ハンバーガーの戦い 〜この異世界のスキルはハンバーガ〜 作:石林留
輝夜の発言に、俺はなんとも不気味な気持ちになった。
「でも、泊めてくれたし、ただ単に昔に俺みたいに異世界から来てここで暮らしてるだけかもしれないじゃないか、だってあんなにやさしそうなひ
「どうされましたか?」
背筋が凍った。信じようと心から思っていたが
直感が脳に警告している。
「そこの眼帯のお方は異世界から来てはいなかったのですね、ハンバーガーのハンカチを持っている連れがいたので、てっきり同族かと。」
「クリスさん、あなたは何者なんですか、何でこんなところに教会を、」
「もちろん出る杭を改めるためですよ。異世界人は私たちにとって邪魔でしかないのです。
だから、作り替えてみせましょう。内なる神の意思のままに!」
クリスは、そうして叫ぶとどこからともなく凶器を取り出し、こちらに構える。その必死さに、思わず俺は後ずさりする。
「構えろ」
「…お前が寝ていた時にクリスは私を治療してくれた、その時クリスの内部に覚えのある
輝夜は香ばしい匂いとともに刀を構える。本気だ。
「別にあなたに敵意がなかったら返してやったのに、残念です。『ジェイソン』はそれほど無視できない存在になったのですね。」
クリスは淡々と「ジェイソン」であることを認め、その顔には微笑みが漏れ出ていた。
「ゴォォーンゴォォーンゴォォーンゴォォーンゴォォーンゴォォーンゴォォーンゴォォーン」
静かな空気を繰り返される鐘の音が打ち砕いた。刹那。2人は狭い部屋で戦闘を開始する。
輝夜は刃を発光させ、天に掲げた刃先にソースを集合させ、刀を振り下ろし、そのソースの塊をクリスへ放った。
「この日なら、万全で戦えます。
『
クリスは手に持った回転ノコギリの黄金色の刃の部分を勢いよく発射する。その回転ノコギリの刃は、刃にしては異様な形状をしている。
技は勢いよく衝突する。その衝撃で部屋の壁が崩壊し、互いに外に出て戦闘を続ける。
「ど、どうしよう」
いきなり親切にしてくれていた人が攻撃を仕掛けていたことを、芳賀は受け入られなかった。
(しかし、動かなくては。)
足を動かしたくても、心の底の恐怖が勝る。
バーガーは化け物だったから割り切ってとっさに戦えたが、急に人を攻撃するとなると話は別だ。
芳賀はハンバーガー狂いなところ以外は普通の高校生でしかない。
「どうする、俺にできるのか…?」
部屋としての体をなしていない場所で芳賀はそう葛藤する。
「寝込んでいた奴は始末しましょう。あの方の求める半バーガーではない。」
クリスはそう言って芳賀に回転刃を発射した。
右腕が視界に移る。
(俺の腕だ。)
グシャッと着地し、同時に回転刃も足元に転がる。
「ぐうわぁぁぁ!!!!!」
(痛い。痛い痛い痛い痛い痛い。
なんで、早い、どうして、痛い、苦しい、
◆◆◆◆
「芳賀ァ!!」
私は衝撃のあまり声を荒げた。
「あの人、戦闘慣れしてないようですね。半バーガーだから回復力はあるとはいえ、あの出血量。もう助かりませんよ」
クリスは回転ノコギリで刀を受け止める。
「なぜ、これほどまでの力を、お前は何者なんだ!」
私はクリス、いやジェイソンの恐ろしさに怯むまいと叫んだ。
「私には、神様が憑いているのです。親に捨てられ右も左も分からず死にかけた私にこの半バーガーの力と神様の力を分けてもらいました」
「神だと!?そんなもの、存在しない!」
「存在しますよ。」
クリスは回転ノコギリの勢いが増す。そして、輝夜の刀は耐えきれず、折れる。
「くぅ!」
輝夜はとっさに後方へ跳躍し、距離をしようとするもクリスの追撃がそれを許さない。
「安心しなさい、体は傷つけません。ただ、依代になってもらいます。」
「
私のとは違う何かをクリスは回転刃にまとわせる。そのベージュに近い色のモヤが黄金色の回転刃と合わさる様子は神聖ささえ感じるほど美しい。
攻撃が来る、避けねば。芳賀を組織に届けねばならない。ジェイソンを倒さなければならない。それが、私の組織への恩返し。私の唯一の生きる意味なのだ。
疲弊しきった体はそれを許さかった。
◆◆◆◆
どうして、こんな異世界に来てしまったのか。俺はただハンバーガー以外望まない。衣食住じゃなくて俺は衣《ころも》、食、ジューシーで十分だった。
ああ、衣といったらクリスの武器、あの不規則なぎざぎざのある黄金色の刃は「チキンカツ」によく似ていた。おおよそ「カツバーガー」の半バーガーなのだろう。ただ右腕をなくしたこんな状態じゃ輝夜に伝える余力はない。
………意識も朦朧となっきてた。
俺はおぼつかない思考を働かせる。いや、諦めるな。輝夜に伝えないと。
「なんで?」
何でって、ジェイソンをこのままにしておいたらやばいこ
「どうして?」
思考に入り込むな、何なんだ、生きて組織にたどり着き、元の世界に帰る手段を探さなきゃいけないんだ。だから
「帰れた人はいないって輝夜も言ってたでしょ」
「頑張ったよ。急に異世界に飛ばされて」
「こんな目にあっても足掻いて」
自分のようなそうでない声、それが反響する。こんな声、幻聴に決まってる。真に受けちゃだめだ。
「いや、違う!俺は、家に帰ってハンバーガーを食べるんだ!」
「ふーん、何でハンバーガーなの?」
「何でって…」
言葉が詰まる。ことバーガーに於いて。俺が詰まったことがあるのは飯くらいというのに。
「ハンバーガーみたいな技で殺されかけたら、嫌でも嫌いになるでしょ」
カツバーガーの使い手に殺されかけているこの状況も相まって謎の声に同調したくなってきた。
「ハンバーガーの要素が散りばめられた世界。でも、この世界は残酷だ。君はハンバーガーというフィルターを通してこの世界を見ていたに過ぎない」
「……。」
「もう一度いうよ、もう諦めなよ。なんでハンバーガーが好きなんだよ」
…俺は異世界に来て調子に乗ってた。ハンバーガーに詳しいから無双できるかもと…少し思っていた節もある。
ただ、輝夜と出会ってあんな無愛想な奴だが少し打ち解けられたことには嬉しかった。それに、
俺はこう告げる。
「ハンバーガーが好きなのは、ハンバーガーが大好きだからだ!」
「…は?」
頭のなかの声が困惑している。
「俺は、ハンバーガーが好きなのはそのうまさに気づいたら引きつけられていたからだ!そこに理由は要らない。そして、輝夜を助けるのも理由は要らない。なぜなら、俺にとっての輝夜は、ハンバーガーだからだ。そして、俺自身もクラスメイトや先輩にとってのハンバーガーかもしれない。…それなら、輝夜の命も俺の命も諦めたりなんかできない!」
「『ハンバーガー』を『大切なもの』の代わりにつかうなよ、わかりづらい。この世界はそんな甘さでは生き残れないよ」
「確かに俺はこの異世界を舐めていた、じゃあこの世界にこれから喰らいついていくだけだ。そうして世界を味わい尽くしたうえで、元の世界に戻ってやる!」
結論はこれでいいのか、俺は戸惑いつつも頭の中の声にそう言い放った。
「帰れなくても、困難に陥っても投げ出さない?」
「ああ、食わず嫌いは俺の最も嫌いな言葉だ」
なんだか声のおかげで自分と向き合えてスッキリした。
「じゃあ今の状況も頑張って乗り越えられるね」
「待ってくれ、お前は何者なんだ、」
俺は謎の声に語りかける。
「………、いつかわかるよ」
頭に響いていた声はそう言い残して聞こえなくなった。
気づいたら、痛みは引いていた。チーズが傷と右腕をくっつけていた。突貫工事だが、これならある程度戦える。
…それに、
さっきまでの対話は一瞬の出来事のようだったが、俺を「ハンバーガーニスト」として成長させた。
「もう、迷わない」
俺は芳賀とクリスのもとに向かった。
◆◆◆◆
クリスの攻撃。それは、不可避に思われた。私は今度こそ死ぬことを確信した。しかし、何かがそれを防いだ。
クリスの回転ノコギリにチーズが絡みついているのをみるやいなや、輝夜はその正体を確信する。
またお前に助けられるとはな、
「お前のおかげで命拾いした。感謝する、芳賀!」
「ああ!」