていた。芳賀は目をテリヤキソースの光沢のように輝かせた。
そんな芳賀に目もくれず眼帯男は大きく跳躍し、 バーガーに斬り掛かり、刃が肉体に触れるとともにその放たれる光で照らし、焼き切った。
「グルぁぁぁ!!!!」
バーガーはその大きな口が切り裂かれ、咆哮をあげる。しかし、力を振り絞って裂けかけの口で眼帯男を飲み込もうとする。
眼帯男はまさかそれほどの余力があるとは思わず、とっさに避けようとするがバーガーのその巨大な口からは逃れられなかった。唇を噛み締めながらも眼帯男は芳賀に向かって叫ぶ。
「さっき私が焼いたバーガーを食うのだ!
そうすれば私のような力を得れる!」
そう言うと眼帯男は飲み込まれた。
芳賀は困惑した。こんなデカい化け物を俺が倒せるわけがない。ハンバーガーを食べたことは山ほどあるが山のような大きさのハンバーガーと戦ったことなどあるわけがない。
しかし、自分を助けてくれた人を放っておけない。
それに、自分も刀からテリヤキソースを出せるようになりたい。ただ、
「これを食うのか?」
バーガーの燃えカス。少し焼けてない部分がピクピク動いている。ミディアムと言えば聞こえが良いが、絵面はグロ画像である。
しかしそんなことは言ってられない。
「ガブッ!」
目を閉じ一心不乱に齧り付く。芳賀はハンバーガーの味に集中するために目を閉じて食うことはあれど、見た目から逃避するために目を閉じることは無かった。
すぐに芳賀は飲み込もうとしたが、いつものハンバーガーのクセで形容し難い味を抱えたまま噛み続けていた。芳賀は1回で30噛みをハンバーガーのための顎作りで4年ほど続けていたのだ。故に噛まないと飲み込めない癖がある。習慣とは残酷である。
口のなかで燃えカスが動くのを止めた頃に、やっと飲み込めた。状況は何一つ呑み込めていないが。
すると、力が溢れ出し、それが腹から右手へと、流れ込んでくる。とっさに右手をバーガーに向けると、
手から黄色い糸、糸にしては太く、ワイヤーに近い。そんな何かが放たれた。芳賀はコンマ数秒で理解した。
「手から…チーズが出た!!!」
やはり異能力はハンバーガーに因んでいる!芳賀はそうと分かるとチーズで巨大なバーガーの腹と思われる部分をきつく縛り付けた。
「ドロぉぉぉぐぁ!」
バーガーは耳障りな言葉に綴り難い鳴き声をあげた後、眼帯男を吐き出した。
すると、眼帯男はにやりと笑い、芳賀に
「礼を言う。」
とだけ伝えバーガーに向かって刃を向ける。
「奥義・
芳賀には、その光の軌跡と、納刀する眼帯男、一刀両断されたバーガーしか見えなかった。
「申し訳ない。」
眼帯男はそう頭を下げた。黒髪はバーガーの胃液で少しベタついている。
「いや、俺は大丈夫です。大好きなチーズバーガーの力が宿ったし」
遠慮しているのか本心なのか自分でも分からない。 ハンバーガー好きといえど、ハンバーガーの力が宿るというのはどうなのか、自分の思い描いていたハンバーガーニスト像と今の異能力にハンバーガーを足したようなものが使える自分との乖離に少し戸惑う。
「しかし、あの伸びる珍妙な糸を出せるとは、素質があるようだ。私は「ハンバーガー」がたくさんいる組織に所属しているが、どうだ?ともに行動してみるのは」
「はい、そうさせてください。俺は身寄りがないし……………、ええ?!今なんて言いましたか?」
芳賀は本日n度目の驚愕をして聞き返す。
「そんなに私と行動したいのか。まあ、一人だと不安なのは分かる」
「違いますよ!その少し前!ハンバーガーって!!」
芳賀は思っていた。この世界のところどころにハンバーガーの要素があるけど、ハンバーガーそのものは存在しないのではと。
しかし、今聞いた「ハンバーガー」は聞き間違えなはずがない。もしやハンバーガーそのものは普通に存在する世界なのか、芳賀は期待した。
しかし、眼帯男の返答は芳賀の希望を打ち砕いた。
「ああ、私とお前みたいな奴はバーガーの力を使える人間。「半バーガー」と呼ばれている」
芳賀は、つくづくこの世界のシステムはハンバーガーで溢れているのかと感心するも、日曜日の密かな楽しみである毎日ハンバーガーデイ(略してEHD)
をもう楽しめなさそうなことに肩を落とした。